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外伝 絶望の彼方に

登場人物


ロット・ステイメン…三十半ばにして教団最高峰の魔法である”死者蘇生”を独学で

習得し使いこなす天才僧侶。

ルブレット・ソフィア…両親を魔族に殺され、自分も危なかったところをステイメンに

救われ、それ以来ステイメンに思いを寄せている12歳の美少女

パラヒィン・ケブラハム…聖教神師団という世界最大を誇る宗教団体の総大司教にして

最高指導者、規律に厳しく独自の考えで勝手に行動するステイメンを良く思っていない

べストア・デルフィン…聖教神師団の幹部で司教、実働部隊の総司令官の役目も

担っておりケブラハムを尊敬している為、ステイメンの事を良く思っていない

コービン・ハウエル…ステイメンの同僚で親友、非常に腕が立ち心優しい男だが

何かとステイメンを庇うのでいつもとばっちりを受けている

レイジャモ…魔王軍幹部、いつも牛の様な魔獣に跨っていて強力な病原菌を操る


「ソフィアは・・・亡くなりました」


サムの言葉が理解できないステイメン


「何を言っているのですか?


 今朝会ったばかりですよ!?


 冗談にしてはいささか悪質だと


 思いますが・・・」


その時サムが直立不動のまま震えながら泣き始めた


その態度を見てそれが真実だとようやく


理解したステイメン


「なんで!?一体何があった


 というのですか!?」


サムの両肩を掴み揺さぶりながら


激しく問い詰めた、サムは涙を


ポロポロ流しながら絞り出す様に


語り始めた


「例の病原菌ウイルスです・・・


 ソフィアは今朝ステイメン様が


 出て行った後すぐに倒れまして


 ・・・」


ステイメンは信じられないとばかりに


ゆっくりと首を振り言葉を失っていた


「しかしここの寄宿舎には私でなくとも


 数名の僧侶がいるでしょう!?


 完治は無理でも私が帰ってくるまで


 応急処置的に対処は出来たはずです


 どうしてそんな急死してしまった


 のですか!?」


サムは涙で顔をクシャクシャにしながら


絞り出す様に答える


「ヒック・・・総大司教様の・・・


 仰るには・・・ソフィアは


 僧侶でも騎士でもない・・・一般人


 だから・・・ヒック・・・治療は


 禁止だと・・・」


「馬鹿な‼今までは寄宿舎内の


 感染者も普通に治療して


 来たではありませんか‼


 どうしてソフィアだけが!?


 ・・・はっ!?まさか私への


 見せしめに・・・」


サムはその言葉に答えず泣きじゃくっていた


しばらくの静寂の後ステイメンの表情が


怒りに変る、眉間にシワを寄せ歯ぎしりしながら


その両手の握りこぶしは怒りで震えていた


そして何かを決意したかのように


スッと立ち上がった


「ソフィアの遺体は


 どこにありますか?」


涙を拭きながら思わずステイメンを見上げるサム


「第二礼拝堂ですか?それとも


 遺体安置所ですか?一体どこに」


サムは泣きながら首を振る


「ダメです・・・ステイメン様・・・」


それを無視するかのように話を続けるステイメン


「ソフィアの遺体はどこにあるのかを


 聞いているんです‼、ソフィアに対し


 死者蘇生リアニメーションオブザデッドをおこないます」


その言葉を聞いて悲しげに首を振るサム


「聖教神師団の掟も総大司教様の


 言い分も知った事か!?


 私が必ずソフィアを・・・」


その時サムがステイメンの足に抱きつき


ずっと首を振りながら悲しげに語りかけた


「違うんです・・・ソフィアの遺体は


 もう無いんです・・・」


その言葉が理解できないステイメン


「どういう事ですか?


 遺体が無いとは!?」


サムは泣きじゃくりながら必死に話す


「ソフィア・・・の・・・ヒック


 遺体は・・・ヒック・・・亡くなった後


 ・・・スグに火葬されて・・・ヒック


 もう骨も残って・・・いないんです・・・」


「そんなはずないでしょう‼


 亡くなった人は三日間


 第二礼拝堂で遺体を安置し


 死者を弔うのが規則のはずです


 あの規律に厳しい総大司教様が


 そんな規則やぶりを許すはずが!?」


サムは崩れ落ちそうになりながらも


ステイメンの問い掛けに答えた


「その・・・総大司教様が・・・ヒック


 自らそう・・・仰って・・・


 感染者は危険だから・・・ヒック


 二次感染を防ぐため・・・


 仕方がないのだと・・・」


「あの病原菌ウイルスは


 感染者が亡くなると活動を


 停止します、遺体から感染


 することなどあり得ません!?


