秀吉奮闘記
登場人物
アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている
ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在
ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている
ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー
ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた
クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い
織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児
木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉
竹中半兵衛重治…秀吉の熱心な勧誘により配下に加わった天才軍師
明智十兵衛光秀…元は足利義昭に仕えていた、鉄砲の名手であり博学の切れ者
第15代将軍 足利義昭の元に
謎の男が現れてから
数日が過ぎた、義昭は普段は
何事も無かったかのように
信長と接し一緒に能を見たり
相撲を楽しんだりしていた
それゆえに信長を始め誰もが
義昭の事を不審に思う事はなかった
しかし夜になり一人になると
義昭の態度は一変しまるで
人が変った様に怒り狂った
「おのれ信長‼余を馬鹿に
しくさって、今に見ておれ
必ず地獄に送ってやるわ
・・・イ~ヒッヒッヒ~」
そう言いながら各地の有力大名や
宗教勢力に”逆賊信長を討て‼”
という檄文を送り続ける毎日を
すごす義昭、周りの側近たちは
その常軌を逸した姿に恐怖すら覚えた
そしてルキア達は秀吉に呼び出しを受け
ある屋敷を訪れると秀吉は部屋の中を
うろつきながら何やらブツブツつぶやいていた
「納得いかん、どうにも
納得いかんぞ・・・」
イラつきながら意味も無く
部屋の中を歩き回る秀吉を見ながら
半ば呆れ顔で微笑む竹中半兵衛がいた
「お呼び出しと聞いて来たのですが
お邪魔でしたか!?」
ルキアの声に気付いた秀吉はパッと顔が
明るくなり早足で近づいて来た
「おぉルキア殿に皆様もお揃いで
此度は急な呼び出しに応じて
いただき痛み入るでござる」
挨拶代わりにペコリと頭を下げる秀吉
「いえ、我々は特に忙しくも無いので
全然かまわないのですが・・・
なにかあったのですか?」
すると顔をクシャクシャにし
泣きそうな顔を浮かべたと思ったら
急に背中を向け再びうろつき始める秀吉
「拙者悔しいのでござる
納得できないのでござる
どうにも気持ちが
抑えられないのでござるよ‼」
吐き捨てる様にそう言い放ち
苛立ちを隠す事無く態度で示す秀吉
それを見て呆気にとられるメンバー
だったが、皆の疑問を代表するかのように
ステイメンが小声で半兵衛に問い掛けた
「一体何があったというのですか?」
その質問に少し笑みを浮かべ
静かに答える半兵衛
「実は先日皆様にも会っていただいた
明智光秀様が此度正式にお館様の
家臣として加わる事になったのですが
その待遇がですね・・・」
その声が聞こえたのかは不明だが
秀吉が不満をぶちまけた
「なぜ長年の間、誠心誠意お館様に
お仕えしてきた拙者の禄が
二千五百貫なのに明智殿は
四千貫ももらえるのじゃ!?
納得できる訳なかろうが‼」
秀吉が怒っている理由がわかり
苦笑いの表情を浮かべるメンバー達
その時ゼファーが半兵衛に問いかけた
「でも明智光秀殿は足利義昭公の
家臣じゃなかったっけ?
