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憎悪の炎

登場人物

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉

織田軍が比叡山を包囲しながら攻めあぐねていた頃、比叡山延暦寺では


三人の高僧が本堂に向って廊下を歩いていた


「織田軍は約3万の軍勢で攻めてきているようですな」


「愚かな、御仏に仕える我らに刃を向けるなど何と罰当りな


 精々地獄に落ちるとよいわ」


「まあよい、我等には雑賀衆より購入した秘術品と


 特殊な呪力を施した鉄砲がある、いくら織田軍に


 勢いがあると言っても物の数ではないわ!?」


三人は織田軍を蔑むようにニヤリと笑みを浮かべる


「まあ安くは無かったですけどね、雑賀衆の戦争屋共


 随分と高い買い物をさせよって・・・」


「まあ良いではないか、金で済む問題なら・・・


 金などいくらでも手に入るのだから


 我が比叡山は日本仏教の母山にして神聖不可侵


 何人たりともこれを犯す事かなわず、聖域の中の聖域なのだ


 今回はやむを得ずあの下賤な本願寺の一向宗どもと


 手を組んだが、いずれはあ奴らも信者ごと我らに


 取り込み、この日の本を我らの力で正しい道へと


 導かねばならん、今回もその為の試練じゃな」


三人の真ん中にいた高僧がそう言うと両側の高僧も大きくうなづいた


そして本堂に到着し襖《ふすま》を開ける、すると中では30人程の若い僧侶たちが


何かを中心にして周りを囲むように祈りを捧げていた


本堂の中央に置かれたその物は真っ黒な髑髏《どくろ》であった


額の部分に赤い宝石のようなモノが埋め込まれており、何とも不気味で


禍々しい雰囲気を纏っていた、それを魔法陣の中心に据えており


若い僧たちの祈りと共に魔方陣が光を放ち中央の髑髏《どくろ》の


額の赤い宝石のような石が怪しげな光を放っていた


日本の寺院の本堂に何とも似つかわしくないその光景を


三人の高僧はニヤつきながらジッと見つめていた


「何とも怪しげな法術ですが、一体どのような力が


 働いているのでしょうな?」


「西洋魔術ですかな?なんにしても我等の知らぬ力ですな!?」


「このような下劣な技など我らが知らぬともよい、我等はもっと


 志高く人々を導かねばならん使命がある、このような外法は


 汚れ仕事専門の者達を使って金で解決すればよいのだ」


両脇の高僧二人が微笑みながら大きくうなづく


「織田信長も噂通り、正真正銘のうつけ者ですな


 金を受け取ってさっさと引き上げればよいものを・・・」


「何にしろ我らにこの結界がある以上、あやつらはこの比叡山に


 毛ほどの傷を負わせる事も出来ん、精々指をくわえながら


 悔しがるがよいわ、くっくっく・・・」


信長を含め全てを見下すかの様な態度と発言、もはや勝ちを


確信している三人の高僧たち、そんな時一人の小坊主が随分と


慌てた様子で駆け寄ってきた


「大変でございます、外に・・・外に怪しげな、謎の鳥が!?」


慌てて話している為、話す内容も要領を得ず、まとまらない様子の小坊主


「落ち着かんか馬鹿者が、一体外で何があったというのだ!?」


動揺を隠し切れないながらも精一杯冷静に報告しようと


一呼吸入れてから、改めて気合いを入れ報告し直す小坊主


「今、外には織田軍のモノと思われる謎の鳥が出現したのです


 その鳥は巨大で全身炎で包まれており奇声をあげながら


 上空を舞っております、いかがいたしましょうか!?」


その報告に怪訝そうな顔を見せる三人


「何を馬鹿な事を・・・そんな事ある訳なかろうが」


「炎に包まれた鳥だと!?確か異国の伝説にそのようなモノが


 あったがアレはあくまでも伝説の話だ、鳳凰じゃあるまいし


 夢でも見たのであろう!?」


「一体どのようなモノを見たのかは知らぬが、無暗に人心を


 惑わせる言動は控えよ、大方攻めあぐねた織田軍が大量の


 松明《たいまつ》でも燃やしたモノを見間違えたのであろう」


三人は”そんなモノあるはずがない”と全く信用しようとはしなかった


「本当です、本当に炎の巨大鳥がいたのです


 私はこの目で見たのです、どうしても信じられない


 というのであれば是非その目でお確かめください‼」


必死で訴えかける小坊主、馬鹿馬鹿しいと全く信用していない


三人だったが、小坊主のあまりの熱心な訴えかけに


思わずお互い顔を見合わせた


「世迷い事とは思いますが、見るだけ見に行ってみますか!?」


「そうですな、百聞は一見にしかずという言葉もありますし」


「ここはこの者の顔を立てるという意味合いも込めて見に行くか


 巨大な火の鳥だと!?実に馬鹿馬鹿しいが・・・」


三人は本堂を後にし織田軍の見える反対側の場所まで移動し空を見上げる


すると先ほどまでの余裕の態度はどこかに吹き飛び、両目を大きく見開き


驚愕の表情で絶句してしまったのだ、三人がそこで目にしたものは


今までの常識を遥かに超えた存在であった


「炎の鳥・・・何だアレは!?」


「馬鹿な、あんな物が存在する訳が無い・・・何かの幻か!?」


「なんと巨大な鳥じゃ、本物の鳳凰とでもいうのか!?」


織田軍の頭上ではばたく炎の鳥、闇夜に舞うその姿は何とも神秘的で


見ている者の心を奪う程であった、そして時折聞こえる”クワァァ~~‼”


