第二十話 再戦
ニーカさんの存在を完璧に忘れていた俺は、たくさんの問題に巻き込まれることになった。
それはもう、面倒くさいという言葉だけじゃ足りないようなものに。
☆☆☆
「それで、君たちがなぜ森にいるんだ?」
ニーカさんの目の前にいた俺はあっけなく、草むらに隠れていたゼンは先ほど彼女の残した言葉のせいで見つかってしまった。
それによって、なぜ森に来ていたのかと事情聴取を受けている。
必死に何かいいわけにできることを探す。
目線は泳ぎまくり、もう自分自身ですら目が回ってしまいそうだ。
何か、何かいい弁解方法は……。
「いや~」
最終的に俺は。
「たまたまです」
諦めた。
「ふむ、そうか。街の方でしっかりと話を聞かせてもらおうか」
そう言われて俺たちは、後から来た騎士団の増援によって颯爽と連れ去られてしまう。
とてつもなく内容は薄いし、しょうもない。だがしかたない、これが現実だ。
この後の俺がどうなるかは─────
☆☆☆
─────俺が握ることになる。
言うならバトンタッチってやつだ。
今の状況を簡単に説明させてもらおう。
俺たちは、騎士団によって強制連───コホンッ、街に連れて行ってもらった後騎士団の拠点に連れてこられた。
そして、そこの一室にぶち込まれたのだ。
辺りを見回してみた感じ、おそらくだが客室ではなく、誰かの執務室だろう。
机の上にたくさんの資料があり、部屋全体の装飾も少なかった。
この程度で不安になって、本当の事を言おうと思うほど軟弱ではないが、ここからこちら有利の交渉は無理だろう。
明らかに弱みを握られているし、ここはあちらの拠点だ。する気は無いが、暴れようものならあっという間に押さえつけられてもらう。
なので、俺はおそらくされるであろう事情聴取ではできるだけボロを出さずに切り抜けなければいけないのだ。
嘘に少しの真実を混ぜると本物っぽくなるのだ。
別に本当の事は言っている。
誰も嘘がいけないとは言ってないしな。
「アンタって、本当にいい性格してると思うわ」
「そうか、そんなに褒められると照れるな」
「皮肉よ。馬鹿」
「知ってる」
なんていう、緊迫した状況であるはずなのに変わらない会話をしている俺たちは、一体どんな頭をしているんだろう。
自分のことだが、恐怖すら抱くな。この状況で軽口を言い合うとは。
「それで、どうするのこの状況。何か考えでもあるの?」
「いや、あちらの出方を見なきゃどうも言えないが……。まあ、こちらの影響の出ない程度向こうに協力でもしたら満足してくれるだろう」
「だろうって……。希望的観測ってやつ?」
「うーむ、そうなってしまうな。しかし、安心しろ。こちらが譲ってはいけないところは─────」
今後についての話をしていたら、扉が開いた。
話していて分からなかったが、それなりに時間が過ぎていたようだ。
扉からは、ニーカさんが現れた。
先ほど(と言っても、もう数十分前だが)とは打って変わって、私服のような軽装に着替えていた。さすがに、ずっと鎧を着ているわけではないようだった。
可憐とか、美しいとかでは表わすのは少し違うと感じるような雰囲気をまとっていた。
どちらかと言えば、かっこいいとか凜々しいとかそんな感じだ。
「遅れて申し訳ない」
そう口にして、ニーカさんは俺たちの向かい側の椅子に座る。
俺たちとニーカさん間には、膝ぐらいの高さの机がある。
「前置きはいるかい?」
チラリとこちらを見ながら、ニーカさんはそう聞いてくる。
まだ時間がいるかい?と、一種の煽りにも思えてしまう。だが、脅しのような意味合いの方が今回は強いだろう。
ニーカさんは俺たちに事が、少し変な子供にしか見えてないだろうからな。
精神年齢的に言ったら、俺もゼンもおそらくニーカさんよりも俺たちの方が上だろう。なので、こんなところビビるわけにはいかない。
「いえ、結構です。かなりの時間をいただきましたから」
俺は、落ち着き払った様子で手を組みながらそう言う。
ちなみにこの発言には、アナタが遅れたので、という陰湿な意味が込めれている。まずは互いを一殴り、これがマナーだ(もちろん、嘘である)。
ニーカさんは俺の発言に、かなり驚いたようだった。例えるなら鳩が豆鉄砲を食らったような顔だろう。
まさか、こんな子供が反論してくるとは思ってもみないだろう。俺自身も、俺よりも年下の子供に言葉での戦いを成立させてきたら驚く。びっくり仰天だ。
第一印象はこれで十分だろう。
前置きは必要ない。全力の舌戦でかまわないよ。
「そうか、なら遠慮なくやらせて貰うよ。まず、君たちがあそこにいた理由はなんだい?」
「それなら、説明したはずです」
「あれを信じるとでも?君はかなり頭が回る方だ、もっと建設的な会話ができると信じているよ」
なんだ、その嫌な上司が言ってきそうなセリフは!?
この人はいったい、今までにどんな経験を積んだらこんな事を子供に言うようになるんだよ。
全力で戦う気ではいたが、まさかここまでとは。
もう少し、子供という理由で優しくしてもらいたいものだ。
「そうですね。少しおふざけが過ぎました。申し訳ない。それで理由の方ですが」
俺は、一瞬にして頭を回転させる。
ここで真実を言った場合と嘘をついた場合の事の動きを予測する。そして、どちらがより交渉に有利か、今後の活動に影響がないか。
その結果─────
「変わった気配を感じまして」
本当のことを言うことにした。
もちろん、嘘を添えて。
そう、それはまさに。
高級料理に添えられるソースのように。
少し。
しかし、しっかりと存在を魅せて。
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それではまた次のお話で会いましょう。
※追記 タイトルの大幅変更が行われました。理由は活動報告の方を見ていただければ幸いです




