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第二十一話 情報屋

「変わった気配?それは本当かい?」


 ニーカさんは、俺の嘘とも真実とも言える答えを疑うことなく発言に興味を持ち、聞き返してきた。

 どうやら、釣り針に彼女がかかったようだ。。


 心なしかニーカさんが少し前傾になっている気がする。

あくまで気がするだけだが。


「はい。恐怖というか、恐ろしいような気配を森の方角から感じました。その存在が気になって森にいました」


「ふむ。嘘ではなさそうだ」


 もちろん、嘘ではない。

 だが、真実でもないがな。


 それに、これを真実だと信じられると言う事は彼女も感じたのだろう。

 あの気配を。


「それで、ニーカさ──様はなぜあちらにいらしたのでしょうか?私どもと同じ理由ですか?」


 正直、このまま向こうに質問させていたら、恐ろしいと思ったならなぜ森にいたんだ、と聞かれてしまいそうなのでこちらが質問する。

 それを聞かれたら、俺は何も言えない。別にあの森は俺の物ではないし、わざわざ行く理由がない。言えることとしたら、家に近くて危ないと思ったぐらいだろうか(この理由も結構穴が多い)。


「それを私が答える理由は?」


 思索にふけっていたため少し遠くを見ていて瞳が、じろりと俺の方を見る。

 目力だけで人が殺せそうだな。少し心臓がキュッとなった。


 それにしても、少し踏み込みすぎてしまった。

 調子に乗って向こうの情報を取ろうと思ったが、そこまで甘くはないようだ。


「いえ、単純に気にあっただけですよ。謎の女性と戦っていたようでしたから」


「目撃しているのなら、黙っても意味がない───か」


 そう口にして、ニーカさんは姿勢を正す。

 やはり、前傾になっていたようだ。


「私に似たような気配を感じてな。私は森にいる団員が気になって向かっただけで、あの女性とは初対面だ」


 ニーカさんも俺と同じような理由であそこにいたようだが、あの女性のことは何も知らないようだ。

 まあ、これが嘘の可能性もある。連れてきた人数が多いのは、もしかしたら彼女の拘束か討伐が目的かもしれないからな。


 あくまで、知らないということにしておこう。

 それに、ゼンは正体を知っているようだから。こちらの方が、その辺りの情報の優位性は上だろう。


 ゼンが俺に教えてくれたらの話だが。


「なら、誰も彼女については知らないということですか?」


「ああ、そう思ってくれてかまわない」


 ニーカさんは、頷きながらそう答える。


「それはいいのだ。私は、君たちについて聞きに来たんだ」


 と、話を戻されてしまった。

 あちらの情報をもう少し盗りたかったが、これ以上は無理だろう。


 俺は早々に諦め、思考の変更を図る。

 奪う側から、奪われる側に変わったのだ。いくらか準備しておかなくては。


「そうでしたね。それで、何か質問は?」


「魔神具は知ってるな?」


 全く関係のない話のようだが。

 何か裏があるのか?


 ここで魔神具の情報がどう関わってくるのだろう。

 まあ、個人的な質問なら深く考えるだけ無駄だが、その可能性は限りなく薄い。


 それに知っているか、知っていないかの質問ではなく。

 最初から知っていること前提の質問とは、盗賊団の時といい俺は情報屋と勘違いされているのか。


 それとも、俺の発言は信用できないのだろうか。


 知ってる発言だけすれば、ある程度の情報を知っていてもおかしくないよな。

 俺だって、知っているのは国の図書館にあっただけの情報だから、ニーカさんも確認できるものだ。魔神具に関する新たな情報は知らないはずだ……たぶん。


 ゼンがいるから、必ずそうとは言えないが。

 発言に気を付ければ、大丈夫だろう。


「……はい。知ってます」


 俺は、まるで悪いことを隠していた子供が、正直に話すかのような雰囲気を出して答えた。

 これで、少しぐらい子供らしからぬ不自然感は消えただろうか。


 というか、魔神具を知っているというか真横にいるよな。

 一緒に生活してるんだよな。知ってるっていう度合いじゃない。ある意味知り尽くしてるのか?


「…………」


 ゼンが、とても嫌そうな顔でこちらを見てる。

 やめろ、俺は今お前のために忙しいんだ。その、気持ち悪いことを言うんじゃないわよクソ野郎、みたいな目で見ないでくれ。


「やはり知ってたか……。どこまで知っているんだ?」


「それは──」


 俺は、本に載っていたことを思い出して、それの一部を話した。

 あの本は丸暗記したが、さすがに国の情報を全て知っているのは問題だろう。


 今頃言うのはあれだが、魔神具の情報は一定以上の階級を所持してる軍人と王族しか閲覧することが許されてない。

 なので、俺が今まで語っていた情報は全て国家秘密だったりする。


 よかったな、読者の皆さんも栄えて共犯者だ。

 国家の秘密を握るスパイ的ななんかと思っていただいてもいいし、余計なことを聞いてしまった一般人でもいい。妄想にふけってくれ。


 そんな事はいいとして、俺の話す情報をニーカさんは物珍しそうに聞いていた。

 ニーカさんの階級なら問題なく閲覧できると思うのだが、なぜこんなに初めて聞いたみたいな反応をするのだろう。誇り的なそれで、今まで見に行ってないとかだろうか。


 ニーカさんは終始またもや感情を抑えきれず前傾になって俺の話を聞いていた。

 目を輝かせて、子供のように。


 しゃべってるうちに俺も気持ちが良くなって余計な事を言う───事はなかった。

 さすがにそこまで単純ではない。これでも軍人だ。発言のラインは把握している。


「私が知っていることは以上です」


「ふむ。それなりに知っているようだが。どこで聞いたんだ?」


「……それは、お話しできません」


 俺ははっきりと言い切る。

 それは話せないな。さすがにそれは越えている


 この情報の入手方法はしゃべれない。

 本当の事は言えないし、嘘を言っても問題だ。なんたって国家秘密の情報だからな。


 というか、俺への懐疑心をなくすための策だったが話さない方が吉だったんじゃないか?

 とりあえず彼女の欲しいものを提供して満足してもらおうと思ったが、いくらなんでも無計画が過ぎた。


 最悪、ダルクが上官から酒の席で聞いた話をしゃべったと言っておこう。

 あまりに追求が激しいのなら、アイツに片棒を担がせても良いだろう。


 それならある程度現実味を帯びている。

 国家秘密の入手先として、軍人から漏れたという出来事は良くある話だ。


「ここまでしゃべっておいて、それはないんじゃないか?」


 ニーカさんの深く黒い瞳がまたもや俺を見る。

 ジロリと。


 一瞬にして緊張が走る。

 まさしく戦争直前の国境だ。双方いつでも殴る準備ができている(もちろん、物理じゃない)。


 互いににらみ合いが続く。どちらが折れるかによって今後の大きく与えるだろう。

 すると─────


「じれったいわね!私よ!!!私が話したわ!」


 そう言って、ゼンが突然立ち上がった。

 その顔は計画があると言うよりも、ただ本当に面倒くさくなって言ったような顔だった。


 そして、俺は直感で感じ取る。


────あっ、終わった


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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