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「根古の呟き」
その夜、事件が一段落した後、根古は一人、縁側でヤマトを撫でながら、夜空を見上げていた。
「……ジェイムスの奴、防衛省まで動かしおって」
根古は、独り言のように、小さく笑った。ヘイブンスが直接指示を出したという確証はなかったが、根古には何となく、その裏にある大きな流れが見えていた。
そこへ、江戸川たち四人がふらりと立ち寄った。
「根古さん、今回もお世話になりました」
「なに、儂は大したことはしとらん。あんたらが頑張った結果だよ」
工藤が、少し改まった様子で尋ねた。
「根古さん……差し支えなければ、教えてください。あなたは、本当に、ただの『年寄り』なんですか」
根古はしばらく沈黙し、ヤマトを撫でながら、静かに笑った。
「……ただの、年寄りだよ。ただし」
根古は、いつもの穏やかな、しかしどこか意味深な笑みを浮かべた。
「長く生きてりゃ、それなりに、面白い縁の一つや二つ、あるもんさ」
四人はその言葉に、これ以上踏み込むことを諦め、苦笑しながら顔を見合わせた。
窓の外、多治見の夜空には、いつもと変わらぬ星が瞬いていた。しかしこの町では、表には決して出ない、いくつもの物語が静かに交差し、そして一つの区切りを迎えようとしていた。
黒猫のヤマトが、根古の膝の上で、満足げに目を閉じた。




