戦国無双
登場人物
アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている
ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在
ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている
ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー
ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた
クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い
織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児
木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉
竹中半兵衛重治…秀吉の熱心な勧誘により配下に加わった天才軍師
德川家康…三河の戦国大名、尾張の織田信長と同盟を結んでいる、のちの天下人
本田平八郎忠勝…戦国最強と言われる武将、愛槍”蜻蛉切”を手に幾多の戦いで武勇伝を誇る德川軍の猛将
浅井長政…近江の戦国大名、信長の妹お市を嫁に持つ義理の弟、信長に反旗を翻す。
近江に進軍した織田軍は小谷城から出てこない浅井軍をおびき寄せる為
町を焼き払った後、小谷城の西側に位置する横山城を包囲した
この横山城と小谷城は姉川を挟んで距離にして5~6kmしか
離れていない為、浅井にとっては目と鼻の先を攻められているのである
無論織田軍が横山城を攻撃している事はすぐに浅井長政の耳に入った
「横山城だと、まことか!?」
長政は伝令の兵に聞き直す様に尋ねた
「はい、織田軍総勢2万、横山城を包囲し攻撃を開始したとの事
横山城より早馬で援軍要請が来ております‼」
浅井家重鎮達が重苦しい表情で話しはじめた
「まずい・・・今あそこには大した戦力は置いておらん
2万もの大軍が相手では何日も持たんぞ!?」
「なによりこの小谷城と目と鼻の先である横山城に
援軍を出さずに見殺しにしたとあっては今後
織田側に寝返る城が続出する危険性がある・・・」
「すでに城下町が焼かれておるしの・・・」
浅井家家臣達が言うまでも無く長政は焦っていた、さすがの父久政も
苦渋の表情を浮かべ言葉を発する事が出来ないでいた
そんな時、別の伝令兵が長政に報告する為城内の廊下を急ぎ足で
駆け寄って来ると皆の前で跪き声高らかに報告をし始めた
その報告により状況が一変する
「ご報告申し上げます、越前より朝倉軍の援軍8千がこちらに向かって
いるとの事、明日の朝には小谷城に到着するとの事にございます‼」
その報告に一同”おお~”という感嘆の声をあげた
中でも長政の喜び様は激しかった
「やっと来たか!?よしならば姉川にて朝倉軍と合流し
翌朝、朝霧に紛れて織田軍を強襲する、ようやく・・・
ようやく我らの戦いを見せる時ぞ、皆の者出陣じゃ‼」
”おおー‼”という声と共に一同が立ち上がり沈んでいた空気が一変し
一気に活気づいた、皆が意気上がり慌ただしくなった光景を
浮かない顔をしてジッと見つめている者がいた、お市である
お市の姿に気が付いた長政はおもむろにスッと近づき声をかけた
「明日兄上と決戦だ、今度こそ雌雄を決する戦いとなるであろう
お主にも思うところはあるであろうがこれも戦国の習いだ
許してくれ・・・」
優しげに声をかける長政に大きくうなづくお市
「私とて戦国の世に生まれた女子にございます
近江の大名 浅井長政の妻として浅井軍の勝利とあなた様の
無事を心から祈っておりまする、御武運を」
力強い眼差しで長政を見つめ返すお市
「私は本当に果報者だな、お主と出合い子宝にも恵まれた
もし此度の戦で兄上を討ち取る事になったら私を許してくれ
