魔法少女は身に着けない
登場人物
アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている
ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在
ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている
ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー
ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた
クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い
織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児
木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉
クルム・フリニオーラ
仲間と共に戦国の世に転生して三年
齢18歳のごく普通ではない女の子である
史上最強の魔法使いと言われた
クルム・ハイドニールの愛弟子で
史上最年少でクルムの名を継いだ
天才魔法使い、それが彼女のよく
知られる詳細である
彼女の使う魔法という技は色々な
要素を必要とされ高度な魔法は
膨大な魔力は勿論の事、非常に
複雑な術式を組まねばならず
それは難解な数式を解く事にも酷似
しており、かなり高い知能を要求される
早い話、馬鹿ではできないのが魔法使い
という職業だ、そして当然フリニオーラ
という少女は非常に頭がいいのである
知能指数的なモノでいえばメンバーの
中でも随一でその理系的な知性は天才
と言っても差し支えないレベルに達している
それは正に魔法使いになるために生まれて
きたような人間と言っても過言ではない
魔法を愛し魔法に全てを捧げてきた彼女に
とってそれ以外の事は無関心で無頓着
ありていに言えばどうでもいいと思っていた
つまり天才的頭脳を持ちながら一般的な常識が
極端に欠落している非常に偏った人間
それがこのフリニオーラという少女なのである
例えば日々の生活の中でも食事は口に入れば良い
服は着れればよい、寝床は寝られれば良い
家は雨露が凌げればよい・・・と考えていて
毎朝、寝起きのままの姿で髪の毛ボサボサで
あわられてはいつもゾフィに怒られていた
その容姿は背が低く痩せているものの
非常に整った顔立ちをした美少女であり
織田家中でも密かに評判になっていた
幸か不幸か本人に全く自覚が無く
それゆえにまたゾフィをイラつかせた
今回はそんな魔法少女におとずれた
ある悲劇をお伝えしよう・・・
ある日の朝、フリニオーラは上機嫌で
ゾフィの部屋に向かっていた、いつもは
身だしなみの事で怒られてばかりの
朝だったがこの日は違った
実は彼女に魔法以外にも好きな事が出来たのである
それは風呂、つまり入浴する事だった
彼女が元いた世界レスティアレラドスには
風呂という文化は無く魔法によって
暖められた水を人口の滝の様な仕組みで
上から流し体を洗うという方法を取っていた
だからこの世界の風呂という文化を知り
暖かい湯船につかってボーっとする事が
とても好きで毎朝の様に入浴していた
今日はゾフィも誘って風呂に行こうと思い
鼻歌交じりに廊下を歩いていた
しかしゾフィの部屋の前に来ると中から
話し声が聞こえてくる
どうやら先客が居る様だった
「いや~中々どうして
凄いモノでござるな!?」
「そうでしょ!?この子はね
・・・」
部屋の中から聞こえて来る声で来客は
秀吉だとわかった、やや躊躇したものの
部屋の襖をノックするフリニオーラ
「はいどうぞ」
その声に襖を開けるとゾフィと秀吉が
ある魔獣を挟んで話していた
「あらフリニオーラ、こんな
朝からどうしたの?」
「おぉフリニオーラ殿
おはようでござる
今日拙者はゾフィ殿に
魔獣の使い方を教わって
いたでござるよ」
フリニオーラはふと視線を移しその魔獣を
見て思わず顔をしかめた、それは
嫌な記憶を思い出させる
アイシーラビットだったのだ
「なんでこの魔獣がいるんですか?」
苦々しい顔で問いかけた
「秀吉さんに魔獣の使役方法を
教えてくれと頼まれたから
魔力負担の少ないこの子を
使ったんだけど・・・
何でそんな嫌な顔してるのよ?」
先程までの上機嫌はどこかへ吹き飛び
目を細め睨むような視線でアイシーラビット
を見下ろすフリニオーラ
「私、その魔獣にはいい思い出が
無いものですから・・・」
それを聞いて思い出したかの
ように手を叩くゾフィ
「あっ、そうか!?
