外伝 父の願い子の想い
登場人物
ルース・ライオス…祖国の英雄ベルフォードに憧れ聖騎士隊に入隊する、素質と体格に恵まれ世界最強の剣士を目指す
レインヘル・ベルフォード…数々の武勇伝を持つ祖国の英雄”覇剣鬼”の異名を持つ程激しい攻撃が特徴の最強剣士、回復魔法も使う事ができるベルドルア聖騎士団の団長
ベルゲン・アインゼル…ベルドルア聖騎士団の副団長、ベルフォードの愛弟子で秘剣”霞斬り”という技を使う
レインヘル・ジュリア…ベルフォードの一人娘、小柄で非常に美人だが父の名を継ぐ最強剣士を目指している
ベルフォードの部屋にノックもせず慌てて入って行ったライオス
その後姿を不安げな表情で見ていたジュリアは部屋の外でジッとドアを
見つめていた
『一体何があったの?どうしてライオス先輩は父の部屋にあんなに慌てて
入って行ったの?・・・あの態度と表情はただごとじゃなかった』
ジュリアは嫌な胸騒ぎが治まらずグッと胸に手を押し当てた
「一体どういう事ですか、何の為にそんな事をしたんですか‼」
ライオスはベルフォードの机を激しく叩き説明を求めた、それに対し
ベルフォードは動揺する事も無く淡々と話しはじめた
「言葉の通りだ、私がお前を負けさせるために団長命令として
あの両者に毒を使う様に命じた」
悪びれることも無くそう言い切りまるでそれが当然の事だと言わんばかりの
態度に愕然とし信じられないといった表情を浮かべるライオス
「なぜ・・・なんですか!?一体どうしてそんな事を
理由を・・・理由を聞かせてください」
その問い掛けに逆にギロリと睨みつけるような視線を向け厳しい口調で
吐き捨てる様に説明を始めたベルフォード
「理由だと!?わからんか?わからないわな貴様には・・・
お前を負けさせようと思った理由、それはお前を見ていると
どうしようもなくイラつくのだ、腹が立って仕方がないからだ‼」
激しい口調で憎悪の感情をぶつけてくるベルフォードに戸惑うライオス
よもや自分が憧れ目標にしてきた人物からこのような言葉を浴びせられる
とは露とも思ったいなかった、あまりの事に絶句し言葉を失うライオス
「なぜだ?という顔をしているな・・・無理も無いこちらが勝手に
そう思っていただけで今まで必死に隠してきたからな、しかし貴様は
私の全てをぶち壊すんだ、誇りも信念も大事なモノも全てな‼」
今まで堪りきっていたモノを吐き出すかのように負の感情を向けた
しかしライオスには何を言っているのか全く理解出来なかった
「俺が団長の全てをぶち壊す?・・・何のことを言っているのか
理解しかねます、一体何ですかそれは!?」
その問いに対し厳しい視線を向けたまましばらく無言のベルフォード
だったが意を決したかのように口を開いた
「いいだろう聞かせてやる、まずお前は私が手塩にかけて作り上げた
ベルドルア聖騎士団と我が愛弟子アインゼルをその手で軍門に下し
自分のモノとした・・・まあそれはいい、強き者が全てを統べる
というのは私が決めた事であり私の信念でもあるからな
しかしどうしても許せない事がある、それはお前を見ていると
どうしようもなく若かった頃の自分を思い出すからだ‼」
興奮気味にまくしたてるベルフォードを唖然とした表情で見つめるライオス
ベルフォードは自分を落ち着かせる様に一旦息を入れ再び話しはじめた
「お前は私と同じ人間だ、どこまでも剣の高みを目指し果てしなく
強さを求める、自分より強き者の存在を許せない、強者と戦い
それを打ち破る事に最高の喜びを感じる・・・私も以前はそうだった
妻と結婚しジュリアが生まれてからも私は自分の生き方を
変えられなかった、剣の高みを目指し最強の一文字を追い求めた
そうして家庭をないがしろにした結果、妻は死んだ・・・」
ベルフォードは一旦話すのを止め目を閉じ思いにふけると再び語り始めた
「元々体も弱く王宮育ちのお嬢様だったエバンゼリンに私は甘えて
しまっていたのだ、家の事を全て任せながら一人でジュリアを育て
