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第一章 予兆 第三話「らくかにて」

第三話「らくかにて」

太田豊が営む茶店「らくか」は、この町の情報が自然と集まる場所として、知る人ぞ知る存在だった。

江戸川と安藤が斎藤の話を確かめるべく店に入ると、奥の席にはすでに見知らぬ二人組――工藤と秋月が座っていた。

互いに一瞬、探偵特有の「同業者臭」を嗅ぎ取る沈黙が流れる。

「……あんたら、探偵?」安藤が先に口を開いた。

「そういうあんたも、元刑事の匂いがしますね」秋月が静かに返す。

太田がカウンターの奥で苦笑した。

「今日はまた、探偵さんばっかりだねぇ。珍しいこともあるもんだ」

そこへ黒猫のヤマトが、のそりと歩いてきて工藤の足元にすり寄った。工藤が驚く。

「この猫、人懐っこいんですか」

「いや……普段はけっこう人見知りするんですけどね」

太田が言った直後、店の引き戸が開き、根古親司が姿を見せた。ヤマトの飼い主として、この町では顔の広い人物だ。

「ヤマトが懐くのは珍しい。何かご用事で、この町に?」

工藤は一瞬言葉を選び、

「……休養です。ただ、最近この辺りで外国人の目撃情報があると聞いて、少し気になって」

根古の表情が、わずかに動いた。それを見逃さなかったのは、江戸川でも安藤でもなく、隅で聞いていた秋月だった。

(この爺さん、何か知ってるな……)



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