その将軍様から家臣を
引き抜いたりして両者の
関係がおかしくなったりは
しないのかい?」
微笑みながら優しく答える半兵衛
「いえ明智殿はお館様の家臣と
なられましたが同時に義昭公
の家臣でもあります、元々
お館様と将軍様の橋渡しが
一番の役目でありますから
今回はそういった特殊な
人事も成り立つのですよ」
それを聞き少し驚いた表情を見せるライオス
「へぇ~普通、家臣というのは
二君には仕えないものだけどな
特に武士ってのはそういうもの
だと思ってたんだけど」
「そこがお館様が他の大名と
違うところなのです
何をどうすれば一番上手く
いくかを考え常識に
とらわれることなく決断し
行動する、それこそが
織田信長様というお人
なのですよ」
少し嬉しそうに話す半兵衛
そして話を続けた
「今回の話もそうです
いきなり来たよそ者が
四千貫もの禄をもらえたのです
ずっとお仕えしてきた武将たちが
どう思うか?秀吉様を見れば
おわかりになりますでしょう!?」
その言葉に皆の視線が秀吉に集まった
「ちくしょう、負けねえぞ
負けて堪るか!?見てろよ
必ず大きな手柄を立てて
お館様に認めさせてみせる
織田信長様の一の家臣はこの
木下藤吉郎秀吉と絶対に
言わせてみせる‼」
そんな秀吉の態度に皆が納得した
「あんな秀吉さん始めて見ました
男の方の出世欲や嫉妬というのは
凄いモノなのですね・・・」
フリニオーラが驚きながらつぶやいた
そしてルキアが続く
「なるほど、以前から居た部下には
火をつけ新参者でも能力のある者
には高待遇で召し抱えるとわかれば
”我こそは‼”と人も集まる・・・
信長公というお人は本当に人心掌握に
長けた人なのですね!?」
その言葉に半兵衛はゆっくりうなづいた
その数日後、織田陣営に加わったばかりの
明智光秀が再び大きな手柄を立てた
「なんじゃと、松永久秀が!?」
信長は驚きの表情を見せる
「はい、お館様の軍門に下りたいと
そう申してきております」
光秀が静かにそう答えた
その光秀の報告に皆がざわついく
ボソボソと周りから聞こえる声には
”あんな男は信用できない”とか
”危険だから止めた方がいい”
という声が圧倒的だったが信長に
面と向かって反対意見が言えないが
内心反対している者がほとんどである
という事がわかった、そんな様子を見て
今回の会議に出席していたルキア達は
不思議に思いステイメンが半兵衛に
問いかけた
「あの、何やら不穏な空気ですが
その松永久秀という御仁は一体
どのような人物なのですか?」
一旦目を閉じ間を空けてから
静かに話しはじめる半兵衛
「松永久秀とは三好三人衆と共に
義昭公の兄である
第13代将軍 足利義輝を暗殺し
義昭公を拉致した男です
三好家に仕え三好をあそこまで
大きくした立役者と言っても
過言じゃありませんが次第に
その野心を剥き出しにしていき
三好政権内で確固たる地位を築くと
主君三好長慶が亡くなると
三好三人衆と共に争ったり
手を組んだりしてお家騒動の中心と
なりました、元々足利義輝公の部下の
様な立場でもありながらその義輝公を
暗殺していますし、三好では嫡男
義興を始めとして一族が次々と
謎の死を遂げております、これは
推測ではありますがその連続不審死
の後ろで糸を引いていたのは・・・」
ルキア達はその話を聞いて
思わず息を飲んだ
「何よそれ、そいつ滅茶苦茶
ヤバい奴じゃないの!?」
ゾフィが口走るとコクリとうなづく半兵衛
「お館様は能力のある者は身分に
とらわれずどんどん登用するという
器の大きさを見せていますし
”天下布武”は綺麗事だけでは
できない事も理解していて
清濁併せ持つ柔軟な考え方が
出来る稀有な主君ではありますが
今回は濁流どころかとびっきりの
猛毒と言ってもいい程のモノです
さてどう対処するのでしょうか?」
ルキア達や半兵衛らが見守る中、信長は
しばらく無言で光秀を見つめていた
「光秀、お主は松永久秀の様な
者がワシに忠義を尽くすと
思うておるのか!?
