「五人の決断」
翌日、「らくか」には異例の顔ぶれが揃っていた。江戸川たち四人、根古、そして西野千紗都、古田麻尋、星野由紀子、杉本幻、深沢彩織の五人。さらに、北村と一石の代理として、それぞれコーエンが同席していた。
「昨夜の件は、佐藤氏の組織には、我々の方から正式に手を引くよう交渉します」一石が静かに言う。
北村も頷いた。
「NSAとしても、同様の申し入れを行う予定だ」
由紀子が戸惑ったように尋ねる。
「……なぜ、私たちのために、そこまで」
コーエンが穏やかに答えた。
「率直に申し上げれば、皆さんの経験と能力を、正当な形で活かしていただきたいという思惑があります。もちろん、強制ではありません」
北村も続けた。
「選択は、あくまで皆さん自身のものだ。ただ、選択肢があることを、知っておいてほしい」
五人の女性たちは、互いに顔を見合わせた。長い沈黙の後、千紗都が口を開いた。
「……少し、考える時間をください」
根古が、静かにその様子を見守りながら、ぽつりと呟いた。
「足を洗うというのは、簡単なようで、難しいもんだな。だが……選べるだけ、まだ良い方だ」
太田がカウンターの奥で、そっと五人分の茶を淹れた。
「とりあえず、今日のところは、ゆっくりしていきなさいな」
窓の外、多治見の空には、穏やかな朝の光が差し込んでいた。江戸川たち四人は、この一件を通じて、自分たちの町が、思いもよらぬ規模の物語の交差点になっていることを、改めて実感していた。
そして根古は、ヤマトを膝に乗せながら、静かに、しかしどこか満足げに、五人の女性たちの横顔を見つめていた。