そしてもし私が討ち取られることになっても兄上を
恨むでないぞ、よいな」
その言葉にコクリとうなづくお市、思い残す事の無くなった
長政は真っ直ぐに前を見つめ出陣の準備の為お市の元を離れた
その後姿を愛おしげな眼差しで見守るお市であった
その頃、横山城を包囲していた織田軍にも朗報が舞い込んできた
「お館様に申しあげます、徳川家康殿の援軍が
到着にございます、その数5千‼」
その報告に織田家家臣達は”おお~”という感嘆の声をあげた
その報告には信長も喜びを隠さず口元を緩ませニヤリと笑った
その光景を目の当たりにしたフリニオーラが不思議そうな表情を浮かべ
思わず隣にいる半兵衛に問いかけた
「援軍が来て嬉しいのはわかりますが、元々来る予定だった
モノが到着しただけだというのになぜ皆さんはこれほど
喜んでいるのですか?私には少々理解できませんが」
その質問にフッと笑いながら答える半兵衛
「命のやり取りをする戦場において援軍が来るというのは
非常に心強く嬉しいモノなのですよ、それに彼らが
これほど盛り上がっているのは援軍が来たという
既定事実だけでなく、その援軍の数に歓喜しているのですよ」
その説明に今度はゾフィが不可解な表情を浮かべ問いかけた
「でも德川軍の援軍って5千よね!?織田軍2万の約四分の一じゃない
なのになぜその数にそれほど喜んでいるのよ?」
「それは織田と德川では置かれている現状と内情の違いが
あるからですよ、今德川が出せる兵の数は最大でも
約8千のはず、その内5千もの兵をこの戦いに
投入してくれたのです、そこから見てもどれほど德川殿が
献身的に織田に協力してくれているか理解できます
その心意気を感じて皆これほどまでに喜んでいるのですよ」
その説明を感心しながら聞いていたライオスが思わず口を開いた
「じゃあ今、家康公の自国にはたった3千の兵しかいないって訳か・・・
そりゃあ早く決着をつけないとヤバいわな、今回イマイチ
気乗りしない戦いだったが家康公の為にも一肌脱ぐか」
そう言ってライオスはぺろりと舌を出し目をギラつかせた
そんなライオスの様子を見てルキアがメンバーに向けて話しはじめた
「みんな各自指定の場所で奮闘してくれ、ただ何度も言うが
無理はするな、レスティアレラドスからどんな仕掛けが来るとも
わからない、特にゼファーとライオスは少しでも危機を感じたら
本陣へ退却しステイメン達と合流してくれ」
そんなルキアの言葉に目を閉じクスリと笑うゼファー
「本当に心配性だなルキアは、いくらレスティアレ・ラドスからの
仕掛けが来たとしても魔王と戦った俺達が早々
後れを取るとも思えないが・・・
まあ念には念をというしな、うら若き女性達に
心配をかけるのも気が引けるし」
そう言ってゾフィとフリニオーラにウインクした
「はぁ!?誰もアンタの心配なんかしてないわよ、私はアンタの事なんか
何とも思ってないんだから、勘違いしないでよね!?」
そう言って腕組みしながらプイッと顔を背けるゾフィ
そんなゾフィを思わずジト目で見つめるフリニオーラ
「前も言いましたがゾフィさんそのセリフは・・・まあいいですけどね」
そこにステイメンが口を開いた
「もし何かあれば私が魔法で脳内に直接メッセージを送りますから
戦いに集中しすぎて私のメッセージに気が付かないなんて事が
無いようにお願いします、万が一死んでも私が蘇らせますから
死体をバラバラにされる殺され方とかだけは勘弁してくださいね」
皆が一通り話したところでルキアが締める様に話しはじめた
「じゃあ皆各自指定の場所で頑張ってくれ、後で会おう‼」
そう言ってメンバー達は各自の配置場所へと移動していった
ステイメンとゾフィ、フリニオーラの三人が信長の本陣に着いた時
ちょうど家康がわずかばかりの供を連れて信長に会いに来ていた
信長は上機嫌で何度もうなづきながらポンポンと家康の肩を叩き
家康を迎えていた
「よく来てくれた家康殿、しかも5千もの兵を率いて自ら来てくれるとは
