セレスティア⑶
翌日から二人はナイツ本部の前に立つ。
ナイツ本部の扉は、想像より重かった。
蔦に覆われた白い石造りの建物。入口の紋章——翼を広げた竜と、葉をあしらった盾。陽はその扉を押し開けながら、少し緊張していた。
中に入ると、広いホールが広がっていた。天井が高く、柱に沿って蔦が這い上がっている。壁には歴代のナイツメンバーらしき肖像画が並んでいて、その全員が竜と共に描かれていた。絵の中の騎士たちは皆、真剣な目をしていた。その目が、入ってきた陽たちを見ているようだった。
奥にカウンターがあり、NPC——受付係の女性が座っている。落ち着いた緑色の服を着ていて、セレスティアの雰囲気によく合っていた。
「ナイツ試験の申し込みです」
ヒロが言うと、受付係が二人を見た。
「お二人とも、騎乗資格はお持ちですか」
「はい」
ウィンドウを開いて、騎乗資格と称号「竜騎士見習い」を提示した。受付係が確認して頷く。
「確認致しました。それでは受験料をお支払いください。お一人20,000ロドーになります」
「……また高い」と陽が小声で言うと、「まぁ仕方ない」とヒロが小声で返した。二人で40,000ロドーを支払う。
「試験内容をご説明します」と受付係が言った。
「ここより南東、徒歩で一時間ほどの場所にセレスティア大洞窟があります。その洞窟の最奥部に、竜騎士の証が安置されています。それを持ち帰れば合格です」
「洞窟の中にはモンスターがいますか」と陽が聞く。
「います。そして——洞窟の最奥部には、野生の竜が棲みついています」
陽とヒロは顔を見合わせた。
「野生の竜と戦う試験なんですね」
「ナイツとは竜と共に戦う者たちです。野生の竜を前に、それでも証を取りに行けるかどうか」と受付係は静かに言った。
「全て、自分たちの力で乗り越えてください」
「なお」と受付係が続けた。
「試験内容はランダムで変動します。同じ洞窟でも、挑戦するたびに条件が変わります。他のプレイヤーから聞いた情報が、必ずしも参考になるとは限りません」
陽は少し驚いた。
「ランダムで変わるんですか?」
「はい、ランダムです。挑戦するプレイヤーの実力、人数を考慮し、全て同じ難易度になるように設定されています」
陽は頷いた。
「わかりました」
本部を出ると、達也が外で待っていた。広場の端に座って、ジンの首を撫でている。陽の姿を見つけると、立ち上がって駆け寄ってきた。
「どやった? 内容は?」
「洞窟の最奥部に竜騎士の証があって、それを取ってくれば合格。最奥部には野生の竜がいるってさ」
達也が少し首を傾けた。
「……やっぱりランダムか。俺の時と違うな」
「達也さんは何だったの?」
「俺は山頂への登頂試験やった。多分ジンが陸竜だからやろな。頂上まで行って竜騎士の証を取ってくる試験や。ボスは大型の怪鳥やったわ」
「ボスも変わるのか」とヒロが言った。
「そうみたいやな」と達也が頷く。
「せやから俺の経験があんまり参考にならんかもしれへん。洞窟の中は飛行できるスペースがあるかどうかもわからんしな」
「セラが飛べない可能性もあるか」と陽が呟く。
「狭かったら厳しいかもな。でも——」
達也はセラを見た。
「セラは地上でも動けるやろ」
「うん」
「野生の竜については言っておく」と達也が続けた。
「俺は直接戦ってへんけど、聞いた話では、動きが読みにくいらしい。だから引きつけすぎるな。あと咆哮技には気をつけろ。食らうとしばらく動けんくなる」
「咆哮技か」
「範囲が広い。聞こえたら即、距離を取ること」
達也は二人をじっと見た。
「俺は行けへんけど、お前らなら大丈夫や。セラとレオンを信じてやれば大丈夫」
「……うん」と陽が頷く。
「ほな、待っとくわ。凱旋報告、楽しみにしとるで」
達也とジンが、広場の噴水の方へ歩いていく。その背中を見送りながら、陽は深呼吸した。
「行こう」
「ああ」
二人とセレスティアの南東へ向けて歩き出した。