いつ帰って来るか、いつ死ぬかわからない私の帰りを待ち続ける
それがどれ程妻の心と体に負担をかけていたか、エバンゼリンが倒れたと
聞いて慌てて駆け付けたがもう遅かった、妻の死に目にも会えず己の
愚かさにようやく気が付いたという訳だ、そして残されたジュリアだけは
必ず私が守ると心に誓い戦いの第一線から退く事にしたのだ・・・」
先程までとは違い落ち着いた口調で淡々と語るベルフォード、ライオスも
黙ってその話に耳を傾けていた、しかし再び鋭い視線をライオスに向け
語り始めた
「そうした日常が続き、私自身”これで良かったのだ”と己に言い聞かせる
穏やかな日々が続いた・・・お前が現れるまではな‼」
声こそ荒げてはいなかったが明らかに目で敵意を向け訴えかける様に
話すベルフォード
「初めてお前を見た時すぐにわかった、”こいつは私と同じ人間だ”と
剣の高みを目指し最強を追い求める愚か者だと、そして日に日に
強くなっていくお前を見て今まで味わった事の無い感情が湧きあがって来た
私が捨ててしまったモノをお前は持ち続けている、妻への贖罪と娘の為に
私が諦めたモノをお前は目指し突き進んでいる”これで良かったのだ”と
無理やり自分に言い聞かせていた事を否定されている気分だった、そして
”俺だってあのまま最強の剣を目指し諦めていなかったら・・・”と
後悔させる、そう思わせるお前の存在が妬ましかった・・・」
思わぬ告白に驚きを隠せないライオス、そんなベルフォードに向って
反論するように口を開いた
「だったら今からでも目指せばいいじゃないですか、ジュリアだってもう
子供じゃない一人でも大丈夫でしょう、剣の高みを目指すのであれば
今からでも遅すぎるなんて事は・・・」
その話を遮るかのように声を荒げるベルフォード
「知ったような口をきくな‼若いお前にはわからんのだ自分の力が
衰えていくのを実感する虚しさが・・・一度諦めた人間に
たどり着けるほど剣の神髄というものは甘くない‼・・・
しかしそれは私が自分で決めた事、妬ましくはあってもお前を貶め
憎いとまで思った要因はそれでは無い・・・」
まだ他の要因があると告げられ困惑するライオス、もちろん全く
身に覚えがないだけに頭をフル回転させ考えてみるが答えが出るはずも
なかった、明らかに戸惑い困惑しているライオスの態度を見て
やや苛立つような仕草を見せ目を細めるベルフォード、その目はまるで
”俺がこれほどの思いで話しているのになぜわからんのだ”
と訴えかけているようであった
「わからぬか?そうであろうなお前は私と同じ人間だからな
わかるはずも無かろう・・・ジュリアだ」
「ジュリア?・・・ジュリアが俺を憎む原因・・・一体?」
その思わぬ言葉に更に戸惑うライオス
ベルフォードは気持ちを抑えなるべく平静に話そうと心掛けている様だったが
感情を抑えきれずにかすかに声は震えていた
「お前とて薄々気が付いてはいるだろう、ジュリアはお前に惚れておる
元来女子とは強き男に心惹かれるモノ、ましてやジュリアは剣士だ
強さに対して並々ならぬ思いがある、そんなあの子の常に前を走り
どうやっても到達できない高き剣、あの子がお前に見ているモノは
年頃の若い娘が抱くような淡い恋心や憧れでは無い、剣士として男として
人として全ての思いをお前に向けておる・・・」
ライオスはその言葉を否定するかのように口を挟んだ
「そんな、俺はそんな立派な人間じゃない ただただ強くなりたい
誰よりも強く、それだけの男だそれを・・・」
「わかっておるわ‼何度も言ったであろうお前は私と同じ人間だ
女を幸せにできるような人間では決して無い、娘を・・・ジュリアを
エバンゼリンの二の舞にだけは絶対にさせん、あの子だけは私が守ると
そう決めたのだ‼・・・これでわかったであろう、お前は私が諦めてしまった
モノを追い続けている上に私の一番大切なモノまで奪って行こうと
しているのだ、そんな事許せるか‼ お前にしてみれば私の言い分は
逆恨みでありお門違いも甚だしいと思うだろうが、私は絶対にお前を