 その事は総大司教様も知って


 いるはず・・・まさか私の


 為に・・・・馬鹿な・・・


 そこまでするのか!?」


そういってステイメンはサムの


両肩を掴み激しく問いかけた


「なぜ止めなかったんです‼


 ソフィアの遺体を火葬する事を


 止めてくれればまだ・・・」


その時ステイメンはサムの姿に気づく


それまでは暗さでわからなかったが


サムの顔や手足には真新しいアザや


腫れがあった、おそらく身を挺して


必死に止めたのだろう


しかし抵抗むなしく無理矢理力ずくで


ソフィアの遺体を持って行かれたのだと悟った


サムはステイメンが両肩を持っていないと


崩れ落ちてしまう程力が抜け泣き続けていた


ステイメンは怒りで頭がどうにかなって


しまいそうであった、かみしめた唇から


血が滲むほど怒りに震えていた


その時サムが思い出したかのように


懐からそっと紙を取り出した


「これは?」


「これは・・・ソフィアが・・・ヒック


 最後に残した・・・言葉・・・


 うっうっ・・」


それを手に取り見つめるステイメン


その紙にはおそらくサムが聞いて


書いたのであろうと思われるソフィアの


遺言が書いてあった


”もうステイメン様をお迎えする事が


 出来そうにありません、すいません


 悔しいですがその役はサムに譲ります


 私、ステイメン様の可愛いお嫁さんに


 なりたかった・・・”


その少女からの告白も含めた言葉に


愕然とするステイメン、しばらく


茫然としてその紙を見つめていたが


サムをそっと床に座らした後


一人大聖堂へ向かうステイメン


思わず見上げるサムにボソリと一言告げる


「見ないでください・・・


 今の私の顔を・・・」


その形相は正に鬼であった


ステイメンはこれ以上無い程怒っていた


聖教神師団の掟に


総大司教ケブラハム達のやり方に


そして今朝ソフィアの異常に気が付かず


ゴタゴタに巻き込んでしまった自分自身に


どうしようもなく腹を立てていたのだ


大股で力強く歩を進めるステイメン


その日はちょうど月に一度の”大星霊祭”


の日であった”大星霊祭”とは総大司教を


始めとする幹部達が三女神に対して


夜通し祈りを捧げるという儀式であり


サム達の様な手伝い見習いの者達は勿論の事


騎士やステイメンの様な司祭クラスでも


大聖堂への入室は許されないという厳格な


規則があった、そんな中で大聖堂に向かう


ステイメン、入口の扉には数人の人間が


立っておりステイメンの姿を見たその者達は


行く手を遮る様に立ちふさがる


「何処へ行かれるおつもりですか


 ステイメン司祭、今は大星霊祭


 の真っ最中ですぞ‼」


「総大司教様にお話がある」


「お日を改めてくだされ


 今入る事が出来ないのは


 貴方もご存じでしょう!?」


「いいから入らせてもらう」


強引に入室しようとするステイメンを


両脇から阻止しようとする者達


「どけ‼」


止めに入る者達を一括し押しのけるように


振りほどくステイメン、その迫力と気迫に


思わず押されたじろぐ者達、普段温厚な彼が


怒った姿など誰も見たことも無かった為


そのただならぬ様子に圧倒されてしまったのだ


そして勢いよく大聖堂の扉を開け大声で叫んだ


「総大司教様にお話があります‼」


この再びの乱入に大星霊祭に集中していた


幹部達は呆気に取られ茫然としていた


そんな中、まるで来る事が判っていたか


のように冷静に答える総大司教ケブラハム


「一体何事だステイメン司祭


 今がどんな時かわからない


 君でもあるまい」


その態度に歯ぎしりし睨みつけるステイメン


「貴方にはおわかりでしょう


 ソフィアの事です‼


 なぜ助けなかったのです


 なぜ規則に厳格なあなたが


 その規則を破ってまでその日に


 遺体を火葬したのですか!?


