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第35色 サラ=バーティ


 準備は、整った...。

 幸い港街といっても、モンスターが押し寄せ来る北東側、聖地グレンデールへ続く道以外は、険しい山に囲まれている。

 同時に何方向からも攻め入られる心配は、ほぼない。


 一体何が起こったのか...この状況は、理解に苦しむ...。

 突然変異のゴブリンキングは、今まで生きてきて何度か目にした事はある...。

 私がクリアした第3ダンジョンでは、普通に出現してくる。

 だが、こんな大群...聞いた事がない。

 普通に弱いゴブリンでも束になったら、ランクもあがるし、ナイトやメイジ...。

 ユキが、単独でナイトを一体倒したそうだが...。

 この第1大陸に現在、単独で何人倒せる奴がいるのか...。

 ダンジョン以外に出現する、モンスターは、普通は弱い...。

 だが災害級のモンスターは、例外...。

 もしかすると今回のキングは、祟神に完全に落ちているかもしれない。

 ランクD++で完全祟落ち...。

 私でも1人で対峙は、難しいかもしれない。


 アイツのは、一体何をしている...。

 白の勇者が、聞いて呆れる...。


 ご飯作るって...帰るって約束したのに...。


 大神官の話では、四天神直々に鍛えられているらしい...。

 不可能を可能にする、絶対的な本当の神々...。

 アイツなら生きて、直ぐに帰ってくるだろう...。

 ...そう信じている...。


 マーカラは、真祖への進化がまだ完全に終わってないので、殆ど宛には出来ない。

 正直言うと《深淵》のマーカラを、かなり宛にしていたが...ユキの事が死ぬ程心配なのか、情緒まで不安定だ...。

 大神官には、他言無用と言われている。

 四天神からの加護を得る事は、普通はありえない...。

 ましてや直接鍛えられるとか...。

 非常識にも程がある。


 だが、間違いなく一皮剥けるだろう...。

 奴には可能性がある...。

 期待してしまうな...。


 もうすぐ...戦いは、始まる...。

 エリーゼも今回は参加だ...クレスのアシストもあるが、ユキに対しての想いがプラスとなって、実践をこなす事で、一皮剥ける事を期待している。


 サクヤを司令塔として、6グループに分け、総勢98人対1500匹の戦いが始まる...。


 今回は緊急クエストとして、攻略者、冒険者は参加してもらう。

 攻略者と冒険者には大きな違いもあるが、ゴブリン程度なら関係ない。

 攻略者が、

 Sランク1名

 Dランク3名

 Eランク16名

 の計20名しか、いない。

 私が魔導書の一撃で数を圧倒的に減らし...。

 サクヤの指示の元、チームには動いて貰う。

 攻略者は、ギルド職員と現役を退いたモノも含まれる...だが訓練校の卒業した猛者だ...ホブゴブリンでも圧倒的出来るだろう。

 マーカラもアシストとしてアオイに付いて貰う。

 完璧な戦力ではないが、負ける訳にはいかない。


 もう視認出来る程寄ってきている。

 ...一掃出来ればよかったが、キングの力なのか、正規軍顔負けの布陣だ...。


 だが王が、死ねば指揮も糞もなかろう...。

 今回の作戦は、私の一撃で王を沈める。

 単純明快だが、有効で最も死亡率を下げる事が出来る...。

 数が数だ...練度の低い私達が真正面から討ち滅ぼすのは、難しいからな...。


 「...来れ...経典」


 そのまま水を纏ったかの様な綺麗な水色の魔導書が現れる。


 この魔導書の力は《金光明経(こんこうみょうきょう)》私が持つ水神の血の力を、最大限に引き出してくれる。

 第3ダンジョンをクリアして直ぐぐらいに付与されたモノ...。

 まだ私自身使いこなせては、いないが...。

 今回は使うしかない...。


 ...経を読む...。


 言葉ではない...何か...。

 口では、なく魔力で読む様な感覚。

 一文字一文字に魔力が灯り光り輝く。

 偉大な水神の力を一部だけ貸して貰う。


 魔導書は、まだ1ページしか開く事はできない...。

 だがその効果は、絶大...。


 《水神の矛》


 魔導書の中から自分の背丈の何倍もある、水で造り上げる造形が、美しい1本の槍が出来上がっていく。


 この一撃に私の全魔力を注ぐ...。


 槍が完成し、魔力の高まりが目で見えるぐらい濃密なモノになる。

 槍を、軽くだけ助走をつけて、全力で振りかぶりキングに向けて投げる。

 水神の矛の力は凄まじく、光の様な水の軌道を描き、圧縮された水の刃が敵を蹴散らし、屍に変えていく。

 500mほど、矢の様な鋭い勢いは衰えずに、地面に刺さり、火山の水蒸気爆発の様に、ゴブリン達を吹き飛ばした。


 戦果は...。


 殺せたか...。


 いや...ナイト2体が体を張ってキングを守っていた...。

 ...クソッ...やられた...。


 魔力が枯渇しかけている...。

 魔力回復薬を急いで飲むが、魔力が回復しても、1日1度の大技...ダウンする時間も少しある。

 その間は、全くと言っていい程体を動かす事は難しい。


 「サクヤすまない...後は頼んだ...」


 「...わかったよ。

 あとは、任せて...。私が...皆を守るから」




 ...壮絶な魔導攻撃...。

 流石サラ姉は、凄い...。

 今の攻撃で布陣は縦に割れている...。

 それでも、倒せたのは、500と少しぐらいかな?

