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紅蓮の生命

登場人物

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉

竹中半兵衛重治…秀吉の熱心な勧誘により配下に加わった天才軍師

明智十兵衛光秀…元は足利義昭に仕えていた、鉄砲の名手であり博学の切れ者

比叡山を攻略する為、延暦寺の周りを3万人の兵で包囲した織田軍


既に空は漆黒に染まっており、厚い雲に隠れ月も星も出ていない夜空には


わずかな光さえ見せてはいなかった、そんな闇夜がまるで


これから起こる悲劇を予想し演出しているかのようにさえ思えた


今回の攻撃目標である比叡山を一人静かに見上げている信長


その脇には今回の主力軍の指揮官である秀吉と光秀が控えていた


そんな時、伝令の兵が相手側からの知らせを持って信長の元に現れた


「お館様に申しあげます、今比叡山延暦寺より申し出があり


 ”攻撃を中止してくれるのであれば、それ相応の金銭を


 献上いたします所存にて、なにとぞ御再考の程を”との事です」


その伝令兵の言葉にフッと笑う信長


「笑止、今更何を・・・中止はせぬ、今までの行いを


 精々悔やみながら死んで行け、と比叡山側にはそう伝えよ」


時間にして丑の刻(午前二時)を回ろうとしていた、伝令の兵が


去った後、比叡山を見上げていた信長はふと視線を横に移し


秀吉と光秀に何も言わず目で訴えかけた、その意をしっかりと受け止め


信長の意思を理解したかのように無言のままうなづく秀吉と光秀


両者とも自軍に対して声高々に言い放った


「夜明けとともに我が木下軍は比叡山の西側より攻め寄せ


 これを包囲殲滅する、比叡山の全てを焼き尽くし


 そこにいる者は一人残らず殺せ、女子供とて情け容赦は無用


 天下布武の為、人々が笑って暮らせる世を作る為


 我等はあえて鬼と成ろうぞ‼」


秀吉の呼びかけに”おお~‼”っと答える兵達、そして光秀も続いた


「此度の戦は、仏道に背き己の私利私欲を尽くしてきた外道共に


 鉄槌を加えるいわば正義の戦いである、皆の者恐れる事はない


 正義は我にあり、今宵は天下万民の為の戦い・・・


 そうこれは天意である、皆の者我に続け‼」


光秀の号令にも兵達は奮い立つ、もはやこの戦いを止める事は


何人にも出来ない状態になっていた、そんな中、秀吉軍に帯同していた


ルキア達が二人の言葉を静かに聞いていた


「もはや待ったなしだな、夜明けとともに・・・という事は


 あと3時間もすれば総攻撃が始まるという訳か・・・」


悲しげにそうつぶやくルキア、それにフリニオーラが続く


「今回は我々の出番は無さそうですね・・・」


「人間を・・・しかも非戦闘員である女子供まで皆殺しとは


 意図はわかるけどよ、何とも気分の悪い戦いだな全く・・・」


ライオスが吐き捨てるように言い放つ、そんな時ゼファーが


横にいるゾフィに視線を移した、いつもなら口数の多いゾフィが


今回は無言のまま目を閉じ、ジッと何か思い詰めているような風にも見えた


「ゾフィ、どうしました?それとも気分でも悪いんですか?」


ステイメンもゾフィの異変に気づき本人に問い掛けた


「ううん、何でもないわ・・・気にしないで」


ゾフィはゆっくりと首を振り無理やり笑顔を見せたが、それが逆に


痛々しく感じる程の作り笑顔であった、その時である、比叡山の方向から


”パパーーーン”という数発の銃声が鳴り響いた、暗い闇夜を


引き裂くかのような甲高い銃声は圧倒的有利な立場の織田軍を驚かせ


たじろかせた、比叡山からのまさかの攻撃に動揺する織田軍兵達


「慌てるでない、あの位置から鉄砲など届くはずがない


 しかも今は闇夜じゃ、標的の姿も見えず狙いも付けずに


 討ってきているに過ぎん、いわば当てずっぽうの攻撃じゃ


 狼狽えるでないわ‼」