 納得のいく説明をしてください‼」


今にも殴りかかりそうな表情で


問い詰めるステイメン、その時


ようやくとなりの幹部が口を開いた


「貴様はまた、一体何度言えば


 ・・・」


横の幹部がいつもの様に苦言を


口にしようとした時ケブラハムが


手でそれを制した


「よい・・・


 ステイメン司祭


 君と話す事は何もない


 すぐに下がりなさい」


そんな言葉で納得できるはずもなく


ジッと睨みつけるステイメン


ケブラハムも視線を動かさず


まるで睨み合いの様な状態が


数刻続いたがようやくケブラハムが


口を開いた


「私は私の心の正義に従って


 行った事だ君に説明する


 必要は無い、そして


 ソフィアの事は残念だが


 死は悲しい事なれど


 受け入れなければならない


 事実なのだ、そんな事もわからず


 取り乱しおって見苦しい


 君には女神の教えが


 理解できていないようだな」


その言葉に両目を見開き信じられない


といった表情を見せるステイメン


「正義・・・あれがですか?


 苦しんでいる者に手も


 差し伸べず、私に対して


 の為だけに規則をも


 破って遺体を火葬し


 あまつさえ女神の教え!?


 本当に理解していないのは


 どっちだ‼」


大声でそう言い放つと


もの凄い形相でケブラハムに


近づいて行くステイメン


流石のケブラハムもその気迫に押され


恐怖の表情を見せる


「止まれステイメン、止まらんか‼


 ホーリーバインド‼」


ケブラハムが光の拘束魔法を唱えるが


ステイメンの結界に阻まれはじけ飛ぶ


「誰か、誰かコイツを止めろ‼」


もはやケブラハムはなりふり構って


いられなかった、周りの幹部連に


助けを求める様に命令を下す


「ホーリーバインド‼」


「ホーリーバインド‼」


幹部連から次々と繰り出される拘束魔法


しかしその全てを弾き返し何事も無いように


一歩一歩近づくステイメン、そしてついに


ケブラハムの目の前に立つと総大司教は


その迫力に思わず尻餅をついてしまい


そのステイメンを見る目は怯えていた


そんなケブラハムに厳しい表情のまま


顔を近づけるステイメン


「もう一度聞きます、なぜソフィアに


 救いの手を差し伸べなかった


 のですか!?」


怯えながらも意地と尊厳からか


ステイメンを睨み返し吐き捨てる様に


言い放った


「私は間違っておらん‼


 ソフィアが死んだのなら


 それが彼女の天命だったのだ


 ソフィアは死ぬ運命だったのだ‼」


その言葉に愕然とし思わず怒りの


表情を見せるステイメン


「死ぬ運命?・・・


 そんな人間がいてたまるか


 そして、それが聖職者の


 言う事か‼」


怒鳴りつける様に言い放つステイメン


「ホーリーバインド‼」


反射的にホーリーバインドをくり出し


光の輪がケブラハムを締め付ける


「ぐあああああぁぁぁ~~


 助けてくれ‼」


あまりの痛みと苦しさに思わず


助けを求めるケブラハム


しかしその言葉がさらに


ステイメンの癇に障った


「あなたはそうやって助けを


 求める人達を見殺しにして


 きたんですよ‼何人も何人も


 そしてソフィアまで‼」


周りの幹部連や外にいた司祭達も


ステイメンの光の拘束を解除しようと


必死に魔法を放つが一向に効果が無い


痛みに耐えかね悲鳴を上げながら


ケブラハムが言い放つ


「ぐあぁぁぁぁ~~


 私は間違っていない


 間違っていないんだ‼」


その言葉にステイメンの中で


何かが弾けた、反射的に


ホーリーバインドのリミッターを外し


