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第十話 肉体と精神は結構違う

 家の前で待っている俺の所に、ゼンがやってくる。

 心なしか、さっき分かれたときより清々しい顔だった。


 やはり、時間を与えた選択が良かったのだろう。

 これも俺の女心の理解のよるものだろう。さすが俺だな。


「キモいんだけど」


「……は!?お前まだ心情把握使ってるのかよ!早く切れよ!」


「ふーん。女心って……ぷっ。分かったわ、切っておくわ」


 今笑われたよね!

 確実に俺、コイツに笑われたよね!


 完璧にもう読んでないと思って考えてたのに……。

 しっかりと気配に気を配っておくべきだった。こんなミスをするとは、なんだか本当に落ちぶれているように感じる。


「その件についても話したいから、さっさと行きましょ」


「その件?」


 よく分からないが、この落ちぶれについて何か気づいたことがあるのだろうか。

 今のコイツの調子なら、辛い現実でも突きつけてきそうだが、ここは信頼して話を聞いておこう。


 俺は、ゼンを横につれて街に向かって歩を進める。

 お互いに歩幅はほとんど同じなので、進む速度に違いはない。


 まあ、ゼンに関しては好きに歩幅やら身長やら体重やらいじれるので、変えようと思えば変えれる。

 だから、今はわざわざ俺に合わせてくれているような感じだ。


 なんだか、いらない解説をした気がする。

 絶対に今の解説は必要なかった。


 俺は、心に少し傷を負いながらゼンとの会話を開始する。


「それで、何に気づいたんだ?」


 気づいたと言っていたが、一体何に気づいたのだろうか。

 俺の落ちぶれについて何か分かる証拠でもあっただろうか?


「アンタが落ちぶれたってうるさいから、少し考えてたのよ」


 さっきの謎の時間は、それについて考えてでもいたのだろうか。


「それで、一つの予想なんだけど。アンタは多分、思考力って言うの?その言葉にしにくいんだけど、頭のキレ具合って言うのかしらそれが、子供並に低下しかけてるんじゃないの?」


 低下だって?俺の冴え渡っていた頭脳がか!?

 だとしたら、今の俺に以前のような作戦の立案とかは無理なのだろうか。


 確かに、俺の記憶てきなそれは前世のままだが脳みその方は過去に戻っている。

 脳が成長するのか専門家ではないので分からないが、もし成長という概念があるのだとしたら納得だな。


「俺は、しばらくこの落ちぶれ状態になるのか?」


「うーん。それはアンタがどれだけ物事を考えるかによるんじゃない?前世以上に頭を使うとか、それか知識はあるから基礎的な作戦を使うとか。まあ、常軌を逸する作戦は思いつかないでしょうね」


 言い換えれば、鍛え直しましょうってことだな。

 どうやら可及的速やかに俺の頭脳を取り戻すのは無理のようだ。


 ゼンの言うとおり、知識はあるのでゼンと協力しながら作戦の立案はなんとかするか。

 おそらくゼンがいる上、さらに歴史を変えている以上俺の人生はかなり波瀾万丈になるだろう。一つの英雄譚的な物が描かれるぐらいには。


それに、ゼンがいればある程度の実力行使もなんとかなるだろう。

 今回の人生では、ゼンを精々こき使っていこうじゃないか。


「なんだか、私の親切な助言で悪い方向に進んでいった気がするのだけど」


「気のせいだろ、良い方向に進んでいるよ」


「そう?」


「ああ」


 少なからず、俺の人生はだがな。

 お前の仕事の量の大幅な上昇が決定したことに関しては、まったく知らないし関与していない。君が、俺の背中を押したんだよ。


「でも、やっぱり実力行使が多くなることに関しては考えておいた方がいいよなあ」


 ゼンがいるならとは言ったが、いくらなんでも頼りすぎはいけないだろう。

 さっきと言っていることが違うぞ、と思われそうだ。


「そうね。アンタなら私を無理矢理使うだろうけど、アンタ自身の戦闘もあるだろうし。私がいない場合も考慮しておかなくちゃだめよ」


「うーむ……」


 その通り過ぎて何も言えない。ゼンにド正論を決められるとは何か頭にくるものがある。


「怒ってない?」


 しかし、実際ゼンがいない場合の作戦の立案は本当に俺の才能的なそれにかかっている。

 いくらなんでも戦争まで戦闘は絶対にあるし、さっきも言ったがゼンがいる───活発に動いている以上それなりの代償もあるだろう。


 だから、俺はできるだけ速く前世の最後並の頭脳を取り戻す必要がある。

 言ってることが一転二転しているが、実力行使もあまり多用はできないなしな。やはり、急いで取り戻さなくては。


「まあ、なんとなくで頑張りましょうよ。急いだって、事件も戦闘も起きないわよ」


「あー、うん。そうだな」


「何よ、その歯切れの悪い返事は」


 今のゼンの酷く楽観的な思考のせいで、俺の未来が決まった気がする。

 ただでさえ、騎士団に目を付けられているのにどうしてこういうことを言うのかコイツは。


 ちょっと考えれば分かるだろう。

 現状、その事件も事故も起こるには最適な場が整いつつあるってことにさ。


「はあ」


「え? なんで私ため息つかれてるの」


 どうしてコイツが鈍感属性を得ているのか心底謎だが……。


「はあ」


 骨の5、6本ゼンに捧げることでも考えておくか。

 今回は、辛そうだ。


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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