表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/53

回想、四十年前」

 その夜、根古は一人、古いアルバムを開いていた。ヤマトが膝の上で、いつになく静かにしている。

写真には、まだ若い根古と、一人の外国人青年が写っていた。大学時代、留学生歓迎コンパの夜のものだ。

??四十年近く前のことだ。

歓迎会で調子に乗って飲みすぎた留学生、ジェイムス・ヘイブンス。まだ十九歳だったその青年は、日本の酒の強さを甘く見ていた。気づけば意識を失い、唇は青ざめ、呼吸も浅くなっていた。

『おい、誰か救急車を!』

周りの学生たちが浮足立つ中、根古だけが冷静だった。ジェイムスを横向きに寝かせ、気道を確保し、嘔吐物で窒息しないよう朝まで付き添った。救急車を呼ぶべきか迷った友人たちに対し、根古は「もう少し様子を見る、危なければすぐ呼ぶ」と、一晩中、ジェイムスの容態を見守り続けたのだ。

翌朝、意識を取り戻したジェイムスは、自分が生死の境をさまよったことも、根古が一晩中付き添っていたことも、朧げにしか覚えていなかった。

『……お前が、看てくれたのか』

『いや、たいしたことはしてない。みんなでやったことだ』

根古は、あの夜のことを、誰にも――ジェイムス本人にも――大袈裟に語ったことはなかった。それが四十年経った今も続く、根古の流儀だった。

「……ジェイムスの奴、今頃、ステーブなんて名前を名乗ってるとはな」

根古は写真をそっと閉じ、ヤマトの頭を撫でた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