あんたゼファーとの模擬戦の時
アイシーラビットに散々
いたぶられたもんね!?」
その言葉に更に顔をしかめるフリニオーラ
『ゾフィさんは本当に
普通は言いにくい事も
ズケズケと言ってきますよね・・・
ステイメンさん程ではないにしろ
結構無神経なところがあります
まあ嫌じゃないですけどね・・・
私に姉がいたらこんな感じ
なのでしょうか?・・・』
そんな事を思いながらクルリと反転し
背中を見せるフリニオーラ
「私がその魔獣を好きになれないのは
わかりますでしょ?一緒にお風呂に
行こうと誘いに来たんですが・・・
忙しそうですので一人で行きます」
そう言って部屋を出て行こうとした
そんなフリニオーラの背中越しに語りかけるゾフィ
「よく見てよフリニオーラ
この子はゼファーの子とは
違うのよ、ほら
鼻の部分がハートの形していて
あっちより全然可愛いでしょ!?」
その言葉にもややイラつくフリニオーラ
「そんなの私にはわかりませんよ
どっちも同じにしか見えません‼」
苛立ちながらそう言い放ち早足で
ゾフィの部屋を後にした
「ああいうところがどうにも
合いませんよね・・・
そもそも他の生物を
可愛いと思うこと自体
私には理解できません・・・」
ブツブツ言いながら風呂場に向かう
フリニオーラ その遠ざかる足音を
聞いて秀吉が問いかけた
「良かったのでござるか?」
「いいのよ、明日になれば
ケロッとしてるんだから
あの子は・・・それより
魔獣の使役法なんだけどね
この子は戦闘用じゃないから
練習として紙や布を運ばせる
訓練をしてみたらどうかしら?」
秀吉はキョトンとした表情で問いかけた
「紙や布を運ばせる訓練でござるか?」
「そうよ、このアイシーラビットは
凄く賢いのよ、私だったら言葉で
何でも意思を伝えられるけど
秀吉さんにはまだ無理ね
でも訓練次第で戦場で紙や
布を運ばせて伝令とかに
使えたらいいんじゃない?
馬と同じくらいの速度で走れるし
馬と違って疲れないから
訓練次第でどんなに遠くても
最速で運んでくれるわよ」
それを聞いて表情が明るくなる秀吉
「それは凄いでござるな!?
早速訓練してみるでござる
どうやってやればいいの
ですかな?」
ゾフィはスッと立ち上がり
広い部屋の両隅に空箱を置いた
「最初はこの両隅の箱から箱へ白い布か
白い紙を運ばせる事から始めるの
そしてだんだんその距離を離して
最後には遠く離れた場所へ運べるか
を訓練すればいいわ!?」
「なるほど、それはいいでござるな
では早速やってみるでござるよ」
秀吉はゾフィの指導の下アイシーラビット
を使役する訓練を始めた、秀吉は思いのほか
筋が良く魔獣使役の訓練は順調に進んだ
しばらく訓練を続けていると部屋の外から
人の近づいて来る音がして部屋の前で止まると
室内に呼びかける声が聞こえた
「秀吉様、お忙しいところ申し訳ありません
今、将軍足利義昭公より書状が届きました
いかがいたしましょうか?」
秀吉は将軍足利義昭との連絡係の役目も
任されていた為、まず部下がそれを
報告に来たのである
「わかったそこに置いておけ」
「かしこまりました」
そう言って部下は去って行った
「拙者は将軍より書状が届いた事