という甲高い鳴き声が夜の静寂を切り裂き全ての人間の耳に突き刺さった


織田軍に発砲していた鉄砲隊を始め、三人の高僧もしばらく我を忘れ


その光景を茫然と見つめていた




その頃、織田軍でもゾフィの呼び出したアトロシオスフェニックスに


困惑し恐れ戦く者、呆然とする者、手を合わせ祈り始める者など


反応はそれぞれであった、そんなざわつく兵の中で


信長が供の者を連れ馬でゆっくりとゾフィに近づいて来た


「あの物の怪・・・いや炎の鳥はお主が呼び出した物かゾフィ?」


問われたゾフィはコクリとうなづく


「はい、アレはアトロシオスフェニックスと言って不死鳥の一種です」


その聞きなれない言葉に首を傾げる信長


「不死鳥?不死鳥とはなんじゃ、文字通り死なない鳥という訳か!?」


「はい、不死鳥は死んでも数日すれば炎の中から蘇り何度でも転生する


 と言われています、そしてこの子、アトロシオスフェニックスは


 不死鳥種の中でも気が荒く好戦的なんです、可成さんを殺した


 あいつらを必ず蹴散らして御覧にいれますよ」


無感情の目でそう言い放つと口元だけかすかに笑うゾフィ


一瞬ゾッとするようなその表情に信長さえも思わず息を飲んだ


「そうかお主は可成と仲が良かったな・・・


 わかったお主に任せる、あの不思議な鉄砲と


 怪しげな結界も大丈夫であるか?」


その問いに静かにうなづくゾフィ


「何の問題も無いですよ、ええ全く問題になりません・・・


 それよりこの子があの鉄砲と結界を蹴散らし比叡山を


 炎で包み奴らをあぶりだします、そこからは


 お願いしますね信長公」


夜の闇の中、頭上のアトロシオスフェニックスの炎が


無感情な表情で冷徹にほほ笑む美女の顔を赤く照らす


そんなゾフィの言葉に軽くうなづく信長


「そこからはサルと光秀の仕事じゃが、任せておれ


 奴等には目にモノ見せてくれる、あ奴らの言い回しだと


 因果応報というやつじゃな、では頼んだぞ」


そう言い残し供回りのモノと共に本陣へ帰って行く信長


その後姿をチラリと見た後、頭上のアトロシオスフェニックスに


やさしく話しかけるゾフィ


「じゃあそろそろ行こうか、あいつらを蹴散らしに・・・」





比叡山延暦寺では織田軍に現れた謎の火の鳥に混乱する者が続出した


なにせこの寺には僧侶だけではなく一般の女子供も大勢いた


当然信仰心の高い者ばかりであり、なにかの宗教画から出て来たか


の様な炎の鳥の出現に皆戸惑いを隠せなかった、そんな皆の様子を見た


三人の高僧は我に返り声高に叫んだ


「あれは仏敵、織田信長が呼び出した物の怪である、いわば御仏に


 仇名す存在なのだ、しかし恐れる事はない、我等には御仏の


 ご加護がある、何も心配はいらぬ‼」


その時一人の若い僧が叫んだ


「来ます、あの巨大な火の鳥がこちらに向かってきます‼」


比叡山の者達は益々混乱する、その場から逃げ出す者や


悲鳴を上げる者も出て来た


「何をしておる、鉄砲隊はあの物の怪を仕留めよ‼」


呆然としていた鉄砲隊が我に返り鉄砲を構え迫り来る炎の鳥


目掛けて狙いを定める


「撃て‼」


発砲の号令と共に”パパーーン”という数発の銃声が比叡山に鳴り響く


巨大なアトロシオスフェニックスは標的としては狙いやすかったのか


全ての弾丸は炎の体に命中した、しかし何事も無かったかのように


無反応のアトロシオスフェニックス、続けて鉄砲を発射するが


結果は同じであった


「馬鹿な・・・あの鉄砲の弾には特殊な呪詛が施されているはず


 ありとあらゆる生き物は生命力を吸い取られ死ぬはずでは・・・」


信じられないと言った表情で上空を見上げる三人の高僧


一方、比叡山側がアトロシオスフェニックスに次々と


鉄砲を打ち込む光景を見て思わずほくそ笑むゾフィ


