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第五話 新たな秘密

 あぜ道をゆっくりと歩きながら、俺たちはナールの家へと向かう。

 時間の指定は無かったので、こちらの自由で良いだろう。こいつと話したい事もあるしな。


[話したい事って?]


 どうやら心を読んでいたようだ。

 全く便利な能力だな。


「お前、今後はどうするつもりだ?」


[え、今後?]


 こいつのこれからについてだ。

 俺的には、こいつを自然返すつもりはない。


[なんでよ!返しなさいよ!]


 残念ながら、俺はこいつを森に返す日はこないので諦めてほしい。

 誠に残念ながら、そんな日は来ない。絶対に、来ない。


 大事なことなので二回言わせてもらった。


「で、今後の予定なんだが」


[えっ!このまま話が進むの!?]


「そうだ。いい加減諦めろ」


 どうせこいつ森だと、生活できないだろう。

 虫が嫌いな奴が何を言ってるんだ。


[はあ?これでも私今までずっと生活してきたんですけど。それに嫌いなのは蜘蛛だけですぅ!!!]


 しょうがない。

 俺の側に着いたらどんな良い事があるか、教えてやろうじゃないか。


[へぇ、どんな良い事があるよ]


「おいしい野菜が食べ─────」


[しょうがないわね、今後について話し合いましょうか]


 チョロいな、おい。俺、最後まで言えてないし。

 もう少し葛藤を見せてほしかったんだが。案外、あっけなかった。


 ナールの家までそこまで距離はないのだが、そんなもんいくらでも無限に伸ばせ─────


「ゴホンッ!」


 急にゼンが咳き込んだ。

 うるさいぞコイツ。そこの用水路にぶち込んでやろうか。


「危ない発言を止めたのに、私の扱い酷くない!?」


「知らん!俺にそんな事は関係がない。しかし、少し時間を使い過ぎた。家に帰ったら詳しく話し合おう」


[そこまで話してない気がするけど…………分かったわ」


 沈黙が長かった気がしたが、まあいいだろう。

 ナールの家が、もう見えてきている。


「それとできるだけ家では、話しかけないでくれ」


[それなら大丈夫よ。この声は、あなたにしか──]


「うるさくて、ナールの話に集中できない」


 こいつの話を遮って、俺は言い切る。

 頭の中にガンガンガンガン、正気を保っていられる俺のすごさがコイツに伝わっているだろうか。


[あっそう!うるさくて悪かったわね!]


 蝶は、そう言って黙ってしまう。

 少しからかい過ぎただろうか?まあ、大丈夫か。


 とりあえず、第一段階はこれで問題ないだろう。

 全て違う。誰も違わない。俺以外何も違わない。


 あとは、俺が選択を間違えなければ─────


「アイン!ちゃんと蝶は持ってきてくれたか!」


 おっと、ナールは家の前にいたようだ。

 深く考えすぎていたか。俺の前でナールが顔をのぞき込んできていた。


「ちゃんと持ってきたぞ。しかし、待たせてしまったか。悪いな」


「違うぞ。アインが来るような気がしたから、ついさっき出てきた」


 だから、蝶と話していた最中は見えなかったのか。

 ナールの気配察知能力は一級品だな。


 ナールの気配察知能力と言うのは呼んで字の如くなのだが、その能力が以上の程に高い。

 前世で一番凄かったのは、目視で確認できない距離の位置にいる鳥を見つけた事だ。その後に行ってみたら、実際にそこの近くの川に鳥が一匹いた。


 前回は、なんとなくで流したがこれで確実だろう。


 そして、間違いなく強い能力だ。


「とりあえず、家で見ようぜ。さすがにここで見せるのは誰かに見られるかもしれないし」


「そうだな、分かった!じゃあ、部屋に行くぞ!」


 ナールは、そう言って家に戻っていく。

 客を置いていくのは、どうなのだろうか。


 ナールの家の間取りは知っているので問題ないのだが。

 そのうちナールには、常識的なものを教える必要がありそうだ。


 ナールの部屋は、俺の部屋より質素な感じだった。

 まあ、俺の家は父さんの稼ぎが良かったから、お金に余裕があったからな。今は、全くないけど。


「早く見せてくれよ。どんな見た目なんだ」


 ナールは蝶に興味津々で、今にも俺から鳥かごを奪い取りそうだ。

 それほどのものじゃないと思うのだが。


「落ち着けって。ほら、こんな感じだ」


 鳥かごを机に置き、ナールに良く見せる。


「えっ!すげえ!すげえ!」


 ナールは、目を輝かせながら蝶を観察する。

 とても楽しそうで、心なしか蝶の方も自分の羽を見せつけているよう見える。


 褒められて、調子に乗っているようだ。

 全く単純な奴め。


「すごいな!こんな蝶がいるなんて」


「そうだな」


 残念だが、俺は虫にそこまで興味が無いのであそこまで興奮できない。


「この蝶なんだが、明日には森の返そうと思うんだ」


[えっ!返してくれるの!]


 返さねえよ。お前を隠しやすくするための嘘だ。

 心を読めるくせに使えない奴だ。


[チッ!!!]