光の輪によってケブラハムを


握りつぶそうとした、その時


『いけませんステイメン様・・・』


ステイメンの心の中に


ソフィアの声が聞こえたのだ


ハッと我に返りホーリーバインドを解く


「私は一体何をしようと・・・」


光の拘束を解かれたケブラハムは


床に力なく崩れ落ち周りの幹部連が


慌てて駆け寄った、自分のやった事に


茫然とするステイメン、その時である


外から一人の男が慌てて走って来て


空いている扉の向こうから大聖堂に


響き渡るほどの大声で叫んだ


「大星霊祭の最中大変申し訳ありません


 今、再び魔族の群れがリケル村を


 襲撃しているとの事です


 至急応援を乞うとの事です‼」


その報告を聞いたケブラハムを含む


幹部連は思わず顔を伏せた


なぜなら今魔族を撃退する為の騎士団の中で


まともに動けるのは既に20人程しか


残っておらず、事実上壊滅状態と言っても


良かったからである、しかし立場上


「もう動ける人がほとんど


 いないので救援は無理です・・・」


とはいえず無言でうつむくしかなかったのだ


その誰もが無言を貫く中で


大聖堂に一人の声が響いた


「私が行きます」


その声の主はステイメンだった


誰も行けない状況を見かねて


自ら名乗りをあげたのだ


幹部連の一人が思わず問いかける


「しかし援軍の騎士団はいないぞ


 どうやって?・・・」


「私一人で行きます


 異存はないですよね!?」


異存などあるはずも無かった、ケブラハムを始め


全員が厳しい表情を浮かべながらうつむく


そんな連中の事など気にする様子も無く大聖堂を


後にするステイメン、用意された馬に跨り


魔族に襲われているリケル村に急いだ


村に着くと魔族が我が物顔で暴れまわっていた


しかも聖教神師団からの援軍が来ない事が


わかっているかのように村人たちを


病原菌ウイルスで苦しめ


それを楽しみながら殺していたのだ


「何という事を・・・」


ステイメンは早速巨大な結界によって


魔族を閉めだすと一緒に来たわずかな


騎士達に村人を任せ、魔王軍幹部である


レイジャモに向かった


レイジャモもステイメンの姿を見て


少し驚きの表情を見せたがほぼ単身で


来ている事が判り思わずニヤつく


「ヒョ~ヒョッヒョ~またお前か?


 しかも今日は随分と少ないな


 ようやく私の病原菌が蔓延した


 ようだな、もはやまともに動ける


 者はほとんどいなくなったのだろ?


 ヒョ~ヒョッヒョ~ざまあ~~


 いい気味、いい気味だ~~‼」


黒い牛の様な生物の上で


腹を抱えて笑い転げるレイジャモ


そして再び話を続ける


「あの病原菌は魔法耐性を付けた


 特別性だからな、回復魔法も


 効かないし魔法探知にも


 引っかからないからお前らの


 住家にも感染者が出てるだろ?」


ニヤリと笑うレイジャモを物凄い形相で


睨みつけるステイメン


「お前一体何をした!?」


その問い掛けに再び嬉しそうに


笑うレイジャモ


「ヒョ~ヒョッヒョ~~


 また聞いちゃう?


 それを聞いちゃうんだ!?


 まあいいや面白いから


 教えてあげる、俺様の


 賢さに感心しながら絶望しな


 あの病原菌は人間にしか


 感染しないと思ったら


 大間違いだ、動物そして


 植物にも感染し人間に


 病原菌をバラ撒くんだぜ


 凄いだろ!?」


その言葉を聞いてハッと何かに気が付く


ステイメン


「植物!?まさかあの花にも


 病原菌を・・・」


少し怪訝そうな顔をしたが


思い出したかのように笑いだす


レイジャモ


「花?あのアングレカム


 という花の事だな!?