「馬鹿ね、あの鉄砲には生命力を吸い取る術が組み込まれて


 いるんだろうけどアトロシオスフェニックスは不死鳥なのよ


 いわば生命力の権化、貴方達のやっている事はストローで


 海の水を全て吸い取ろうとしているみたいなモノよ・・・」


比叡山側の必死の発砲も効果は無く、無数の銃声だけがむなしく響いた


遂に巨大な炎の怪鳥は比叡山延暦寺の上空にたどり着いた


真っ暗な空に赤々と燃えるその体、羽をはばたかせるたびに


降り注ぐ火の粉、威嚇とも取れる奇声を発しながら地上の人間達を


睨みつけるガアトロシオスフェニックス、その様子から火の鳥が


明らかにイラつき怒っているかがわかった


「何という、何という恐ろしい姿なのだ・・・あんなの相手に


 人間が勝てるわけがないだろ!?・・・」


ガタガタ震える僧侶達、そこにいた一般の女子供も恐怖でただただ


身をすくめ震える事しかできなかった、そんな様子を知ってか知らずか


アトロシオスフェニックスはゆっくりと降下を始める、比叡山延暦寺と


その中にいる人間達の顔が炎に照らされ赤く染まって行く、すると


火の鳥が一定の高さまで降りて来た時、何かに弾かれるように


アトロシオスフェニックスの降下が止まった


「クワァァァァ~~~‼」


怒りの雄叫びを上げるアトロシオスフェニックス、そこには青白く光る


結界が発生していた、その半透明でドーム状の結界は炎の鳥の侵入を


防ぐかのように何度も何度もアトロシオスフェニックスを弾き返した


「は、ははは、わはははは、見たか我らが結界の前には


 あのような物の怪なぞ物の数ではないわ‼」


気を取り直した高僧たちが勝ち誇ったように叫ぶ、若い僧侶達も


安堵からか一気に力が抜けその場にへたり込む


「一時はどうなるかと思いましたが、さすがですな雑賀衆の結界は」


「いや、我等の祈りが力に変ったのであろう、何にしてもこれで


 一安心じゃ」


「これで我等は大丈夫、この結界を維持し耐え続ければ


 浅井・朝倉勢や本願寺が援軍に駆けつけてくれるじゃろう


 そうなれば織田軍なぞ一ひねりに叩き潰してくれるわ‼」


そんな光景を見ていたルキアは思わずゾフィに問い掛けた


「ゾフィ、あのアトロシオスフェニックスは相手の


 結界に阻まれている様だが、大丈夫なのか?」


その問い掛けにフッと笑うゾフィ


「大丈夫よ、まあ見てて頂戴」


終始余裕の態度を見せるゾフィ、その言葉が通じたかのように


アトロシオスフェニックスは結界に仕掛けるのを止め、少しだけ


間を空けるように結界の真上で羽をはばたかせ、その場に停まる様に


ホバーリングをする、はばたかせた羽から無数の火の粉と熱風が


降り注ぐが結界に守られている比叡山にそれが届く事は無かった


「何をやっておるのだか無駄な事を、所詮は知恵の足らぬ


 物の怪風情という訳か、まるで信長という男を


 象徴している様ではないかはっはっは」


もはや勝利を確信し相手を嘲る高僧達、その時周りの人間達が


何かの異変に気付き始める


「おい、何か暑くないか?」


「そうだな、なんだか急に暑くなったような・・・」


三人の高僧達も自分達の顔に流れ落ちる汗で異変に気が付いた


「なんだ?一体何が起こっているんだ・・・まさか!?」


思わず三人は上空のアトロシオスフェニックスを見上げた


その時ゾフィはボソリと呟いた


「さあそろそろ限界を迎えるはずよ、この我慢大会に


 あなた達はどこまで耐えられるのかしら?」


比叡山を包み込んでいる青白い結界が赤く変色していく


結界の中にいる人間達はどんどん上昇する温度に悲鳴を上げ始めた


「くそっ!?まさかこんな手で我等を攻めて来るとは!?」


そんな光景を見ていたルキア達はようやくゾフィの意図がわかり


目を細めた


「なるほど、アトロシオスフェニックスの熱量で結界内の

 

