プロローグ
パカラパカラと馬に揺られながら、俺たちは王都を視界に収める。
この都市は、この国のはじまりの都市だ。
と言うこともあり、しっかりと城壁に囲まれているのだが人が次々と集まりさらに城壁を建てるという再開発のようなものが行われた過去がある。
しかし、それでも人は集まり続け、今では第二の城壁も外には街が広がっている。
城壁の外と言う事もあり、王都周辺に農地を持つ良いところの農家がいるが、だから治安が言い訳でもなく、盗賊もいるし、スラムと化している部分もある。
なので、ちょっとした商人でも家を建てられる程度にはそこら一体の地価は下がっているのが王国の悩みだ。
じゃあ、城壁の中はと言うと第二・第一の間は商人家や収入の少ない伯爵家辺りが家を建ててる。
城壁の中と言う事もあり治安が良いので、順風満帆な暮らしを送りたいならここが丁度良いだろう。
第一の城壁の中は、王城や政治の重要建造物があり、伯爵から上の貴族が多く家を持っている。持っているというのは、貴族は宮廷貴族以外、基本的に家にはいないからである。
領地を持っている貴族はその土地の管理をする必要があるので王都に家だけ構えている。
そして、王城があると言う事もあり昼夜問わず騎士団が警邏しており犯罪はほとんどないと言っても過言ではない。
それに、王の近衛部隊という歴戦の猛者たちもいるので戦闘力なら王都が一番持っているだろう。
「ちんたら長い説明ね。もっとまとめられないの?」
と、ゼンが俺の丁寧な質問にアーノさんの馬上から文句を言ってくる。
これでも足りないと思う、人口や王族について。四大侯爵もあるので、色々と説明が必要なのだ。
「そんなもの必要なときにすれば良いでしょ。それか時間稼ぎの時にでもして」
ゼンは、俺の親切な心をバッサリと斬り伏せてくる。
さすが自己中の塊だな。他人のことは考えていない。
「こういった説明は大切なんだよ。お前が面倒くさくてもな」
「ふーん。わらひはそうはおもへないへろね」
食いながらしゃべるな。
何を言ってるか、分からなくなるだろ。
「二人とも、盛り上がっているところ悪いが壁を越えるからあまり目立たないように」
ニーカさんが馬を進めながら、そう俺たちに忠告してくれた。
王都に入るには許可証を作らなければいけないのだが、俺たちはそれをニーカさんの騎士団の権力で突破するので無害を演じなくてはいけない。
不審な人物はいくら騎士の要請でも入れることはできない。
なので、子供を演じて突破しようという魂胆だ。
「ゼン分かったな。変に怪しまれてもあれだからその飯も隠しておけ」
「分かったわ」
「…………」
「(もふもふ)」
「分かっていながら新たに食い物を口の中に入れるんじゃねぇ!!!」
「アハハ、君たちは本当に面白いね。聞いていて飽きないよ」
アーノさんが、上品に笑っている。
端から見たら面白いかもしれないが、俺からしから迷惑極まりない。
馬に乗っていなかったらもう数発は殴っている。
「ゼンちゃん、あんまり皆さんに迷惑かけちゃダメよ」
未だに口のパンを入れているゼンを母さんが優しく叱る。
うーん。
叱ってくれるのは嬉しいが、優し過ぎるな。そんなのじゃゼンは絶対に言う事を聞かない。
石でも投げつけるぐらいしないと、こちらを見もしないだろう。
「はあ、どうしてこうも緩くなってしまうのか。ゼンは言うこと聞かないし、アーノさんは笑ってるし、ガフィールはガクガクだし」
ちなみにだが、ガフィールはここまでずっと口をガクガクとさせて一度も言葉を発しない。
後ろにいる母さんの気配のせいで、ずっと恐怖におびえているのだ。可哀想に。
まあ、だから変わってあげようとは思わないがな。
それに、ニーカさんも民間人に手を上げようとした罰だ、と言って騎士団の本部に着くまで変更はなしという指示が出たので誰も変わらないのだ。
そのときのガフィールの子猫のように悲しみを露わにした顔は傑作だった。
二度と忘れることはないだろう。
「ほら、もう城門が見えたぞ。ホントにおしゃべりはやめるんだ」
ニーカさんから少し厳しめの注意を受けて、俺たちはやっと静かになった。
さすがに城門が視界に入ったと言う事で、切り替える。
弛みきっていた雰囲気が、一瞬にして糸のように張られる。
城門には人一人いなかった。
騎士団の帰還と言う事で道を空けているのだろうと俺は予想する。事実は分からないが、きっとそんなところだろう。
城門に近づいていくと、門番の兵士がこちらに走ってくる。
「リヴァイヴァル騎士団団長エリス・ニーカだ。こちらに王からの指示で外に出ていた書類がある」
「はい、こちらですね……」
と、ニーカさんが渡した書類を一人の門番が確認する。
その間にもう一人の門番が騎士団に不審人物がいないか確認する。
そして、私服姿で馬に乗っている俺と目が合う。
あっ。
俺は、どうしようかと思案する。
俺が説明する?いや、より不審になるだけだろう。ニーカさんに任せる方がいいのだろうけども、俺自身で解決できるのならその方がいいはずだ。
と、俺は余計な事を考える。
実にいらない、お節介なことを考える。
そんな事を考えて、俺は最終的に───
「…………(ニコッ)」
子供の純粋無垢な笑顔を見せる。
この笑顔を見たら、どんな大人だってイチコロだろう。俺の事を許してしまうはずだ。
「不審者だ!貴様!何者だ!」
あれ~?????
「はー、ホントバカ」
と言うことで、俺たちは不審者にされてしまった。
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それではまた次のお話で会いましょう。




