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上洛の意図

登場人物

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉

竹中半兵衛重治…秀吉の熱心な勧誘により配下に加わった天才軍師



ルキア達がフリニオーラの魔法完成に


尽力していた頃、信長の元に届いた


書状により城内は大騒ぎになっていた


それはある事件から始まった


室町幕府第13代将軍 足利義輝が


三好三人衆と言われる三好長逸


三好宗清、岩成友通によって暗殺される


という事態が起こった、そして三好三人衆は


足利義輝を殺害後、その弟である足利義昭を


拉致し自分達の手で天下を動かそうと


企んだのである、しかし足利義昭は


足利義輝の家臣だった細川藤孝によって


救出されると三好三人衆の手から逃れた


義昭は各国の大名に向けて檄文を送った


その内容はこうである


”先代将軍 足利義輝を殺した逆賊


 三好三人衆を打ち倒し


 京都に上洛し私を


 将軍にする為に協力せよ”


というものであった、その書状が


信長の元にも届いたのである


「皆の者 本日、足利義昭公より


 届いた書状の件については


 知っておろう


 今後我らの方針を


 どうするべきか、お主らの


 考えも聞いておきたいと


 思うてな、遠慮はいらぬ


 忌憚のない意見を申してみよ」


信長の言葉に城内に緊張が走り皆の表情が


強張る、そんな中で柴田勝家が手を上げた


「権六か、お主の意見はどうじゃ?」


「お館様に申しあげます


 今や室町幕府及び足利将軍に


 力などございませぬ


 この様な書状に乗せられ戦乱に


 巻き込まれるなどわざわざ


 火中の栗を拾いに行く様なもの


 ここは静観するが吉と考えまする」


続いて佐久間信盛が手を上げ発言した


「おそらく足利義昭公はこのような


 書状を各国の大名にも送って


 おりましょう、しかしどの大名も


 動く気配が無いという事は


 皆がそう考えておる証拠で


 あると思われます、柴田殿が


 言われた通り今や有形無実化


 している幕府と将軍などに


 乗せられいたずらに兵を動かす


 事こそ愚策であると進言します」


「ふむ、長秀はどうじゃ?」


使命された丹羽長秀は静かにうなづき


口を開いた


「此度の三好三人衆の蛮行は


 世に知れ渡っております


 そしてこのまま誰も手を


 貸さなかった場合


 足利義昭公は再び三好三人衆の


 手に落ちる事でしょう


 その際にこの書状の事が


 露見すれば義輝公の様に


 殺されるは疑いなき事・・・


 ならば三好三人衆にあえて


 更なる蛮行をおこなわせ


 しかる後にお館様が三好三人衆を


 討つ、さすれば世にお館様の


 威光と武勇を知らしめる


 よい機会になると思われまする」


信長は静かにうなづき丹羽長秀に


確認するかのように問いかけた


「ならばお主も同じく


 ここは静観すべし・・・


 というわけじゃな!?」


信長の問い掛けに頭を下げ


答える丹羽長秀


「御意にございます」


静かにうなづく信長、そして


再び口を開いた


「サル、お主の意見はどうじゃ?」


美濃攻略の手柄により今回の会議に


おいて出席を許された秀吉は


竹中半兵衛と共に会議の末席に


加わっていた


「拙者でございますか!?」


「そうじゃ、遠慮はいらぬ


 申してみよ」


信長に促され戸惑いながらも


話しはじめる秀吉


「拙者は農家の出で一家そろって


 百姓でした、ですから武田や上杉


 といった有名な武将でさえ


 全く知りませんでした、しかし


 室町幕府の足利将軍はさすがに


 知っておりました・・・


 無知な民百姓でさえ天下の将軍様