 温度を上昇させ、結界自体ではなく中の人間を


 蒸し焼きにしてしまおうという訳か・・・」


「人間の耐えられる温度は精々200度が限度と言われていますし


 800度を超えると即死してしまいます、確かアトロシオスフェニックス


 の表面温度は4700度、時間の問題ですね・・・」


「結界を維持すれば蒸し焼き、結界を解けば炎に包まれる


 完全に詰んでるじゃないか、敵ながら同情するぜ・・・」


上空のアトロシオスフェニックスは休むことなく


羽をはばたかせ比叡山に熱風と火の粉を降り注ぎ続ける


結界内の人間達はあまりの高温にバタバタと倒れはじめた


「もう限界です、結界を解きましょう!?」


「おのれ、おのれ~」


高僧達は歯ぎしりしながら悔しがるが自分達の意識も朦朧とし始め


着ている袈裟はすでに汗でビショビショになっていた


「やむを得ん、本堂に行って結界を解くよう指示しろ


 そして結界解除と同時に逃げるぞ、各自散開しそれぞれ


 山を下りろよいな‼」


その指示を受け本堂に走る小坊主、そのすぐ後に結界が解かれ


アトロシオスフェニックスの放った熱風と火の粉で比叡山が


火の海に包まれた、蜘蛛の子を散らす様に逃げ出し始める


比叡山の人間達、その期を逃す信長では無かった


「今だ、全軍攻撃開始、木下軍は西側から、明智軍は東側から


 侵攻し敵を殲滅せよ、一人残らず皆殺しじゃ‼」


秀吉軍と光秀の軍が両側より一気に責め立てる、アトロシオスフェニックスの


攻撃によりすでに比叡山側は戦闘意欲を失っており戦闘というより


一方的な蹂躙と化していた、そんな中でもアトロシオスフェニックスは


怒りをあらわにし次々と比叡山側の人間を焼き尽くしていく


そんなアトロシオスフェニックスと視界を同調させ同じものを見ている


ゾフィは焼き払われる比叡山の光景を無表情で見ていた


「あなた達が悪いのよ、可成さんを殺したあなた達が・・・」


その時、ゾフィの目にあるモノが映った、それは二人の子供である


今まで無表情だったゾフィの顔に戸惑いが見えた


「ちょっと、止めなさいアトロシオスフェニックス、子供には・・・」


その言葉を聞いたアトロシオスフェニックスは混乱したかのように


激しく首を振り錯乱する、そして勢い余ってその逃げ惑う子供たちを


焼き殺したのだ、思わず目を伏せるゾフィ


「止めなさい、私のいう事が聞けないの!?止めて‼」


しかし益々混乱し暴れ回るアトロシオスフェニックス、辺り一面に


炎をまき散らし、その余波でついには味方にまで損害が出始めたのだ


その事を知らされたルキア達は思わずゾフィを見つめたが


ゾフィはその場で座り込みガタガタと震えていた


「何で・・・何でなのよ・・・」


咄嗟にルキアがゾフィを抱きかかえ優しく問い掛けた


「何があったんだゾフィ?あのアトロシオスフェニックスの


 混乱ぶりは一体!?」


そうしている間にも暴れ回るアトロシオスフェニックスにより


被害は広がっていった、震えながら小声でルキアの質問に答えるゾフィ


「あの子は今混乱しているの、あの子は感受性が強いから


 私の心の奥底にある”あいつらを許せない殺してやりたい”