動揺する兵士達を一括するかのように信長の声が響く、しかし次の瞬間


信長自身も驚愕する事態が起こった、比叡山側から鉄砲による二度目の


掃射がおこなわれた時、織田軍の数名の兵が被弾したのだ


「ぐあぁぁぁぁ~~~‼」


一発の銃弾が兵に当った時、周りの者達は信じられないモノを


目の当たりにした、被弾したその兵はあっという間に青白い炎に包まれ


叫び声を上げながらそのまま地面に倒れ込む、そしてその体は急速に


生気を失いながら干からびていき、ついにはミイラのように


枯れ果てて死んでしまったのである


「なっ!?一体何が!?」


正体不明の怪奇現象に驚愕の表情を浮かべる秀吉、そうしている間にも


比叡山からの銃撃は続き、味方の兵が次々と青白い炎に包まれ


バタバタと倒れミイラ化していった、兵達は浮足立ち未知の


攻撃による恐怖と戸惑いでパニックを起しかけていた


「やはり比叡山を攻撃するなんて言うから天罰が下ったんだ」


「たたりだ、これはたたりだ、仏様に手を出すなんて罰当りだったんだ」


「嫌だ、地獄に落ちるのは嫌だ」


ざわつく兵達を必死でなだめる秀吉と光秀、その様子を見ながら


ステイメンが一歩前に出た


「どうやら我々の番ですね・・・しかしこの攻撃は何でしょう?


 私には思い当るモノが無いのですが・・・」


「そうですね、少なくとも魔法じゃなさそうです、かすかに


 闇の波動を感じますが暗黒魔法ではありません、何らかの魔術処理を


 施されたマジックアイテム、もしくは魔術武器ではないでしょうか?」


フリニオーラが自分の推測を述べてゼファーに問い掛けた


武器やアイテムに関してはメンバー随一の知識を誇るゼファーでは


あったがこの不可解な現象には首を傾げていた


「う~んわからないな・・・判断する材料が少なすぎるのもあるが


 こんな現象を起すマジックアイテム何て聞いたことが無い・・・」


頼りのゼファーですら究明できない怪異現象に


思わずルキアが顔をしかめた


「ゼファーでもわからないとは・・・一体敵は


 何をやっているのんだ!?」


「とりあえず味方を守る結界を張りましょう・・・フン‼」


ステイメンが両手を広げると織田軍を包み込むように半透明の結界が


発生し相手の攻撃に備えた、秀吉を始め皆がホッと安堵の表情を


浮かべたその時である、再び放たれた敵の銃撃は何とステイメンの


展開した結界をすり抜け、再び味方の兵達に損害を与えたのだ


「えっ!?」


「嘘だろ!?」


「まさか!?」


ルキア達は思わず驚きの声をあげる、絶句し声も出せないステイメン


しかしそんな事はお構いなしとばかりに鳴りやまない敵からの銃撃に


次々と倒れていく味方兵、このままでは兵達が完全にパニックを起し


逃げ出し始めるのも時間の問題かと思われた


「すみません、私は思い違いをしていたようです、改めて結界を


 張り直します・・・」


気を取り直したステイメンが改めて結界を張り直す、今回の結界は


緑色に光り輝き織田軍を包み込む、するとその緑色のオーラを纏った


ドーム状の結界は敵からの銃撃を全て弾き返し、見事に防ぎ切ったのである


それを期に秀吉はなんとか味方の動揺を鎮めると共に統率を取り戻した


「ふ~ 一時はどうなる事かと思ったでござるよ・・・


 しかしこれで一安心でござるな」


ようやく安堵する秀吉、しかしステイメンの表情は厳しいままだった


「安心するのはまだ早いですよ、この結界は完全防御結界といって


 ありとあらゆる攻撃に対応できるモノではあります、しかしそれ故に


 魔力の消耗が激しくそれほど長く持ちません、できれば敵の攻撃の


 正体を早く暴いて、その内容に適した局種結界に切り替えないと


 再び相手の攻撃に身をさらす事になってしまいますから・・・」


その言葉を聞いて秀吉の顔から血の気が引き焦りの色が見えた


「それは大変でござる、敵の攻撃の正体はまだ判明しないのでござるか!?


