エピローグ
俺の家に前に、騎士団の人たちが来ている。
来ていると言っても全員ではなく、ガフィールさんとニーカさん、アーノさんだ。
まあ、騎士団の上層部は全員いるな。
俺の迎えぐらい一人でも良かったのだが、わざわざ大勢できてくれたようだ。
装備も鎧を着ていて、太陽の光が反射して眩しい。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。今日出発だ。準備はできているな」
「はい。ゼンを呼んできますね」
俺は、そう言って家の中へと戻る。
荷物はカタナ一本だ。騎士団は着類などは支給されるので持って行く必要はない。絶対にこの体から手放す事のできないカタナだけ持って行けば良いだろう。
「ほら、ゼン。時間だ」
「もう?もう少しこのベッドを堪能していたかったわ。そうだ、少し出発を遅らせてもらいましょう!」
「具体的にどれほどですか?」
「二日ぐらい!」
「アホか」
俺は、頭のおかしな事を言い出したゼンをベッドから引きずり下ろして、一階に降りる。
ゼンの荷物はないので、その身一つあれば後はいらない。ちなみに、コイツのポケットに少し(ゼン基準である)の食料が入っている。お腹が空いたときにつまむらしい。
ゼンを無理矢理一階まで連れてきて、俺は玄関から外に出る。
部屋の中にいたゼンは、眩しそうに目を細める。
こんな太陽が燦々としている日に鎧を着て、彼らは暑くないのだろうか。
騎士団員としてどんな時も敵を警戒するべきなのかもしれないが、暑いのは普通に嫌だな。
「じゃあ、アイン君は私のに。ゼンくん副団長の馬に乗ってくれ」
「すみません、少し待ってもらえますか」
「ん?どうした?」
「いえ、すぐに……あっ!来ました」
道の向こうから、一人の女性が歩いてくる。
華美な装飾のある服を着ているわけでも、重厚な鎧や武器を持っているわけではない。
普通の一般人でしかない、女性がこちらに向けて走ってきていた。
彼女は、俺たちの所まで来て大きく息を吸う。
「遅れました!アインの母親、フィネル・イーノスです!」
そう言った。
ちなみに、発言の通り俺の母親である。嘘ではない。
「本当に来たのね、この人」
「まあ、それが騎士団に行くことを許す条件だったし……」
「アイン君……」
そう小さな声でつぶやきながらニーカさんは馬から下りる。
もう声からでも、何を思っているか分かる。
どう考えても、予定にない行動だし。俺の独断で決めてしまったことだ。
しかし、俺が騎士団に行くにはこれしかないのだ。
「フィネルさん。申し訳ありませんが、アナタのような民間人を連れて行くわけにはいきません。どうかお引き取り願えるとうれしいです」
丁重にニーカさんは母さんに対応する。
大人の対応だな。だが……。
「嫌です!アインが危険な所に行くのなら、私もついて行きます!メ──母親として!」
親馬鹿とでも言うのだろうか、母さんはからここまで引き出せたのだ、許してほしい。
最初は、絶対に行かせる気になかったのだ。ここまで引き出せれば上々だと俺は諦めた。
「おいおい、俺たちの騎士団は母親だから入れるほど甘くないんだよ」
「すると、空気になっていたガフィールが馬から下りてきた」
ついでに言えば、どこかの冒険者ギルドにいそうな噛ませ犬だ。オチが見えている。
「おい、そこ!口に出てくるぞ!しかも呼び捨てだし……」
「やっべ」
思っていたことが口に出てしまった
まあ、事実だし仕方ないよね。
「チッ、まあいいや。で、フィネルさん。俺はあの二人のガキを多方面から見て良いと思って連れていくの、アンタが来て俺たちに何ができるわけ?掃除とか家事とかなら必要としてないんだわ。騎士団には強さがなければ、まず入る資格すら存在しない」
ガフィールは強気に俺に母さんに打って出る。
現実を突きつけて、さっさと追い返したのだろう。あと、ニーカさんの役に立ちたいという邪で、純粋な考えのもの動いている。
「おい、ガフィールそんな口調は───」
「団長は優し過ぎるんですよ。俺に任せてください」
ゆっくりと母さんに近づき─────
「ハッ!」
ガフィールは母さんを殴った。
いや、殴ってはいないな。殴る寸前、顔の少し手前で拳を止める。
ニーカさんは顔を真っ青に、アーノさんは頭に手を添えて苦しそうな顔をしている。そうだろうな、部下が一般人に対して脅しをかけたようなものだ。一歩間違えたら反感を買いかねない。貴族と一般人から嫌われたらもうこの騎士団は終わりだ。
俺はその光景に対して特に反応を示さない。ガフィールが殴りはしない事は予測できたし───
「フィネルさんさ、分かった?この拳が見えもしないのに、簡単について行くなんて───」
「うーん。及第点ね、その拳だけなら」
「なっ!なんでお前俺の剣を……!」
アイツは、弱くないからな。
母さんは、ガフィールの腰にあった剣を目の前でちらつかせる。
ひらひらと見せつけるように。
「これは……すごいな」
「えぇ……やっば」
ニーカさんとゼンは驚愕の言葉を溢す。
ゼンに関しては、噛んでいた干し肉をポロリと溢すほど衝撃だったらしい。
風の少しも吹かない、誰も認知できない速度で母さんはガフィールから剣を奪い取った。
砂埃も立たないし、剣を抜いたときの溢れてしまう音すら響かない。
この強者が集まっている状況で圧倒的なまでの存在感を示して見せた。
殺気も、やる気も感じさせない。
まるで、子供と遊ぶかのように母さんはガフィールを制した。
一瞬にして、瞬間にして、母性によって。いや、母性は適当だ真に受けないでくれ。
「フィネルさん。どうやら問題ないようですね。アナタを騎士団に歓迎しますよ。入団手続きなどは私たちにお任せください」
「はい、よろしくお願いします」
と言うことで、俺たちはニーカさんたちの馬に乗って街に戻った。というかニーカさんもつれて行かなくては話が終わらないことを察したのだろう。
母さんはガフィールの馬に乗ったのだが、乗られた本人はガクガクブルブルと震えている。まあ、さっきしっかりと負けた相手(負けかけたが正しい)が後ろに乗っているんだ。怖いだろうな。恐ろしいだろう。だが、我慢しろ。
街に戻って、街の残っていた他の部隊とともに俺たちは街を後にする。
短い間だったが、色々と世話になった街に思い入れはあるがこれも仲間のためだ。時に離れることも必要だろう。
騎士団がいなくなるということで、多くの人が見物に来ていた。
この中に騎士団の感謝している人がどれだけいて、どれだけの人が騎士団の事を思ってないのか俺には分からない。だが、一人でも感謝している人がいるのなら騎士団にとってそれは世界を救ったぐらい良いことなのだろう。
どこかにナールがいるのかもしてない。
どこかに別れの会話をカットされたダルクがいるかもしれない(可哀想ね、ゼンは言っていた)。
どこかに誰かがいて、全ての人が何か思っている。誰かに対して、何か思っている。
たくさん人が歓声を上げて見送ってくれるわけでなない。化け物の件で家が破壊された人もいる。
憎しみを浴びて、残酷さを浴びて、感謝をもらい俺たちは街を後にした。
そう割り切って、俺は馬に揺らされながらゆっくりと道を進んでいく。
今までの事を忘れ去ったように鼻歌を歌いながら、暢気に道を進む。太陽は天高く、いびつに微笑む。
王国の中心へと、どこまでも広がる王国の全てが詰まったとも言える場所へ。
いざ、王都へ─────
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それではまた次のお話で会いましょう。




