エピローグ? まっすぐ進む
たくさんある死体の処理をした俺たちは、ダルクのいる正面へと歩き出す。
まだ夜は明けていないが、拠点は人の気配がなく、無音の空間になってしまった。
かがり火のパチパチとした音が鳴り、俺たちの足音がガサガサと鳴る。
「それなら、無音じゃなくない?」
「黙ってろ」
今は、俺が戦いの終わりということでかっこつけているシーンだ。
口を挟むな。雰囲気が台無しになるだろう。
「この作品にそんなもの求めてないわ。私の美しさでも語ってなさい」
お前の美しさなんて、語る必要ないだろう。
「あら、それは褒め言葉?ついに、アナタ私の美しさに気づいたの?」
「ハッ!そんなわけ無いだろう。お前のその程度の美しさを語る程、俺は暇じゃないんだよ!」
そうして、また俺とゼンの喧嘩が始まる。
かろうじて正面に向かって進んではいるが、圧倒的暴力が支配している。相手が女だとしても、コイツなら手加減なんていらない(なんなら、手加減なんてしようものなら俺が負けてしまう)。
わざわざ説明するほどのものでもないので、省略させてもらうが結果俺が、勝利を勝ち取った。
「卑怯よ!」
その結果にゼンが、反抗している。
よほど俺に負けたというのが、悔しいらしい。負けず嫌いな性格だ。
「いやいや、突如。あそこに肉がある!なんて言って隙を作るなんて騎士道に反しているわ!」
「お前は、いつ騎士道を順守するようになったんだよ」
お前に騎士道なんて似合わないだろ。
不良道とかの方が、似合っているんじゃないだろうか。うん、最高に似合ってるな。喧嘩っ早いし。
「それだったら、アンタもかなり好戦的でしょ」
「お前と一緒にしないでもらいたいね。俺は、必要な戦闘しかしないぞ。誰かと違って、すぐに手が出ないんだ」
「へえ~、そうなの。私を殴っておいてよく言うわ」
なんて、喧嘩が終わっても口げんかが終わらない俺たちの喧嘩は、ある香りで終わりを告げられる。
「ん?なんか血生臭いわね」
少しだが、かなり濃い血のにおいがする。
そこまで気にしていないが、とてもはっきりと血のにおいがする。
そろそろダルクの所に着くし、そこのにおいだろう。
「それにしては臭すぎない?ダルク結構けがしちゃってるんじゃ──」
ゼンは、未だにダルクのことを心配しているようだ。
これが優しさなのか、それとも足手まといを気にしているだけなのか。
「いや、アイツのいる戦場ならおそらく敵に血のにおいだよ」
「ほんとにそんなに強いの?私、信じられ……え……」
ダルクのいる正面に、やっと着いた。
が、その光景にゼンは言葉を失っていた。俺は……まあ、平気だ。
こういった光景は───見慣れてるしな。
そこには、前髪で目が少し見えないダルクが一人ポツンと立っていた。俺が投げた槍を持ち、最初から着ていた装備は特に傷はついていないようだ。
渡したカチューシャはどこに行ったのやら、見えない。
しかし、ゼンが注目しているのはダルクではない。
彼が立っている、その場の光景に言葉を失っているのだ。
「お!もう終わったのか?」
ダルクは、ゆっくりとこちらに歩いてくる。
ピチャピチャと水たまり、いや、はっきり言っておこう。
血だまりをダルクは歩いてくる。
「そうよね、これだけあれば臭いわよね」
ゼンは、納得する。
俺の過剰なまでの信頼と、この濃い血のにおいに。
そこには、ありえないほどに死体が立っていた。
死体の山ができているのではなく、横たわっているのでもなく、その死体たちは立たされていた。
全てが丁寧に木の棒にくくりつけられて、頭と胴体を切り離されて立っている。
まるで、罪人の公開処刑の時のようだ。
それよりも見た目はひどいがな。
それはあまり見ていて気持ちのよいものではないだろう。
というか、戦場を知る者ですら目を背けるだろう。
それほどまでに、その光景は残忍で、残酷で、狂気を感じさせる。
美しくもなんともない。吐き気すら催してしまいそうな光景だった。
「どうだ、完璧だろ」
そんな光景に、全く違和感を覚えていないダルクは血で濡れた髪のまま、俺に少し笑顔で話しかける。
まったく理解ができないな。
「趣味が悪いな」
「そうか?そんなこと無いと俺は、思うんだが」
ダルクは、俺のこの気持ちが心底理解できない様子だった。
俺もお前のその気持ちが、理解できなくて困ってるよ。
「そういえば、一人逃がしてしまった。すまない」
頭を下げ、ダルクは俺に謝ってくる。
殺せなかったことを、申し訳なく思っているようだ。
「いや、これだけやってくれれば充分だよ」
おかげでゴルグとの戦いも、かなり「余裕」をもってすることができた。
間違いなく、それはダルクのおかげだろう。
しかし、ダルクが敵を逃がしたのか……。
かなりの強者だろう。今後敵として会わないことを祈っておこう。
「ゼン、まだいそうか?」
まだ敵が残っているかの確認は俺や、ダルクが周囲を索敵するよりもゼンの心情把握の方が速い。
サクッと敵の確認が出来るのは本当にありがたい。
