第55色 殺意
俺には、子供の時から弱点がある。
一撃で倒されるとかの、弱点ではない。
精神的に追い詰められて、胃がキリキリするヤツだ。ふとした瞬間に色々思いだして、震えてしまう。
そう…ただの弱み...。
幼少から、その悩みは付きまとい。
おばあちゃんの家に越してからも、学校で生活している時でも、俺の心の奥底にトラウマとなり住み着いている。
今までこの世界に来るまで、彼女はいない。
姉が失踪する、前から普通の状態でもいなかった。最近の若者は、そういった行動が早いとテレビで言っていたけど...それは、嘘だ。
ファーストキスは、トーカの一撃...。
マーカラさんのが、ちゃんとしたファーストキスだ。
自分で言うのも何だけど、物心着いた時から変態の姉にも、された事がなかった...と思う。
モテない...。
多分違う…。出来ないのだ...と思う。
言い訳と感じてしまうだろうけど...。
そう思いたい。
容姿は、そこまで悪くないと思う。
昔は、チョコなんかも貰えたりした。
小学校の時だけど…。
それなら、おママゴトの様に、軽く付き合うとかあるかも...と思いきや...。
俺の弱点が邪魔をするのだ。
こと如く。
そして、今日。
今までの人生で最大のピンチを今迎えて居た。
☆
「はぁはぁはぁ…はぁ…」
やばいやばいやばいやばい...。
無我夢中で、街中を滑走して逃げている。
何分走っているかは、わからない。
確かめている余裕なんてない。
今までで最速。魔力も全力で走っている。
体感した事のない感覚…。
これがランナーズハイ?
ってそんな余裕は、ない。
頭の中でツッコミを入れる。
ボケてる余裕なんてない。
魔導書が、まったく使えない。
転移か八色雷公を使えたらいいけど...。
でも遠くに移動してしまうのは、マズイかもしれない...。
皆に何かあるかもしれない。
心配だから余り離れる事は、正解じゃないだろう。
人の波に逆らって見た事もない、入った事のない裏道に入り、適当に道を変え逃走する。
今俺は…鬼から逃げている。
そうあれは、鬼。
まさしく鬼…。
寮の前で振り返った時に少しだけ見る事が出来た。
本物は、見た事がないけどわかる。
黒鬼なんてあれは、鬼すら生温い...。
絶対に殺られる。
何でこうなったっ!?
俺が何した!!?
振り返って思い出す短い人生…。
ってまだ死んでたまるか...。
やばいやばいやばいやばい!!
思い出が蘇るな...この世界楽しかったな...。
走馬灯かぁ...これが走馬灯かぁぁって違う違う違うっ!!!
あっ!この角は、右に曲がったら死ぬな…。
だから真っ直ぐっ!!!
逃げ足だけには、自身がある。
長年磨き続けた、危機管理能力もある意味シックスセンスの域に達したと思う。
…胃は、いつもキリキリするけど。
「いつまで逃げてるつもりですか?
逃げてては、殺せません。
...楽には、殺せませんよ...。
苦しみたいんですか?」
何か聞こえる...。
懐かしい声...。
恐怖の声...。
ヤバイ...アイツ本気だ。
...行き止まり...。
多分誘導されたな...。
「やっと、諦めましたか...。
もういいですか?」
「いやいや、まだ、やり残した事があるんでね...。久しぶりだね香月...。
元気にしてたかい?」
「ええ...本当に久しぶりでしたね...。
会いたくて会いたくて会いたくて...。
3日も会わなかったのは、生まれて初めてじゃないでしょうか...。
日中から気配が途絶えたので、どうしたかと思いました。
学校にも、家にもいない。GPSも反応しない。
家の書置きを見て気絶しそうになりました...。
折角2人だけの世界だと思っていたのに...。
すぐ匂いを、辿って裏山に登りました」
...さすがは、香月。
追い掛けてくるかもと思ったけど...。
直ぐ来たのかもしれないな...。
「洞窟みたいな場所に出てしまったので、お兄様に会うのが、少し遅れてしまいました。
でもやっとの思いで見付けたら...。
別の女と...。
お兄様を殺して、アイツを殺して、関係者を殺して、私も死にます」
「いや、いや、いや!ダメだよ香月。
俺の大切な人だから」
『避けて下さい』
咄嗟の、テオの声に大袈裟に避ける。
クナイが顔すれすれに飛んでいく。
『マスター危なかったですね。
...あの方は、どなたですか?』
『わかってて聞いてるだろ...ヤンデレの妹だよ』
『...ヤンデレ?どんな世界のどんな言葉ですか?病んでる。なら笑えますね』
『いやいや、もう理解した上での100%の答えだよ...。テオ...召喚獣を呼んでくれ』
『目には、目を...。病んには、病んですね』
『うん...ホントにヤバイから本当にお願いね』
『冗談です...マイマスター♡』
...本当にこの可愛いテオちゃんのハイスペックは、可愛いくないね...色んな意味で...。
「香月...危ないだろ。刃物を投げない」
「お兄様のお言葉は、危険な刃物のより鋭利なお言葉だったので、反射的に投げてしまいました」
「いや、確実に当たるからね...」
俺、強くなってる筈だよな...。
危険度増してないか...。
...《分析》が出来ない。
こんな事は今までなかったよな...。
多分香月は、かなり強いだろうな...。
もしかしたら俺よ強いかもしれない。
「香月...俺好きな人が出来たんだ...」
「もう分かりました...。死んでいいですよ」
読んで頂いて有難うございます。




