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意地と誇りの下剋上

登場人物

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉

竹中半兵衛重治…秀吉の熱心な勧誘により配下に加わった天才軍師

浅井長政…近江の戦国大名、信長の妹お市を嫁に持つ義理の弟、信長に反旗を翻す。

遠藤直経…浅井軍随一の知将にして1,2を争う剛の者、伊賀忍者とも言われる勇将

姉川の戦いは織田・德川連合軍の大勝利で幕を閉じようとしていた


真柄十郎左衛門などの奮闘で全滅を免れた浅井、朝倉軍はそれぞれ自分達の


居城へと撤退していった、信長は浅井軍を執拗なまでに追撃したが結局


敵軍総大将、浅井長政を討ち取る事はかなわず、小谷城に逃げ込まれて


しまう、すると信長はすぐさま引き換えし横山城を全軍で包囲するように


命じた、横山城を囲む織田の大軍の中で秀吉はジッと城を見上げていた


「さすがにもう持ち堪える事は無理でしょう・・・」


そんな秀吉に向ってボソリとつぶやく半兵衛、常在する兵力も少なく


もはや小谷城からの援軍など望めない絶望的な状況では横山城にいる


浅井兵のとれる選択肢は二つ、城を枕に討ち死にするか、降伏するか


という苦渋の決断しか残されていなかった、結局横山城は降伏する事となり


織田の軍門に下る事となった、そしてその城主として秀吉が任命された


「拙者が城主でありますか!?」


驚きのあまり信長に問い返す秀吉


「今回の功労としてお主に任せる、しっかりやれいサル‼」


その言葉にひれ伏し深々と頭を下げる秀吉


「有難き幸せ、この木下藤吉郎秀吉 全身全霊を持ってお館様に


 お仕え致しまする‼」


その言葉と態度に軽くうなづく信長、その時秀吉がひれ伏しながら


信長に問い掛けた


「恐れながら申し上げます、お館様にお伺いいたしたいのですが


 この此度の褒美はこの秀吉、身に余るほどの光栄であり


 感謝の言葉もございません、しかしなぜ拙者なのでしょうか?


 今回拙者はそれほど目覚ましい活躍をしたという


 覚えがありませぬが・・・」


秀吉は恐る恐る信長の顔を見上げた、すると信長はニヤリと笑った


「とぼけおって・・・小賢しいぞサル、こっそりルキア達を配置したのが


 お主の差し金だという事ぐらい、わからぬこのワシだと思うたか!?


 お主のサル知恵など、とうにお見通しであるわ‼」


叱る様な口調ながらもどことなく嬉しそうに語りかける信長に


満面の笑みを浮かべ再びひれ伏す秀吉


「御見それいたしましてございまする、お館様の恩為にこのお役目


 必ず全うしてみせまする、横山城はお任せあれ‼」


その言葉に大きくうなづき立ち去る信長、その場にいたルキア達と


半兵衛も思わず顔がほころんだ、その時半兵衛の元に人が近付き


何かを耳打ちした、その瞬間半兵衛の表情が豹変し厳しいモノへと変わる


「わかりました、すぐに私が行きましょう・・・」


半兵衛は小声でそう言ってその場を後にした




一方その頃、小谷城の城内では浅井長政が父久政に激しく問いかけていた


「信長の命が今宵限りとはどういう意味ですか!?


