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第二十二話 後始末

 力強く立ち上がった無計画なゼンは、何を思ったのか俺を椅子の真ん中からどかしてニーカさんの前に座る。

 この脳筋にまともな交渉ができるとは思えないのだが。


 しかし、コイツがこの交渉に入ってきたせいで間違いなくややこしくなった。

 計画に支障をきたす程の行動だが、吉と出るか凶と出るか。


「それは本当か?」


「ええ、そうよ!だからさっさと家に帰しなさい!」


 ゼンは、激しい口調でそう言う。

 完全なる無計画。


 なぜそのことを話して家に帰れると思うのか。

 ゼンの頭の中が理解不能だ。


「それは無理だな。魔神具の事を知っているとなるとしばらくは帰せない」


「なんで!」


 家に帰れないと聞いて、ゼンはキレる。

 そりゃあそうだろう。向こうの聞きたい情報を話して家に帰してくれる訳がない。


「アイン!なんで!」


「分かってただろ!俺にキレるな!」


 なぜそこで俺に聞いてくる。

 どういう頭をしていたらあの状況で帰れると思うんだよ。


 今にもニーカさんか俺につかみかかりそうなゼンは、怒りを露わにして実際に俺につかみかかろうとした。


 すると──


「やめたまえ」


 俺とゼンの間に一本の剣が現れる。

 一瞬にして目の前の争いが中断──停止させられる。


 ニーカさんが腰に帯刀していた剣を抜き、俺とゼンの間に差し込んだようだ。

 さすが騎士だな。一瞬にして場を支配してしまった。


「すみません。ゼン、座れ」


「チッ、分かったわよ」


 そう言って、ゼンはグチグチ言いながら椅子に腰掛ける。

 先ほどと違い、真ん中ではなく端の方だ。


 どうやらもう話す事も、話したくもないようだ。

 まあ、そうだろうな。イライラしているだろうし、俺もその方が好ましい。


 しかし、先ほどのゼンの発言をどう撤回しようか。

 間違いなくあの発言を撤回しないと面倒だ。


 どうすれば……。


 それにしても、ゼンは家に帰りたいと言っていたよな。

 家に帰りたいからって……家に帰りたい……ッ!


「いや~、すみませんでした。ゼンが家に帰りたいばかりに嘘を言ってしまい」


「うそ……ですか?」


「はい、申し訳ない」


 ゼンの発言を撤回するなら、ゼンを利用して撤回してしまおう。

 少しぐらい反省をしてほしいからな、利用しても許されるだろう。


 俺は、チラリとゼンの方を見る。

 当の本人は、俺の方をチラリと見てプイッとそっぽを向いてしまった。後で何か買って帰ろう。


「それで、魔神具についてですが」


「ああ、どこで聞いたか話してくれるか?」


「はい、謝罪の品としてお話しいたします」


 俺は姿勢を正して、ニーカさんの瞳をしっかりと見る。

 変わらず人を殺せそうな眼力で、少しひるんでしまいそうだ。


「それは、今はなき叔父から聞いた話です。なので、自分も詳しくはどこから聞いたのかは知りません」


「叔父ですか。軍人か何かだったのですか?」


「それは覚えておりません。しかし、たまに帰ってきていたので職業的にはそのようなものかもしれません」


 俺に叔父はいない。

 俺には誰も、何もない


 血縁関係のある人はそこまで探れないだろうし、探ったところで見つからない。

 本当だとではないが、嘘と証明するにはとても難しい。


「そうなのか……。ありがとう。今日の所はこれで結構だ」


 ニーカさんはそう言って、頭を下げる。

 礼儀正しい人だ。容疑者のような人物にも礼節を欠かさないとは。


「それでは失礼します。また、何かあったらこちらを伺いますので」


「ああ、そうしてくれるとありがたいよ」


 俺は頭を下げてお礼を言って部屋を後にする。

 ゼンは、静かになっている。何も言わす静かに後ろを付いてきている。


「わ──ね──」


 ゼンがボソリと何か言った。

 それは分かったが、小さすぎて何を言っているのか分からない。


「なんて言った?」


「悪かったわね!」


 ゼンは、そっぽを向きながらそう言う。

 恥ずかしいらしい。しかし、先ほどの行動を反省しているのか。


 ゼンにしては珍しいな。

 コイツは自己中心で、世界が己を中心に回っていると思っていると思っていたんだが。


 さすがに今回の行動は己でも悪いと思っているんだろう。


「お前が謝るなんて珍しいこともあるんだな」


「別に、悪いと思って言ったわけじゃないわよ!」


 じゃあ、なんで謝ったんだよ。

 ゼンの謎の行動を見ながら俺は、騎士団の拠点を後にする。


「ほら、何買って帰るぞ」


「ええ、そうね!今日はトウモロコシがいいわ」


 トウモロコシ?

 なんだ、それ。そんな食べ物売っているのか?初めて聞いたが……


「なあ、トウモロコシって何だ?」


「は?トウモロコシって言ったらトウモロコシしかないでしょ」


 ゼンは、何が分からないのか理解できないという顔で見てくる。

 この街について知っているはずだったが、そんな食べ物知らないぞ!


「トウモロコシ……トウモコシロ……トウモコロシ……ッ!」


「トウモコロシのことか!」


「プっ!トウモコロシって子供みたいな間違いしないでくれる」


 ゼンは笑いながら、俺にそう言ってくる。

 何が面白いのか分からない。なんなら、ゼンのトウモロコシって間違いの方が子供っぽいだろ。


「……え、本気で言ってるの?トウモコロシ?」


「当たり前だろ。お前こそ、トウモロコシなんて間違いしてるの笑われるぞ」


 困惑顔のゼンは見ながら、俺たちは露店の建ち並ぶ街道へと向かう。

 ゼンのトウモロコシはきっといつか直るだろう。


「ほら、トウモコロシ買いに行くんだろ」


「えっ、トウモコロシなの!?本当にそうなの!?」


 謎の彼女と会ってから俺は───俺たちは面倒ごとに巻き込まれる事になる。

 それも、かなり大きな事に─────。


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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