第八話 信頼の裏の大きな穴
騎士団ご一行を受け流した俺は、なぜ彼女らが来たのかをゼンと話し合っていた。
当たり前のように俺のベッドを陣取るので、俺は仕方なく椅子に座る。
「それにしても、発言も色々引っかかったし、なぜここに来たんだ?」
「なぜって……アンタ分かってないの?」
ゼンが、呆れたような口調で聞いてくる。
ああ、そうだよ!分かってないよ!悪いか!?
「逆ギレは目をつぶってやるとして、そんな簡単でしょ。アンタのことがもうばれてるのよ」
「俺のことがって、どうして俺がやったってばれるんだよ」
ゼンは、大きくため息をつく。
なんだコイツは。一回一回俺を苛立たせないと気が済まないのか?
それにそんな簡単なことなのだろうか。
ばれないように視線には注意したし、目撃者も盗賊団の盗賊以外いないのと思うのだが。
まさかっ!盗賊の残りが騎士団の情報を……
「たぶん、アナタの考えている事じゃないわよ。」
俺の考えは、あっさりゼンに否定される。
それに、たぶんと言うことは俺の心を読まずに言ったのだろう。そんなに単純な考えだっただろうか?
「じゃあ、どこからばれたって言うんだよ」
「もう!最初の方から説明するわよ」
「ああ」
俺は、返事をしてゼンの目を見て真剣味を出す。
多分、ここまでしないとコイツ話さないからな。
「作戦を行うとき、私たちは誰と会った?」
「ダルクだな」
「そうね。どこで私たちは落ち合ったかしら?」
ゼンは、まるで教師が生徒に教育をするかのように俺に質問する。
なんとなく、めがねが見えてきそうだ。
そんなことはいいとして。
「俺たちが会ったのは、西門の前だな」
「ええ、そうね」
ゼンは、それで説明は終わりだと言わんばかりにしゃべるのをやめてしまう。
この情報の中で答えが導き出せると言うことだろうか?
ダルクと会ったこと?
いや、アイツの口はそこまで軽くない。そんな奴だったら、俺がアイツの口を縫っている。
じゃあ、西門?
しかし、門は夜になったら閉じられる。人の出入り絶対にないし、不審な人物も門番が見てくれ……て……
も、門番が常に門に警備のためにいる。
「遅いわね~、やっと分かったの?」
ゼンは、俺に見せつけるようにあくびをしてみせる。
もう何も感じなくなってきた。相手にするだけ無駄だと、心の中の俺が言っている。
飯でも与えれば、もう少し性格が良くなるのだろうか?
「ああ、分かったよ。門番から情報が漏れたと?」
「ええ、その通り。門番からまずダルクの存在が、ダルクと仲の良い子供で私たちが。それが騎士団の伝わった感じでしょうね」
「そうか……えっ!じゃあ、俺がシラを切ったことを向こうは分かってるのか!?」
恐ろしいの事の気づいてしまった。
身の安全を思って嘘をついたのに、そのせいで身を危険に晒してしまった。間違いなく、俺たちは見張りが付けられるだろう。もしかしたら、もう既にいるかも。
「なんで言わないんだよ!」
「そっちの方が面白そうだし、アンタはもう少し困った方がいいのよ」
「お前のおかげで毎日困っているよ!!!」
しかし、どうしようか。
騎士団に目を付けられるとは、実質家から出たら常に誰かに見られるのと一緒だ。なんなら、家にいても見られているな。
彼女がどれだけの団員を連れてきたか分からないが、数十人は確実にいるだろう。
それにゼンは、完全に俺に全て任せるつもりのようだ。どうにかして、ゼンも俺と同じ境遇に巻き込んでやりたいものだが……!