 一体何をするつもりなのですか父上!?」


「慌てるでない長政、もはや賽は投げられておる あとは黙って


 良き報告を待っていればよいのじゃ、ヒ~ヒッヒッヒ~」


明らかに尋常ではない父の様子に困惑する長政、再び問いかけるも


常軌を逸している久政からはまともに返答が返ってこない、諦めて


周りを見回す長政、すると何かに気が付いた、この場には生き残った


浅井家の重鎮達は皆顔を出していたのだが、一人見当たらなかったのだ


「遠藤直経の姿が見えぬがどうした?討ち取られたとは聞いておらぬぞ!?」


その言葉にようやく父久政がピクリと反応しニヤリと笑った


「遠藤直経はここにはおらぬ、なぜなら今信長の近くに


 いるはずじゃからなヒ~ヒッヒッヒ~」


久政の言葉に深刻な表情で問いかける長政


「まさか直経に信長を・・・いや無理だ、いくら直経でも


 一人でどうにかなる相手では無い、一体何をお考えですか父上!?」


長政の問い掛けに返事が喘って来る事は無かった




遠藤喜衛門直経 浅井家譜代の家臣であり浅井家随一の知将でありながら


腕っぷしも強く力自慢の戦上手という智勇兼ね備えた勇将である


長政からの信頼も厚く何かあった時にはいつも直経に相談していた程である


伊賀忍者とも交流があり自身も忍者だったのでは!?といわれており


そんな流れで情報通としても昔から浅井家を支えてきた


それゆえに早くから信長の力を見抜いており織田と浅井の同盟の際には


”織田信長は危険な人物です、今の内に暗殺してしまいましょう”


と進言した事もあった、長政からの反対で実現しなかった、そして今回


この浅井家の一大事に直経が一世一代の大博打に出た、なんと浅井軍の武将


三田村左衛門の首級を掲げて織田の武将に成りすまし織田の本陣に


入り込み信長の暗殺を企てようとしたのである


「すまんな、これも浅井家の為・・・もうすぐワシもそっちに行く


 その時改めて詫びを入れるから許せ・・・」


そう言って死んでいる三田村左衛門の首級を取った、周りは浅井兵と織田兵の


死体が折り重なる様に転がっており、川も大地も血で真っ赤に染まっていた


その戦場跡の悲惨さから、今でもこの姉川の地方には”血川”や血原”といった


地名が名づけられている程だ、直経はそんな周りの悲惨な光景を見つめた後


死んでいた織田兵の装備を身に着け首級を片手に堂々と織田軍の中を


進んで行った、織田の本陣の位置すらわからない直経はキョロキョロと


辺りを見回す、織田軍は勝ち戦により戦勝ムードが高まっており兵達は


報酬の話や尾張に帰ったら何をしたいか、などの話で大いに盛り上がっていた


そんな雰囲気の中で直経は近くにいた兵に話しかけた


「ちょっといいか?敵将の三田村左衛門の首級を揚げて来たのだがお館様に


 確認して欲しいのじゃ、お館様の本陣はどっちじゃったかの?」


話しかけられた兵達は驚き直経の手に持っている首級に注目した


「お前凄いじゃないか、それが本物ならしばらく遊んで暮らせるくらいの


 報酬がもらえるんじゃねーのか!?」


直経は苦笑いを浮かべ答える


「そうなんだよ、これが本物かどうかは見てもらわねーと


 わかんねーしな、だから早く見てもらいたいんだけどよ・・・」


そんな会話をしていた時、直経の後ろから声をかけて来た者がいた


「そういう事でしたら私が案内いたしましょう、御手柄でしたね!?」


振り向くとそこには聡明そうな若者が立っていた、さわやかな笑顔で


微笑みながら案内を買って出てくれたその若者に直経はついて行った




その頃、横山城では秀吉が軽快な足取りで歩きながらキョロキョロと


辺りを見回していた、どうやら誰かを探している様子であった


「どうかしたのですか秀吉殿?」


思わずルキアが問いかけるとニコリと微笑む秀吉


「おおルキア殿、実は半兵衛の奴を探しておりましてな


 今後の事も踏まえて話したい事があったんじゃが・・・


 半兵衛が何処に行ったのかルキア殿達は知りませぬか?」


ルキア達はお互いに顔を見合わせ首を傾げた


「さあ・・・先ほどまではここにいたのですが・・・」


「何か人が来て伝言されてからどこかに行ってしまいましたよ


 耳打ちでの伝言だったから内密の話だったようで内容までは


 わからなかったですが・・・」


それを聞いて腕組みしながら首を傾げる秀吉


「う~ん一体何があったというのじゃ、半兵衛の奴も意外と秘密裏に


 事を進める傾向があるしの・・・上役であるワシにぐらい一言あっても


 良いのにのぅ・・・全く困った奴じゃ」


優秀すぎる家臣に思わず苦言を呈する秀吉、その時ルキア達全員が心の中で


つぶやいた


『いや秀吉さん、貴方も信長公に内密で我々を動かしたじゃないか!?』


上役と家臣の立場と思いというのは永遠に理解できないモノなのかもしれない


と皆が感じた瞬間だった、その時不意にゾフィが背中を向けその場を去ろう


としたので、思わず秀吉が問いかけた


「何処に行くんでござるかゾフィどの!?」


その問い掛けにニコリとうなづき答えるゾフィ


「レディに向ってそんな失礼な質問はナンセンスですわよ」


そう言ってウインクするゾフィ、思わず顔を赤らめる秀吉


それ程までにゾフィの仕草は可愛かった、ゾフィは幼少期から”女とは”