お館様に報告せねばなりませぬ
また今度教えてくだされ」
「わかったわ、また今度ね
秀吉さん中々筋がいいわよ」
その言葉に嬉しそうに微笑み照れながら
部屋を後にする秀吉、残されたゾフィは
これからどうしようか考えていた
「今からお風呂行っても
フリニオーラはもう
出ちゃうかもしれない
しな・・・そうだ!?」
ゾフィは何かを思いついたように
アイシーラビットを見つめた
「アンタの可愛さをフリニオーラに
わかってもらおうよ、一緒にいれば
あの子も絶対気に入るはずよ
もう風呂から上がる頃だし
行って可愛がってもらいなさい」
そう言われたアイシーラビットは
軽くうなづきピョンピョン跳ねながら
素早く部屋を後にし風呂場へと向かった
一方フリニオーラは湯船につかり
一人で風呂を満喫していた
「はぁ~いつ入ってもいいですねぇ
このお風呂という文化は・・・
もしレスティアレラドスに
帰る事が出来たら絶対に風呂を
作りましょう、みんな喜んで
くれるはずです・・・」
そんな事を考えながら湯船につかっていると
脱衣所にアイシーラビットが現れた
キョロキョロと辺りを見渡しても
フリニオーラの姿が無い為、戸惑っていると
着替えを入れてある箱状の物に目線が止まった
するとアイシーラビットは先ほどの訓練を
思い出しその箱の中から白い布を取り出すと
それを咥えながら元いた部屋に戻って行った
部屋に戻るとそこにはもう誰もおらず部屋の隅には
一つの箱が置いてあった、アイシーラビットは
その箱を器用に開けると咥えていた布を
そこに入れ、箱に入っていた紙と入れ替える様に
咥えてまた風呂場へと向かった
再び脱衣所に着いたがまだフリニオーラは
入浴中だった為アイシーラビットは
咥えて来た紙を箱に入れ再び布を咥えてその場を
立ち去ってしまったのだ、そしてそれと
入れ替わる様に風呂場から出てきた
フリニオーラが服を着る為に脱衣所に来た
「ふう、いいお湯でした
今日は少し長湯をして
しまいましたね・・・
さて着替えて部屋に
・・・あれ?」
フリニオーラの顔つきが変わる
「おかしいですね・・・
着替えのパンツがありません
ちゃんと持ってきたつもり
でしたが・・・」
しばらく探してみたがどうしても
無かったために探すのを諦めた
「しょうがないですね・・・
あまり気分のいいモノじゃ
ないですが履いて来たパンツで
一旦部屋に戻り新しい物と
履き替えましょう・・・
部屋のパンツは洗濯して
まだ乾いていないと思いますが
魔法で瞬間乾燥すれば
問題ないでしょう・・・
さすがに下着を三枚しか持って
いないのは少なすぎたかな!?」
そう言って履いてきたパンツを探すが
それも見つからなかったのだ
さすがに顔色が変わり焦って探し回るが
どうしても見つける事は出来なかった
しかしそこには見覚えの無い紙が
一枚入っていた、慌ててそれを
手に取るとその紙には何かビッシリと
文章が書いてあったのだが
何が書いてあるのか全く読めなかった
「なんですかこれは!?
う~んこっちの文字は
さっぱり読めませんね
・・・はっ!?まさかこれは
”あなたのパンツいただきました”
という犯行声明文ですか!?
ふざけるな!?