 ゼファー殿でもわからないのでござるか!?」


せかす様に問いかける秀吉だったが、いくら考えても思い当たるモノは


なかった、そんなゼファーの様子を見てルキアが秀吉の横にいた


竹中半兵衛に近づき質問した


「この比叡山の鉄砲はどこから入手した物なのか


 わかりますでしょうか?」


半兵衛は手を口に当て真剣な表情でしばらく考えた


「本来、比叡山延暦寺には鉄砲を入手できる経路は無いはずです


 しかし今現在鉄砲を相当数保有し運用している事を考えますと


 推測ではありますが、本願寺から流れて来ているのではないか?


 と考えられます、両者宗派は違いますが今回比叡山と石山本願寺は


 同盟を組んでいるかのような動きをしておりますからおそらく


 間違いないでしょう、そしてその本願寺に鉄砲を供給しているのは


 ”雑賀衆”でしょうね・・・」


ライオスの目つきが厳しく変り思わずつぶやく


「また”雑賀衆”か、傭兵に武器の斡旋・・・全く戦争屋そのものだな」


「その”雑賀衆”について詳しく教えていただけませんか!?」


ルキアが再び半兵衛に問い掛けそれに対し大きくうなづく半兵衛


「わかりました雑賀衆は”さいがしゅう”と呼ばれていますが


 ”さいかしゅう”とも言われ鉄砲の保有数と鉄砲つくりの技術


 そして鉄砲の射撃精度は凄まじいモノを持っていると聞いています


 しかし皆さんも知っての通り雑賀衆は一枚岩ではありません


 何人もの頭領格の人物がいて、それぞれの班が傭兵として雇われ


 時には敵味方に分かれてでも戦う戦闘集団であり主義主張や


 思想によって動くことは少ないと言われていますね・・・


 しかしそんな雑賀衆の中にあって、一人だけ傑出した人物がいます


 その名を”雑賀孫一”と言い、優れた統率力、民衆を引き付ける人間力


 そしてずば抜けた鉄砲の腕を持っていると聞いています


 しかしこの雑賀孫一という人物は謎が多く、見た者が極端に少ない


 のです、ですから


 ”雑賀孫一は人物ではなく頭領に代々受け継がれる名称だ”という説や


 ”雑賀孫一は複数いる”などと様々なうわさが絶えないのですよ」


その話を真剣な表情で聞くルキア達、するとフリニオーラが腕を組み


何やら真剣に考え込みだした


「さいか・・・どこかで聞いた事がある様な・・・」


「何かわかったのでござるかフリニオーラ殿!?」


喰い気味に問い掛ける秀吉に必死に思い出そうと頭をひねるフリニオーラ


「サイカ・GC・ワン・・・」


その時ゼファーがボソリとそう呟いた


「そうです、私が思い出したかったのはサイカ・GC・ワンです‼」


何か閊《つか》えていたモノが取れたかのように明るく答えるフリニオーラ


思わずライオスがゼファーに問い掛けた


「何だそのサイカ・GC・ワンとかいうのは?人の名前にしては


 少々おかしな名前だが!?」


ゼファーは大きく息を吐き静かに語りはじめた


「全く、俺でもわからないはずだぜ”サイカ・GC・ワン”ってのは


 レスティアレ・ラドスにいる職人の呼称で、特殊アイテムを専門に


 制作するいわば工匠だ、知る人ぞ知るという人物でね、作られた


 作品数も驚嘆に少ないから滅多に市場には出回らない、だから


 あまり知られていないんだ」


ルキアとライオスが顔を見合わせ首をひねる


「確かにそんな名前は初めて聞いたな・・・それでその


 ”サイカ・GC・ワン”なる人物が制作したモノが今回使われている


 鉄砲なのか?その人物はそんなに凄いアイテムを作るのか!?」


ルキアの質問に困ったような顔を見せ頭をかきながら答えるゼファー


「う~ん、まあ凄いアイテムって言えば凄いんだが・・・確かに


 上級者向けのアイテムではあるけど・・・何と言ったらいいのか・・・」


何とも歯切れの悪い返答に戸惑うルキア達、思わずライオスが問い返す


「おい、一体どういう事なんだ?その”サイカ・GC・ワン”とかいう


 野郎の作るアイテムはどんな特徴があってどれほど凄いか手短に


 説明しろよゼファー!?」


ややイラつき気味のライオスを恨めしそうな顔で一瞥すると


少し考えて再び口を開いたゼファー


「確かに”サイカ・GC・ワン”の作るアイテムは使い方によっては


 凄まじい威力を発揮する、しかしその特殊性には色々制約があり


 使い方を限定される、簡潔にいえばピーキーなアイテム


 が多く、汎用性に乏しく非常に使い辛い・・・というのが特徴なんだよ」


ゼファーの説明にフリニオーラも続いた


「そうなんです、実は師匠がどうしても欲しくて手に入れた


 ”サイカ・GC・ワン”製の魔法の杖を見た事があります


 その時師匠が同じことを言っていました”凄く使いにくい”と・・・」


ルキアはその説明を聞いて不思議そうな表情を見せる


「アイテムとして使いにくいのでは欠陥品と同じじゃないか!?