この信長、家康殿の想いは決して無駄にしない事を誓おうぞ‼」
「織田家の危機に我が德川家が馳せ参じるのは至極当然の事
何でしたら浅井長政の首を我が手で討ち取り、兄上に
お届けして御覧に入れるが!?」
信長は家康の頼もしい言葉に満足げに大きくうなづく
「家康殿の言葉は嬉しいが長政めの首は我がこの手で討ち取りたいのじゃ
家康殿には朝倉軍と相対してもらいたいがどうじゃ!?」
「わかり申した、援軍は援軍同士でということですな
越前の朝倉兵なぞ我が軍の敵ではないという事をお見せ致しましょう
我が三河武士の勇猛さをとくとご覧あれ、では御免‼」
そう言って軽く頭を下げると踵を返し颯爽と自陣に帰って行く家康
自陣に帰る途中で半兵衛が何やら内密で家康と話していた事を
知る由も無い信長であった
既に夜明け前の空がやや赤みを見せていた頃、浅井軍と朝倉軍が
姉川にて合流したところであった
「朝倉義景殿はいずこですかな?合戦前に
此度の礼と打ち合わせを・・・」
長政は自ら朝倉軍を迎え総大将であろう朝倉義景に会う為
わずかばかりの家臣を連れ朝倉陣営に来ていた
しかしそこに待っていたのは今回朝倉軍の総大将を務める浅倉景健であった
その事実を知った長政はわかりやすい程に落胆ししばらく無言のまま
うつむいていたが我慢できない程の怒りに唇を震わせた
「何という事だ、此度の戦いは浅井家、ひいては朝倉家にとっても
御家の存亡を賭けた戦いであるぞ、その一大決戦の戦場に
当主が来ず代理をよこすとは・・・一体義景殿は何を考えておるのか!?
我等は親族である織田家を裏切ってまで朝倉との好みを
取ったのだ、それを・・・」
長政は両目を閉じやりきれない思いを何とか飲み込むと
決意を新たにするかのように両目を大きく見開き自陣に戻って行った
翌朝、姉川付近では朝霧が白く周りを包み込み視界もままならない中で
戦いは静かに始まろうとしていた、姉川を挟んで両軍は対峙し
織田軍2万と德川軍5千の総勢25000人対
浅井軍5千と朝倉軍8千による総勢13000人の戦いである
浅井長政が自軍に向って檄を飛ばす
「よいか、この戦いに我ら浅井の命運はかかっておる
狙うは敵の総大将の織田信長の首一つ、それ以外は目もくれるな
私が先陣を切る、皆の者、我に続け‼」
”おおー!”と浅井兵が呼応する、宣言通り浅井長政は甲冑に身を包み
馬を駆りながら真っ先に軍の先陣を駆けて行った、父久政が知略、謀略に
優れているのに対し長政は軍略に長け個人的な武将としても
非常に高い武力を誇る豪傑である、右手に槍を持ち左手で馬を御しつつ
雄叫びを上げながらバシャバシャと水しぶきを上げ兵の先頭を
走り抜ける若き騎馬武者、その鬼気迫る姿は恐ろしさより
むしろ美しさすら感じる程であった
姉川は川幅も狭く水深も非常に浅い、その深さは人の膝までも無く
歩兵ですら余裕で走って渡れる程だ
そんな中、長政率いる浅井兵はついに織田軍と激突した
「浅井備前守長政ここに推参、出合え信長ーー‼」
長政の怒号が戦場に響き渡る、総大将自らに率いられた兵達は士気も高く
数の差など感じさせない程の凄まじい勢いで織田軍を蹴散らしていったのだ
その勢いに織田軍本陣は動揺を隠せなかった
「総大将自ら先陣を務めるとは・・・ずいぶんと命知らずですな」
「逆に総大将を狙いやすい分、我が軍が有利とも言えます
若さゆえの勢いなど早々続きませぬ、単なる”匹夫の勇”でしょう」
その勢いにたじろぎながらも長政の突撃を楽観視する織田家の家臣達
しかし信長はそれほど楽観視はしていなかった、これから続く苦戦を
覚悟し厳しい表情を崩さない、しかしどっしりと椅子に
座り微動だにしないその姿は皆に安心感を与え頼もしく思った
そして奇しくもその事に対してゾフィとフリニオーラの女性陣二人が
図らずも一役買っていたのである、このような戦場における陣の中で
総大将織田信長の両脇に異国の美女が二人寄り添うように
立っているのだ、それは何とも異様な光景であったが