という教育を無理やり植えつけられどういった態度や言葉が男を喜ばせるか


可愛く美しく見えるか!?という事を叩き込まれてきた


ゾフィ自身その知識と経験を黒歴史としてとらえ嫌っていた為


普段はなるべくそれを出さないように心掛けているものの


元々可愛くてスタイル抜群の女性なのだ、その気になればフェロモンと


女子力が全開の超絶美人として振る舞う事が可能なのである


そんな立ち去るゾフィの背中をボ~っと見つめる秀吉の視線をよそに


どこかへ消えていくゾフィだった




織田信長に会う為、若者に連れられ遠藤直経は森の方向へと歩いて行った


森に入り人気ひとけも無い森の道で思わず周りを見渡す直経


「お館様は随分変わった所におられるのですね!?」


そうは言いながらも若者の背中を見つめ警戒を強める直経


『バレたか!?もしそうだとしても人気のない森の中というのは


 こちらにとって好都合だ、いざという時には・・・』


直経は握りこぶしに思わず力を込めいつでも戦える状態になっていた


「着きましたよ」


若者は静かにそう言い放った、しかし待っていたのは信長ではなく


静かな目をした優男であった、何でも見透かすようなその瞳に思わず


目線を逸らしたじろぐ直経


「あの・・・信長様・・・いえお館様は?」


ここまで連れてきた若者に尋ねる直経、しかし若者はその問いに


答えることなくフッと笑った、そして代わりにその優男が口を開いた


「お館様はここにはいません、私の名は竹中半兵衛重治、そしてあなたを


 案内したこの者は竹中重矩たけなかしげのり、私の弟です」


思わず厳しい表情を見せ目を細める直経


『竹中半兵衛だと!?あの織田軍きっての天才軍師と名高い男か!?