 なぜそんなモノが凄いのか、俺にはさっぱりわからないが・・・」


フリニオーラは目を閉じ丁寧にその説明を始めた


「まず魔法についての簡単な説明からします、魔法には大きく分けて


 女神の加護を恩恵として活用する神聖魔法、闇の力を転用する暗黒魔法


 精霊を駆使してその力を借りる精霊魔法、自然界にあるモノを利用し


 力に変換する四大元素魔法の四つが存在します、そして魔法の杖は


 本来あくまで呪文成立の為の補助的な道具でしかありません、ですから


 杖が魔法の威力を高めたり、魔力の補充をおこなってくれるという事は


 原則として無いんです、術式を完成させるための魔力集中の補助や


 目標に魔法を当てる為の照準器の様なモノ、つまり魔法使いは


 ”魔法の杖”というハードによって術者の負担を軽減する役割を


 担ってもらっていると考えてくれればいいです


 しかしこの”サイカ・GC・ワン”製の杖はその原則を無視するんですよ」


「どういう事だ?わかる様に説明してくれ」


ルキアの問い掛けに目を開き、重い口調で話し始めるフリニオーラ


「今からどういう事か説明します”サイカ・GC・ワン”製の杖は


 ある特定の魔法に対して露骨に相性が存在するんです


 具体的に言えばこの杖を使用し魔法を行使した場合


 精霊魔法は効力が30%ダウン、神聖魔法に至っては


 本来の威力の50%程しか出せないんです・・・」


それを聞いたライオスが呆れるように言い放つ


「なんじゃそりゃ!?それじゃあ完全な欠陥品じゃないか!?」


その言葉にゆっくりと首を振るフリニオーラ


「それだけならば確かに欠陥品ですがメリットもあるんです


 こと暗黒魔法に至ってはこの杖を使用する事により


 威力が1.5倍ほどに上昇するのです、それがどんな理屈で


 どういった作用でそうなるのか?あの師匠でさえ最後まで


 わからないと言っていました・・・それとあの杖を使うと


 意味不明の体調不良になる事がある・・・とも言っていました


 結局、最後は師匠もあの杖を使用する事は無く完全な


 コレクションとして保管していました


 私にくれるとも言ってくれましたが丁重に断りました」


「どうして断ったんだい?特殊でピーキーなアイテム


 という事はわかるが使い方を駆使すれば強力な


 アイテムである事には変わらないだろうに・・・」


ルキアのその質問に少し微笑みながら答えるフリニオーラ


「訳がわからないモノを使う事には凄く抵抗がありまして・・・


 それに師匠と違って私はあまり暗黒魔法は得意じゃない


 ものですから・・・なにより私の得意な精霊魔法と


 四大元素魔法の威力が下がるのでは魔法使いとして


 本末転倒も甚だしいですからね」


フリニオーラの言葉に優しくうなづくゼファー


「正解だよフリニオーラ、その杖を使っちゃいけないんだ・・・


 じゃあなぜその様な現象が起こるのか説明しようか!?」


ゼファーの言葉に驚きを隠せないフリニオーラ


「わかるんですか!?あの師匠でも原因がわからなかった


 あの杖の秘密が、教えてください是非‼」


目を輝かせゼファーを見つめるフリニオーラ、彼女は職業柄と


その性格から魔術系に関する知識欲が半端なく強い、だからこそ


喰い気味にゼファーに問い掛け、その答えを待っていた、それは


”さあ早く教えてくれ”と言わんばかりの態度であった、そして


その姿は主人から餌がもらえるのを今か今かと待っている犬の姿を


連想させたのだ、そんな彼女を見て思わずクスリと笑うゼファー


『”教えてあげるから今度デートしよう”なんて言っても


 即OKしそうな勢いだなこりゃあ・・・』


そんな事を思いながらやや勿体付けて話し始めた