私の大事なパンツを‼」
フリニオーラは怒りのあまりその
書状をクシャクシャに丸め床に叩きつけた
どうしようかしばらく考えていたが
仕方がないのでノーパンのまま
服を着て部屋に戻る事にした
「なんかスースーします
何とか無事に部屋に
戻れれば・・・」
恥ずかしげに廊下を歩きながら
部屋への無事帰還を願うが
そんな淡い期待も無残に打ち砕かれる
「あっ、いたいたフリニオーラ~」
背後からの声にビクッと反応し
嫌な予感のまま恐る恐る振り向くと
その声の持ち主はゾフィだった
しかもそこにはメンバーが
全員揃っていたのだ
「随分長い風呂だったわね」
「朝から風呂とは優雅だな」
「朝風呂は気持ちいですからね
健康にも良いのですよ」
「今度俺と一緒に入ろうよフリニオーラ」
ニコやかに話しかけてくるメンバー達
焦りながらも思わず質問するフリニオーラ
「皆さんお揃いでどうしたんですか?」
「いや足利義昭公からの書状の事で
我々にも出席して欲しいと信長公
からの要請でね、みんなで向かう
ところだったんだ、君を探していた
からちょうどよかったよ」
ニコリと笑いながらそう語るルキア
しかし早く部屋に戻りたいフリニオーラは
どう説明するべきか考えていた
「いやその私は一旦部屋に・・・」
その時フリニオーラの腕をガッチリつかみ
部屋に戻ろうとするのを引き留めるゾフィ
「ほら行くわよ、何か緊急らしいし
それともどうしても部屋に
戻らなきゃダメな理由
でもあるの?」
風呂上がりだというのに大量の汗が
噴き出てくるフリニオーラ
『今ノーパンだから急いで部屋に
帰らせてくれ‼・・・
なんて事、みんなの前で
言える訳ないじゃないですか!?』
口をパクパク動かしながらも真実を
いう事が出来ないフリニオーラは
ゾフィに引きずられるように
連行されていった
ルキア達が到着すると信長を始め
織田家重鎮達が既に集まっており
いつでも会議を始められる状態であった
「遅くなりました信長公」
ルキアの言葉に静かに
うなづき口を開く信長
「うむ、お主らにも急に来て
もらったのは他でもない
足利義昭公からの書状が
届いたとの事でな、皆の
意見も聞きたいと思い
集まってもらった次第
なのじゃ」
そう言うと家臣の一人が義昭からの
書状が入っている箱を信長の前に
差し出す、そして信長がその箱を
開けた時、顔をしかめ思わず口走った
「なんじゃこれは?」
信長が箱から取り出したのは
フリニオーラのパンツだった
「はうわあぁぁぁ~~~‼」
思わず立ち上がり奇声をあげるフリニオーラ
その声に皆が驚き注目が集まる
「どうしたんだフリニオーラ?
気分でも悪いのか!?」
心配そうにルキアが声をかけた
あまりの事に思考が追いつかないフリニオーラ
『なんで私のパンツがあんな所に!?
でも”それ私のパンツです‼”
何てこんな大衆の前で言える訳
無いじゃないですか!?しかも
今ノーパンって事がバレたら
私は単なる変態痴女扱いですよ・・・
しかもあのパンツさっきまで
私が履いていた方じゃないですか!?
一体何がどうなって?・・・』
おかしな静寂がおとずれ
思わず信長が問いかけた
「何かこれに思うところでも
あるのかフリニオーラ?」
再び口をパクパクさせながらも真実を
いう訳にはいかないフリニオーラは
必死にその場を取り繕う言い訳を考えた
「いえすみません・・・
急に発声練習をしたく
なりまして・・・」
その瞬間その場にいた全員が
フリニオーラの歌を思い出し顔が歪む
「この場では止めてくれるか
フリニオーラ・・・」
信長にそう言われ、コクリとうなづき静かに座った
とりあえず彼女の歌を聞かずに
済んだ一同は胸をなでおろす
当のフリニオーラも胸をなでおろしていた
『ふぅ、何とか上手く誤魔化せました
ここは何事も無くやり過ごし
後でひっそりとパンツを回収
する事にしましょう・・・』
新たな作戦を立案しその作戦遂行の為に
全力を尽くす方針を固めたフリニオーラ
しかし次々と起こる非常事態に苦戦を
強いられることとなる
「ふむ、しかしこれは一体何じゃ?
見たことも無い布じゃの・・・」
信長はパンツを不思議そうにジロジロ眺め
厳しい視線を向ける、その仕草を見て
再び汗が噴き出るフリニオーラ
『そんなにジロジロ見るのは
止めてください、それ私の
パンツなんで・・・』
「お館様、その白い布には
何も書いてないのですか?」
「うむ、何も書かれてはおらん
一体どういうつもりで義昭は
このような物を送りつけて
きたのやら・・・」
部下の質問に深刻な表情で答える信長
『どういうつもりもこういうつもりも
ないですよ、パンツ送りつける将軍
とかいる訳ないでしょ!?