妙に様になっているのと同時に”こんな状況でも美女を従えている信長”
というのが周りに妙な余裕と安心感を与えていたのだ
そんな時、伝令兵が信長の元に現れ跪く
「申し上げます、敵浅井軍の勢い凄まじく我が軍の第一陣が
突破されたとの事でございます、続いて第二陣も苦戦を
強いられおるとの報告にございます‼」
その報告にザワつく一同
「なんじゃと、もう第一陣が突破されただと・・・
まだ戦いが始まって半刻も立っておらんのだぞ!?」
「なんという凄まじい勢いじゃ、このままではいずれ・・・」
動揺を隠せない家臣達を一括するように声を荒げる信長
「狼狽えるなうつけ者共が、まだ戦いはこれからじゃ
こんな事で動揺するでないわたわけ‼」
信長の一括で不安を口々にしていた家臣達はピタリと黙った
それを気にする様子も無く信長はチラリと德川軍の方を見た
すると德川軍の方は織田軍と違い数で勝るはずのはずの
朝倉軍を相手に押しまくっていたのだ
「やりおるのう・・・さすがは家康、そして三河武士か
別の要因もありそうじゃがな・・・」
そう呟きニヤリと笑った
織田と浅井が激戦を繰り広げていた時、德川軍と朝倉軍の間でも激しい
戦闘が繰り広げられていた、そんな中にルキアとゼファーがいた
「おいおい、俺達の加勢なんて必要だったのか!?」
ゼファーが呆れる様に言い放つ、それ程までに德川軍の勢いは
凄かった、数の劣勢などものともせずどんどん敵陣を切り崩していく
中でも今川から德川の家臣になったばかりの高天神城の城主
小笠原氏助配下の”高天神衆”と言われる武装集団の活躍は凄まじく
渡辺金太夫を始めとする七人の活躍は後世にまで伝えられ
後に”姉川七本槍”と呼ばれる事となる、逆にそれが引き金となり
勇猛で知られる三河武士達の闘志に火をつけることなった
「あのような新参者どもにデカい面をさせるな
我等三河武士の真の力を見せつけてやろうぞ‼」
德川家の重鎮 酒井忠次の激に応えるかのように他の兵達の士気が
一気に上がる、我先にと競う様に次々と敵の首を上げていく
元々領主である朝倉義景は不在であり援軍として来ている朝倉軍は
士気も低くジリジリと押されていた
「持ちこたえよ、我が軍の方が数では勝るのだ
陣形を整え相手を迎え撃て‼」
朝倉軍総大将である朝倉景健が何とか劣勢を挽回しようと必死に叫ぶ
最初は一気に総崩れを起すか?と思われた朝倉軍だったが何とか
戦線を立て直し劣勢ながらも持ちこたえる事に成功した
「今回は例の暗黒魔術”悪意的狂騒は
使っていないようだな」
「そりゃあアレを使ったらルキアの聖剣に一蹴されちゃうからな
連中も前回で懲りたんじゃないの、寧ろ使ってくれていた方が
楽でよかったんだけどね!?」
ルキアとゼファーがそんな事を話しながら戦況を見守っていると
浅倉軍の変化に気づき、急にルキアの目つきが鋭く変った
「おいゼファーあれは!?」
「ルキアも気が付いたか、ちょっとヤバいかもね
俺達の所から間に合うのか!?」
劣勢を強いられていた朝倉軍はこの状況を打破すべく賭けに出たのだ
浅倉景健は数的優位があるうちに兵を二つに分けその内の一隊を
家康の本陣に突入させるべく編成をおこなっていたのだ
「くそっ、ここからじゃ間に合いそうにない、こんな混戦で
魔法を使ったら味方である德川兵にも被害が出てしまう・・・」
「こうなったら俺だけでも空中に飛んで德川軍の援護に・・・ん!?」
朝倉軍の編成が終り家康の本陣目掛けて突撃を開始しようとしていたその時
その朝倉軍にたった一騎で突撃していく男の姿が映ったのだ
「いくら何でも無茶だ、ライオスじゃあるまいし」
「敵にも気づかれた様だ、たった一騎じゃ時間稼ぎにもならない
間に合えばいいが!?」
急ぐルキアとゼファーの予想は見事に外れる事となった
砂煙をあげながら猛然と迫る一騎の騎馬武者を見た朝倉景健は
怪訝そうな表情で思わず口走った
「なんだあの男は?我が朝倉軍8千に対して一騎駆けだと!?
