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130/160

130 相性が悪い。ともいいきれなくはない?

誤字報告・常用外漢字報告ありがとうございます!

 

 床がパカッと開いて今まで座っていたソファーと、背後に控えていたアーシュレシカが落ちた。


 え、うそだろ!?

 久遠の騎士が普通に落ちたぞ!?


 俺?

 無駄に【聖女の輝き】という聖女スキルの効果で浮かんでいる。自動的に発動した。

 これはこれで怖いな。


 でも【聖女の輝き】の効果はほんのり体が発光する以外は「ちょっと浮く」程度なので、床のない状態で浮かんでいられるのはほんのわずか。

 あとは開いた床の底へ向けてゆっくりと落ちてゆく。そして地面から数十cmくらいまでくると安定して浮く感じのスキルだ。


 たぶん『聖女降臨』的な演出に使う用のネタスキルなんだと思う。

 サスペンション無しの馬車に乗るときや、水たまり回避に使えるだけのスキルじゃないってことだな。


 あ、でもシロネになにか舞台してもらうときの演出に使えそうだな。

 舞台の予定皆無だけど。


 で、そんなわずかな浮きをキープできている時間、相手へ強がりを吐く。


「あんたは俺を狐獣人の単なる仲間だと思っているようだが、俺はあんたが探している人物だぞ」


「ふん、浮くスキルか何かか? 今すぐその穴に叩き込んでやる!」


 あら、また会話が成り立たない。


 けどまあこちらもいいたいこと言ってフェードアウトするか。

 聞いてもらえなくても、言い出してしまったし、ここで黙って引き下がるのも恥ずかしいのでいいきろうと思う。

 俺、なんて健気なんだろう。


 ローブのネコミミ付きフードを下ろし、素顔をさらす。


「俺が近隣の村人達を治癒し、蘇らせてきた回復術師だったわけだが、こんな扱いされるなんてとても残念だ。俺を探していたってことは誰か治してほしい、または蘇らせてほしい人がいたんじゃないか?」


「な、なんっ、なんっ」


 仮定領主の息子とその配下がびっくりしてこちらをみている。仮定領主の息子にいたっては『なんなん』いいながらこちらを真っ赤な顔をして指を指している。


 ナンか。今日はチーズナンでほうれん草カレーが食べたいな。

 マンゴーラッシー付きで。


 そんなことを考えている間に、ゆっくりと降下し始めた。


「ああ、もう浮かんでられないらしい。じゃあな」


「まままっ、待ってくれ! そんなっ! 待ってくれえぇぇっ!」


 最後まで特に謝罪の言葉はなかったな。

 それとも別になにか言い返したかっただけだったのか? 『こちとら別に回復術師に頼みたいことナンてナンもねーわ! 思い上がるなバーカ!』とかだったらさっきのどや顔で『じゃあな』とかいってた俺、恥ずかしいな。

