第四章 依頼 第十九話「正式な依頼」
そこで」一石は表情を改め、四人を見渡した。「皆さんに、正式に依頼をしたい」
「依頼、ですか」安藤が眉を上げる。
「我々は、樋口家への『恩返し』を、静かに、かつ確実に成し遂げたいと考えています。しかし、この地方には、我々の存在を快く思わない者、あるいは誤解して利用しようとする者が出てくる可能性がある」
一石はコーエンに目配せし、コーエンが一枚の資料を四人の前に配った。
「具体的には、樋口家への支援――これは金銭的なものではなく、歴史的資料の返還と、ある文化的プロジェクトの実現です――を、外部に知られず、静かに進めるための『地元の目』としての協力をお願いしたい」
工藤が資料に目を通しながら尋ねる。
「なぜ、我々のような民間の探偵に? あなた方なら、もっと確実な手段があるのでは」
一石は初めて、少し困ったような笑みを見せた。
「それが、逆なのですよ。我々のような組織が正面から動けば、必ず余計な憶測と警戒を呼ぶ。しかし、地元の探偵の方々が、地元の目線で、静かに事を進めてくださるなら……それが一番、自然な形になる」
秋月が腕を組みながら、じっと一石を見据えた。
「一つ確認させてください。この依頼を受けることで、我々や、この町の人間に危険が及ぶことは?」
一石は即答した。
「ありません。むしろ、この件が明るみに出て、興味本位で騒がれることの方が、危険です。皆さんの仕事は、静けさを守ることだと考えていただければ」
一石による正式な依頼と、杉原千畝―樋口家の恩義の全体像を明かし、四人がその「静かな協力者」としての役割を受け入れる流れにしています。




