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ROAR OF DRAGONS  作者: 紫鷹丸
26/31

新たなる仲間⑵

 ヒロが返信を打った。

 

*「今、セレスティア入口付近のカフェにいます。来られますか?」*

 

 すぐに返信が来た。

 

*「はい。今セレスティアの広場にいます。すぐ行けます」*

 

「近くにいるみたいや」と達也さんが言った。

 

 数分後。カフェの入口に、一人の女性が現れた。

 長い黒髪が、街灯を受けて柔らかく輝いている。整った顔立ち。おとなしそうな目が、店内をそっと見渡している。隣に、竜がいた。淡い水色の鱗を持つ竜で、主人に寄り添うようにぴったりとついている。

 

 目が合った。

 その瞬間、相手の顔が明るくなった。

 

「……あの」

 

 少し躊躇いがちに、三人のテーブルに近づいてくる。

 

「雪城葵です。メッセージを送りました」

「募集をかけてた橘ヒロです。とりあえず、椅子に掛けてもらって」


「めっちゃ可愛い子やんか!」と達也が口を挟む。

「いえ、そんな……」

「達也、うるさい」ヒロが諫める。

 

 葵が椅子に座った。隣に竜が寄り添う。葵はヒロと達也に軽く挨拶してから——陽をじっと見た。


「……あの、もしかして」

「はい?」と陽が聞く。

 

「少し前にリクレーン付近の草原で、助けてもらいませんでしたか?」

 

 陽は首を傾けた。

 

「リクレーンで……?」 

「リリースから三週間くらいの頃に。草原でモンスターに囲まれて、救援要請を出したら、白い竜と一緒に来てくれた方がいて」

 

 陽はセラを見た。セラが静かに葵を見返している。

 

「……あ」

 

 記憶が戻ってきた。草原で救援要請の通知が来て、向かったら一人のプレイヤーがモンスターに囲まれていた。セラと一緒に助けたが、すぐにその場を離れてしまったから、顔をちゃんと見ていなかった。

 

「あの時の……」

「はい」と葵が頷いた。


「ずっとお礼が言いたくて、リクレーンで探したんですけど、全然見つからなくて」

「すみません、すぐ違う場所に移動してたから」

「いえ、そんな」と葵が首を振った。


「助けてもらえただけで——。こうして会えてよかったです。ありがとうございました」

 

 葵が、深く頭を下げた。

 陽は少し照れた。


「大したことしてないですよ。セラが頑張ってくれただけで」

 

「セラ、っていうんですか」と葵がセラを見た。 

「あのとき、すごく速くて……格好よかったです」

 

 セラが短く鳴いた。

 

「陽も隅に置けんな。こんな可愛い子を」と達也さんが笑った。

「そんなんじゃないよ。困ってたから……」

 

 改めて、自己紹介が始まった。

 葵はリクレーン出身で、ずっと一人でプレイしていたという。支援系に特化していて、回復と補助魔法が得意だ。でも一人では火力が出せないから、時々パーティを探してレベル上げをしていた、と。陽と同い年ということで、少し砕けた喋り方になってきた。

 

「一人でやってたんだ?」と陽が言う。

「うん。パーティに入るのが少し……怖くて」

「怖い?」

「知らない人と一緒にいるのが得意じゃなくて。でも、一人だと限界があって」

 

 葵が竜を撫でた。水色の鱗が、光を受けて淡く輝く。

 

「この子がいてくれるから、なんとかやってこれたんですけど」

 

「竜の名前は?」と陽が聞く。

「……ルカ、です」

「いい名前だね」

「ありがとうございます」と葵が小さく笑った。

 

 ヒロが葵を見た。


「スキル構成を聞いていいか?」

「えっと、回復魔法が二種類と、仲間のステータスを上げるバフが一種類と、ダメージを減らすシールドが一種類かな」

「バランスがいいな」とヒロが言った。


 少し間を置いて続ける。


「問題ないし、これでレベリングに向かおう」

「そやな。陽ももちろんええやろ?」


 陽は葵を見た。葵が少し緊張した目で陽を見返している。

 

「うん。一緒に行こう」と陽は言った。


 葵は少し間を置いた。それから、静かに答えた。

 

「よろしくお願いします」

 

 セラが、歓迎するように鳴いた。


 ◆

 

 セレスティアの南に広がるフィールドは、街から少し離れると一気に人が減った。

 