 敵は、大きな攻撃で混乱を起こし、連携が乱れている。

 今から魔法による一斉掃射後にチームに別れアタック開始だ...。


 ホブゴブリンやナイトやメイジがいる所に指示を出し攻撃を集中させてる。

 魔法が、得意なモノは、ここで全魔力を使っても問題無いと伝えている。

 私も余り得意ではないが、ファイアーボールを何度も放ち、敵を倒す。

 ゴブリンメイジ達は、あまり目立った攻撃はしてこないので、驚異には感じなかった。


 ...魔力回復薬を一気に飲み干す...。

 ユキは、どうしているのかな...。

 まだまだ帰ってこないつもりなのかな?

 手早く帰って来ないと全員倒しちゃうぞ...。


 左手は山、右手は森。

 森を燃やすことも考えてはいたが、聖地グレンデールは、森に囲まれているし、街の生活資源だから...。

 余り無駄にはしたくない...。


 よし...。

 半数ぐらいは、削れたかな?

 まだまだ高ランクモンスターは、残っているから、そこに...。


『第1班は、右手から回り込む様に、手負いのナイト攻撃。メイジも近くにいるから、クレスは先制して、メイジを倒して』


『了解』


 小型の通信魔道具を全員配布されている。

 あまり離れると通信出来ない事と親機と子機しか連絡が取れないので、皆の情報は私が纏めて報告しないといけない。


 森側に逃げ込まれると対処出来なくなる、数は圧倒的に向こうが有利...。

 クレス、エリーゼが居る1班を向かわせ、敵の動揺を伺う。


 次は『2班は、正面にいるナイトに切り込んで、1班に意識が集中している今がチャンスよ。

 アオイは、ナイトを攻撃、マーカラさんは闇魔法でホブゴブリン達を錯乱させて、他は纏まって行動出来ないゴブリンを対処させて』


『了解にゃ』


 ...あとは、ギルド職員のDランク3名は、前衛2

 名の魔法使い1名だった。

 3班4班5班に割り振って、出来る限り纏まって戦って貰う。防御にも回せる布陣だ。

 第5班は、魔法使いのみで固めている。

 魔力回復は、まだ完全では、ないだろうけど、強い魔力反応や高ランクの敵が動けば直ぐに指示を出した。


 Eランクの攻略者で編成した、最後の6班は、守りに徹底して貰っている。

 今は、まだ大丈夫だけど、砦まで攻められると混戦は間逃れない。

 砦自体は、チームには含まれていない、攻略者や冒険者ではない、街の警備兵や住民などに守って貰っている。

 数で押されて、対処出来なくなったら、撤退して、砦に籠り防衛戦となる...。


 その指示も全て私に任されていた。


 早く...サラ姉が戻れば、もっと戦いを組みやすくなる。


 サラ姉が、回復するまで30分程...。

 残り15分ぐらいだろうか?

 私達で、守りきってみせる...。


 状況的には、かなり押している。

 メイジは、混乱なのか味方諸共攻撃してるし、ナイトの強さも集団で当たれば対処出来る、数の理も、連携が取れていなければ大した事もない。


 ...キングがまったく動きがない。


 こっちの動きを見ているのかな?


 先にこっちが仕掛けてやる...。


 「1班2班は回り込むように、そのまま奥の...」


 ヒュ


 ...?風切り音がした...。


 ヒュ


 右肩に痛みが走る...。


 ...しまった...。

 ゴブリンアーチャー...。

 森の木々の上に数体だが、ゴブリンアーチャーが居る...。

 ホブゴブリンとナイトの中間当たりの強さだが...気配を全く感じないなんて...油断した...。

 何かの恩恵...いや魔導かな...。


 狙われている。

 何度も矢を放たれるが、槍で払うが利き手が上手く使えないので隙が出来る...。


 ダメだ...当たる...。


 ...。


 咄嗟に目を瞑ってしまった...。

 でも痛みはこない...。


 薄らと目を開けると、其処には...。


 サラ姉が居た。


 「すまない...。

 待たせたな...ウインドアロー...」


 サラ姉は、右手に矢を掴んだまま、私を狙っていた、ゴブリンアーチャー達を攻撃して、落としていく。

 ...本当に、危なかった...。


 「サクヤ大丈夫か?」


 助けてくれたサラ姉の顔が、まだ青い気がする。

 まだ本調子じゃ...。


 「うん、何とか...。

 有難う。サラは、大丈夫?」


 「...何とかな...。

 魔力の回復が、かなり遅いな...。

 魔導書の反動か...本調子とはいかないな...

 でも、休んではいられないからな...」


 ヴオオォォォォォォォ!!!


 突然...ゴブリンキングの叫び声の様な、雄叫びが聞こえた。


ご愛読頂いて誠に有難うございます。

ブックマークや評価も頂き本当に嬉しいです。


宜しくお願いします。

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