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第四章 依頼 第十八話「杉原千畝の遺した約束」
一石は懐から古い書類の写しらしきものを取り出し、テーブルに置いた。
「皆さんは、杉原千畝という人物をご存知でしょう。第二次大戦中、リトアニアで、外務省の訓令に反してまで、多くのユダヤ人にビザを発給した外交官です」
「八百津の記念館の……」江戸川が呟く。
「その通りです。杉原氏に救われた人々の子孫の中に、後にイスラエル建国に深く関わった一族がおりました。彼らは代々、ある『恩義』を語り継いできました」
一石は続けた。
「杉原氏本人は、戦後不遇の扱いを受けながらも、決して恩着せがましいことは言わなかった。しかし、救われた側の一族は違いました。『いつか必ず、この恩に報いる』と、子々孫々に誓ったのです」
「それが、樋口家とどう関係するんですか」工藤が尋ねる。
「杉原氏がリトアニアに赴任する以前、若き日に、この地方――樋口家と深い縁があったのです。詳細は省きますが、樋口家は杉原氏の恩人筋にあたる。その縁があって、救われた一族は、いつか樋口家にも『恩返し』をすると誓った」
太田が思わず口を挟んだ。
「それじゃあ、樋口の旦那が言ってた『約束』ってのは……」
一石は頷いた。
「ええ。今回、我々がこの地を訪れたのは、その誓いを、正式に果たすためです」




