第一話 ゲレンゼ
「彼らは───」
「ふーむ。なら───」
不審者扱いされた俺(ゼンと母さんも含む)の誤解を解くために、アーノさんが色々と説明をしてくれた。
門番からの質問にも即座に答え、その信憑性を確かなものにさせてみせた。
巧妙というか、神秘的というか、驚くべき会話術って奴で見事門番を納得させて見せたのだ。
感動のあまり俺は拍手をしてしまったね。いや~、素晴らしかった。
「何が素晴らしかったよ。アンタのせいで私たちその辺りで捨てられるか、投獄されかけたのよ」
「俺のせいじゃないだろ、どうせ俺が何しようがしまいが一緒だ。まあ、結局疑われてアーノさんに助けてもらってただろうよ」
俺と目が合った時点で門番の中で俺たちの処遇が決まっているような気さえした。
あの目は完全に獲物を見る目だった。俺たちの事をゴミだと思ってたね。
「その割にあの人たち最後に謝ってくれたけどね」
「ハハ、そうだったな」
「それにお菓子もくれたわ」
「…………ハハ」
と、誤解が解けた後門番の二人は丁寧に俺たちの謝罪をして、なんと菓子パンを恵んでくれた。
安いモノでは決してないのに。良い人たちだった。
それで、無事城門を突破した俺たちはニーカさんたちの騎士団の本部に向かっている。
ここで、あれ?まだもう一個城壁あるんじゃない?と思った勘の良い読者よ。冴えてるね。
俺がこの前ニーカさんに言ったように。この騎士団は貴族から嫌われているので第二と第一の間、正式な名称は『ゲレンゼ』に飛ばされている。
表向きは国民からの信頼が厚い君たちに都市の警護を任せたい、などと言っているが。
実際のところは王都周辺にいてほしくないだけだろうし、王都の警護を任せている騎士団を王都から外の仕事をやらせるというのは理解に苦しむので、貴族からの嫌がらせだろう。
ただし、奴らの言うとおり国民からの信頼は厚いので毎年入団希望者は一番いるらしい。身近な分、憧れやすいのだろう。まあ、金銭的な問題で入団させてやれないって嘆いていた記憶があるけど。
「それにしてもこの菓子パン美味しいわね。クリークにはこんなものなかったけど、王都にはこんなに美味しい物がたくさんあるの?」
ゼンは、菓子パンを嬉しそうに頬張りながら俺にそう質問してくる。
クリークには、娯楽の方を優先した料理は少なかったので珍しいのだろう。
「そうだな、王都にはたくさんの料理の原料が集まるからたくさんあるんじゃないか?それに、頼めば母さんが作ってくれるぞ。ある程度の甘味は作れる」
「え!?ホント!?」
「ええ!私どんな注文にも応えられるように、日々鍛錬してますから!!!」
母さんは、元気よく胸を張って嬉しそうにそう言い放った。
ゼンから、尊敬の念を感じて嬉しいようだった。
ゼンは食事の事になるとプライドやらなんやらを殴り捨てて頭を下げるからな。
短所というか、今すぐに治してほしいところだ。弱点なんて言葉じゃ表現しきれないぐらい、そこに問題がある。
目を輝かせながら母さんを質問攻めにするゼンを尻目に、俺は前に座って馬の操縦をしてもらっているニーカさんに視線を向ける。
これから俺たちがお世話になる騎士団の団長。
王国の序列第二位の騎士で、リヴァイヴァル騎士団の団長だ。
交友関係などはあまり知らないが、確か第二王女と仲が良かった気がする。
それに、妹がいるはずだ。他にも……確か、小さいときに山で剣術を教えて貰ったと言っていた。
もちろん、全て前世のニーカさんから聞いた話だが違いはないだろう。
この世界でも、違いなくニーカさんは経験しているのだろう。
「ニーカさん」
「ん?何だ?」
こちらをチラリとも見ないが、話し方から威厳を感じさせる。
あの目で睨まれるのとはまた違った圧を感じる。
「今回の件でおそらく貴族からの圧力がさらに高まると思われます。なので、王城の方に報告するときは俺を連れて行ってください」
王城にいる宮廷貴族の性根の悪さは俺も身に染みて感じている。
そして、奴らの弱みもこの体───というよりも、魂に染みついているのであまりに横暴な行動に出たときに無理矢理押さえ込むことができる。
ニーカさんだけでは不安すぎる。
ニーカさんはそれなりにできる方ではあるが、どんな相手にでも饒舌にできるかと言うとできない方に分類されるのだ。平民出身である故の弊害だろうか、貴族に前にいるとどうしても身がすくむという欠点を俺は知っている。
「そうだな……。まだ君たちの登録が済んでないから、もし明日も呼ばれたら君を連れて行くよ。副団長には騎士団の管理を任せなければいけないからな」
「分かりました。それと……」
「ん?なんだ?」
「絶対に漏らさないでくださいよ。俺たちのこと……今まで色々考えてみて思いましたが、俺たちの事がばれた場合、高確率で貴族がアナタを潰しに来ます。ここまで亀裂が入っているのは想像以上でしたが、されに騎士団全体の戦闘力まで落ちている今、私たちは七面鳥にしか見えませんからね」
ニーカさんが、眉をひそめる。
顔が見えていなくても、気配の変化で容易に想像できた。
もちろん、俺たちが入っていることでそれなりに戦力は補強できているが、貴族には伝わらない。
「分かっている───」
「団長!見えましたよ!」
しれっと母さんを別の人の馬に乗せて前方を進んでいたガフィールから、本部が見えたという知らせが聞こえる。
それによって、この会話も自然と消滅してしまった。
ニーカさんが、判断を間違えないことを祈って、今日は本部でおとなしくしようと。
俺は心の中密かに思うのだった。
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それではまた次のお話で会いましょう。