 という気持ちをくみ取ってしまっているのよ・・・


 それとは逆に私の”止めなさい”という命令の矛盾に


 どうしていいかわからなくなって混乱しているのよ


 みんな私が・・・私が・・・」


そんなゾフィを頭をそっと抱きかかえるルキア、しかし状況は切迫していた


「おいどうするルキア、このままじゃ敵も味方も全滅しかねないぜ!?」


「私が結界でアトロシオスフェニックスの動きを止めてみましょうか?」


ライオスとステイメンの提案にしばらく考え込むルキア、その時ゾフィが


ボソリと口を開いた


「殺してやって・・・」


皆が目を見開きゾフィを見つめるメンバー達、普段我が子のように


かわいがっている魔獣を殺せなど、とてもゾフィの言葉とは


思えなかったからだ


「いいのかい?」


ルキアの問い掛けに無言でうなづくゾフィ


「あの子はアトロシオスフェニックス、不死鳥なのよ


 もし今死んでも何日もしたら炎の中から蘇って来るわ・・・」


ゾフィの言葉に無言で大きくうなづくルキア、その後


誰にも聞こえない様な小声で独り言をつぶやくゾフィ


「でも生き返って来ても、もう私の呼びかけには


 応えてくれないかもね・・・」


そんなゾフィの想いを受け、ルキア達は早速どう対処するべきかの


話し合いをおこなった


「まずあのアトロシオスフェニックスに対してどういった


 方法で挑むか、ステイメン作戦はあるか?」


ステイメンは少し考えた後、口を開いた


「相手が空中にいる魔獣である以上、私とフリニオーラの


 魔法で対応するのがベストでしょうね・・・」


その時、ルキアが提案するかのように口を挟んだ


「俺の剣なら空中にいる相手でも有効な攻撃は可能だが・・・」


その提案にゆっくりと首を振るステイメン


「いえ、貴方の聖剣ブレイヴ・ハートではアトロシオスフェニックスの


 不死の能力までも浄化してしまう危険性があります、もしもの為に


 止めておいた方がいいでしょう」


その言葉にうなづくルキア、そしてフリニオーラが続いた


「では私は何をすればいいのでしょうか?」


「私が対魔獣用の結界でアトロシオスフェニックスを封じ込めます


 あなたはその結界内に攻撃魔法を放ちアトロシオスフェニックスを


 倒してください、できますか?」


ステイメンの問い掛けに少し考えるフリニオーラ


「どうしましょうか、並みの魔法では効果は無いでしょうし


 かといって”ダークフレアストーム”なんか使ったら


 巻き込まれて他にも被害が出そうですし・・・


 雷撃系、炎系では効果は薄そうですし暗黒系や神聖系も


 効果のほどは疑問なのと不死の能力に影響を与えてしまう


 危険性があります、結構厄介な相手ですね・・・


 確かアトロシオスフェニックスの表面温度は4700度でしたね?