あの蝙蝠がごとき男が!?」
問われた光秀は頭を下げ口を開いた
「いえ、あの男に忠義を期待するのは
愚の極みやもしれませぬ・・・」
その返答に皆がザワつく
「ならばなぜそのような男を
ワシに勧める・・・
何を考えておるのじゃ!?」
光秀は顔を上げ真剣な眼差しで
信長を見つめ力強く答えた
「確かに松永久秀という男は忠義とは
無縁の者かもしれませぬ、しかし
理に聡く気を見るに敏な男ゆえ
そのような者がお館様についた
という事が大事なのでございます
これにより時勢の流れはお館様に
傾いているという事を世に示し
それほどの者ですら使いこなす
織田信長様という名を皆が知る事と
なりましょう、松永久秀という
人物は心根はどうであれ能力高き者で
ある事は疑い様のない事実なれば
手綱を締め睨みをきかせておけば
必ずやお館様の力になる事でしょう
そして蝙蝠なればこそ闇夜に目が効きます
そのような者を置いておく事は今後何かの
役に立つ事もあるかと具申いたします
そしてこれを・・・」
光秀は高級そうな紫の布に包まれた
桐の箱を信長の前に差し出し中から
小さな茶器を取り出した
「これは松永久秀殿秘蔵の九十九髪茄子
にございます、もし家臣にしていただける
のならばと・・・」
その時再び場内がざわついた
不思議に思ったゾフィが半兵衛に質問した
「ねえ半兵衛さん、あの小さな
小瓶がそんなに凄い物なの?」
ゆっくりとうなづく半兵衛
「あれは九十九髪茄子と言って
”松本茄子””富士茄子”と並び
天下三茄子の一つと言われる
大変貴重な品なのですよ
室町幕府全盛時に足利義満将軍が
戦場に行く時ですら肌身離さず
所持していたと伝えられていて
”一国にも勝る”と言われている
名品なのです。」
ゾフィは感心しながらそれを聞いた
「そんな凄い物には見えないけど
国1つより価値があるって
凄いわね!?」
「ちょっと理解しがたい感覚だが
俺達の世界でいうならば国宝級
超レアアイテムや伝説の武器
ぐらいの価値があるって物
らしいな!?」
「高々お茶を飲む道具だろ?
それと国1つが同価値って
なんとも・・・」
ルキア達は少し呆れ気味に感心していた
そんな時ルキアの視線の先に秀吉が
映った、その時の秀吉は嫉妬と憎悪が
混じり合ったような凄まじい視線を向け
光秀の背中を睨むように見つめていた
しばらくその九十九髪茄子を無言で
見つめていた信長がその沈黙を
破る様に口を開いた
「よかろう、松永久秀を我が
家臣に加える、皆の者も良いな‼」
そう言い放ちその場を去る信長、光秀を始め
皆がひれ伏す中で秀吉一人、背中が震えていた
それから数日が経ち将軍足利義昭が
信長に話があると呼び出した
信長は家臣を連れ二条城を訪れると
珍しく真剣な表情でジッとこちらを
見つめている義昭
「信長、聞いた話なのじゃが
私の懇意にしている寺院から
苦情が来ておってな、何でも
全ての寺院からも税金を納めよ
と令を下しているとの事
全てを止めよとは言わぬが
せめて私の懇意にしている
寺院から徴収するのは考慮せよ
この私からの命令じゃ
わかったな信長」
その内容と言い方に思わずムッとする
織田家の家臣達、まるで信長を家来の様に
扱うかのようなその態度と言葉は
信長の家臣達にとってはとても看過できる
ものでは無かった、まずは光秀が口を挟む
「恐れながら申し上げます義昭様
いくら何でもその言い方は
失礼に当たりますぞ」
その言葉に一瞬で表情が険しくなる義昭
「黙れ光秀、我は第15代将軍
足利義昭なるぞ、お前は一体
誰の家臣じゃ‼」
続いて秀吉が口を挟む
「将軍様、我がお館様は彼方様の
家臣ではありませぬ、そのような
口のきき方はお止めくださりませ」
益々機嫌が悪くなり表情が強張る義昭
「黙れ田舎武将共が、我は将軍
全ての武家の頂点なるぞ!?
