第三章 接近 第十五話「根古、一線を示す」
「根古さん」江戸川が真剣な表情で向き直る。「教えてください。あの外国人グループの目的は、一体何なんですか」
根古はしばらく沈黙し、湯呑みに口をつけてから、静かに言った。
「儂が知っていることと、知らんことがある。だが一つだけ、はっきり言えることがある」
四人が息を呑んで待つ。
「あれは、悪意ある連中じゃない。むしろ……誰かとの約束を、律儀に果たそうとしている連中だ。それだけは、間違いない」
「約束って、具体的には」秋月が食い下がる。
根古は首を振った。
「それを話すのは、儂の役目じゃない。もし本当に知りたいなら……向こうが話す気になった時に、聞けばいい。ただし」
根古の声が、わずかに低くなった。
「無理に暴こうとするな。約束事というのは、時に、暴かれること自体が裏切りになる。あんたらは探偵だ。真実を暴くのが仕事だろうが……この件に関しては、その正義感が、誰かを傷つけるかもしれん」
店内が静まり返った。ヤマトが根古の足元で、静かに座り込んでいる。
「儂に言えるのはここまでだ。あとは、あんたらで考えろ」
根古はそう言い残し、湯呑みを置いて席を立った。四人は互いに顔を見合わせ、それぞれの中に、これまでとは違う重みを感じ始めていた。
窓の外、多治見の空に、夕闇がゆっくりと広がっていく。
四人の探偵と一匹の黒猫、そして一人の老人が知る「約束」の全貌は、まだ誰にも見えていなかった。