 では冷却魔法で静かになってもらいましょうか!?」


それを聞いたステイメンは軽くうなづき上空で暴れ回る


アトロシオスフェニックスを見上げた


「ではまずは私が・・・」


ステイメンが両手をかざすとアトロシオスフェニックスの真上に


巨大な魔法陣が出現した


「対魔獣結界《イビルデーモンバインド》‼」


ステイメンの叫びと共に光の鎖が発生しアトロシオスフェニックスの


体にどんどん巻き付いていく


「ギャオワァァァ~~~‼」


光の鎖を振りほどこうと必死でもがくアトロシオスフェニックス


しかし次々と巻き付く光の鎖は抵抗する炎の鳥の自由を奪っていく


「今ですフリニオーラ‼」


ステイメンの掛け声と共に軽くうなづくフリニオーラ


「ではいきますよ、絶対冷凍波《アブソリュート・ゼロ・ウェーヴ》‼」


光る鎖に動きを封じられたアトロシオスフェニックスが


白い霧に包まれていく、すると先程よりもさらに激しく暴れる


アトロシオスフェニックス


「暴れても無駄ですよ、私の放つ絶対冷凍波《アブソリュート・ゼロ・ウェーヴ》は


 マイナス273.15度、つまり絶対零度の波です、この魔法の前には


 どのような強力な炎の魔獣だろうが一瞬で活動を停止してしまいます


 私の持つ最大の冷却魔法です」


必死に暴れながらどんどん凍り付いていくアトロシオスフェニックス


ついには光る鎖ごと完全に凍結し、最後はまるでガラスが砕け散る様に


粉々になり弾けた、キラキラと光る氷の粒が上空から舞い降りて


何とも幻想的な雰囲気が辺りに漂う、ホッと一安心したルキア達を


尻目に一人涙を流すゾフィ


「ゴメンね、私のせいで・・・本当にゴメン・・・」


巨大な炎の怪鳥は、きらめく氷の粒となり闇夜に消えていった



アトロシオスフェニックスが消滅し、勢いの戻った織田軍は


比叡山の人間達を次々と殺していった、比叡山延暦寺は火の海となり


逃げ惑う人たちの悲鳴と怒号で地獄絵図と化していた


そんな時、西側を攻めていた秀吉軍の中で蜂須賀小六が秀吉に迫っていた


「もう勝敗は決した、もはや奴らに抵抗する力は無い


 せめて女子供だけは見逃してやってくれや‼」


苦渋の表情で目線を逸らす秀吉


「そうはいかんのじゃ、比叡山の者達は女子供を含めて皆殺し


 それがお館様の命令じゃ・・・」


その時小六の部下が数人の子供をつれ秀吉の陣に入って来た


その子供の一人を捕まえて小六が叫ぶ


「この子供たちまで殺すのか!?アンタの目指した武士ってのは


 そんな事をする為のものだったのか、答えろ秀吉の旦那!?」


秀吉が振り向くと小六に両肩を乗せられた子供を筆頭に


皆、上目づかいでガタガタと震えていた


秀吉はいたたまれない気持ちになり思わず視線を逸らす


「決定は覆らん、比叡山の者達は皆殺し・・・お館様の命令は


 絶対なのじゃ・・・」


怒りの表情を浮かべ睨みつけるように秀吉を睨む小六、すると


秀吉が背中を向けながらボソリと独り言のようにつぶやいた


「比叡山から逃げる人々を一人残らず殺す為、更に強力な包囲網を


 敷かねばならん、西南に抜ける小道などは誰も使わないだろうから