認めない絶対にだ、私の理想と信念を曲げてまで守ろうとしたジュリアを
お前にだけは渡せない、あの子は私の全てだ、どんな事をしても
絶対に守る‼」
思いの丈を吐き出したかのようにハアハアと息を荒げるベルフォード
しかしその話を聞いたライオスは意外にも冷静になっていた
目の前にいる男は自分の憧れた最強の剣士では無く
なによりも娘の事を大事に思う一人の父親の姿であった
「団長の気持ちはわかりました、俺がここにいたらダメなんですね・・・」
「そうだ」
「だったら俺は今日にでもここを出て行きます
皆には上手く言っておいてください」
ライオスの言葉に少し沈黙しボソリと呟くように話すベルフォード
「ああ、すまない・・・」
両者は目を合わせず静かに話ししばらくの間部屋を沈黙の重い空気が漂った
「団長、最後にお願いがあります・・・」
「なんだ言ってみろ!?」
「俺と勝負してくれませんか?」
目線を合わせなかったベルフォードが思わずライオスを見上げた
「勝負の結果に関わらず俺はここを出て行きます、ここで聞いた内容と共に
勝負の結果も公表するつもりはありません、でも最後に俺が子供の頃から
憧れ目標にしていた祖国の英雄”覇剣鬼”レインヘル・ベルフォード
の剣をこの目に焼き付けたいのです」
ベルフォードは少し考えたがコクリとうなづきつぶやくように言葉を吐いた
「わかった・・・」
その頃ジュリアは物陰からベルフォードの部屋の扉を見つめていた
時折中から激しい口調で話す声が聞こえてきてはいたが内容までは
聞き取れず何があったのかヤキモキしながら見つめていたのだ
『ライオス先輩とお父様があんなに激しい口論をするなんて
一体何があったというの!?』
ジュリアの胸は不安で一杯になり身を切られるような気持ちになっていた
よもや自分が最大の原因になっているとは思いもよらないジュリアは
自分の尊敬する父親と憧れている先輩の激しい対立に思わず
”いっそ部屋に乗り込もうか”と思っていたところであった、その時
部屋のドアが開き二人が出て来たのが見えた、思わず出て行って
何があったのか聞こうとしたジュリアだったが二人のただならぬ雰囲気に
躊躇し事の成り行きを見守る事にした、二人はそのまま修練場に向かって行く
『こんな遅い時間に修練場に行くなんて・・・今日ライオス先輩が
倒れた原因でも探りに行くのかしら?』
もうすでに修練場は真っ暗でありもちろん誰もいない、昼間の熱狂ぶりが
嘘のようにガランとした雰囲気はどこか寂しさすら感じさせた
この修練場は本来夜間に使う事を想定されていない、だから魔法による
灯りがあるにはあるがそれはあくまで補助灯であり、ろうそくの光より
やや明るいといった程度であった
「夜間戦闘だと思えば問題なかろう、お前も異論はないな」
ベルフォードの問い掛けに無言でうなづくライオス
そのまま練習用の木刀を二本持ち出しライオスへと投げた
物陰から見ていたジュリアはそこでようやく気が付いたのだ
『戦うんだ!?お父様と先輩が、でも一体どうして!?』
そんなジュリアの疑問を知る由もなく二人は対峙する
昼間と違い物音一つしない薄暗い修練場の中央で
相手を見つめる両者、剣を脇に構えいつでも攻撃に移れる姿勢を取る
ベルフォードに対し静かに迎え撃つ構えのライオス
開始の合図を出す審判もいない為、静かな睨み合いがしばらく続いた
その時、曇りがちの夜空からふと月が顔を出した、その月明かりが
修練場の窓から差し込むとそれを合図にするかのように両者が同時に動いた
「ダアアアリャアアァァァーー‼」
ベルフォードが声をあげて渾身の一撃を打ち込む、それを受け止めた瞬間
驚愕の表情を浮かべるライオス、それからベルフォードの連打がライオスを
襲うが全て難なく受け止める、そして5,6度打ち合った時、つばぜり合いの
状態からライオスが力づくで相手を引き放し怒りの表情で叫んだ
「何だこの打ち込みは‼これが・・・これが本当に”覇剣鬼”の剣か!?