いい加減そのパンツには何の意味も
無いと誰か気づいてください
早く事態の収束を・・・』
思いもよらぬ方向へ話が進んで行きそうな
予感に益々焦るフリニオーラ
その時信長が秀吉に問いかけた
「サル、この白い布は本当に
義昭から送られてきたもので
相違ないのだな!?」
その質問に思わずビクッと反応する秀吉
逆にフリニオーラの表情がパッと明るくなった
『そうですよ、将軍があんな物を
送ってくる訳ないのですから
秀吉さんが”違います”と言えば
何の問題無いじゃないですか!?
ようやく問題解決ですね
一時はどうなる事かと・・・』
ホッと胸をなでおろしているフリニオーラ
しかしそんな彼女の思惑とは逆に
秀吉は内心焦っていた、義昭からの書状が
届いたと家臣から報告を受けてはいたが
中身までは確認していなかったからである
今更”中までは確認して無かったです”
とは言いだせない為、必死に考えた挙句
顔を横に背けボソリと言い放った
「その布で間違いないでござる」
その瞬間フリニオーラの顔から血の気が引く
『嘘つきーーーーー‼』
フリニオーラは心の中で大声で叫んだ
一体何がどうなっているのか
さっぱりわからなかった
そんな彼女の意思とは関係なく
パンツへの探求は続いた
再び家臣の一人が口を開いた
「送りつけてきておいて
何も記されていないというのは
一体どういう事なんでしょう
その布にはどんな意味合いが
あるのでしょうか?」
『だから意味なんか無いですよ
パンツなんですから!?
いい加減気づいてください
お願いしますから~‼』
正に心の叫びであった
そして信長が一人の男に向かって問いかけた
「半兵衛、お主はこれをどう思う?」
質問した相手は竹中半兵衛だった
フリニオーラは祈る様な気持ちで
半兵衛を見つめる
『半兵衛さん、博学で聡明な
貴方ならそれが何か気づき
事態を良い方向へと導いて
くれますよね・・・
お願いします半兵衛様‼』
その祈りが通じたのか半兵衛は
口に手を当て真剣な表情で考え込んでいた
そして少しの沈黙の後、静かに語り始めた
「その布には何か重大な声明が
込められているのでは
ないのでしょうか!?」
『お前もかーーーーい‼』
心の中で思わずツッコミを入れてしまう程
フリニオーラの期待は無残に打ち砕かれた
そして追い打ちをかける様に信長も続く
「うむ、言われてみれば
そう思えなくも無いな
・・・しかして半兵衛
その声明とはどのような
モノだと推察する!?」
再び考え込み答える半兵衛
「そうですね、それが
普通の一枚の白い布だった場合
”白旗”という意味にとれます
義昭公が何やら裏で動いている事は
周知の事実です、それを放棄し
信長公に従います・・・
という意味にも取れます
しかしそれが一枚の白い紙だった
場合、全く逆の意味合いを持ちます
白紙の書状・・・つまり
”もうあなたと話す事はありません”
という意味と取る事が出来ます」
厳しい表情で半兵衛を見つめる信長
「なるほど全く逆の意味合いか
これの捕え方によってこちらの
対応が全く変わって来るという
訳じゃな・・・全く厄介な物を
送ってきよって・・・」
いぶかしげに表情を曇らせる信長
『いや送ってませんから
それ何かの間違いで
入っただけですから
・・・』
再び半兵衛が真剣な表情で語り始めた
「何にしろその布の奥には
とんでもないモノが隠されている
と思えてなりません・・・」
『隠されてますけど!?
その布にはいつも色々なモノを
隠してもらってますけど!?