つまり全ての大名は我が家臣じゃ
全くどうしようも無い部下じゃな
信長、お前からもこの馬鹿共に
言うてやれ‼」
それまで黙って聞いていた信長が
ようやく口を開いた
「黙れ義昭、我が家臣達が貴様に
蔑まれる覚えはないわ‼
ワシのやる事にお前の指図は
受けぬ、良いか皆の者、今後も
全ての寺院からも金を出させよ
例外は認めぬ、室町以来の悪しき
習慣はワシの前では通用しないと
教えてやるのじゃ、わかったな‼」
「御意‼」
全ての家臣が信長の命令にひれ伏す
怒りで震える義昭をよそに信長が
続けて命令を出した
「光秀、お前は堺に行き奴等から
矢銭(軍事費)二万貫を取って来い
良いな!?」
あまりに急な命令に戸惑う光秀
「堺から二万貫・・・ですか?」
「そうじゃ、できるな光秀!?」
まるでそれをできて当然とばかりに
言い放つ信長、唖然として言葉が出ない
光秀を尻目に大声で口を挟む男がいた
「そのお役目、拙者にお任せくださいませ‼」
信長や光秀を始め皆が驚く
声の主は秀吉であった、これ以上光秀に
手柄を立てられては堪らないとばかりに
咄嗟に名乗り出たのである、いきなりの事で
茫然としていた光秀が表情をこわばらせる
「秀吉殿、これはお館様より
この光秀が申し付かった
御役目なれば私がやり申す
手出しは無用でござる‼」
秀吉は頭を下げたまま懇願する
「そこを何とかお譲りくだされ‼」
「お断りでござる」
「そこをなにとぞ、お願いでござる‼」
「お断り申す‼」
秀吉と光秀の激しいやり取りが続いた
呆気に取られる他の家臣達、しばらく
黙って見ていた信長だったがニヤリと
笑い二人に問いかけた
「光秀、此度そちに申し付けた
堺への矢銭徴収だが、なぜだか
理由はわかるか?」
光秀は少し考えた後、信長の目を見て
しっかりとした口調で答えた
「これから各国の戦国大名との
戦が続く可能性があります
矢銭はいくらあっても足りませぬ
堺は商業の発展著しく、その
中心にいる会合衆は
独自の武装集団も抱えながら
自分達の好き勝手に商いをおこない
かなりの富を貯め込んでいると
聞いております、ですから
寺院と同じく既得権益を認めず
これからはきちんと納税させ
規則を守らせる為にございます」
光秀の話を聞き軽くうなづく信長
「ではお主はどうじゃサル
なぜ堺に矢銭を出させる
理由を言うてみよ!?」
秀吉は頭をフル回転させ考えた
先程光秀の言った事も考慮し
自分なりに精いっぱい考え答えた
「天下布武の為でございます
室町幕府衰退を受け何物にも
制限を受けなかった
堺の会合衆は己が中心で
商いをおこない私腹を肥やして
おります、しかしこれからは
誰が中心で誰の下で商いをおこなうか
をわからせる為にございます
こちらのいう事を聞かないので
あれば潰すぞと警告し
従わせる為にございます」
秀吉の言葉を聞いてニヤリと笑う信長
「此度の役目、木下藤吉郎秀吉に
任せる、異論はないな、ワシは
一旦岐阜に帰る、しっかりやれ‼」
唖然とする光秀とは対照的に
満面の笑みを浮かべひれ伏す秀吉
「有難き幸せ、お館様の為に必ずや
堺から矢銭二万貫とって参りまする‼」
嬉しそうにそう答える秀吉に対し
信長は口元を緩ませその場を去った
「とは言ったもののはたして上手く
いくのでござるかな!?・・・」
腕組しながら考え込む秀吉、信長より
命を受けた数日後、ルキア達と
半兵衛の前で気難しい表情を
浮かべながら思い悩んでいた
「何をそんなに悩んでいるのですか?」
ルキアの問い掛けに待ってましたと
ばかりに話しはじめる秀吉
「実は今から堺の会合衆という
連中に会いに行くのでござるが
おそらく一筋縄ではいかない
連中なので出来れば一緒に
ついて来てほしいのでござるよ」
その言葉にルキア達は顔を見合わせた
「それはかまいませんけど・・・
その会合衆というのはどういった
人達なんですか?」
質問された秀吉はチラリと半兵衛を見る
半兵衛は軽くため息をつき皆に説明を始めた
「会合衆というのは堺の商人達が
独自の自治制度をおこなっている
組織集団です」
その説明に首を傾げるメンバー達
「独自の自治制度とはどういう
事なんでしょう?
