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第六話 秘密の祝杯

 熊を討伐して森を出た俺たちは、その後何事もなく森を脱出できた。

 怪我を特にしていないゼンにナールを任せておく。俺は移動だけで手一杯だったの大変助かった。


 それに外傷は全員ゼンのおかげで治ったので、みんな疲れている感を出せば何があったのかそこまで不信感はもたれないだろう。

 ナールも寝ているので、疲れて眠ってしまったと言っておけばいいだろう。


 日は沈んでいないので、昼食と家で取るつもりだ。

 あの戦闘の後で、かなり腹が減った。血は前世でよく触れていたので、戦闘の後でも食事に抵抗はない。地で食事がなんて言っていたら、いつも食事が出来ない。


 ゼンは、ナールが重いから変われと文句をずっと言っていたが、俺は先ほども言ったとおり、自分の体だけで手一杯なので丁重に断っておいた。

 ゼンはほとんど疲れも感じないだろうし、このぐらい働かせても罰は当たらないだろう。適正な労働時間だ。


「ロウキ!ロウキはどこなの!!」


 謎の言葉『ロウキ』と連呼していたが、そんなもの聞いた事が無いので、きっとこの世にはないのだろう。異世界とかの言葉だろうか。

 そんな事を話ながら、俺たちは家に帰った。


 家の前まで来ると、ナールが目を覚ました。


「ん?ここは……はっ、熊はどこに!!」


 そう言って、ナールはゼンの背中で暴れ始める。

 あまりに派手に暴れるので、ゼンはナールを背中から放り投げる。ナールに対して何するんだコイツ。ぶん殴ってやろうか。


「イタッ!何が起こって……」


 ゼンに放り投げられたナールは、尻餅をつく。

 尻をさすりながら立ち上がるが、何が起こっているか理解できていないようだ。


 まあ、そうだろう。ナールの記憶は、熊に攻撃されたところで止まっている。

 しかし、次に目を覚ましたら視界に飛び込んできたのはアインの家だ。状況の理解なんてできないだろう。


 熊の件……ナールなら……いけるな。

 俺は、ゼンの目を見る。ゼンも理解してくれたようで、一度大きなため息をついてから、好きにしなさいと言わんばかりにプイッとそっぽを向いてしまった。


 一瞬の根回しだし、ゼンが本当にそう思っているのか分からないけど。

 これでいいだろう。


「熊ならゼンが倒してくれたよ!ゼンって強かったんだな」


「えっ!?ゼンが倒したの?」


「え?ええ。そうよ、私がちょちょいと倒したわ」


 ゼンは、俺の嘘に乗ってくれた。

 ゼンが倒したことにしてナールのゼンに対する評価を上げてしまおうという魂胆だ。


 元は親睦を深めることが目的だったのだ。少しぐらい二人の仲に変化がないと困る。


 それに、ナールの記憶では俺がブチギレたところで終わっているはずから、ゼンが倒したと言ってもそれが嘘だと言うことに証明はできない。

 ゼンが倒したことにしておいても問題はないし、良いことのみなのでそう言っておいていいだろう。


「え?う~ん、そうだったけ……」


「そうだって。ほら、俺の家の前だし飯食ってけよ」


 俺は、それ以上考えさせないように話を切り替える。

 これ以上考えさせて下手に思い出されても困るしな。


 俺は、ナールの返事より先に手を取って家に連れ込んでしまう。

 みんなお腹減ってるだろうし、気分転換にはちょうどいいだろう。


 ほとんど無理矢理だが、ナールもそこまで抵抗していないので承諾しているのだろう。

 と言うか、俺たちよりも先にゼンが家に暴風の如く入っていったのだが、食事に対しての行動が速すぎる。今から作ってもらうから、まだ家にはないぞ。


「ただいま!」


「おじゃまします!」


「おかえり、ナール君も一緒ね。待っててね、もうすぐできるから」


 部屋に入ると美味しそうな匂いじゃしており、ゼンはもう既に椅子に座っていた。

 昼食が欲しいと事前に言ってなかったのでまだ作ってないと思ったのだが、どうやら俺たちに向けて作ってくれていたらしい。勘の母親だ。


「あ、あれ?ゼンってさっきまで外にいなかったけ?」


 ゼンのあの速度を視認できなかったナールが、俺に聞いてくる。

 まあ、これが普通の反応だ。俺や、母さんはもうこれに慣れてしまったからな。


「気にするな。ほら、椅子に座って」


 俺は、ナールを椅子に座らせて食事の準備をする。

 ゼンはいつも食事の準備はしないので、俺の仕事なのだ。まあ、戦闘面で

はゼンに任せてる部分が多いので、この辺はしょうがないと割り切っているのだ。


テキパキと食事の準備を終え、俺も椅子に座る。

 それと同時に、食事が机の上に置かれた。


「「いただきまーす!!」」


俺たちは、血に濡れながらひとときの幸せを満喫する。

 暖かい、幸せな会話が食卓を彩り、みんなの食事にいつも以上にうまみを与える。


 しかし、それと同時にそんなものに相反するものが近づいてくる。

 圧倒的な正義を背中に抱えた者が、俺たちに接触を図ってくるのだった。


今回から一話の文字数が二千字になります。たまに超えますが、読みやすくなっていたら嬉しいです。

一つの章全体の文字数は減りませんので、話数がばかみたいに多くなると思っていただければ大丈夫です。

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