 せめて聞こえないように、舌打ちしてほしいな。


「そうなのか。まあ、しょうがないか」


 悲しそうだが、納得はしてくれようだ。

 虫好きなだけあって、その辺の優しさはあるのだろう。


「だから見れるのは今日と明日だけだが、明日森に返すとき一緒に来るか?」


 それだけ虫が好きならギリギリまで一緒にいたいだろう。

 俺は、そんな気持ちでナールに提案する。


「いや、明日は用があるんだ。だから行けない」


 そうなのか。じゃあ、今日たくさん見せてあげよう。

 蝶の方も機嫌が良さそうだからな。


「分かったよ。明日は、一人で行ってくるよ」


 なら、明日行動に移せた方が良いかもしれない。

 今日は昼に家に戻るし、そこから急いで作戦会議だな。


「よし!蝶も見れたし遊ぼうぜ!」


「おう!」


 蝶がみれて、テンションが上がっているようだ。

 俺もナールがうれしそうな顔を見れて、なんだか気分が良くなっている。


 今日は、昼まででたくさん遊ぼうじゃないか!

 え?蝶?放置で良いだろ


[え、ちょっと!置いてかないでよーーーー!!!!]



              ☆☆☆



 その後俺たちは、外で走り回り昼まで過ごした。

 部屋の中に蝶を置いていたが、脱走はしなかったようだ。若干鳥かごの傷が増えていたような気がしたが、不問としておこう。


「また今度」


「おう!またそのうち会おうぜ」


 そう言って、俺は帰路につく。

 今日は、日が沈んでいる訳ではないのでゆっくりでも許されるだろう。


 まだまだこいつと話したい事もあるしな。

 コイツと話をするには圧倒的なまでに時間が足りない、


[私は、まったくな───あ、そういえば]


 なんだ、こいつから話があるなんて。


[あんたって歳の割に口調が若めよね]


 そうだろうか?

 そこまで意識はしてな……ん?


 え?歳の割に口調が若め?

 年の割に口調が若くないとかじゃなくてか?おかしくないか?


[え?あれ、私さっきそんな事言った?あ、アハハハハハ─────]


「おい。お前なんかまだ隠しているだろ。例えば……記憶を読むとか」


 俺は、鳥かごを目の前まで持ってくる。

 蝶は必死に目をそらしていて、顔を会わせようとしない。

 触覚の先の宝石が、青黒くなっている。


「おい、なんか言えよ。俺がどうだって?」


「な、なんでもな……で……」


 後半なにを言っているのか分からないが、何かある事は確かだろう。


「しょうがない。今日の夕食はなしだな」


[なッ!!卑怯よ!!]


 卑怯は、俺からしたら褒め言葉だな。

 それほどに相手に効果的な策が講じれたのだから。名誉だ、ありがたい。


「で、俺に言う気になったのか」


[………………分かったわよ]


 こいつチョロいし、秘密がポンポン出てくるし大丈夫か?

 こんなんでよく、こんなに長年あそこで暮らしてきたよな。


「ほら、私昨日の夜に心が読めるって言ったわよね」


 「そうだな」と相槌を打つと、触覚の宝石が煌びやかな透き通った青へと変わっていく。


 [私そのほかにもう一個能力があって、そっちは代価がいるんだけど、言っても分からないと思うから省くわね]


 意味の分からない事を言われても困るからな。

 その辺は、省いても良いか。いつか聞くけどな。


[私ね、ある一定の対価を払う事で───人の記憶が読めるのよ]


「そうなのか」


[あら、驚いてくれないの?]


 驚くというか、なんとなく分かっていたというか。

 そんな能力なんだろうなと、見当は付いていた。


 一回似たような事があれば、人間慣れるものだ。

 慣れって怖いね。一度慣れると犯罪すら分からなくなるのだからな───


[そう。ナールと違って、面白くないわね]


 面白くなくて悪かった。

 俺は別に面白くするためにいるわけじゃないんだが。


「それに、お前が普通じゃない事ぐらい分かってたし。まあ、心の準備ができていたんだよ」


 そうなの、と彼女は心底つまらなさそうにそう言った。


[でも、その人が心の奥深くに押し込んだ記憶は、見れないのよね。例えば……あんたの生ま─────]


「ほら、家に着いたぞ。お前の今後の方が大事だ。話を変えるぞ」


[え?そ、そうね。分かったわ」


 いくらお前でもそれ以上の詮索はあまり気持ちの良いものではない。

 男は、秘密が多い方が良いからな。


[それ女じゃない?」


 そうだっただろうか?

 別にどっちでも問題は無いだろう。


 そうして俺は、もう準備されていた昼食を取り、部屋に戻る。

 蝶が、物欲しそうにこちらを見えてたが、俺も腹が減ったのでお前の分はない。


「さあ、言葉の殴り合い(話し合い)をしよう」


[ええ、そうね。罵詈雑言の浴びせ合い(話し合い)をしましょうか]


 この蝶に関する長い長い話し合いは、まだ始まったばっかりだ。


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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