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第三十八話 邪魔者

 無事? 大作に喧嘩を売ってしまった俺達は、部屋を後にする。

 体が痛いため安静にしておくための場所だったが、その体の痛みがなくなったのなら部屋に残る理由はないだろう。


 それに、あの化け物を倒せるのは俺たちしかいない。

 魔神具というこの世の理を破壊するような武器じゃないと、あれはきっと倒せない。可及的速やかに倒すにはこれ位で良いだろう。


 部屋の外に出ると、すぐにニーカさんたちが作戦会議をしていた。

 してはいたが、遠くから見ても分かるぐらい、あまり順調に進んでいないようだった。アーノさんとガフィールがけんかをしている。


 ガフィールさんが感情で殴りかかり、それをアーノさんが理性で踏み潰しているようなものだ。

 表現として会っているかは分からないが、そんな感じに見える。


「何あのバカにみたいな喧嘩」


「そう言うことを口に出すな。反感を買うだろう」


「良いわね、銀貨三枚ぐらいで売ろうかしら」


 そう言うことじゃねえよ!

 少しうまいような、そんなことない返しをしてきたが、俺はそんな話を広げるつもりはない。


 大変そうだなあ、と思いながら俺はその喧嘩へと近づいて行く。

 別に彼らに接触せずに、勝手に化け物に突っ込んで倒してもいいのだが、その辺は俺の優しさだ。


「優しさって、教育が行き届いてないわね。この国」


 俺への当てつけのように、余計な事をぼそっと言うゼン。

 これにも触れたら、間違いなく面倒くさい方向に話が広がるので絶対に返事はしない。俺は、固く決意した。


「二人とも喧嘩はだめだぞ」


 俺は、気さくにそんな言葉から会話を始める。

 あそこまで重傷な様子を見せているのだ、あまり変に慌てて会話に入るよりも何事もなかったかのように入った方がいいだろう。そう───思っていた。


「……え?コイツ何?団長の代理って人間を超越しているのか?おい、副団長」


「いや、私にもさすがにこれは……。もしやその化け物とやらの分身体ではなのですか?彼らの報告なら、それぐらいはできそうですよ」


 なんか俺、敵にされそう?

 このまま黙って会話を聞いていたら俺、アーノさんかガフィールさん辺りに斬り殺されそうだ。


 焦った俺は必死説明を開始する。


「えっと、ですね。さっきまで体調が悪かったんですけど……その……元気になりまして。ほら……」


 さすがに俺もこれで説明責任を果たせたとは思わない。

 なんなら誤解を生んでいるのではないだろうか。疑いの目がさらに強くなった気がする。


 救いとしてもゼンがこちら側だと言うことだろう。

 コイツならあちら側にいても俺の存在はしっかりと把握してくれそうだが、あちらよりもましだろう。


「え!アンタ偽物だったの?私騙されてたの!!!(棒読み)」


「ふざけんな!お前まで味方じゃなくなったら俺、この疑い晴らせなくなるよ!化け物討伐できなくなるよ!マスターここでお別れしちゃうよ!」


「そうなの?なら、お別れの会ぐらい開いてあげないとね。あさってに私の家に来てね」


 お前の家じゃねし、その頃にはおそらく俺死んでるよ!

 今ここでしなきゃ、俺あっという間にお別れだよ!