小癪な、誰ぞあの男をさっさと討ち取って来い‼」
迫り来るたった一騎の騎馬武者に迎撃の兵を差し向ける浅倉景健
20騎程の鎧武者がその男に一斉に襲い掛かった
「くそっ間に合わなかったか!?」
ルキアが悔しそうにつぶやくがその瞬間信じられない光景が目の前に
広がった、20騎程の騎馬武者が一瞬の内に討ち取られたのだ
「なっ!?」
そのあまりの光景に呆気に取られるルキアとゼファー、それは敵軍総大将
浅倉景健も同じであった、あまりの事に茫然としてしまう
「馬鹿な・・・なんじゃあの男は!?」
浅倉景健が驚き言葉を失っている時、次々と朝倉軍の迎撃兵が襲い掛かった
しかしそれらをものともせず一方的に蹴散らしていく騎馬武者
一通り敵を討ち取り、周りに敵兵がいなくなるとその男は馬上から
朝倉軍を睨みつけ高々と名乗りをあげた
「我が名は本田平八郎忠勝、我が主君德川家康に仇なす者は
この愛槍”蜻蛉切”の餌食になると知れ、命の惜しく無い者は
掛かって来い‼」
この男こそ戦国最強の武将と謳われ生涯57度もの戦いを経験しながら
かすり傷一つ負った事がないと言われる猛将”戦国無双 本田忠勝”
その人である、この時德川軍を救った怒涛の単騎駆けは
”姉川の一騎駆け”と後の世にも伝えられる史実であり
同時に”日本の張飛”とも畏れられた武勇伝である
そんな半田忠勝の前に現れた一人の男がいた、大柄で見るからに
無頼漢を思わせるその風貌、とてつもなく長くて大きい刀を担ぎつつ
ニヤつきながら話しかけてきた
「お主が本田忠勝か、うわさは聞いておる
高々田舎の小競り合いでお山の大将を気取るうつけ者とな
我こそは朝倉軍にその人ありと言われた真柄十郎左衛門じゃ
お前のその”蜻蛉切”と我の”太郎太刀”どちらが優れているか
比べてみるもまた一興よ、どうだ俺と仕合うてみる勇気があるか!?」
そう言って五尺三寸(175cm)もの刀を忠勝に突き付けた
しかしその言葉が忠勝の闘志に火をつけたのか凄まじいまでの
槍による連続攻撃が真柄十郎左衛門を襲う
「な、なんだと、これは!?」
まるで数本の槍が一度に襲ってくるかの様な錯覚すら覚える程の
波状攻撃に思わず圧倒される真柄十郎左衛門、しかしギリギリのところで
致命傷を避け持ち堪えていた、そんな姿を見てニヤリと笑う忠勝
「ほう、ワシの槍を受けここまで致命傷を受けないとは
中々の者じゃな、では今度は本気で行くとするか」
忠勝の目がギラリと光り愛槍”蜻蛉切”を高々とかかげた
その言葉に一気に血の気が引き後ずさりする真柄十郎左衛門
その二人の姿を見た朝倉兵の一人が思わず叫んだ
「真柄十郎左衛門をお助けしろ、皆でかかれ‼」
その声を皮切りに朝倉兵が忠勝に一斉に襲い掛かる
多人数が入り乱れての乱戦にさすがの忠勝も思う様に槍が振えず
多勢に無勢でもあり苦戦を強いられる事となった
そんな様子を見ていた家康が思わず立ち上がり
焦った態度を隠そうともせず大声で叫んだ
「皆の者何をしておる忠勝を助けよ、全軍突撃し忠勝を救え‼」
家康の指示により德川軍は方向を変え、忠勝のいる場所を目指して
迅速に突撃を開始した、朝倉軍対德川軍の戦いであったはずの戦が
いつの間にか一人の武将を巡っての大乱戦となっていくという摩訶不思議な
現象が起きていた、ようやく間に合ったルキアとゼファーは忠勝に群がる
周りの朝倉兵をあっさり蹴散らすと忠勝の背中を守る様に立ちはだかった