 今ここで動くか!?しかし・・・』


思わず腰の剣に手をかけようとする直経、しかし当初の予定通りあくまで


とぼけてふるまった


「何ですかこれは?私はお館様にお会いしてこの首級を・・・」


直経が言い終わる前に半兵衛がスッと右手を上げると周りの森の茂みから


隠れていた数十名の織田兵が現れた


「もう観念したらどうですか、貴方が浅井の手の者だという事は


 すでに露見しています、ここは潔く・・・」


その時半兵衛の後ろから一人の女性がスッと現れた、ゾフィである


思いもよらぬゾフィの登場に半兵衛を始め織田兵も驚きを隠せない


「一体どうしたのですか!?それよりよくここがわかりましたね」


「まあね・・・そう言えばさっき秀吉さんが探してたわよ半兵衛さん」


「ええそうですか、この一件が済んだら伺いますので・・・」


そんな半兵衛の言葉をちゃんと聞いているのかどうか怪しい程に視線はずっと


直経を見つめゆっくりと近づいて行くゾフィ


「あなたが半兵衛さんのお目当てのおじさん!?しかし臭うわね~あなた


 私と遊ぶにはもう少し身綺麗にしてもらわないと、鼻が曲がりそうだわ」


いきなり現れた若い女性の登場に直経も面喰っていた、突然現れ自分を蔑む


様な発言にどう対応するか戸惑っていた


「いやあなたの様な若くて美しい女子おなごと遊ぶ様な甲斐性を


 拙者は持ち合わせておらぬ、それに先程まで戦場で殺し合いをして


 いたのじゃ、血や汗、臓物の匂いで臭いのはご勘弁してくだされ」


苦笑いを浮かべながら必死に誤魔化す直経に冷たい視線を向け


無表情のまま冷徹に言い放つゾフィ


「臭いって言っているのはそういう意味じゃないわよ、アンタが虫臭い


 って言っているの!?」


その言葉にハッとし驚いた様な表情でゾフィをマジマジと見つめる直経


そんな二人に割って入るかのように半兵衛が問いかけた


「あの・・・虫臭いとはどういう意味ですかゾフィ殿?」


再び驚愕の表情を浮かべゾフィを凝視する直経、そしてしばらくの沈黙の後


突然笑い始めたのだ


「ふ、ふははははは そうかお前がゾフィ・・・第十四代ライドン家当主


 ライドン・ゾフィか!?会いたかった、会いたかったぞ小娘‼」


先程までの温和な態度から一変し不気味な笑いと狂気の表情を見せる


直経、周りを囲む織田軍の兵も思わず後ずさりするほどの禍々しさを


かもしだしていた、皆が息を飲みたじろいでいる場面でゾフィだけが


何事も無かったように冷静に直経を見つめていた


「やっぱりアンタ蟲使いね、蟲独特の臭いがしたからすぐにわかったわ


 どうしてこの世界にいるのか知らないけど宗家の当主である私と


 やりたいって事でしょ、身の程知らずも甚だしいけど最近私だけ


 暇を持て余してるのよ、暇と一緒に潰してあげるわさっさと


 かかってきなさい」


ゾフィは格下に”胸を貸してやる”と言わんばかりの態度で手招きしていた


その言葉と態度に不快な表情を隠さない直経、怒りにブルブルと震え両拳を


握り締めながら睨むようにゾフィを凝視した


「貴様らはいつもそうだ・・・我等蟲使いを馬鹿にして格下扱いをする


 我々蟲使いとお前ら召喚魔術師にどんな差があるというのだ


 使役するのが魔獣か蟲かという差だけではないか‼


 寧ろ無数の集団で襲い掛かれる蟲の方が魔獣なんかよりも


 遥かに強いのだ・・・そうだ我等は格下などでは無い、寧ろ我らの方が


 上の存在であるべきなのだ、宗家という地位にあぐらをかいている


 ライドン家に今こそ我らの積年の恨みと実力を見せつけてやる


 無数の蟲達に骨まで喰われるがいいわ‼」


堪りきった欝憤うっぷんを吐き出すかのように声高に言い放つ直経


それに対しあくまで平常な態度を崩さないゾフィ


呆れる様にため息をつきながら面倒臭そうに口を開いた


「ごちゃごちゃ言ってないでさっさとかかって来なさい


 アンタ達蟲使いと私達召喚魔術師が同等!?馬鹿馬鹿しくて


 反論する気も起きないわ・・・」


ゾフィの態度に益々怒りを募らせる直経、怒髪天を突くと言った感じで


もはや言葉すら出ずブルブルと怒りに震えていた、そんな直経にゾフィが


トドメともいえる言葉を投げつけた


「さっさと片付けてあげるから来なさい、蟲使い程度が何を血迷って


 私に挑んで来たのか知らないけど、ちょうどいいわ・・・


 格の違いって奴を教えてあげるから、有難く頂戴しなさい」