でも、とんでもないモノでは
無いので何かスイマセン‼』
フリニオーラが心の中で
ツッコミ続けている時
後ろからヒソヒソ話をする
声が聞こえてきた
ライオスとゾフィが
小声で話しているのが
聞こえて来たのだ
「おいアレってパンツ
じゃねーのか?」
「そうよね・・・
男性用にしては小さいから
サイズからすると
女性用か子供用か・・・」
「話している内容だと
コッチの世界ではパンツ
が無いみたいだしな」
「じゃあ私達が教えてあげた方が
いいんじゃない?」
その会話を聞いてフリニオーラの
全身から滝の様な汗が流れ落ちる
『マズイです、ピンチです
ヤバいです絶体絶命です
・・・
もはやアレが私のパンツ
だという事が露見するのは
時間の問題です・・・
ならばここは死ぬほど
恥ずかしいですが自ら
名乗り出て少しでも傷が
浅く済む事を考えましょう
勇気ある撤退です‼』
意を決したフリニオーラはそっと挙手した
「あの~いいですか?・・・」
その時後ろにいたステイメンがにこやかに
微笑みながら口を開いた
「あのパンツはゾフィの持ち物
ではないのですか?」
その瞬間、勢いよく立ち上がり
烈火のごとく怒り狂うゾフィ
「はぁ!?何言ってるのよ
ふざけないでよ‼
私があんなみっともない
下着付けている訳ないでしょ!?
そもそもあんなダサくて
カッコ悪い下着、若い女性が
使う訳ないじゃない‼
もし私があんなの使ってる
なんてみんなの前でバラされたら
舌噛み切って死ぬわよ
馬鹿にしないでよ‼」
興奮気味にまくしたてる様に言い切るゾフィ
その発言に完全に硬直し石化して
しまったフリニオーラ
『そんなに私のパンツって・・・
舌噛み切って死ななきゃ
いけない程の罪ですか!?
師匠、もうすぐおそばに
行くかもしれません
・・・』
固まってしまったフリニオーラの両目から
一滴の涙がこぼれ落ちた
ルキアがそんなフリニオーラに声をかけた
「さっき何か言いかけた様だったけど
もういいのかいフリニオーラ?」
「モウイインデス・・・
キニシナイデクダサイ・・・」
絞り出すような声でルキアの
問い掛けに何とか答えた
一方いきなり口論を始めたゾフィ達に
ザワつく城内、思わず信長が問いかけた
「一体何があったのじゃ?
これについて何か
わかったのか?」
その問いに微笑みながら答えるステイメン
「それは我々の誰かが使っている
下着かも?と思ったのですが
そんなみすぼらしい下着を
身に着ける者などいる訳ないという
結論に達し、解決しました
どうもお騒がせしました」
そんなステイメンに殺意の目を
向けるフリニオーラ
『あなたとはいずれ決着を
つけなければいけないと
思っていましたが
どうやらその時が来たようですね・・・
元々あなたには私に対する
数々の余罪があり
現在執行猶予中だったのです
これで有罪が確定しました
刑の執行は明朝八時、今のうちに
辞世の句でも考えておく事を
お勧めしますよ』
凄まじい殺気を放ちステイメンを睨みつけた
そんなフリニオーラの背中を見て
ゼファーが思わず声をかける
「おいフリニオーラ・・・
何か背中から闇の波動が
出てるぞ!?」
そんなゼファーを反射的にキッと睨みつけた
「気のせいですよ‼」
あまりの迫力に一瞬言葉を失った
ゼファーだったが
「いや気のせいって・・・
実際背中から闇の・・・・」
再び殺意を含んだ目で睨みつけ
言葉を遮る様に言い放った
「気のせいだって言ってるでしょ
ぶち殺しますよ‼」
その目は魔王戦でも見せなかった程の
怒りと殺意に満ち溢れていた
「あぁそう・・・
すまない気のせいだった」
迫力に押され思わず謝るゼファー
そして話は戻り再び信長は手の中のパンツを
マジマジと見つめていた、その様子を見て
家臣の一人が助言するように信長に告げる
「足利義昭公にはこれからも
最大限の警戒をした方が
良いと思われますね」
信長は手中の布を握り締め
怒りに満ちた表情で口走った
「おのれ義昭、ワシの野望を邪魔する
奴は許さん、必ず貴様の思惑など
引き裂いてくれるわ‼」
『あの引き裂くのは勘弁してください
3枚しかないんで・・・
それにパンツ握り締めて
そんな熱く語られても、何か
下着ドロの決意表明みたいに
見えてしまいます・・・
はっ!?まさかそれが
”信長の野望”の正体ですか?』
するとしばらく腕組みしながら
考え込んでいた秀吉が口を開いた
「お館様、その布に何も
書いてないのであれば
何か別の手段で伝えて来た
とかは無いのですか?