商人が自治って・・・」
軽くうなづき話を続ける半兵衛
「今や室町幕府はその権威を失い
統治できる力がありません
ですから力のある商人たちが
組織を作り独自の制度を作って
自治をしているという訳です
三好の残党兵を雇って
独自の武装組織を所有し
屋敷の堀を深くして戦いに
備えているなどいるなど
おおよそ商人とは思えない程の
力を持っているのですよ」
ライオスが呆れ気味に口を開く
「国の力が弱ったところに
力のある商人が亡国の残党を
傭兵として雇って好き勝手やる
・・・よくありがちな話だな
どこの世界も所詮人間が
やる事だしな」
その話の流れを聞き益々険しい
表情を見せる秀吉、残念ながら
その予想は的中する事となる
ルキア達を引きつれ会合衆と会見した
秀吉だったがやはり危惧したとおり
苦戦する事となった
「では矢銭二万貫は出せないと
言われるのですか!?」
真剣な面持ちで問い詰める様に
迫る秀吉、それに対し終始余裕の
態度であしらう会合衆の面々
「そないな事言われましても
困りますなぁ、我ら商人に
とって銭は命でおます
いきなり現れてそれを
よこせと言われましても
応じかねますな」
「野盗じゃあるまいに
脅して銭よこせって
織田信長というお人は
ホンマにおっかない
お人ですなぁ」
「普通銭というのは何かの
対価として払うものです
何の商品もいただけない
のに銭払うのは商人の
誇りが許しまへん
お引き取りくだされ」
歯ぎしりしながら会合衆の連中を
睨みつける秀吉、対照的に不敵な
笑みを浮かべながら秀吉を見下ろす
商人達、再び秀吉が口を開く
「しかしですな、我がお館様は!?
・・・」
必死に食い下がろうとする秀吉に
プイっと横を向きパンパンと手を叩く
会合衆の商人達
「お客様はお帰りのようだ」
部屋の襖が開き”さっさと帰れ”と
促がされる秀吉、目を血走らせ武装した
鎧武者が数十人、襖の外で秀吉達を睨んでいた
不本意ながら引き下がる事となった秀吉
その時ゼファーがライオスに近づき小声で
話しかけた
「気づいてるかライオス?」
「あぁ、わかってる・・・
今じゃないだろうが来るな
こりゃあ・・・」
屋敷に帰りいら立ちを隠せない秀吉は
憤懣やるかたない態度を隠す事無く
吐き捨てる様に口を開いた
「なんじゃあいつらのあの態度は!?
商人の癖にお館様を恐れない
とは・・・全く忌々しい‼」
その時である、外が急に騒がしくなり
物々しい雰囲気が屋敷の周りを包み込んだ
「一体何事じゃ!?」
何が起こったのかわからず秀吉が慌てて口走る
すると伝令の兵が現れ秀吉の前で跪き報告を始めた
「申し上げます、今屋敷の周りを
武装した兵が取り囲みこちらに
攻撃を仕掛けてきております‼」
驚いて問いかける秀吉
「何処の兵じゃ!?」
「わかりませぬ、身元を示す旗印は
有りませんでしたので・・・」
それに対し半兵衛が冷静に答えた
「会合衆でしょうね・・・」
それを聞いた秀吉は更に怒りの表情を見せる
「さっきの今でもう攻撃を
仕掛けて来るのか!?
