「根古、縁側にて」
その夜、事件のすべてが一段落した後、根古は自宅の縁側で、ヤマトとともに、静かな夜を過ごしていた。
「今回も、賑やかだったな」
根古は、独り言のように呟いた。杉原千畝の遺した恩義、樋口家の秘められた約束、東京から来た訳あり五人の女性たち、そしてヘイブンス――ジェイムスとの、決して語られることのない古い因縁。
すべての糸が、この小さな町で、静かに交わり、そして静かにほどけていった。
縁側の向こうから、江戸川たち四人が、差し入れの酒を持って訪ねてきた。
「根古さん、今日は付き合ってくださいよ」
「たまにはいいだろう」安藤も続く。
根古は、少し驚いた顔をした後、穏やかに笑った。
「……まあ、たまにはな」
四人は縁側に腰を下ろし、月を眺めながら、静かに酒を酌み交わした。ヤマトは、根古の膝の上で、満足げに目を細めている。
「根古さん」工藤が、ふと尋ねた。「この町には、まだまだ何かありそうですね」
根古は、湯呑み代わりの杯を傾けながら、静かに、しかしどこか楽しげに答えた。
「さあな。だが……あんたらがいる限り、退屈はせんだろうよ」
多治見の夜空に、月がやわらかく輝いていた。杉原千畝が蒔いた小さな種は、七十年以上の時を超えて、この町に静かな実を結んだ。そして、この町の物語は、まだこれからも、静かに、しかし確かに、続いていくのだった。
――完――




