第四章 依頼 第二十話「四人の決断」
一石とコーエン、ダヴィドが店を出た後、残された四人と斎藤、太田は、しばし言葉を失っていた。
「……とんでもない話になりましたね」江戸川が口を開く。
安藤が腕を組んだまま、天井を見上げた。
「杉原千畝の恩義が、七十年以上経って、こんな形で戻ってくるとはな」
工藤は資料を見つめながら、静かに言った。
「秋月さん、これ、受けるべきだと思います」
「俺もそう思う」秋月が頷いた。「危険がないと言われても、鵜呑みにはできんが……この話の筋自体は、悪いものじゃない。むしろ、守るべき話だ」
太田がカウンターの向こうで、静かに微笑んだ。
「根古さんが『悪意ある連中じゃない』って言ってたのは、これのことだったんだねぇ」
斎藤が名残惜しそうに言う。
「これ、本当に動画にできないのが残念だな……」
「絶対に駄目です」四人が同時に釘を刺した。
そこへ、ちょうど根古が店に顔を出した。四人の表情を見て、すべてを察したように微笑む。
「話は聞けたようだな」
「根古さん、最初から知ってたんですか、この話」江戸川が尋ねる。
根古は少し肩をすくめた。
「知ってたというより……儂も、樋口の旦那から少し聞いていた程度だ。詳しい経緯までは、儂も今日、初めて分かったよ」
根古はヤマトを膝に乗せながら、四人を見渡した。
「杉原さんが蒔いた種が、こんな形で、この町に実を結ぶとはな。……あんたらの仕事は、これから大変だろうが、悪いようにはならんと思うぞ」
窓の外、多治見の空は、澄み渡った夕焼けに染まっていた。四人の探偵は、それぞれの表情に、これまでとは違う静かな決意を宿していた。