 そうだアレは俺様が仕込んだ


 んだよ、どうやらあの花は


 この国では特別な花らしい


 からな、馬鹿な奴がワザワザ


 家に持って帰り病原菌を


 バラ撒いてくれるのさ


 どうだ?俺様頭いい~~


 カッコイイ~~~


 そして人間は馬鹿~~


 ヒョ~ヒョッヒョッ~~‼」


その言葉に愕然とするステイメン


「じゃあソフィアが死んだのは


 私が持って帰った花のせいで


 ・・・そんな・・・」


レイジャモは絶望するステイメンを見て


嬉しくてしょうがない様子である


「まあ散々笑わしてもらったから


 もういいよ~、お腹一杯だ


 そろそろ死ねや人間、いくら


 お前が凄腕でも一人では


 どうにも出来まい


 皆の者全員でその馬鹿を


 なぶり殺しにしろ‼」


レイジャモの号令でステイメン


目掛けて一斉に襲い掛かる魔族達


その時ステイメンがボソリと呟く


「イクスパンシィヴ ホーリーバインド」


その瞬間巨大な光の輪が発生し


あっという間に複数の魔族を包み込むと


一瞬で小さな球体へと収束し圧縮する


中から魔族と思われる血液が大量に


ボタボタと地面に流れ落ちた


あまりに一瞬の出来事なので


呆気に取られるレイジャモ


「何が・・・一体何が起こった!?」


そんなレイジャモの反応をヨソに


次々と発生する巨大な光の球体が


魔族を包み込み収束&圧縮を


繰り返していた、見る見るうちに


魔族が潰されていき地面は魔族の


血で染まり元の地面の色が


思い出せない程であった


そんな光景を茫然として見つめる


レイジャモ


「馬鹿な・・・


 そんな馬鹿な!?」


今起こっている事が信じられないと言った


表情で呆けているレイジャモの背後から


声が聞こえた


「ホーリーバインド‼」


その瞬間レイジャモの乗っていた


黒い牛の様な生物は光の輪によって


一瞬で潰されそれと同時にレイジャモの両足も


ホーリーバインドによって引きちぎれた


「ぎゃあああぁぁぁぁ~‼」


両足を潰され地面でのた打ち回るレイジャモ


激痛に涙目になりながら必死で命乞いをする


それを冷ややかな目で見下ろすステイメン


「た、助けて・・・


 死にたくない


 死にたくないんだ!?」


激痛に悶えながらも懸命に訴えるレイジャモ


そんな魔族に対しつぶやくように


話しかけるステイメン


「例え相手がどんな者であろうと


 許しを請う者には愛を持って


 接する・・・それが慈愛の


 女神ミューゼ様の教えでしたね


 ・・・」


一瞬レイジャモの表情に笑みが浮かぶ


「しかし申し訳ありません


 今の私にはどうしても


 貴方を許す事が出来ません


 死になさい無様に・・・」


ステイメンの冷徹なその言葉に


絶望の表情を浮かべるレイジャモ


「馬鹿な、お前ら僧侶は許しを


 乞う者には寛大に接するのが


 女神の教えだろ!?


 それに反するような行動は


 絶対に・・・ブギュ‼」


レイジャモは会話の途中で光の輪によって


潰された、地面にその血液と思われる


液体がボタボタと流れ落ちそれを


無感情な視線で見つめるステイメン


「ゴチャゴチャうるさいんですよ


 あなたは・・・さっさと


 消えてください」


すると今まで病原菌に苦しめられていた


村人たちが何事も無かったように


立ち上がり不思議そうな表情を浮かべた


病原菌により息も絶え絶えだった村人は


先ほどまでが嘘の様に全快し皆でそれを


喜び合っていた、その光景を見て


呆気に取られるステイメン


「こんな簡単な事で病原菌ウイルス


 を撃退できるなんて・・・


 それじゃあソフィアは・・・」


その後、村人は皆代わる代わる


ステイメンの元に来ては


頭を下げお礼を言っていた


「子供の命を救ってくれて


 本当にありがとう」


「あなたのおかげで


 一家揃って助かりました」


「お母さんを助けてくれて


 ありがとう」


と何人も何人も丁寧にお礼を告げた


しかしステイメンはその感謝の言葉に


笑顔で答えながらもその言葉は


頭に入っては来なかった


自分のせいでソフィアが死んだ


という事がどうしても許せなかったのだ


村を後にし馬の背中でウトウトしながら


寄宿舎に付いた頃には次の日の


夜中になっていた、ステイメンは


疲労と睡眠不足で意識も朦朧としながら


何とか自分の部屋にたどり着き扉を開けた


すると真っ暗で閑散とした部屋の中で


何かボンヤリ白い物が目に映った


よく目を凝らして見てみると


それはあのアングレカムの花だった


恐らくはサムがソフィアの弔いとして


いつも使っているコップを花瓶代わりに


してあの花が活けたのだろう


しかしその瞬間ステイメンの耳に


ハッキリと声が聞こえた


「お帰りなさいませステイメン様


 今日も一日ご苦労様です‼」


その瞬間ステイメンの目から


とめどなく涙がこぼれ落ちた


「あああ、あああああ・・・」


ステイメンは膝から崩れ落ち


床にひれ伏す様にへたり込んだ


そして生まれて初めて大声を出して


泣いた、それは魂の咆哮と言える程


の大声で暗くなった寄宿舎全体に


響き渡るほどいつまでも泣き続けた





それからステイメンには”無期限謹慎”という


重い処分が下された、総大司教に対しあれ程の


狼藉をおこなったのだから自身もしょうがないと


納得していた、ステイメンに助けてもらった


各村々の人々や周りの住民からも苦情が殺到したが


今度ばかりはケブラハムもその声を一切聞かず


頑としてステイメンを外には出さなかった


レイジャモが死亡したおかげで例の病原菌は


完全に鳴りを潜めステイメンが頑張らなくとも


正常に活動できるようになったのも大きかった


それをきっかけにステイメンは聖教神師団にある


書物という書物を貪る様に読み漁った、ひっそり


大聖堂の奥にあるという秘蔵の魔道書にも内緒で


目を通した、もう全ての書物に目を通しこれから


どうしようかと思っていたところに部屋の扉を


ノックする音が聞こえた


「サムですか?空いてますよ」


ハウエルもソフィアもいなくなった今


ステイメンの部屋を訪れるのはサムだけ


だった、皆総大司教に睨まれるのが恐くて


誰もステイメンに近づかなかった


からである、しかし扉が空いて立っていたのは


サムでは無く一人の若い青年だった


見覚えの無い人物の訪問に不思議そうな


表情を浮かべ問いかけるステイメン


「あの、どちら様ですか?