正に一食触発といった場面で今にも直経が仕掛け戦いが始まろうしていた時


ゾフィは背後に人の気配を感じ思わず振り向く、するとそこには


ルキアを始めメンバー全員が揃っていた


「大丈夫だったかゾフィ!?」


「長い小便だと思ったら・・・こんな事だろうと思ったぜ!?」


「まだ戦いは始まっていないのですね、ならば我々も出来る限りの


 サポートをさせてもらいますよ」


「おいおいゾフィ、俺を差し置いて他のオッサンとイチャついてるとか


 止めてくれよ~俺も仲間に入れてくれ」


「ゾフィさん抜け駆けはダメですよ、私も戦います、いいですよね!?」


先程まで余裕だったゾフィが味方の到着により逆に焦り始めた


「何言ってるのよ、これは私の戦いよ邪魔しないで、大体ルキアや


 ライオス達はさっきまで戦ってたじゃない、フリニオーラは金ケ崎で


 戦っているし、私だけ最近戦ってないのよ、後から来て勝手に


 戦いに混ざろうとしているんじゃないわよ‼」


援軍として来たつもりのルキアはゾフィの逆切れに戸惑うも他のメンバーは


どうやらゾフィの心境がわかるらしく”ヤレヤレ”とばかりの態度を見せ


手を引きゾフィに任せることとした、メンバー相手に丁々発止した後


改めて向き直り直経に話しかけるゾフィ


「待たせたわね、相手は私一人だから安心しなさい


 さあ仕切り直して戦いを始めましょ‼」


「無理をしなくとも良いのだぞ!?なんなら全員を相手にしてやろうぞ


 我が蟲使いの術によって全て骨と変えてやるぞいクックック」


終始冷静だったゾフィの顔が急に不快な表情に変わる


「はぁ!?冗談じゃないわよ、私一人でも余裕なのに全員がかりとか


 そんな恥ずかしい事する訳ないでしょ・・・全く!?」


直経は再び険しい顔を見せ素早く右手を口に持ってくると”ピィ~”っと


指笛をならした、森の奥までも届くかのような甲高い音が周りに響き渡ると


一瞬の静寂の後、辺りがにわかにざわつき始めカサカサという無数の


小さな音が四方から聞こえてきた、直経を囲んでいた織田兵はその


ただならぬ気配に胸騒ぎを覚え辺りを見回すがその正体は不明であった


「何だこの音は!?一体何が起こっているのだ!?」


刀や槍を構えながら周りをキョロキョロと見回す織田兵


「ぎゃあああぁぁぁ~~~‼」


一人の兵が突然叫び声をあげる、皆その声の方向を見てみると体中を無数の


虫が包み込み首から下はすでに全身虫で覆われていた


「何だこれは、た、助けて・・・」


やがて兵の首から上も全て虫が包み込む、全身虫に包み込まれたその兵は体を


くねらせ両手をバタつかせながらもがき苦しんでいたがすぐにバタリと


地面に倒れ動かなくなった、うじゃうじゃと全身を這い回る虫達が合図で


も送られたかのように一斉に兵の体から離れると、そこには無残にも骨と


化していた兵の死骸が地面に横たわっていた、その光景を目の当たりにし


言葉を失う織田兵とルキア達、半兵衛も思わず息を飲んだ


「なんですかこれは、虫・・・無数の虫が人間を襲うなんて!?」


ルキア達も深刻な表情でこの惨劇を見つめていた


「これは厄介だな、これほど大量の虫相手では剣は役に立たないだろうし」


「魔法にしても我々だけを避けて虫のみ攻撃しなければなりません、少々


 難解な問題ですね・・・」


「多勢に無勢なんてもんじゃないな・・・フリニオーラ


 こういった相手に有効的な魔法ってあるのか?・・・ってどうした


 フリニオーラ!?」


ライオスが質問がてらフリニオーラに問い掛けた時、彼女は両手で杖を


強く握り締めガタガタと震えていたのだ


「わ、私、虫ダメなんです・・・気持ち悪い気持ち悪い・・・」


その様子を見たゼファーがゆっくり首を振る


「こんな状態じゃとても魔法は無理だな・・・さてどうしたものか」


「ならば私が結界を張って虫から守りましょうか?」


メンバー達がそんな会話をしていると大きく笑い始める直経


「はっはっは、見たか我が蟲達の力を!?無数の蟲にかかれば


 剣士だろうが魔法使いだろうが単なる餌に過ぎん、わが眷族の


 糧となって素直に胃袋に納まるがよいわ、明日までには織田軍


 全てを我が蟲達が飲み込み屍の山を築いてくれるわ‼」


勝利宣言とも取れる直経の言葉と比例するかのように次々と数が増える


眷族達、無数の蟲達が地面を覆い尽くすその光景はまるで蟲による


波打つ絨毯のようであった


「じゃあ皆さん結界を張ります、なるべく私に近づいてください‼」


