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不気味の実験  作者: 瀬戸内 泉


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7/9

私の知らない人

私は手術したのです。

そう、簡単な手術だったので、1週間で退院できました。


そうして家に帰ったら、その人は突然私の世界にいました。



◆ ◆ ◆



「ただいま~」


病院からはタクシーで帰宅しました。

スーツケースで荷物を持っていたので、少し重くなったそれを主人が「よっこいしょ」と玄関の段差に持ち上げた時、ひょこっリビングの角から、その人は顔を見せました。


「おかえり~、早かったね~、良かったね~」


優しそうな人だと思いました。

女性で、まん丸の目でニコニコとこちらを見てきます。


背は160cmくらいかな?

おそらく主人と同年代くらいかしら?

けれど、なぜ我が家にいるのかな?

家族の誰かのお友達かな?


「あれ? すみません、あなたは…どなたですか?」


『その様子…もしかして手術の後遺症で記憶が少し曖昧なのかな?

 先生も、少ししたら回復するっていっていたから、大丈夫、安心してね。

 その間は私がしっかりお世話しますから』


「あ、はい、よろしくお願いします」


あぁ、そうでした。

お医者さんからの手術前の説明で、術後少し記憶が曖昧になることがあると言われてんだっけ。

何せ全身麻酔したんですもの。

他の患者さんもなんだかぼーっとしている子たちが多かったなぁ、なんて入院していた時の風景を思い出しました。


主人もこの女性には親しい様子だし、変な人ではないから恐らく大丈夫だろう。そんな風に自分に言い聞かせて、この人のお世話になろうと決めました。



実際、この女性はかいがいしく優しく私に世話をやいてくれました。

私の食事も決まった時間に、決まったメニューを持ってきてくれました。

病院食が味気なかったのもあって、

このように自宅でお気に入りのお皿に、食事とお水を盛ってくれると本当に美味しく感じます。


食事どころか、お風呂の世話もしてくれました。

もともとお風呂に入るのは好まない性格だったので嫌々という気分だったのですが

この人はそんな時でも優しくなだめて介助してくれます。


そして毎回トイレのお世話までしっかりとお世話してくれるのです。

なんとも恥ずかしいのですが、自分で排泄物を始末したりといったことができないので、これは本当にありがたいと思いました。


なによりも嬉しかったのは、毎日決まった時間に外の空気も吸わせてくれたことです。

どうやら、入院前はきまったルートを選んで散歩するのが日課だったようなのですが、

残念ながらそれも記憶にありません。

だからその人は『まるではじめて来たような反応するのね~』などと言って、

調子を合わせて優しく一緒に散歩してくれました。


本当に丁寧に接してくれて感謝しかありません。



◆ ◆ ◆



一週間も経つと、だんだんこの人のことがわかってきました。

そして、自分が人間でないということも。

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