「”サイカ・GC・ワン”の謎、稀代の大魔法使いクルム・ハイドニール


 でも解けなかったのは理由がある、それはその作用、効果が


 魔法や魔術の類いではないからなんだ」


「どういう事ですか?魔法、魔術の類いじゃないなら


 どういった作用であのような効果を生み出していたと


 いうのですか!?」


フリニオーラがすかさず質問する、当然聞いていた他のメンバーも


同じ疑問を感じていた、その時、結界を維持しながら聞いていた


ステイメンだけが何かに気が付いたようで”あっ!?”という声をあげた


「ステイメンは気が付いたようだな、”サイカ・GC・ワン”の


 秘密、それは魔法でも魔術でもない・・・”呪い”だ」


それを聞いたメンバー達の表情が一瞬で強張る


「呪い・・・ですか!?」


「呪いのアイテムかよ、随分と物騒なモノなんだな」


「じゃあ神聖魔法や精霊魔法と相性が悪く暗黒魔法とは抜群の


 相性の良さを発揮していたのもうなづけるな・・・


 じゃあ原因不明の体調不良もまさか!?」


そのルキアの問い掛けにうなづくゼファー


「ああ呪いの反動だ、しかも”サイカ・CG・ワン”の作るモノは


 あまり魔力を必要としない代わりに別の対価を要求する・・・


 生命力だ、つまり命を削って魔法や武器の威力を増幅させる効果


 それが”サイカ・GC・ワン”の秘密なんだよ」


あまりの事実に言葉の出ないメンバー達、その静寂を破ったのは


意外にも竹中半兵衛であった


「その”サイカ・GC・ワン”たる人物の作る道具が特殊な物で


 あること理解しました、しかし今比叡山側が使っている鉄砲が


 その”サイカ・GC・ワン”製の物だとなぜわかるのですか?」


半兵衛の問い掛けに”よくぞ聞いてくれました”とばかりの笑顔を見せ


にこやかに話し始めるゼファー


「それは名前さ”サイカ・GC・ワン”、随分とおかしな名前だろ!?


 もしこの中に入っているGCという文字が”グランドチャイルド”の


 略だったらどうだ!?」


フリニオーラが手を口に当て考える


「グランドチャイルド?孫ですか・・・あっ!?


 グランドチャイルドが孫、ワンが一とするならば


 サイカ・GC・ワン・・・雑賀孫一!?」


そのあまりの回答に半ば呆れ顔で呆気取られる一同


そしてすぐさまステイメンが反応した


「なるほど、この効果は呪いによるモノなのですね


 だから敵の鉄砲に被弾した兵達は呪いによって


 生命力を吸い取られていたという訳ですか・・・


 ならばそれ相応の結界を用意します・・・フン‼」


織田軍を覆っていた結界は緑色のモノから白色のモノへと変化したが


引き続き比叡山からの銃撃を防ぎ続けた、その現状を確認し


ようやく”ふう~”と一息ついたステイメン


「これでしばらくは安心です、ではこれから


 敵への対応を考えましょうか?」


「この調子だと敵側は他にも色々用意しているかも


 しれないからな、どうするよ秀吉さん」


ライオスの質問に考え込む秀吉、そんな秀吉に対し


半兵衛がそっとささやくように助言する


「相手の対応策がわからないまま攻撃を仕掛けるのは


 あまりに危険です、幸い総攻撃を予定している夜明けまでは


 まだ時間があります、探りを入れつつ相手の出方を


 見るのが賢明だと考えます」


半兵衛の助言に無言でうなづく秀吉


「探りか、しかしどうやってやればいいものやら・・・」


どういう手段で相手の対応策を探ろうかと


秀吉が頭をひねって考えている時である


「ならば私に任せてください‼」


颯爽と名乗りをあげたのはフリニオーラだった


「おお~~~やってくださるのかフリニオーラ殿!?