 は知っているのです、その将軍様を


 助けて謀反人を討つというのは


 民百姓にもわかりやすく世に訴える


 事になるのではないでしょうか」


その言葉に目を細めニヤリと笑う信長


「ほぅサル、ではお主の考えは


 皆とは違うという訳であるな!?」


信長の指摘に慌てて取り繕おうとする秀吉


「いや、皆様と違うとか


 そのような大それた事


 では無く、拙者は単に


 そう思ったというだけの


 でして、その・・・」


その時いぶかしげに聞いていた


柴田勝家が吐き捨てる様に口を挟む


「ふん、今我らは天下の行く末を


 論じておるのだ、それなのに


 百姓目線の感想など的外れも


 はなはだしいわ!?」


それに佐久間信盛が続いた


「左様、百姓が感心したとて


 何の戦力になるというのじゃ


 そんなモノの為に織田家を


 危機に陥れるつもりか貴様は!?」


そして丹羽長秀もそれに続く


「秀吉殿は今だ百姓気分が


 抜け切れておらぬ様子ですな!?」


その言葉に城内の皆が笑った


皆に嘲笑されうつむきながら


恥ずかしそうに小さくなる秀吉


「何がおかしいのじゃ?」


皆が秀吉をあざ笑う中、その空気を


打ち壊すかのように信長が一言


そうつぶやいた、その言葉に


一瞬で場の空気が凍りつき


静寂が城内を包み込んだ


そして再び信長が口を開いた


「天下を治めるという事が


 どういう事か判って


 おらんのはお主達の方じゃ


 半兵衛、サルに代わって


 こやつらに説明してやれ」


名指しで指名された半兵衛が


フッと微笑み、まるでそうなる事が


判っていたかのように話しはじめる


「では僭越《せんえつ》ながら」


ぺこりと頭を下げ静かに話しはじめた


「皆様は天下を治めるという事が


 どういう事なのか、もう一度よく


 考えてみてください


 兵力を持って各地の大名を


 打ち倒し傘下に治めるのは


 あくまで武力鎮圧に過ぎません


 秀吉様が言われるように


 将軍を暗殺した逆賊を討ち


 新たな将軍を奉じて正道を成し


 それを天下に知らしめる


 それこそ正に天下人となる者の


 所業ではありませんか?


 天下を治めるという事は


 この日の本に住む全ての民に


 平和と安寧を保証し


 その対価として納税の義務を


 課す事にあります、その一環として


 日の本に住む全ての民百姓に


 至るまで、お館様の威光と武勇を


 世に示す事こそ天下取りへの


 第一歩だと考えますれば


 先程秀吉様が言われた事の何に


 皆様がお笑いになったのか


 私には不思議でなりませぬが」


信長の言葉と半兵衛の説明で


場の空気は一変した、このままだと


秀吉をあざ笑っていた自分達が


信長の本当の意向に沿わぬ発言を


していた事となる為、家臣達は


慌てて反論し始めた


「しかしお館様、足利義昭公を


 新たな将軍にするという事は


 いずれ天下人となられる


 お館様の邪魔になりは


 しませんでしょうか?」


柴田勝家が場の空気の変化に焦りながらも


務めて冷静を装い信長に問いかけた


「ワシが京に上洛し三好三人衆を


 討伐したのち足利義昭を


 新たな将軍に据え裏でワシが


 義昭を操り事を進めれば


 良いだけの事、今は乱世じゃ


 各地の大名を討伐し天下を


 統一するまでの間は精々


 足利将軍の名を利用し


 天下を統一した暁には義昭に


 将軍の座を譲らせればよいだけの事


 そこになんの問題がある!?」


まるでそれが当然とばかりに


言い放つ信長、呆気に取られる家臣達


柴田勝家も茫然と眺めていたが


思わず口を開く


「足利将軍を・・・


 傀儡化するおつもりですか!?」


「無論じゃ、それ以外義昭に


 何の利用価値がある!?