いいことを思いついた。
ゼンを巻き込むのに最高の理由で、確実な理由だ。
「しかし残念だな」
「残念?一体何が残念なのかしら?」
「いや~、騎士団に目を付けられたからもう街で食事はできないな~。残念だな~」
「なッ!」
ゼンが明らかに動揺している。そうだろう、いつも美味しそうに食べているご飯が食べられなくなるのだから、ゼンからしたら地球の滅亡ぐらいの感覚だろう。
俺は、精神状態が不安定になったゼンにさらにたたみかける。
「それに、母さんも目を付けられただろう。それだと飯も野菜ぐらいしか食べれないな~」
俺は、残念そうな雰囲気を出しながら片目でゼンを見る。頭を使えばいくらでも解決方法が浮かんできそうだが、今のゼンにそれは無理だろう。
「あっ、ごは、ご飯がっ、ああ~」
壊れたオルゴールみたいに途切れ途切れの言葉しか発しなくなってしまった。
いくら何でも追い詰めすぎたか?いや、別にコイツならこれ位でいいか。
恐怖を煽るような感じになってしまったが、コイツを俺と同じ境遇(それ以上かもしれない)に追い込むことはできただろう。
後の交渉は簡単だな。
「ゼン。お前が協力したらこれを早急に解決してやろう」
「ほ、本当!?」
「ああ、もちろんだ。お前が俺に協力するなら、な」
「しょうがないから協力してあげるわ」
しょうがないからと言っているが、今の状況的にゼンは俺の提案を拒否することはできない。
その状況に俺が追い込んだのだが、思惑通りに動いてくれて助かった。
俺はゼンがいた方が、ゼンは俺がいた方がこの状況を脱却しやすいからな。ギブアンドテイクというか、Win-Winの関係みたいなものだ。
一方的な条約は相手にストレスを与えて、反抗させやすくなるからな。よっぽどのことがない限り、対等な関係の方が好まれる。
「じゃあ、早速動き出すか」
そう言って、俺は椅子から立ち上がる。
見張りは絶対にいると想定して、あまり大きな動きや意図的に見張りをまく行動はできない。
そうなるとある程度動きに制限が掛けられるが、情報収集からはじめて──
「ちょっと」
部屋から出ようとして俺を、ゼンは服の裾を掴んでくる。
「なんだ?」
顔が火照っているように感じられる。
風邪での引いてるのか?しかし、コイツに風邪なんてあるのか?
「聞きたいことがあるんだけど。いい加減教えてよ」
そう言って、ゼンはおもむろに俺の顔に右手を伸ばしてくる。
なんだ急に!?なぜ右手を伸ばしてくる!?なぜ顔を近づけてくる!?
俺の唇とゼンの唇が触れ──そうになった瞬間。ゼンは、不敵に大胆に大きく笑みを見せる。
その顔で俺は察する。
「どう~?もしかしてドキドキした~?」
ゼンは、笑いながらそう俺に聞いてくる。
間違いない、先ほどの仕返しだろう。頭が回るようになってから、俺にもてあそばれたことに気づいたのだろう。
いらないことに気づきやがって、今コイツの顔ははちきれんばかりの笑顔だ。
心の底から笑っているのではなく、大爆笑しているだろう。
「返事はいいわ。顔を見るだけで面白いから」
そう言って、ゼンは俺から離れていく。
楽しそうにふわふわとした足取りで。
「俺に聞きたいことがあるってのは、本当の事か?」
「え?なんでも教えてくれるの?」
「質問による」
「チッ、言質を取ろうとしてたのに予防線張りやがって」
心に思った事が思いっきり言葉になって漏れている。
いや、コイツの場合意図的に漏らしているのか?
俺は、扉から離れてゼンの前に立つ。
長くなりそうだと、直感がそう言っているからだ。
「それで質問なんだけど」
「ああ」
「アンタはどこまであたしの事を知っているの───なぜ知っているの?」
ゼンは、先ほどとは打って変わって、冬の雪のように冷たい表情で俺にそう───訊ねてきた。
これが緩急をうまく使うということなのだろうか。
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