すると德川軍も忠勝を中心に集まり始め完全に体勢を立て直す事に成功した
その様子を見て朝倉軍は忠勝を狙うのを諦め、立て直しの為
一旦兵を引いた、下がる朝倉兵を確認しルキア達は改めて
忠勝と対面する事となった
「私の名はアドリアン・ルキア信長公の元で客人扱いの者です
こちらの男はギャレット・ゼファーですよろしく」
「おぉあなた方が、殿より噂はかねがね聞いております
この戦いが終わったら是非酒でも一献どうですかな!?」
その時ゼファーが笑いながら話しかけた
「忠勝さんあんた強いねぇ~、だから一つ言っておきたい事があるんだ
俺達のメンバーにルース・ライオスという剣術馬鹿がいる
アンタの事を知ったら必ず戦いを挑みたがるだろうから
なるべく顔を合わせないようにしてくれないかな?
アンタぐらい強いと殺し合いになりかねないからさ」
ゼファーの言葉に忠勝は少し厳しい表情を浮かべた後
自分を落ち着かせるように一度ため息をつき答えた
「わかり申した、我等は同盟軍の間柄、味方同士で戦い
遺恨を残す事になっても詮無き事じゃ、なるべく
顔を合わせないように努力してみよう」
その答えに微笑みながら握手を求めるルキア
「ありがとうございます、そのお心遣い感謝いたします」
「さすがは大人の対応ができる人だね、どこかの剣術馬鹿とは
大違いだよ」
ゼファーはそう言って笑いルキアと忠勝はガッチリと握手した
その時温和な表情を見せていた忠勝が急に鋭い目つきでルキアを
睨むように見つめた
「今の約定はあくまで織田と德川が同盟関係であった場合の事
もしも織田と德川が相対する事となった場合、遠慮なく戦おうぞ
その際は是非そのライオス殿が拙者とが戦えるように計らって
もらえるであるな!?」
そう言ってニヤリと笑う忠勝、ルキアとゼファーは苦笑いをしてうなづいた
『この人も本質的にはライオスと同じで自分より強い奴がいるのが
許せないタイプかもね・・・』
ルキアとゼファーは織田と德川の同盟が永遠に続く事を願った
その頃、織田軍は徳川軍とは違い苦戦を強いられていた
織田軍のしいた布陣は浅井軍によって次々と破られていく
織田軍の配置した十三列にも渡る陣は既に半分以下となっていて
浅井の兵に対応していたのは信長の馬廻(親衛隊)であったが
浅井軍の怒涛の勢いを止めることはできなかった
「押せ押せ、勝機は我にあり、敵大将織田信長を討ち取るまであと一歩ぞ‼︎」
両軍入り乱れる激しい戦場の中、長政が叫ぶとそれに呼応するかの様に
益々勢いづく浅井軍、信長の元には次々と望まぬ報告が入ってきた
「申し上げます、第九陣突破されました、今現在は第十陣が
応戦中ですが戦況は芳しく無いとの事‼︎」
「申し上げます、坂井久蔵殿、坂井喜八郎殿 討ち死に‼︎
浅井軍の勢い凄まじく我が軍の被害は甚大との事であります‼︎」
次々入るよく無い報告に浮き足立つ織田陣営の武将達
「お館様、ここは危険です一時撤退を・・・」
「ならん、各自奮闘せよ‼︎」
「であれば今こそ横山城の兵をこちらに向けてはいかがですか!?」
「まだじゃ、まだ早い‼︎」
狼狽える家臣達の進言にも耳を傾けず、前を睨みつけるように
見つめ続ける信長、再び慌ただしく駆け寄ってきた連絡兵が
信長の前で跪く
「申し上げます、第十陣が突破されました、現在第十一陣が応戦中も
戦況は甚だ厳しく、敵浅井軍の勢いを止める事叶わず、苦戦中との事‼︎」