 栄枯盛衰《えいこせいすい》は世の習いじゃ


 そんな時代の流れも読めず


 過去の栄華にすがり


 室町幕府再興などという


 たわけた夢を見続けたいと


 いうのならずっと見ているがよい


 しかし目が覚めた時


 現実と夢の格差に愕然とし


 絶望するのは己自身じゃ


 そんなものの為になぜワシが


 責を負わねばならぬ


 滅びるべき時に滅びなかった


 ものの末路なぞどこまで


 いっても惨めなものじゃ


 ならばワシがキッチリ引導を


 渡してやるまでの事、それが


 次の天下を担う者の責務だと


 考えておる、違うか権六!?」


そこまで言われてぐうの音も


出ない柴田勝家、しかし勝家を庇うように


佐久間信盛が問いかけた


「しかしお館様、足利義昭という


 人物は聞き及んでいる限りでは


 世間知らずで暗愚な者なれど


 気位だけは高く非常に不遜な


 人物だとか、そんな人間が


 はたしてお館様に将軍の座を


 譲る気になりますでしょうか?」


そんな佐久間信盛の問い掛けを


愚問とばかりに一蹴する信長


「奴の気持ちなぞ関係ない


 将軍の座を譲りたくないと


 いうのなら現実を見せつけてやり


 判らせてやれば良いだけの事


 それでも将軍の座に固執し


 譲らないというのであれば


 ・・・力づくで奪うまでじゃ」


その言葉に城内は静まり返る


もはや信長の意見に反対する者なぞ


いるはずも無く決定事項として


皆に刻まれる事となった


「よいか、ワシはこれから


 足利義昭公の檄文に応え


 兵六万を率い京に上洛し


 三好三人衆討伐に赴く


 異論はないな!?


 これよりワシは天下取りへの


 第一歩を踏み出す、皆の者も


 心してかかれ、以上じゃ‼」


そう言い放つと踵を返し


部屋を出て行く信長


その背中は自信と期待感に満ち溢れ


家臣達が最初に考えていた不安など


消し飛ぶ程に頼もしく感じた





そんな会議の翌日、秀吉はルキア達の


部屋を訪ね昨日の会議の内容を


嬉しそうに報告していた


「そこでお館様は拙者が嘲笑の


 雨にさらされている所に


 助け船を出すがごとく


 口を挟まれ他の重鎮達の意見を


 バッタバッタと斬り捨てて


 拙者の意見を取り入れて


 くれたのでござるよ


 いや~カッコ良かったで


 ござる、やはりお館様は


 天下を取るお方だけあって


 他の人たちとはひと味も


 ふた味も違うでござるな!?」


上機嫌な秀吉の報告を半ば呆れ気味に


聞いているメンバー達、その時ゾフィが


素朴な疑問を秀吉にぶつけた


「あのさ秀吉さん、私


 よくわかんないんだけど


 将軍ってそんなに偉いの?」


腕を組み少し困った顔で考え込む秀吉


「う~ん偉いかどうかでいえば


 物凄く偉い地位でござるよ


 正式には”征夷大将軍”と言って


 朝廷より任じられた武家の


 最高位ですからな


 本来武家である大名は将軍の


 命令は絶対で服従する義務が


 あるででござる


 しかし一番偉いか?


 と聞かれると難しい・・・


 確か公家の最高位である


 ”関白太政大臣”の方が


 上だったような・・・


 まあ何にしろ将軍だの


 関白だの拙者の様な者には


 雲の上の話過ぎて関係無いで


 ござるけどな、はっはっは」


そんな事を言いながら笑う秀吉


ひとしきり笑いながら話した後


本題を切り出す秀吉


「実は此度の上洛にルキア殿達も


 同行して欲しいのでござる


 おそらく三好三人衆との戦いは


 問題なく勝てると思うでござるが


 足利義昭公との面会と例の謎の


 敵が現れた場合を想定すると


 念のためにルキア殿達にも


 来ていただいた方が


 いいと思いましてな・・・


 これには半兵衛の奴も賛成して


 くれております、できれば一緒に


 ご足労願えませんかな!?」


さっきとは打って変わり真剣な表情で


ルキア達に頼み込む秀吉


「そういう事でしたら我々も


 ご一緒させていただきましょう


 それでいいよなみんな?」


メンバーの方を向き確認がてら


そう伝えるルキア


「ああかまわないぜ、ずっと


 ここにいても退屈だしな」


「いいわよ、その京の都って


 所にも行ってみたいしね


 なんかオシャレそうだし」


「私も異論はありませんよ」


「京都には京美人とかいう


 素敵な子がいっぱいいると


 聞いてるしね、ダメだと


 言われても付いて行くさ」


「私もお供させていただきます


 早速あの魔法を披露できる


 機会があるといいのですが!?」


皆の思惑はバラバラだが満場一致で


同行する事となったルキア達メンバー


それから数日後、京に上洛すべく


信長の大軍が京都に向け出立した


秀吉の予想通り三好三人衆との


戦いは織田軍の圧勝で終り


ルキア達の出番は無かった


足利義昭を丁重に迎え京の都に


送り届けると義昭は大変上機嫌で


信長に感謝の意を告げる


「よく来てくれたの信長


 此度の働き本当に大義であった」


信長は深々と頭を下げ義昭に平伏する


「足利義昭様におかれましては


 この織田信長、必ずや義昭様を


 征夷大将軍とし天下に


 その威光を取り戻す事を


 お約束するものであります」


義昭は感激し何度も何度もうなづきながら


嬉しそうに信長の肩を叩き涙目で喜んでいた


それからというもの、信長は義昭の為に


ありとあらゆる事をした、まずは


居城である二条城の築城である


わずか二か月での築城にもかかわらず


その絢爛豪華な造りと大きさは


義昭を満足させるに十分だった


連日の様に宴が催され大勢の美女に


囲まれる生活にすっかり満足した


義昭は以後信長の事を”我が父”


