第1話 僕の新しい環境
ついに、この日が来た。
試験当日。
僕の子供の頃からの夢は、世界を見る事。
全ての大陸に渡り、色んな人や物に触れて、旅をする事。
物心ついた時には、もう旅に憧れていたな。
その第1歩を今、歩もうとしてる。
これまでの道程は、本当に長かった。
特に、クルヤタナ大陸へと渡る船旅...。
本当に長かった。
あんなに辛いとは、思わなかったな。
もう2度と船には、乗りたくない。
そう思えるぐらいに、船酔いした。
思い出しただけでも...吐きそうになってきた...。
気持ち悪...。
30日の船旅...拷問かと思ったよ。
乗り物に、弱い...。
馬車でも気持ち悪くなる。
子供の時からいっつもこうだった。
良く師匠に、注意されたな...。
旅の前に緊張して眠れない......寝不足で酔いやすい......の繰り返し...。
酔うから緊張するのも考えられるけどね。
でも旅をしたい。
色んな物を見てみたい。
僕の好奇心は、乗り物酔いなんかには負けない...。
だから足を使って旅をするのが、僕のスタイルだ。
街道は基本的にモンスターは、出て来ない。
モンスターが嫌う魔術を街道に張り巡らせているかららしいけど...。
襲われる心配は、まったく無い事もないんだけど、第三大陸の王都ウキュトスの発明王ラーシュ様のお陰で安心して旅が出来る。
【魔除のクリスタル】C未満のモンスターを寄せ付けない魔法が込められたマジックアイテム
師匠に、貰った大切な贈り物。
これのおかげで楽に旅が出来ている。
港町から北に進んでもう15日くらいかな?
途中何度か街や村に宿泊けど、やっぱりダンジョンは素晴らしかった。
生まれ故郷にも二つのダンジョンがあるけど、ノルトの町並みと神秘の塔がまた冒険心をくすぐられた。
早く攻略者になりたい。
僕は、魔力が人より少ないから、太く短い人生をもっとうに生きている。
「世界を回るには、強くないと生きていけない」
憧れた夢を子供の頃にお婆ちゃんに話すと、突然のアドバイス。
大好きなお婆ちゃんに否定されたと思って凄く悔し泣きしたのを覚えている。
お婆ちゃんが知り合いの剣士に頼み込んで僕の指南役に、現役攻略者で名を馳せていた師匠に頼み込んでくれたのが、僕と師匠の出会いの始まりだった。
僅か5年だけど、師匠との生活は楽しかった。
山に篭っての生活。
精神修行という拷問。
今思い出すだけで...「良く生きてたなぁ」と思うのも度々だ。
師匠には、色んな事を教えて貰った。
剣術、魔術、生きる術、本当色んな事を教えて貰ったな...。
特に仲間が大切だと教えて貰った。
命を預け、守りたい仲間。
僕にも友達や仲間が...パーティを作る事が出来るだろうか...。
ノルトの街から北東に進んで5日程で、職訓練校のあるラプトの街についた。
本当にギリギリだった旅路。
試験は、なんとビックリの明後日だった。
それを聞いた時は、血の気が引いたけど、自分の幸運にも同時に感謝した。
こう言う事は、いつも何とかなるもんで...。
太く短い人生は、何が起こるか分からないから、ハッピーじゃないとねぇ。
神様は、僕に魔力の変わりに幸運をくれたらしい。
ギルド職訓練校への門を潜る。
大きな湖、その湖畔にラプトの街はある。
ラプトの街の奥、山の麓に訓練校があり、その敷地は広大だ。
どれぐらいの大きさが、あるのかな...。
全国から冒険者になる為に集まている人達の列。
想像していたより多いかもしれない。
卒業出来る人は、一年で10人。
詳しくは、知らないけど...多分それぐらいだったと思う。
300人は並んでるよね...。
やっと順番が来て受付で、名前を書く。
訓練校に入校する為のお金...。
金貨を10枚稼ぐ為に、死ぬ気でコツコツとバイトしたな...。
師匠は、出会った時から色々考えていたのかもしれない。
「はい、レット様?で宜しくでしょうか?
入校試験の為に必要な説明をさせて頂きます。
左に進んで頂いて建物の中に入って下さい。
そこで試験の説明がなされます。
こちらのカードをお持ち頂いて解除までお願いします」
「はい、わかりました」
体力、魔力、知力の試験があるんだったよな...。
試験は、今日1日で終わり、そして今日発表される。
もし不合格なら金貨は、返されるらしい。
どれぐらい受かるかは、わからないしどんなテストかもわからない。
毎年違うし、内容は極秘。漏らす事はタブーらしい。どんなテストをしているのか...。
まぁーやれるだけの事はやったんだから、あとはなる様になるかな...。
凄く立派な校内...今から向かう建物も、広大な敷地のごく一部でしかない。
試験を受ける為に向かう者は、周りをキョロキョロと見回している。
そんな僕もその中の1人だ。
ふと前を見ると、そんな人の流れの中で立ち止まり何かを眺めている人がいた。
...何を見てるのかな?
緊張を隠せない者達など目もくれずに、彼女は遠くに見える湖を眺めていた。
湖の水面に陽の光が反射して映し出す景色は壮観でとても美しい。
この景色に気付けない人は、本当に勿体ない...そう思えてしまった。
「凄く綺麗な景色ですね」
...しまった。
余りの美しい景色に無意識に声をかけてしまった...。
振り返る彼女は...。
息をする事を忘れてしまうぐらいに。
先ほどの景色を忘れてしまう程に。
湖に反射する光が、彼女のあまりの美しさに後光が射す錯覚を感じる。
とても可憐で美しかった。
そんな彼女は、透き通る様な声でニッコリと笑いながら。
「そうですね。これだけで此処に来た甲斐があったと思いました」
体に稲妻が走った。
得体の知れない感覚。
「カヅキ様~いきますよぉ~」
「すいません!直ぐ行きます」
遠くから彼女の名前だろうか?エルフの女性が手を振りながら呼んでいた。
カヅキさん...。
「それでは、また」
「...あ、はい...」
小走りで走る姿を、次は僕自身が立ち止まり眺めていた。