ステイメンが叫ぶとライオスが腰の剣に手をかけ直経を睨むように見つめた


「じゃあ手っ取り早く本体を先に倒してしまえばいいじゃねーか」


その時直経はニヤリと笑い全身に力を込めた、すると直経の体に異変が起き


”メキメキ”という音と共に背中から巨大な蟲の足が六本出て来たのだ


体も左右に割れる様に弾けていくと強固そうな外骨格に覆われた胴体が現れる


膨張するように巨大化するその体は周囲の木々をなぎ倒し巨大な蟲として


変化した直経は顔だけを残し、おぞましくも禍々しい蟲の姿に変化した


「はっはっは見たか我が秘術、お主らは知らぬだろうが体の大きさが


 同じならば全世界で最強の生物は蟲なのだ、蟲こそ最強にして最高


 この姿は究極の進化といえるモノ、一度この姿になると元には戻れぬが


 お主達と織田軍を喰いつくせばそれで本望、先に織田軍を食らいつくし


 その後じっくりお主達を殺してやる、己の無力さを嘆きながら


 絶望のまま死んで行け‼」


既に勝利を確信している直経の態度にペロリと舌を出し嬉しそうに


語りかけるライオス


「面白れえ、最強の生物か・・・相手にとって不足は無いぜ!?」


今にも直経に斬りかかろうかと構えるライオス、その時である


「余計なマネしないで頂戴、コイツは私が相手するって言っているでしょ‼」


ゾフィがややイラつきながらそう言い放つ


「クックック、そうは言ってもこの状況はどうにもなるまい


 わが眷族が全てを飲み込むところを見届けてから死ぬがよい」


直経が笑いながらゾフィを見下ろしていた、その言葉に合わせるかのように


ゾフィが両手を高々とかかげる


「汝が主 ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来なさい ブロレティアロドン‼」


ゾフィの頭上に魔法陣が発生する、青い光を放ちながら召喚された魔獣が


魔方陣からゆっくりと姿を現す、しかしその魔獣の姿を見た時、皆の表情が


思わず曇った、そして直経はその魔獣を見て思わず吹き出したのだ


「プッ、何だそれは!?冗談でやっているのか、御大層にどんな魔獣を


 召喚してくるかと思えば・・・」


ゾフィが召喚した”ブロレティアロドン”は体長は3m程の大きな魔獣だが


丸々と太っている割に手足は短く素早い動きどころかまともに動く事も


出来ないだろうと容易に想像できる姿であった、目は非常に小さく


見えているのかも怪しい程でゾウの様な長い鼻と大きな口が特徴の


出来そこないのゆるキャラの様な魔獣であった


「やはり宗家とはいってもこの程度か、こんな魔獣しか召喚できぬような


 者達から我々は散々格下と蔑まれてきたのか・・・幻滅、失望を


 禁じ得ないな・・・まあ良いそんなのは放っておいてさっさと


 織田軍と信長の首をもらいに行くか!?」


大地を覆い尽くすような蟲の大群が織田軍に向って動き始めた、黒い波が


一斉に移動する様は見ている者に何とも言えない気味悪さと恐怖感を


感じさせた、そんな光景を尻目に終始余裕のゾフィはクスリと笑う


「わかってないわね、この子の恐ろしさを・・・いいわ見せてあげなさい


 ブロレティアロドンあなたの力を‼」


ゾフィの声を合図に大きな口を開けるブロレティアロドン、次の瞬間


”パアァァァ~~~”という金属音の様な高い叫び声をあげた、すると


移動していた大量の蟲達の動きがピタリと止まった


「な、何をやっているお前ら、進め織田軍を飲み込むのだ‼」


しかし直経の命令もむなしく蟲達が織田軍に向かう事は無かった


それどころか急に方向転換してブロレティアロドンに向って移動し始めたのだ


「なぜだ、なぜ私の命令を聞かない!?」


大地を埋め尽くす程の蟲達の大群はあっという間にブロレティアロドンの


巨体に群がり包み込んだ、ブロレティアロドンは大量の蟲に包まれ


不気味でグロテスクなオブジェと化した


「何だ急にいう事を聞かなくなったからどうなるかと思ったが


 先にその役立たずの魔獣を喰いつくしただけではないか


 順序が変っただけで当初の計画に何の支障も無いわ


 ヒヤヒヤさせよって!?」


その時、大量の蟲の塊と化していたブロレティアロドンから長い鼻が


飛び出て来た、するとその鼻で自分に群がる蟲達の一部を器用に掴むと


大きく口を開けそこに放り込んだのだ


「な!?なんだと!?」


驚愕の表情でその光景を見つめる直経、ブロレティアロドンは口に放り込んだ