こんなモノが・・・俺が憧れ目標にしていた剣だというのか!?」
そんなライオスの失望と落胆が魂の咆哮ともいえる叫びに変る
それに対し自嘲気味の笑みを浮かべるベルフォード
「ふん、失望したか・・・そうだこれが今の私の全力だ、お前から見たら
さぞかし脆弱な剣であろう、これが一度諦め衰えた剣士の末路だ
しかし私は負けん、お前に負けるわけにはいかないんだ‼」
そう叫びながら再び渾身の力で打ち込むベルフォード
それを悲しげな表情で見つめるライオス
勝負はあっという間についた、ベルフォードの剣は宙に舞い
”カラーン”という音と共に無情にも床に落下した、腕を押えて両膝をつく
ベルフォードの鼻先に剣を突き付けるライオス、悔しそうな表情を浮かべ
絞り出す様に口を開くベルフォード
「お前の勝ちだ・・・何か言いたい事があるなら言ってみろ」
ライオスには何の感情も沸かなかった、無表情で憧れだった剣士を見下ろし
無言でベルフォードを見つめていた、嬉しさも感激も無くただただ虚しい
だけの勝利、ベルフォードにしてもライオスに何も言われない事が
余計に己の惨めさを際立たせ心は屈辱感で一杯だった
それは物陰からこっそり見ていたジュリアも同じであった
自分が憧れ尊敬していた父の剣がこうもあっさりとライオスに敗れた・・・
ジュリアにしてみればどちらに勝って欲しいと思っていた訳ではない
いうなればどちらにも勝って欲しかったしどちらにも負けて欲しくは無かった
無茶な理想を言えば双方互角のまま勝負つかずという結末を望んでいた
しかし現実にそんな事あり得る訳もなく無情にも決着はついた、しかも
ライオスの圧勝という形で、その厳しい現実にショックを受けていた
さらにジュリアにトドメをさすような言葉が耳に飛び込んできたのだ
「じゃあ俺はこのまま出て行きます、もうあなたと合うことも無いでしょう
俺をここまで鍛えてくれた事には感謝しています、ではさらばです
皆には上手く言っておいてください・・・」
勝負の事には何も触れず静かにそう言い放つライオス
床に両膝をつきうつむくベルフォードにクルリと背を向けその場を
去ろうとした、本心では”ジュリアにも一言伝えて欲しい”と言いたかったが
その気持ちをぐっと抑え無言のまま立ち去ろうとした
しかしその経緯を聞いていたジュリアは頭の中が真っ白になり
パニックになっていた
『何?今何て・・・ライオス先輩がいなくなる!?ウソでしょ、どうして?
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・」
頭は混乱し状況を飲み込めないでいた、今起きている事が認識できない
思考は停止し理解も納得もできない、ただただ膨れ上がる感情の波だけが
ジュリアを突き動かした、その時ジュリアは自然と飛び出していた
「待ってください‼」
ライオスの背中に浴びせかける絶叫にも似た魂の叫び、その声に
ライオスとベルフォードが目を丸くしてジュリアを見つめた
「ジュリア・・・いつからそこに!?」
驚きのあまり思わず問いかけるベルフォード、それに対し冷静さを取り戻し
静かに問い掛けるライオス
「聞いて・・・いたのか?」
その問い掛けに真っ直ぐ力強い視線を向けながらうなづくジュリア
「ここを出て行くというのは本当ですかライオス先輩!?」
「ああ本当だ・・・」
無感情を装った口調でそう答えるライオス、その言葉にジュリアの両目が
大きく見開いた
「ライオス先輩、私は一剣士としてあなたに真剣勝負を申し込みます
ベルドルア聖騎士団条項第13項に基づき文字通り真剣による勝負です
よもや受けないとは言いませんよね!?」
そのジュリアの申し出にさすがのライオスも驚きと動揺を隠せなかった
ベルドルア聖騎士団条項とはベルフォードが設立時に定めた規律であり
騎士団内の秩序と統制を目的とした規則である、その中の第13項とは
”席次の下の者が上の者に挑む時のみそれを是とする、対決方法は挑戦者に
決定権があるが挑戦者が敗れた場合、命を落としても致し方なしとみなす
そして敗者は聖騎士団を退団する事”という非常に厳しいモノである