 あそこは外っておいて良い、兵を引き上げさせよ・・・良いな


 西南に抜ける小道じゃぞ、わかったな小六・・・」


それを聞いた小六の顔がパッと明るくなる


「御意でございます秀吉殿‼」


小六は子供たちを抱き締めて小声でささやいた


「いいかお前等、西南に抜ける小道を使って逃げろ、他の子達にも


 そう伝えてやれ、いいかその道以外は通るんじゃないぞ


 わかったな‼」


強張りながらも力強くうなづく子供たち、足早に森の中に消えていった


こうして比叡山焼き討ちは終結した、比叡山側は3000人という


犠牲者を出したと伝えられる、西側から脱出した一部の人間を除き


光秀が攻めた東側では女子供含め文字通りの皆殺しにあったという


秀吉は燃え残った比叡山延暦寺を見てルキア達に話しかけた


「拙者は百姓から武士になりたくてがむしゃらに頑張ってきました


 お館様のいう事は絶対と信じここまで来たのでござる


 しかし今回の戦いは何だったのでしょうな・・・戦には勝ったが


 これでお館様は日本の全ての仏教徒を敵に回すでしょう


 誰も得しない戦い、誰も笑えない結果、拙者のやった事は


 一体何だったのでしょう・・・」


ルキア達にはかける言葉が見つからなかった、しかし


落ち込む秀吉の肩に手を乗せ優しく微笑みかけるルキア


「確かに此度の戦いは凄惨な結果に終わりました、しかし戦乱の世が


 続く限りこのような悲劇が繰り返されるのです、その戦乱を


 終わらせるために信長公はあえて火中の栗を拾い悪名を被ってまで


 今回の戦いを決断したのでしょう、今回死んでいった者達の為にも


 一刻も早くこの戦乱の世を終わらせましょう、我々も微力ながら


 お手伝いしますから、信長公や秀吉さんの想いは必ずこの国を


 良き方向へ導いてくれると信じていますよ」


秀吉に返事は無かった、比叡山に朝が訪れ太陽がまぶしく辺りを照らす


そんな朝日を無言のままジッと見つめる秀吉とルキア達だった。





 


 


 





今回で比叡山焼き討ち編は終了です、話の演出上比叡山側の僧侶は悪役として書いておりますが

頭領格には名前を付けず”高僧”としました、よく”歴史は勝者が作るモノ”といわれます

比叡山側の悪さもそうですが、今回の内容にもあった

”秀吉が女子供をこっそり逃がした”というのは史実として残っています、しかし

”あれほど信長に忠実だった秀吉が命令違反を犯してまで本当にそんな事をしたのか?”

という声もあるそうです、まあでも”そっちの方が話的にもいいじゃん”というノリで

書きましたのでご了承ください、今回の話も少々重めの話になってしまったので

次話は本筋とは関係ないコメディタッチの話になります

”また本編から離れるのかよ、脱線ばっかだな”というご指摘はごもっともですが

私のわがままにもう少しおつきあいいただけると嬉しいです

さて次話からのコメディ話ですが予想以上に長くなってしまったので3話構成になっております

また懲りずにおつきあいいただけると嬉しいです、では。

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