「ん~、いないわね。っていうか、血生臭いし帰りたいんだけど」
鼻をつまみながら、ゼンは俺にそう訴えかけてくる。
俺もかなり血を浴びているし、ダルクに関しては血を全身で浴びていると言っても良いだろう。髪の毛から足先まで、ほとんど真っ赤だ。
それに、ここには誰もいないようだし、さっさと消えた方が良いだろう。
いつ誰が来るか、分からないからな。
「それじゃあ、早く帰るか」
そうして、俺たちは作戦の完遂し帰宅する。
もちろん、家に帰る前に川で体洗うので、寄り道はするが急いで帰らなければ。
朝になる前に帰らないと、母さんに夜中の脱走がばれてしまう。
そんな事になっては、いろいろと大変だ。
俺たちは、全力で走りながら帰路につくのだった。
「あれ、男の子ってどこに行ったのかしら?」
☆
俺たちは、急いで家に行き窓から部屋に戻る。
川で体を洗ったので体が濡れているが、家のタオルをこっそり使って拭いた。
明日にでも、乾かしてタンスに入れておけば怪しまれないだろう。
それで、今回の成果というか結果だが。
盗賊団は壊滅、団長は死亡。団員のほとんどもダルクが殺したので、一人を除いて死んでいるだろう。今後盗賊団による被害は起きないはずだ。
一夜の出来事だったが、俺たちにとってはかなり大きな出来事だった。
目標の一人を今にうちに殺せたのはかなり大きい、今後の行動にかなりの余裕をつくれてことになる。
今後の目標としては、まず俺の能力を前世に可能な限り寄せていき。俺一人で数人の大人を相手取れるようにはしていきたい。
それにゼンの方も、まだやることがあるしな。
体を拭いた後、俺たちは部屋にも戻り就寝する。
夜の間ずっと戦っていたのだ、眠いし疲れた。明日の朝いつも通りに起きなくては、母さんに怪しまれてしまう。
というわけなので、俺たちはすぐに寝たのだ。
朝日はあっという間に昇り、俺たちの朝はすぐにきた。
寝た、俺は眠りにはずなのだ。だがしかし、数時間寝ただけではこの体は、眠りと認識してくれないようだった。
まぶたは重く、意識があるのかないのか怪しい。
平衡感覚も無いに等しく、ふらふらとしている。この体を酷使しすぎたようだ。
端的にいうと、眠い。
「なら、その一言だけ言っとけばいいじゃない。めんだくさい言い回ししないでちょうだい」
「そんな眠いだけなんて、子供でもできるわ。そこで事細かく解説するのが大人なんだよ」
アンタまだ子供じゃない、とゼンにツッコまれながら俺は着替える。
少し時間が経てば、こんな状態もすぐによくなるだろう。それに寝たい気持ちを押えるのなんて簡単だしな。
だらだらと着替えて、俺たちは階段を下る。
昨日の激戦のおかげで、体の使い方がなんとなく分かってきた。やはり、筋力的な違和感はあるが技でねじ伏せるという目標で戦えばなんとかなる……たぶん。
「おはようアイン、ゼンちゃん」
ゼンがちゃんづけなのが気になるが無視しておこう。
気にするだけ無駄である。
「おはよう、母さん」
「おはようございます。フィネルさん」
この文面だけ見ると敬語で、よい外面を貼り付けているように見えるが。
光景としては、髪をフワッとやりながら(名前が分からなかった)かなり上から目線な言い方をしてる。
文面だと抑揚が分からず、ゼンが良い子に見えるといけないので解説しておく。
とても大事な行動だ。
ゼンが、すごい顔でこちらを見ている(おそらく睨まれている)が、顔を背けて無視しておこう。
母さんの前では、ゼンは何もできないからな。
こういった場でしか、ゼンに好き勝手言えないのだ。
ゼンの上から目線は母さんのいる前でも健在だが、俺の心で思ってる事へのツッコミはできないからな。能力がばれて、怪しまれてしまう。
そそくさと朝食を食べた俺は、皿を片付けてから二階の部屋に戻る。
それはもちろん、もう一度寝るためだ。さすがに、この状態で一日過ごせない。遅くても昼には目が覚めるだろう。というか、意地でも覚ます。
「ってことで、おやすみ」
「ええ、寝てなさい。ぐっすりと─────」
ゼンが、何か言っているような気がしたが。
俺は眠気に負け、そのまま眠りにつく。心地の良い眠りが、俺を襲っていく。
とても疲れたが、その分に見合う報酬を得られただろう。
俺的には、ナールを守ったのだがきっとナールはそれを知らないだろう。だが、それでいい。
アイツらに降りかかる厄災は、全て俺が受け持ち追い払ってやる。
それが、今回の俺の人生の目的であり、一つの意味だと俺は思っている。
それは、今後俺の変わることのない信念だから。
これだけは、見失わないし、諦めることがないと俺は思って────確信している。
話の終わりとしては中途半端かもしれないが許してほしい。
だって、この物語はまだ少し。
────続くのだから
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それではまた次のお話で会いましょう。