実際はそんな勝負をせずとも月に二回の席次順位戦があるので
負けた場合よくて退団、悪ければ死ぬというそのあまりにも大きな
リスクの為に誰も使おうとした者がいなかった
当然過去一度も適用された例が無いのである
元々ベルフォード自身この規律は騎士隊員同士の確執を無くそうと
抑止力として作った規律である、それがよもや実際に持ち出され
しかも自分の愛娘が適用するとは思ってもみなかったのである
「何を・・・何を言っているのだジュリア・・・止めろ、止めなさい
これは団長命令だ、今すぐ第13項の適用など撤回するんだ‼」
「いいえ止めません、この規律は例え団長であっても止める権利は
無いはずです、そんな事お父様もご存じでしょう」
「止めてくれ・・・頼むジュリア・・・」
ベルフォードは目に涙を浮かべながら娘に訴えかけるが全く
聞く耳を持たないジュリア、強い目線をライオスに向けたまま瞬きもせず
ジッと見つめていた、ライオスはまるでその視線から避ける様に背中を向けた
「断る、その勝負は受けない‼」
「なぜですか!?上の者は下の者の挑戦を受ける義務があるのですよ」
「俺はもう聖騎士隊員じゃない、だから受ける義務もない」
「逃げるんですか!?ライオス先輩ともあろうものが勝負を受けずに
負けを認めるというのですか!?」
「ああ逃げる、俺の負けで結構だ、俺はお前とは戦わない‼」
背中越しに断固拒否すると言い切るライオス、ベルフォードが思わず
安堵の表情を浮かべた、しかしジュリアは止まらなかった
無念そうに目を閉じその場でスッと正座した
「ジュリア・・・一体何を?」
父の問い掛けに答えることも無くジュリアは正座したまま腰の剣を
引き抜くと自分の首元に当てた
「ライオス先輩にこの勝負を受けてもらえないのであれば、私はここで
自分の首をかき斬って自決します‼」
衝撃の言葉に思わず振り向きジュリアを見つめるライオス
そして益々狼狽えるベルフォード
「何を言っているんだジュリア!?俺が勝負を受けないと自決って・・・
何をどうやったらそんな結論になるんだ!?」
「そうだジュリア、お前の言っている事はメチャクチャで支離滅裂だ
馬鹿な真似は止めなさい‼」
二人の言葉にも微動だにしないジュリア、まるで間違っているのはそちらだ
と言わんばかりの口調で話しはじめた
「私は剣士として正当な決闘の申し出をしているのです、それを
受けてもらえない・・・こちらが相手より技量が上だというのであれば
負けを認めて勝負を辞するという事も納得もできます
しかし私より遥かに強い相手に情けをかけられ受けてもらえないのです
剣士としてこんな屈辱がありますか!?
私はこれほどの辱めを受けて自分は剣士などと名乗れません
私は命より名を惜しみます、私の名はレインヘル・ジュリア
武門の家に生まれし者として”覇剣鬼”の名を目指す者です‼」
ジュリアの言葉を聞きベルフォードは何も言えなかった
今更ながらにライオスにした事を恥じ、自分には何も言う資格はなく
今の自分の言葉はジュリアに届かないと悟ったからである
しかしジュリアの本心も複雑であった、剣士としての誇りを賭けての
言動、行動である事には違いないのだが根本はどんな事をしても
ライオスを引き留めたい、その一心で動いているのである
今のジュリアは頭で考えず感情だけで突き進んでいた
もはや説得は不可能だと悟ったライオスはジュリアの目を見つめ答えた
「わかった・・・お前の想い受け止めた、この勝負受けよう」
ライオスの言葉に少しだけ口元が緩み軽くうなづいたジュリア
ジュリアにしてみれば昨日の席次戦から数えて三度目の真剣勝負である
しかしどうしても負けられない戦いはこれが初めてだった
思わず剣を握る手に力が入る、そんな彼女の気持ちとは裏腹に
薄暗い修練場を雲間から顔を出している月明かりが優しく照らしていた。
ライオス編5話です、いかがだったでしょうか?本当はこの5話で完結のつもりだったのですが
外伝の最後はいつも長くなってしまい”2回に分ければ良かった・・・”と後悔していたので
今回は分けてみました、次話が最終輪になりますので気長におつきあいください、では。