 さすがは稀代の大魔法使いでありますな‼」


とっさの秀吉のヨイショに気分を良くするフリニオーラ


「私が牽制と様子見の為の魔法を放ちます、魔法は万能


 魔法は最強にして最高の魔術、魔法にできない事なぞ


 ありませんから‼」


すっかり調子に乗ってご機嫌なフリニオーラ、呆れて言葉も出ない


メンバー達を尻目に意気揚々と杖をかかげ、声高に叫んだ


「じゃあ行きますよ、サンダー‼」


暗い闇夜に一筋の光が舞い降りる、それは目の前にある比叡山の


遥か上空から一直線に舞い降りた稲妻であった、轟音とまぶしい光を


伴いながらフリニオーラの放った落雷は比叡山延暦寺を直撃した・・・


かに思われたが、直撃する寸前で何かが稲妻を阻んだのである


「結界ですね・・・」


ステイメンがボソリと呟くように言った


比叡山を襲った魔法の落雷は強力な結界によって阻まれてしまった


ドーム状の青い半透明の幕が比叡山全体を覆いつくし、魔法の稲妻を


全て弾き返してしまったのだ、雷撃が収まり再び辺りに静寂が戻ると


何事も無かったかのように無傷の比叡山延暦寺が姿を見せる


それを見た織田軍の兵士達は驚きを隠せずざわつき始めた


「やはり仏様のご加護なのでは?」


「あんなの喰らって無傷とか・・・やはり人が比叡山に


 歯向かうなんて罰当りだったんだ・・・」


「あんなの相手に勝てるわけない


 やはり仏様に逆らってはいけないんじゃ~」


周りの動揺する姿を見て顔をしかめる秀吉


『まずい、やっと落ち着き始めた兵達がまた・・・』


ルキア達もジッと比叡山の方を見つめ口を開く


「フリニオーラのサンダーは普通の魔法使いの上位魔法に匹敵する


 威力があります、それをものともしないとは・・・」


「かなり強力な結界という訳か、どうするルキア?」


「そうだな、まずはあの結界を何とかしないといけないだろうが


 先程の鉄砲と同様、普通とは違う特殊な結界だと厄介だな


 どう思うゼファー!?」


「そうだねぇ~、ここまでの事を考えるとおそらく


 一筋縄ではいかないだろうね、”サイカ・GC・ワン”は


 防御系のアイテムも作っていたし、どうしたものか」


しかし納得いかない者が一人いた、サンダーの魔法を完璧に防がれた


フリニオーラである、歯ぎしりしながら睨むように比叡山を見つめている


「おのれ~、様子見と思って最弱の雷撃を放ちましたが


 こうなったらサンダーの上位魔法トゥルーメガサンダー


 いや雷撃系最大魔法アークギガサンダーをブチかまして・・・」


そんなフリニオーラの肩にポンッと手を乗せ制止する者がいた


ここまで全く口を開かなかったゾフィである


「ダメよフリニオーラ、そんな強力な魔法をブチかましたら


 結界ごと比叡山が吹き飛んじゃうじゃない・・・」


ゾフィの忠告を聞きハッと我に返り思い直すフリニオーラ


「そうですね、あそこには罪もない女子供も大勢いるとの事


 我々は信長公達では対処できない特殊な攻撃や防御に対応するのが


 役目でした、つい熱くなってしまい・・・」


そう言いながら振り向き、ふとゾフィの顔を見たフリニオーラは


一瞬ゾッとして固まってしまった、そこには今まで見たことも無い


ゾフィがいた、無表情、無感情を装い冷静な素振りを見せているものの


目の奥には憎悪の炎がメラメラと燃え盛り禍々しいまでの殺意を感じた


それを見たフリニオーラは思わず背筋が寒くなるほどであった


「ゾフィさん、一体・・・」


ゾフィはニコリと笑い優しげな口調で答えた


「貴方の巨大魔法なんか使ったらアイツら一瞬で消し飛んじゃうじゃない


