佐川新之助①
【佐川新之助目線】
「だぁーっ! 修斗は出てこないわ試合は負けてるわで面白くねぇー!」
前半が終わり、試合は瑞都高校が0ー2で負けていた。
サッカーについては遊び程度でやっていたので大体のルールは把握しているが、見ているだけではあまり面白くない。
それも応援している側が一方的に負けていやがる。
フラストレーション溜まるぜ。
「恥ずかしいから騒がないでよ」
「後半から出て来てくれるといいんだけどね」
「出てこなかったら俺がベンチに突ってくるわ」
「兄さん、恥ずかしいことはやめてください」
「二人から言われてるよサガー君……」
雫が見たいというから付いてきたのに、これじゃあ『妖怪GO!』やっていた方が良かったぜ。
「そもそも何で雫は見に来たかったんだよ」
「仲良くなったクラスの子がサッカー部のマネージャーをやっていて、サッカーが上手くてかっこいい人がいるから見に来てって言われたんです」
それが修斗だってか!
あの野郎、若元という超絶美少女幼馴染彼女とかいう属性盛り盛りのパートナーがいるくせに黄色い声援をもらっているというのか! 許せん!
「そしたら兄さんと仲が良い高坂さんのことだったので、せっかくなら見てみようかと思ったんです」
「へぇ〜。コーサカ君って1年生の間でも有名なんだね」
「俺は別に修斗と仲良くなんかないぜ。というかたった今親友をやめた」
「まーた嫉妬してるわよこの男」
「仕方ないです冬華さん。兄さんはツンデレなので」
言うに事欠いてツンデレってなんだ!
可愛い妹だからって怒る時は怒るからな!
「別に……色んな人に好かれてなくたって…………一人に好かれてればそれでいいじゃない」
八幡が声のトーンを少し落としながら言った。
これはあれか、若元のことか!
「そうだよな、若元からしたら修斗が色んな女の子に言い寄られる方が困るもんな」
「えっ、私!?」
「はぁ…………。兄さんはただのツンデレじゃないです。無神経ツンデレです」
「なんか知らん属性追加すんなよ! 聞いたことねぇ!」
なんか今日の雫冷てぇ!
冷え性なのかな。
「なんの話?」
「そうだよなニノ。女子だけで分かる会話されても困るよな」
「ニノは気にしなくていいんだよ。マスコットだから」
「僕ってマスコット扱いだったの?」
それはそれで可哀想な扱いな気がする。
男としてどころか人として見られてねーじゃん。
「なんだか騒がしいグループがいると思ったら…………あなた達も来ていたのね」
不意に座席上方から聞いたことのある声がしたかと思えば、なんという眼福。
若元とは違うタイプの美少女がそこには立っていた。
「鷺宮さんじゃん!!」
約1年前に1ヶ月も在籍せずに転校していった修斗の追っかけ第2号こと鷺宮さんだ。
1ヶ月も在籍していなかったのにその突出した容姿は記憶から消えることなく俺の脳内にインプットされていた。
ちなみに追っかけ1号は桜川だ。
「久しぶりね梨音。それに永遠のライバル、冬華」
「なんかライバル認定されているのだけど……」
「ほら、冬華がバスケで鷺宮さんに勝ったから」
ああ、俺がカド先に携帯没収された時ね。
あの時は返してもらうのに時間かかったなぁ……。
「それにそっちは……」
鷺宮さんと目が合う。
「誰だったかしら」
「ちょおおい! 修斗の大親友こと佐川新之助だよ! 忘れちゃった?鷺宮さぁん!」
「そういえばいたわね」
「さっきは親友やめたとか言ってたくせに……」
「手のひらクルクルだよね……」
俺の手首にはジョイントが付いているから360度回転可能なのだ。
ガトリングぐらい回転する仕様。
「若元か。久しぶりだな」
いけ好かない爽やかイケメンが出てきた。
それにデカいやつも。
とんでもなくデカいなこいつ。鷺宮さんのボディガードか?
「涼介君に優夜君だ。優夜君は特に久しぶりだね。また大きくなったんじゃない?」
若元は二人とも知り合いのようだ。
ということは修斗の昔の知り合いか?
「なんやえらいべっぴんさんおるんおもたら修斗のスケやないか。中学以来やな」
「そうだね。修斗が怪我してからは合わなくなったもんね。3人揃って今日はどうしたの? 修斗の応援?」
「まさか。私達はいまや敵同士なのよ。敵に塩を送るような真似はしないわ」
そうなの?
鷺宮さんと高坂って敵同士なん?
じゃあこの二人は鷺宮さんとこの高校のサッカー部か?
「じゃあどうして?」
「わざわざ教える必要はないわね。でも貴方も相手の10番を見たことあるんじゃないのかしら。例えば、一昨年の夏の大会なんかで」
鷺宮さんに言われ、若元が帝東高校の10番をよく確認すると、何かを思い出したかのような顔をした。
「あれって…………修斗が怪我した時にいた……!」
「それだけ分かるなら説明はいらないわね。ウチのBチームもここと当たるから敵情視察に来たのよ」
なんだなんだ。
一体なんの話だってんだ。