再三に渡る良くない報告に青ざめる織田家家臣一同、敵はもはや
目と鼻の先まで来ているのだ、信長の横にいたフリニオーラも手に持つ
杖に思わず力が入る、そして信長の耳元で静かにささやきかけた
「信長公、ここは私が・・・」
「手出し無用じゃフリニオーラ、黙って見ておれ‼︎」
今度はゾフィが焦ったような表情で口を開く
「そんなこと言っててもここまで敵が来たらお終いじゃない
いいわ、だったらここは私が魔獣を呼び出して・・・」
その言葉を遮るように信長は一喝する
「手出し無用じゃと言ったであろう、男と男の戦いに女子が
口を挟むでないわ‼︎」
信長の鬼気迫る迫力に圧倒され思わず口をつぐむフリニオーラとゾフィ
その時再び息を切らせた伝令兵が信長の元に訪れ跪いた
「申し上げます、第十一陣が突破されました‼︎」
家臣一同に再び動揺が走りにわかにザワついた
その瞬間、信長は辺りを見回し軍配を前に突きつけた
「今じゃ横山城の兵を呼び戻せ‼︎」
信長の号令にフリニオーラがコクリとうなづき杖を高々と上げると
その先から火の玉のような球体がヒョロヒョロと上がって行き
頭上高く舞い上がると花火のように“パーン”と弾けた
「見ておれ長政、ここからワシが貴様に地獄を見せてやるわ‼︎」
その時信長の目は鋭く光った様に見えた
横山城では姉川の戦いを遠目で見ながら出番を待つ兵達が今か今かと
待ちわびていた、横山城の部隊を指揮しているのは丹羽長秀、そして
配下に稲葉一鉄、氏家卜全、安藤守就の西美濃三人衆がいた
「ええい、まだ命令は出ないのか、こうしている内に
戦が終わってしまうわ!?」
「そう焦るでない卜全、我等は此度の切り札じゃ使い所を誤ると
勝敗そのものがひっくり返る可能性もあるからな」
「守就の言う通りじゃ我等はお館様の命令通りに動けばよい
それが武士というものじゃ」
「お主は本当に硬いのう、頑固一徹とはよく言ったものじゃ」
そんな三人の会話を横目で聞きつつあくまで冷静を装いながら待機している
丹羽長秀も内心はハラハラしていた
『まだなのか・・・まだ命令は来ないのか!?』
その傍らで同じ思いをしている男がいる事なぞ知る由も無かった
秀吉の指示でこの隊に潜り込んでいたライオス、外見は他の一兵卒と
同じ装いで紛れていた為長秀や西美濃三人衆には気づかれていなかった
そんな時織田軍の本陣から花火のような狼煙が上がり
上空で音を立てて弾けると、それに瞬時に反応し待ってましたとばかりに
身に着けていた甲冑を乱暴に脱ぎ捨て本来の装備に戻るライオス
その時ようやく長秀や西美濃三人衆はライオスの存在に気が付いたが
その時ライオスはすでに戦場に向って馬を走らせていた
「随分と待たせやがって、その分たっぷり暴れさせてもらうぜ‼」
そんなライオスに続くかのように丹羽長秀と西美濃三人衆の軍が
動き始め戦場に向って進撃を始めた、いよいよ織田軍による
本格的な反撃が始まろうとしていた。
今回から”姉川の合戦”へと入りました、ここに出てくる”本田忠勝”戦国最強と言われ
あまりに有名な武将ですよね、たった一騎で朝倉軍に突撃し德川軍の危機を救い
それゆえにピンチに陥った忠勝を救う為、家康が軍を動かした・・・なんて漫画みたいな
展開が史実として残っているのがなんとも胸熱です、思わず”カッコいいぜ忠勝‼”と
口走ってしまいました(笑)、姉川の合戦編は後2話続く予定ですので懲りずに
おつきあいください、では。