「いや、お別れしちゃダメだよ!!!」


「うるさいわ、この偽物」


「まさかの決定事項だった!?」


 恐ろしい速さで俺が偽物にされていく。

 あれ、実は俺に本物じゃないのでは。なんていうふざけた洗脳には陥らない。


 俺があわあわとしていると、ニーカさんが突如立ち上がった。

 俺はニーカさんに斬り殺されるのか、と思い身構える。しかし──


「お前たち、おふざけもいい加減にしろ。今は気を弛ませてはいけないぞ」


「「申し訳ございません、団長」」


 アーノさんとガフィールの声が被った。

 ニーカさんに対してはガフィールの粗悪な口調を改めるようだ。上下の関係はしっかりと理解しているらしい。


「アイン君もすまないね。彼らの茶番に付き合ってもらって」


 あれ茶番だったのか……。

 俺は今の状況が状況だから割と真面目に焦っていたんだが。だって、この回復能力の説明できないし。


 俺は、胸をなで下ろしゼンの方に視線を向ける。

 お前は、許されないぞという意味を込めて。


 しかし、ゼンはそんな俺の視線に対して、舌を少し出して拳を頭にコツンとぶつけて『テヘッ』なんて音がつきそうな表情をする。


 なんだコイツ、コイツを斬り殺した方がいいんじゃないか。

 いや、きっとそうだ。


 今なら体が万全じゃなくて……と手違いで合法的に殺れるのではないだろうか。

 それぐらい法が甘かったら嬉しいんだが、無理だろうな。


 で、それは置いといて話を化け物に関しても戻さなくては。

 俺は、三人が見ていた机に近づく。


 そこには街の地図があり、大きな赤い石と小さな青い石が置いてあった。

 おそらく部隊の配置を表現しているのだろう。赤いのはあの化け物だ。


 先ほど部屋でされたとおり青の石はかなり少なく、この包囲を網に例えるなら網にたくさんの、しかも大きな穴が開いて破けている。

 網が囲っているだけで、それが囲っているモノを閉じ込める能力はない。化け物が動き出してないのが不幸中の幸いだな。


「それで、何か新たな作戦は計画されたんですか?」


 俺がそう質問すると、場の空気が沈黙に包まれる。各々が沈黙を発しているようにすら感じられる。

 だとしたら、俺とゼンで終わらせたいが、どのように説得しようか。


 真面目に立案しても良いが、その場合俺たちが単独行動できなくなる。

 さすがに、魔神具を使っているところを見せるわけにはいかない。俺たち二人だけで化け物と戦闘に入らなくてはいけないのだ。


 根回し等々して俺たちだけ戦闘に入れるようにしても良いが、時間がかかり過ぎる。

 だとすると……。正面突破か?最近指揮官らしく計画的な行動ができていない気がするが、たかが個人が作戦なんて語るもんじゃないな。


「ニーカさん。俺に行かせてください」


「は!? 何を言っているんだ君は! 君の体が良くなったことは百歩譲って認めよう。しかし、だからといって再びあの化け物とぶつけることは認められないぞ!」


 ごもっともな意見だ。

 一度ボロボロになった置きながら、安心して送り出せる者がこの世にいるだろうか。俺だったら、絶対に嫌だね。次には死んで帰ってくる───帰ってはこないか……。


 俺なら嫌な事。 

だからといって、俺がやらなければいけないことなら話は別だ。


「あれは俺にしか討伐できません。なので、俺が行きます。そのために包囲を厳重にしておいてください」


 俺はそれだけ言い残して、後を去ろうとする。

 反論され議論へと発展することを回避するためだ。力技ではあるが、今あまりここで時間を使いたくない。


「待ってくれ」


 ニーカさんは、やはり俺の事を呼び止める。

 先ほどまであれほど反論していたのだ、当たり前の行動だろう。


「俺はやめる気は──」


「いや、違うよ。君のその行動やけくそというわけではないのだろう?」


「はい、俺はいたって冷静ですよ」


 振り返りながら、俺はニーカさんと問いに答える。

 あの化け物ごとき、ゼンの相手にもならない。ウジ虫だな。


 これは作戦ではない。作戦と呼べる域に達していたい。

 こんなのただの子供のお遊びと言われても反論はできない。


 だとしてもこの行動には意味がある。

 多くの民を救い、ここにいる残りの騎士団員を救い、俺を救う。


 俺の邪魔をしたから。

 俺の邪魔をするのならアイツは、殺すべき対象だ。生かしておく価値を感じない。


「了解した。ガフィール一番隊と三番隊を統合しろ、アーノ四・五・六・七・八番隊を包囲に加えろ」


 ニーカさんは、俺に目をじっくりと見て頷く、

 そして、次々を騎士団に指示を出す。


「我々リヴァイヴァル騎士団は使える使える戦力をフル稼働して君を支援しよう。君に我々は全てを賭けるよ」


 大きく出たな。冷静さを装ってはいるが驚きだ。

 精々君だけでやってくれぐらいでよかったが、騎士団の支援を得られるとは。


 アーノさんやガフィールはその発言に文句の一つも溢さない。

 団長の判断を心の底から信用していて、団長の事は信用しているようだ。それだけ彼らは死線を駆け抜けてきたのだろう。心が繋がっているのだろう。


 ……いい……仲間だな…………。

 実に良い仲間たちだ。


「それでは、誰も包囲の内外から出さないでください。外からは絶対に入れないように。化け物との戦闘は俺とゼンのみで行います。それ以外のものの参加は認めません。絶対に」


「了解した。いいな、アイン君の指示通りに」


「「はい!」」


 二人は俺からの新たな指示を受け取り、走り去っていく。

 俺も方も、少し準備といたしますか。


「アイン君、我々は君に全てを賭けるしかない。先ほどの君とは違う君に。必ず勝って帰ってきてくれよ」


 ニーカさんは、俺の目をじっと見てそう伝えてきた。

 その力強い目で、弱々しく、俺に懇願してきた。


 ニーカさん───王国内で二番目の強さを持つ序列第二位騎士の絶対的な信頼。

 訳の分からない信頼は、ここまで来た。


「もちろんですよ。それでは俺も準備しておきますので、できたらまた先ほどの建物に来ていただけますか」


「了解した。準備でき次第すぐにそちらに連絡をいれよう」


 俺は、ぺこりと頭を下げて建物に戻る。

 後ろにはゼンが、口笛を吹きながらついてきている。


「その下手くそな口笛をやめろ」


「下手くそってひどいわね。これはかの有名な休みの終わりと突きつけてくる国民的アニメの曲よ」


 それを知らねえんだわ、俺。

 その『あにめ』ってやつは、俺は聞いたことがない。前世でいくつか知識をもらってはいるが、それについての知識は全く知らないな。知識の偏りが気になるが、俺に新たな知識を得る術はないので、甘んじて受け入れるしかないだろう。


 それにそろそろおふざけの雰囲気を切り替えてもらえたいものだ。


「ほら、俺たちも作戦会議だ。わざわざこんな遠くにまでまた戻ってきたんだ。しっかりと計画を立てて行動してもらうぞ」


「はいはい。まあ、私は何もしなけど」


 ゼンは、魔神具になるので何しないのだが。

 一応俺の行動を知っておいた方が良いだろう。


 そんなこんなで、俺たちは再びあの建物に戻ってきたのだった。

 夕日の差し込む、小さな店に。


「サクラダのつぶやき」


『タイトルって大変』



 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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