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「準備、静かに進む」
樋口家への「恩返しプロジェクト」は、一石の指揮のもと、静かに、しかし着実に準備が進められていた。江戸川たち四人は、地元の目として、その最終段階の調整役を任されていた。
「返還される資料というのは、具体的にどういったものなんですか」江戸川が、一石に改めて尋ねた。
一石は、丁寧に説明を始めた。
「杉原氏が生前、樋口家に預けていたとされる書簡の写し、そして当時の記録の一部です。戦後の混乱期に、樋口家自身も詳細を把握しきれないまま、蔵の奥に眠っていたものが、我々の調査で見つかりました」
「文化的プロジェクトというのは?」工藤が尋ねる。
「樋口家の敷地内に、ささやかな記念碑を建てたいと考えています。杉原氏と樋口家の縁、そして今回、静かに結ばれた友好の証として」
秋月が頷いた。
「大々的な式典ではなく、あくまで静かに、ということですね」
「その通りです」一石は微笑んだ。「杉原氏自身が、決して目立つことを望まなかった方ですから」