 この聖教神師団人では


 無いですよね?」


その青年は真っ直ぐな目を向け


スッと右手を差し出した


「初めまして私はアドリアン・ルキア


 と申します、魔王アドギラルロックを


 倒し人々に平和をもたらす為


 貴方の力を貸してください」


いきなりの申し出に思わず戸惑うステイメン


「私にですか?有難い申し出では


 ありますがあいにく私は聖教神師団


 から謹慎処分を受けている身でして


 お力になれるとは思えませんが」


ルキアはニコリと微笑み再び口を開く


「私は貴方の力が貸りたいのです」


言葉が通じてないのか?と疑問に思い


再び説明するステイメン


「ですから私は謹慎処分中でして


 それに聖教神師団が私の外出や


 魔王討伐隊に加わる事を


 許さないでしょう・・・」


しかしルキアは少しも態度を変えることなく


キッパリと言い切った


「それが何の問題になるんですか?


 私は聖教神師団の意思では無く


 貴方の気持ちを聞いているのですが?」


その瞬間ステイメンの気持ちにかかっていた


モヤが一気に晴れた気がした、そして


微動だにせず右手を出し続けている


真っ直ぐな目をした青年の差し出した


手をしっかり握り返すステイメン


「ええ、一緒に行きましょう


 人々の為に・・・」


そうしてルキアに初めての仲間が加わった。





時は戻りゾフィの振る舞った料理が


ルキア達を驚かせていた


「本当に美味いなコレ」


「凄いじゃないかゾフィ


 君にこれほどの料理の


 才能があったとは!?」


「これならいつでも俺の


 嫁に来ても大丈夫だね」


「凄いですゾフィさん


 こんなおいしい料理


 初めて食べました」


皆の賛辞に満足げなゾフィ、しかし


一人真剣な表情でデザートを食べている


ステイメン、一言も発することなく


ゆっくりと味わう様にデザートを


口に運んでいた


「ステイメン、私の料理


 口に合わなかった?」


不安げにステイメンの顔を覗き込むゾフィ


慌てて否定するステイメン


「まさか、そんな事はありませんよ


 凄くおいしかったです、そして


 このシフォンケーキ・・・


 メチャクチャおいしい


 じゃないですか!?


 舌触り、口どけ、上品な甘さ


 フワフワ感、どれをとっても


 高級店レベル・・・というか


 これほどの物は早々


 ありませんよ!?」


心配していた事は無く最高の賛辞を受け


上機嫌なゾフィ


「ありがとう、黙って食べてるから


 口に合わなかったかと心配したわ


 だけど意外ね、ステイメン


 妙にデザートに詳しそうね!?」


その問い掛けにフッと笑う


「私はデザートには少々うるさいんですよ


 でもこのシフォンケーキは本当に


 素晴らしいですよ、今まで食べた


 デザートの中でも二番目においしいです」


その言葉に少し複雑な表情を見せるゾフィ


「一番じゃないんだ・・・


 じゃあ今度作る時は必ず


 一番おいしいって


 言わせてみせるわ!?


 実は私スフレも得意でね


 それなら必ず一番に・・・」


その言葉に目を閉じゆっくり首を振る


ステイメン


「スフレで一番になるのは


 永遠に不可能ですよ・・・」


それを聞き益々闘志を燃やすゾフィであった。



 

 


これにてステイメン編は完結です、何か読み味の悪い

話になってしまったかもしれません、気分を害された方は

スミマセン、私自身書いているとついこういった内容に

なりがちなのですが、自分で書いておいてその内容に

自分で沈むという馬鹿な事をやっている愚か者です(笑)

さて次話はそんな私の精神を正常に保つためにコミカルな

内容の話を書きました、その次からちゃんと本編に戻りますので

私のわがままにお付き合いいただけると非常にありがたいです

では。



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