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「ヘイブンスの記憶」
同じ夜、ヘイブンスも一人、古い記憶を辿っていた。北村と遠藤には決して見せない、柔らかな表情だった。
「……あの夜のこと、俺は正直、断片的にしか覚えていない」
彼は独り言のように呟いた。
「気づいたら、親司が俺の隣にずっと座っていた。誰かに聞いたわけじゃないが、後になって、俺があの夜、本当に危なかったんだと知った」
ヘイブンスは、キャリアを通じて多くの修羅場をくぐってきたが、あの夜の記憶だけは、いつまでも特別な重みを持ち続けていた。
「あいつは、恩着せがましいことは一切言わなかった。それどころか、俺が礼を言おうとするたびに、話をはぐらかしてきた」
北村が静かに部屋に入ってきた。
「ヘイブンス様、根古氏について、何か思い出されましたか」
ヘイブンスは少し躊躇った後、静かに首を振った。
「……いや、これは俺個人の話だ。公式の報告書には書けん類のことだ」
「では、なぜ根古氏に近づくなと?」
ヘイブンスは窓の外を見つめた。
「奴を巻き込みたくないだけだ。俺の世界と、奴の世界は違う。奴には、静かな余生を送る権利がある」