蟲達をボリボリ食べ始める、しばらくして再び鼻で蟲達を掴み口に放り込んだ


「これが格の違いってやつよ、よく覚えておきなさい」


そんなゾフィの言葉に焦る直経


「お前ら、もうよいその魔獣から離れよ、早く離れろ‼


 なぜ私のいう事を聞かない、一体どうなっているんだ!?」


ブロレティアロドンはまるでスナック菓子でも食べるかのように自分に群がる


蟲達を次々と食べていく、その光景を唖然としながら見つめる直経


「何で私達ライドン一族が召喚系、使役系魔術師の頂点と言われているか


 わかる?それはありとあらゆる生物に対し絶対的なアドバンテージを


 持っているからよ、どんな生物にも必ず”天敵”といわれる存在がいる


 その全ての生物の相性を把握し掌握しているのがライドン家よ


 もうわかったでしょ、この子は蟲の天敵なの、どれほど凶悪で巨大な


 モノであろうと蟲である以上この子には絶対勝てないのよ!?」


ゾフィの説明を絶望的な表情で聞いている直経


「そんな馬鹿な・・・全ての生物に対して絶対的に有利な立場にいるだと


 そんな滅茶苦茶で出鱈目な力があるか!?それじゃあ我々は絶対に永遠に


 勝てないとでもいうのか!?」


「まあ悪いけど後出しジャンケンみたいなモノよ、相手が悪かったわね


 宗家の力は伊達じゃないのよ、それに今のあなたの体も蟲になって


 いるんだったわね、お気の毒だけど・・・」


その言葉にハッと我に返る直経、振り返るとブロレティアロドンに


群がっていた大量の蟲達は全て食べつくされブロレティアロドンは


”ゲフッ”っとゲップをしていた、そしてその長い鼻でクンクン臭いを


嗅ぎ始めると直経の方に顔を向け大きく口を開けた


「や、やめろ 貴様なんぞに喰われて堪るか!?」


ブロレティアロドンは再び口から高い声をあげ始める、すると直経の体は


自分の意思とは関係なくどんどん引き寄せられていった


「なんで体がいう事を聞かない!?待て、止めろ・・・止めてくれ~~‼」


絶望的な表情で悲鳴にも近い叫び声をあげる直経、しかしブロレティアロドン


はそんな意思など関係ござらんとばかりに自分より何倍も大きな直経の体に


かぶりつきバリバリと食べ始めた、そしてその巨体を全て腹の中に治めるまで


5分とかからなかった


こうして姉川の戦いは幕を閉じた、ルキア戦場を見つめながらつぶやく


「今回もレスティアレ・ラドスからの刺客が来たな・・・」


「そうですね、しかし腑に落ちません 今回の遠藤直経や杉谷善住坊


 朝倉宗滴彼らは戦国の世で生き抜いていたはずなのに


 なぜレスティアレ・ラドスでの知識や経験を持っているのでしょうか?」


「そうよね、今の蟲使いも私の事を宗家として憎んでいたし・・・」


「そう言えば杉谷善住坊も師匠と戦ったと言っていました、魔法使いとの


 戦いにも慣れている様でした」


「これは裏がありそうだな、どうやって調べたらいいのかもわからんけど


 必ず手掛かりがあるはずだ、この一連の黒幕はかなり狡猾で相当の


 力を持っている奴みたいだしな、なぜ信長公を狙うのかもわからんし」


「今は出てくる敵を片っ端から倒す、それしかないだろ!?


 まあ俺好みの展開だがな」


「俺達は一人じゃない、どんな困難だろうが皆の力を合わせれば


 必ず切り抜けられるはずだ、必ず黒幕の正体を突き止めその


 目論見を粉砕するぞ、これからも皆の力を貸してくれ‼」


ルキアの言葉に皆嬉しそうに微笑む、これから次々と起こる困難にも


決して負けないと思えるメンバー達だった。


























 












 



姉川の戦い編の最終章です、いかがだったでしょうか?ここに出てくる遠藤直経は本当に

味方の武将の首を引っ提げ信長を暗殺しようと試みたそうです、半兵衛の弟重矩に見破られ

取り押さえられて討ち取られたそうですが、それ程の重鎮がそんな捨て身の作戦を決行するなんて

何とも凄いはなしだなぁと感心しました、次話からは再び外伝になります、ようやく5人目

ライオス編です、話が本編と外伝で飛び飛びになり申し訳なく思いますがご勘弁ください

このライオス編はまだ全部は書き終えておらず投稿ペースも週2くらいで予定しております

(大体 土、水曜日くらい)またよろしければ懲りずにおつきあいください、では。

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