商人の癖に何という奴らだ!?」
動揺する秀吉が部下にすぐさま命じた
「ここには兵がほとんどいない
すぐさま明智殿に援軍を要請しろ
それと義昭様はどうなっている!?」
それを聞いてフッと笑うライオス
「援軍は必要ない、俺達がちょっと
片付けて来るさ」
そう言ってライオスとルキア、ゼファーが
特に慌てる様子も無くゆっくりと
廊下を歩きながら屋敷の外に出て行った
会合衆の兵達が屋敷の中まで火矢や鉄砲を
打ち込んできたが、その矢や弾の全てが
空中でピタリと止まり勢い無く落下した
半透明の結界が会合衆の攻撃を全て弾き返す
静かにお茶を飲みながら落ち着いた様子で
淡々と語り始めるステイメン
「この屋敷には防御結界を張りました
この程度の武器と人数ならば三時間は
持つはずです、それだけの時間が
あればライオス達には十分すぎる
はずですから・・・」
その言葉に安心しながらも改めて
ルキア達の強さを再認識する秀吉
しばらくすると屋敷の外からの
声や音が静かになり三人が
涼しい顔で戻って来た
「片付けて来たぜ、相手としては
少し物足りなかったけどな
俺一人でも十分だったぜ」
「そう言うなライオス、早急に
鎮圧できたからこそ被害も
少なくて済んでいるんだから」
「そうだぜ、みんなアンタみたいに
戦闘狂って訳じゃないんだからさ!?」
「あぁ!?」
ゼファーの軽口に一瞬ムキになるライオス
それをなだめるルキア、彼等にとっては
いつもの光景である、しかし不機嫌そうな
表情を浮かべている者もいた
ゾフィとフリニオーラの女性陣である
「今回私達の出番全然
無かったじゃない!?」
「そうですよ、せっかく
例の魔法を試したかったのに
・・・そうだ‼
その会合衆とかいう
奴らのアジトを
我々が吹き飛ばして
やりましょうか!?」
「いいわねそれ、商人が
いい気になって調子に
乗っているって事でしょ!?
アジトを要塞化してる
みたいだけどドラゴンの
攻撃を受けたらそんなの
10秒と持たないはずよ
最近あの子達と戦ってないし
今回は私に譲りなさいよ
フリニオーラ!?」
「ダメですよ、私だって
あの魔法早く試したいん
ですから・・・
今回は譲れません!?」
そんな二人の会話を聞いて
呆れる様にため息をつき
首を振るステイメン
「貴方達は堺の町を廃墟に
したいんですか?
ドラゴン達や
ダークフレアストーム
なんか使ったら相手の屋敷
を破壊するだけでは
済みませんよ全く・・・
いい加減空気を読んでください」
二人の女性が殺気混じりの視線を
ステイメンに向けた、もちろん
”空気を読め”という言葉に対し
”お前が言うな‼”という意味である
あまりのいつも通りのやり取りに
一瞬呆気に取られる秀吉、しかし
ハッと気づき半兵衛に命じた
「お館様に連絡を!?今岐阜にいる
お館様に会合衆が反攻して来たと
ご報告をせねば、急いで連絡を
・・・」
その言葉を聞き目を閉じ
笑みを浮かべる半兵衛
「もうすでに手配済です
秀吉様が会合衆と会見した際
不穏な動きありとライオス殿から
聞いておりましたので僭越だとは
思いましたが岐阜には連絡して
おきました、これにより
お館様は大義を得ましたので
全軍率いて堺に攻めのぼり
会合衆を撃滅する事でしょう」
その言葉を聞いて一瞬安堵するも
何かに気づき焦り始めた
「マズイではないか、それでは
ワシが二万貫徴収できなかった
せいでお館様に出張って来て
もらう事になってしまう・・・」
そう呟き考え込む秀吉、そして
意を決した様に立ち上がり叫んだ
「今から再び会合衆の所に行く
馬を用意せい‼」
そう言い放ち慌てて部屋を出て行った
その数刻後、秀吉は再び会合衆の商人達の
前にいた、よほど慌ててきたせいか
汗だくで息を切らせながらの訪問だった
「おや、またお越しですか?
