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「樋口家、当主の想い」
大垣の樋口家では、当主が古い蔵の中で、代々伝わる古文書と向き合っていた。
「まさか、こんな形で、あの約束が果たされる日が来るとはな……」
当主は、先祖から伝え聞いていた話を思い出していた。戦時中、まだ若かった杉原千畝が、この地方を訪れた際に樋口家の先代と交わした、ある約束。当時は、単なる縁の一つとしてしか語り継がれていなかったその話が、七十年以上の時を経て、こうして形になろうとしている。
江戸川と安藤が、最終確認のために樋口家を再訪した。
「準備は、いかがでしょうか」安藤が尋ねる。
当主は、静かに微笑んだ。
「ええ、滞りなく。……探偵さん方には、本当にお世話になりました。正直、最初は何をどう信じればいいのか、分からなかったのですが」
「我々も、途中まで手探りでしたよ」江戸川が苦笑した。
当主は、蔵の奥から一枚の古い写真を取り出した。若き日の杉原千畝と、樋口家の先代が並んで写っている写真だった。
「これも、記念碑と一緒に、後世に残そうと思います」