 数秒前の黒歴史を消し去りたい。

 あまりの恥ずかしさで両手で顔を覆った。




 恥ずかしさに身悶えしつつ1分少々。

 地面まで結構かかったな。すごく深い。


「お疲れ様です」


 お茶の用意をしてアーシュレシカが待っていた。

 せっかく用意されていたので席につく。


「チャイでございます」


 なんてインドなタイムリー。


 スパイシーでミルクが濃厚、甘ったるい。

 最高。とっても美味しい。

 まったりするー。


「うまい」


「いたみいります」


 お茶を楽しみつつ周囲を見回す。

 アーシュレシカの魔法で眩しくない程度に明るく照らされ、見通しがいい。


 だだっ広くなにもない。岩か、それとも固い地層を掘ったようなドーム状の空間が広がっている。

 この先進行するだろう出入口らしき穴の他にはドームのてっぺんの、いまさっき落ちてきた穴がポッカリとあいている。

 その穴から少しずれたところでお茶してる。


「……思ったよりきれいな空間だな」


 なんとなく淀んだ空気はしてるけど。


 イメージでは白骨死体やソファーで山が築かれ、その山の頂点に落ちるのかなー、とかちょっと憂鬱だったんだけど、思いの外なんにもない。がらんとしてる。


「大変散らかっていたので速やかに片付け、【アイテムチャージ】にすべて突っ込み始末しました」


 うわ、始末とかいっちゃったよ。

 しかしなるほど。俺の憂鬱は正しかったのか。


 あの城のあの部屋で慣れたように人を落としていたみたいだったもんな。

 そりゃたくさんのソファーの破片や落下の衝撃で亡くなった人も多いだろうな。


 そんな場所でまったりお茶してる俺。

 ……気にしない。


 いや、でもやっぱり気になるから浄化かけとこ。


 たしか呪い解いたり、場所に縛られてその場にとどまった魂を解放するってスキルあったような……ああ、これこれ。前にも使った気がしなくもない。


 そっとこの空間に【聖女の慈悲】をかけておく。

 なんかここ、呪われてそうだもんな。理不尽に思ったり、無念だったろうさ。








「さて、シロネ探すか」


 まったりと味わい、チャイを飲みおえたので目的を果たすために動く。


「こちらに」


 すちゃっと用意万端に人力車が。


「ああ、うん。そうね」


 乗りましたよ。

 だって期待に満ちた眼差し向けてくるんですもん。


 アーシュレシカに介添えされて人力車に乗り、アーシュレシカが人力車を引くスタンバイができたのを確認して【聖女の輝導】でシロネを指定。

 ゆっくりとほんのり輝く道筋ができていく。

 この道筋にそって行けばシロネのいるところに着くはずだ。

 この道筋をアーシュレシカにも見えるように【聖女の輝導】をリンクする。


 しゅっぱーつ。



 ドームから通路に出る。

 地下牢型ダンジョンだったようで、早速エンカウントした。


「こりゃダメなやつだ」


 ここのダンジョンは岩みたいなゴーレムがでるとこみたいだ。


 どーしよ。


 とりあえず、【堅牢なる聖女の聖域】でごり押し。


「ゴーレムの幅と道幅の関係で通りにくいですね」


 なんとかギリギリ通れるくらい?

 でもこれゴーレム二体でてきたらアウトだな。


 かといって俺にはゴーレムに対する攻撃手段がない。

 アーシュレシカを戦闘にまわすか?

 でもなー。度重なる戦闘シーンとかダルいよなー。

 1、2回ならハラハラドキドキワクワクして観戦できる自信はあるんだけど、何回もは飽きる。そして無力な自分が嫌になりそう。戦闘任せっきりになっちゃうし。


 その点コインダンジョンは最高だった。【堅牢なる聖女の聖域】の効果で消滅したアンデッドのドロップアイテムを【堅牢なる聖女の聖域】にオプションした【アイテムボックス術】で自動回収できたから、いちいち止まることなくすいすい進めた。


 しかし今回、アーシュレシカに戦闘してもらうとなると、アーシュレシカがどんな攻撃手段を用いるかわかんないけど、いちいち足止めをくらうことになる。


 前方を見るかぎりでは、数m毎にゴーレムがいるみたいだからかなりのエンカウント。

 ゴーレムをかわしながら進んだとしても人力車では酔う自信あるよ。


 やはりここは無難に小回りの利く徒歩での移動がよいのではないだろうか。


 そうアーシュレシカに提案しようとしたけど、それより先に興奮気味にアーシュレシカはいった。


「人力車は至高です。引ける悦び!」


 その悦びは知らない。

 ひとそれぞれだから返事は黙ってることにした。


 それにしても、だとしたらどうしたものか。

 人力車酔いなんてしたくない。

 ゴーレムに遭遇するごとに戦闘ってのも全てアーシュレシカ頼みになってしまう。

 今俺完全に足手まといだなー、あははー。


「ゴーレムって、なんだよ」


 ナン。


「我々人形に近い、それよりも劣った存在、でしょうか」


「魔物ではなく?」


「はい。セージ様のいた世界ではロボットといったほうが近いかもしれません」


「じゃ生命体ではない?」


「はい。しかしダンジョン内なのでその定義は定かではありません」


 なるほど。

 だとしたら、試してみるか。


「【アイテムボックス術】」


 ゴーレムの真下に【アイテムボックス術】を展開。

 魔法陣が現れる。


 そして、ストンと消えた。

 ゴーレムごと。



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