 達也が「ここら辺がええな」と言って足を止めた。開けた草地で、周囲を木々が囲んでいる。視界が広く、モンスターの接近も察知しやすい。

 

「テントを張ろう」とヒロが言った。

 

 鞄からアイテムを取り出す。コンパクトに折りたたまれた布のようなものだ。地面に置いて展開すると、自動的に広がる。小さなテントになった。

 

「なにそれ? いつ買ったの?」と陽が聞く。

「セレスティアに来る前に」とヒロが答えた。

「あった方が効率がいいと思ってな」

 

「さすがや」と達也が笑った。

 

 テントのウィンドウを確認すると、効果が表示されていた。

 ――《テント設置中:戦闘中を除く通常時にHP・MP・SP回復量+20%》


「これを置いておくと、戦闘と戦闘の間の回復が速くなるから、長期のレベリングに向いてる」とヒロが説明した。


「俺とジンがモンスターを連れてくるから、みんな待っててや」

「あぁ、ジンが適役だな」とヒロ。

「ジンの速さを活かすならこれが一番や。引き付けてここまで連れてきたら、みんなで叩く。終わったらテントで回復して、また繰り返す」

 

 葵がルカを撫でながら頷いた。

 

「私もここで待ってればいいですか?」

「そうや」と達也さんが言った。


「葵は、戦闘中に回復を出し惜しみせんと大丈夫やからガンガン使ってや。テントで回復できるから、MPは積極的に使っていい」

「わかりました」

「じゃあ、行ってくる!」

 

 達也がジンに乗った。ジンが地面を蹴り、森の奥へと消えていく。

 

 数分後、地響きと共に達也が戻ってきた。

 後ろに、三体のモンスターを引き連れていた。

 全身が岩のような甲殻で覆われた、大型の四足モンスターだ。グランヴェルで見たスパインリザードよりさらに大きく、動きも速い。セレスティア周辺のフィールドモンスター、アーマービーストだ。

 

「来たで!」

「セラ、前へ!」

 

 セラが翼を広げて前に出た。盾役だ。アーマービーストの突進を正面で受け止める。時にはギリギリで横へ躱しながら爪を引っ掛ける。完全に止めるのではなく、流しながら向きを変えさせた。

 

「レオン!」

 

 ヒロが叫ぶ。体勢を崩したアーマービーストへ、レオンが急降下した。天墜の翼が発動する。上空から急降下してきたレオンの速度と重さが合わさり、甲殻に深いひびが入った。

 

「効いてる!」

「ジン、二体目!」

 

 達也の声。ジンが超跳躍で二体目のアーマービーストの側面へ飛び込み、体当たりを叩き込む。三体目が陽とセラへ向かってくる。

 

「セラ、引きつけて!」

 

 セラが三体目の前に立つ。フェイタルリードが発動、首の付け根の急所を捉えた。爪が深く刺さる。三体目がよろめく。 

 そのとき。

 

「陽君、後ろ!」

 

 葵の声だった。

 振り返ると、一体目のアーマービーストが体勢を立て直して、陽へ向かってきていた。 

 間に合わない——

 

 淡い光が、陽を包んだ。

 シールドだ。葵のルカが展開した防護魔法。アーマービーストの突進が直撃したが、ダメージが大幅に軽減された。

 

「ありがとう!」

「大丈夫! 行って!」と葵が短く言った。

 

 陽はセラへ指示を飛ばした。シールドのおかげで時間ができた。レオンが一体目へ追撃し、ジンが二体目を押さえ込む。セラが三体目の急所へもう一撃。

 三体、同時に倒れた。

 

 ――《討伐成功》

 

「……よし」

 

 陽は息を吐いた。体の緊張が、少しずつほぐれていく。


「ありがとう、助かったよ」と陽が葵を見た。

 

 葵が少し頬を赤くした。

「大したことないよ。シールドを使っただけだから」

「いや、十分すごいよ」

 

 ヒロがウィンドウを確認した。

 

「テントに戻って回復する。すぐ次を呼ぶぞ」


 テントの中に入ると、回復量の増加がすぐに感じられた。HPが、普段より速いペースで戻っていく。SPもMPも同じだ。

 

「これ凄いね」と陽が言った。

 

「テントがあるとないとじゃ全然効率が違う」


 それからは、同じことを繰り返した。

 達也とジンがモンスターを連れてくる。テント前で迎え撃つ。終わったら回復して、また繰り返す。

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