えらいせっかちな事で
そないに慌てて何やら
あったんですか?」
まるで何事も無かったかのように
余裕を見せつける会合衆の面々は
不敵な笑みを浮かべながら秀吉を
見下す様に語りかけた
そんな連中に向かってボソリと
呟くように言い放った
「貴方方も、もう終わりですな」
一瞬ギョッとする会合衆の者達
「一体どういう事です?
何がどう終りなのか
説明してくれはりませんか?」
その問い掛けにニヤリと笑う秀吉
「いくら何でも我々に攻撃するのは
やりすぎましたな、これでお館様は
堺を攻撃する大義ができました
今頃は堺の会合衆共を撃滅せしめんと
岐阜から大軍を率いてくる準備を
している頃でしょうな!?」
「馬鹿な今岐阜は雪で出兵どころじゃ
ないはず、少なくとも春までは・・・」
その言葉にゆっくり首を振る秀吉
「我がお館様をナメないで
いただきたい、雪など関係ござらん
お館様は必ず来るそしてこの堺の町を
火の海にする事でしょう
いくら三好の残党を雇っている
といっても織田軍十万に
本気で対抗できるとお思いか?」
秀吉の言葉に思わず息を飲む
会合衆の面々
「十万だと!?・・・
そんな馬鹿な!?」
少し間を空け再び秀吉が話しはじめた
「主君織田信長様は兵十万人を率いて
この堺に攻め込みお主ら会合衆を
皆殺しにして堺を牛耳り、新たな
経済流通を築くであろう・・・
しかしここからが本題じゃ
なぁ会合衆の皆々様、ここいらで
腹を割って話しませぬか?」
急に態度を変えニコやかに話しかける
秀吉、その急変に戸惑う会合衆達
「腹を割って話すとはどういう
事ですか?具体的に言っては
もらえまへんか?」
コホンとワザとらしい咳払いをして
今度は真剣な表情で話しはじめる秀吉
「このまま何もしなければ先程拙者が
言った通りになる事は疑いなき事
おそらくお館様の事じゃ、それも
見越して拙者にこの役目を任せた
かもしれぬ・・・しかし正直
そうなっては拙者はただの道化で
ござる、手柄も立てられず
そなたらに攻撃される為だけの
役目などあまりに情けなく
とても出世などおぼつかん
そしてお主らを皆殺しにしても
その後、再び新たな商いの
仕組みや組織を作るまでに時間も
かかるし人も育てなければならぬ
ならばここはお主達がそのまま
堺を仕切り動かしてくれればそれに
越したことはないのじゃ、もちろん
我がお館様の元で・・・という条件
は付くがな、そしてそちらに要求した
二万貫だが、徴収されると思うから
口惜しいのであろう?投資と考えれば
どうじゃ?我が主君織田信長様は必ず
天下人となられる、その際に経済と
流通の中心にと考えているのが
この堺じゃ、ならば日の本の財が
ここを中心に動くのじゃぞ!?
それを考えれば二万貫なぞ安い
買い物じゃろ、黙っていてもその
何十倍、いや何百倍もの銭が
入って来るのじゃ、お主達は先程
”銭は何かの対価として払うもの”
と言っておったが、どうじゃ
これを買ってみんか?
織田信長という途方もない
人物の可能性という商品を!?」
秀吉の説得に思わず聞き入り
顔を見合わせる会合衆の面々
もはや返事は聞くまでもなかった
こうして秀吉は堺の会合衆から矢銭二万貫を
徴収するという役目を見事に果たしたのである。
今回は秀吉を中心としたお話しでしたがいかがだったでしょうか?
私の中での秀吉という人物は良くも悪くも人間味の塊という
イメージなのでこういう感じになってしまいました、歴史的に
ここからも秀吉の見せ場は結構あると思いますので頑張って
書きたいと思っています、では。