 ・・・そんな楽な死に方させるもんですか、可成さんを殺した


 アイツらにはその罪の重さを散々後悔させてやるんだから・・・」


淡々とした口調ながら聞いた事も無い憎悪の声を聞きき


ゾッとして言葉が出ないフリニオーラ、そう言い放った後


戸惑う視線を向け自分を見つめるフリニオーラを尻目に


スタスタと秀吉の方へ歩いて行くゾフィ


「ねえ秀吉さん、ここは私に任せてくれないかしら?


 ようはあの結界を何とかして比叡山を焼き尽くし


 あいつらをいぶり出せばいいんでしょ!?」


冷静な口調で恐ろしい事を口にする美少女の提案に


秀吉は一瞬呆気に取られ、ポカンとゾフィを見つめていたが


ハッと我に返り半兵衛の方を見た、すると半兵衛は小さくうなづく


秀吉は真剣な表情でゾフィを見つめ返す


「ああ、そうでごござるが・・・ゾフィ殿がやってくれるのでござるか!?」


「ええ、任せて頂戴・・・」


その時ゾフィはかすかに笑った、その冷徹な微笑を見て思わず秀吉の背中に


冷ややかな汗が流れ落ちる、しかしゾフィはそんな事を気にするそぶりも


無く魔獣の召喚に入った


「汝が主 ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来なさい アトロシオスフェニックス‼」


ゾフィの頭上に赤い魔法陣が発生し、そこから炎を纏った火の鳥が


ゆっくりと姿を現した、体の大きさこそドラゴンより一回り程小さいが


赤く燃え盛る炎の翼をはばたかせ天に向かって羽を広げるその姿は


どこか宗教的なモノにすら見えた


「クワァァァァ~~~‼」


天に向かって雄叫びのように咆哮するアトロシオスフェニックス


その甲高い鳴き声はそこにいる全ての人間達の耳に突き刺さる


メラメラと体全体を燃やしながら闇夜に舞う不死鳥は何とも神秘的で


織田軍の兵達は茫然としながらその姿を見つめている


アトロシオスフェニックスがはばたくたびに羽根の先から火の粉が


飛び散り地上の人間に降り注いだ


「熱ちっ‼」


火の粉に当った兵数人が思わず声をあげる、しかしそれこそが


この不死鳥が現実であるという事の証明でもあった


「おい、あれって鳳凰じゃないのか?」


「そうだ、鳳凰だよ伝説の霊鳥、鳳凰が俺達の味方に!?」


アトロシオスフェニックスを見た兵達がにわかにざわつき始める


中にはアトロシオスフェニックスに対して手を合わせて拝み始める


者すら出始めた、その時秀吉と半兵衛は顔を見合わせうなづくと


秀吉はすかさず声を大にして叫んだ


「皆の者、目の前に降臨した火の鳥は、かの伝説の霊鳥 鳳凰である


 我が軍の味方として馳せ参じた鳳凰が我が軍が正義であるとの


 動かぬ証拠である、皆の者恐れるでない、我等には鳳凰が付いて


 おるのじゃ、今こそ我等は奮い立ち鳳凰と共に戦おうぞ‼」


揺らぎかけていた兵士の士気が一気に上がる、くしくもその事に


一役買い、鳳凰認定されてしまったアトロシオスフェニックス


しかしここから炎の不死鳥による凄まじい比叡山への攻撃・・・


いや蹂躙が始まるのをまだ誰も知らなかった。







 


 

 


 


 


 





 




比叡山焼き討ち編3話です、いかがでしたでしょうか?この話は前置きが長くルキア達の出番がほとんどありませんでしたが、今回よりいよいよ実践編です、とはいえ史実でもそれ程戦闘がおこなわれたわけではなく、織田軍が一方的に蹂躙したという話です、自分なりのアレンジで書いてみました、気に入ってもらえると嬉しいです、では。

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