例えば臭いを嗅いでみる
とか・・・」
『やめろこのド変態‼
そんなことしたら
ダークフレアストーム
ブチかますぞ‼』
信長は呆れたように言葉を返した
「うつけが、そのような事で
わかるはずも無かろうが
もっと真剣に考えてみよ」
その言葉に大きくうなづき
微笑むフリニオーラ
『さすが信長公ナイスです‼
どこまでもついて行きます‼』
信長はふとルキアにも問い掛けた
「ルキア、お主はどう思う?」
「そうですね・・・私はその
布にはそこまで深い意味は
無いのでは!?と考えています」
その言葉を聞いてようやく心に
希望の光が差し込み表情が明るくなる
フリニオーラ
「ほう、それはどういう判断じゃ?」
「はい、義昭公は今非常に厳しい
立場にいます、だからこそ
意味の無いものにこちらが勝手に
意味を持たせて深読みしすぎる
事こそ向こうの思うつぼ
だからこそそのような布に
惑わされる事無くこちらの意思を
貫く事こそ大事なのではない
でしょうか?」
その助言に考え込む信長
「なるほど、一理あるの
敵の策謀にワザワザ
嵌ることも無いか・・・」
ルキアはうなづき話を続けた
「そうです、そのような
卑劣で下賤な布などに
惑わされず己の信じる道を
突き進む事こそ重要だと
私は考えます」
『わ~い、さすがは勇者ルキア
素晴らしい答えです~~~
でもその卑劣で下賤な布の持ち主から
一言いわせてもらいますと
そんな男の一言が女を
深く傷つける事もあるって
覚えておいてくださいね
・・・』
もはや涙で皆の姿も見えなくなっていた
そんなフリニオーラの様子をみて
全てを把握したゼファーが
突然挙手をし発言した
「ちょっといいですか信長公
私に心当たりがあります
この件は私に預けては
もらえませんか?」
驚いて振り向くフリニオーラに
ウインクして答えるゼファー
結局この件はゼファーが預かる事となり
後日、何故か風呂場の隅で発見された本物の
書状を見つけ出したゼファーが信長公に
それを渡し一件落着となった
フリニオーラのパンツも無事に持ち主の
元に返り全てが上手く治まったかに思えた
そして今日も朝風呂につかりながら
考え事をしているフリニオーラ
『結局なぜ私のパンツが
義昭公の書状と入れ替わった
のか・・・それだけは最後まで
わかりませんでしたねぇ・・・
さすがにそんな事ゼファーさんに
調べてくれとは言えないし
下着ドロを探す為に術式を
考えるなんてあまりに
馬鹿馬鹿しいですし
本当に犯人は一体・・・』
そんな事を考えながら風呂から上がると
脱衣所にアイシーラビットがいて目が合った
そしてそのアイシーラビットの口には
白いパンツが咥えられていた
「お、お、お前か~~~‼」
その声を聞いて文字通り脱兎のごとく
走り出すアイシーラビット
真実はいつも一つ・・・である。
今回は一話限りのコメディ回でしたがいかがだったでしょうか?
今回の主役、書いている自分からするとフリニオーラは非常に
使い勝手が良くコメディ要員としてついつい頼ってしまうキャラ
でありまして非常にお気に入りの子です、また機会があれば
こういった回も入れていこうかな!?と思っています
次話からまた本編に戻りますのでまた懲りずにおつきあいください、では。