とまで呼ぶようになっていた


そんな例日に渡る宴の中で


一度だけゾフィが歌を披露した


そのあまりの美しい歌声と容姿に


心を打たれた義昭は是非ゾフィを


側室に欲しいと信長に願うが


そんな願いが受け入れるはずも無く


あっさりと断られる、しかも


その話を聞いて激怒したゾフィは


義昭の前で歌を披露する事は二度と無く


義昭は再びその美しい歌声を聞く事が


出来なくなってしまった


そんなある日京都で秀吉が


ルキア達の部屋を訪ねた


「皆さん京の町はどうですかな?


 今日来たのは他でもない


 実は皆に会って欲しい


 人物がいるでござるよ」


ルキア達は顔を見合わせた後


秀吉に問いかけた


「一体どんな人物なんですか?


 人と会うだけなのにワザワザ


 秀吉さんが頼みに来るなんて


 ・・・」


秀吉は頭をかきながら複雑な


心境で話している事が見て取れた


「実は今回の足利義昭様との


 橋渡しをしてくれた人でしてな


 非常に頭もよく鉄砲の名手でもある


 という中々の人物なのでござる


 お館様が随分と気にしておいで


 でして、口には出しません


 でしたがもし可能ならば


 我が陣営に加えたいと思っている


 みたいでござるよ」


どうやら秀吉自体あまり乗り気じゃ


ないような様子だったが大方


竹中半兵衛あたりに


”ルキア殿達に会ってもらい


 怪しい人物ではないか


 判定していただくのが


 良いでしょう・・・”


と言われてきたのであろう


もし優秀な人物だと将来自分の出世の


ライバルになる可能性を考慮すると


あまり乗り気じゃない理由もわかる


それ程までに分かりやすい態度の秀吉


だった、それを察したステイメンが


クスリと笑いゼファーがにやけ顔で


秀吉を見つめていた


ルキア達メンバーが秀吉に促され


ある寺の中でその人物と面会した


その男は落ち着いた面持ちで


メンバー達をジッと見つめた


知的な目と物静かな態度が


優秀な人物であるという事を


物語っている様であった


『なるほど、秀吉さんが


 気にする訳だ・・・』


ゼファーはその人物を見て目を閉じ微笑んだ


「お待たせして申し訳ない


 でござる、この方たちが


 異国の地より我が織田家に


 助力していただいている


 ルキア殿、ステイメン殿


 ゼファー殿、ライオス殿


 ゾフィ殿、フリニオーラ殿


 でござる」


秀吉のメンバー紹介に優しげな


笑みを浮かべながら聞いていた


その男は丁寧に頭を下げると


静かな口調であいさつした


「初めまして、私は明智十兵衛光秀


 と申します、以後よろしく


 お見知りおきを」


これがルキア達と明智光秀の


最初の出会いであった





それから数日後信長は義昭を


将軍にするために朝廷に働きかけ


義昭の悲願を実現する


【室町幕府 第15代征夷大将軍 足利義昭】


それが実現した時の義昭は感激のあまり


終始興奮しっぱなしであった


「信長、お主のおかげじゃ


 そちの願いはなんでも


 叶えてやろうぞ!?


 副将軍の座はどうじゃ!?」


その申し出に信長はフッと笑い


丁寧に返答した


「有難き申し出ではありますが


 謹んでご辞退いたしまする」


深々と頭を下げ断りを入れる信長に対し


どことなく腑に落ちない義昭


そしていよいよ信長が本格的に


動き出す事となる、信長は義昭に対し


一通の書状を突き付ける、それは


将軍の権力を制限する為のものであり


信長の意向を無視した行動はさせない


という事を記した書状


世に言う”殿中御掟”である


内容を簡単に言うと


”全ての事は独断でおこなわず信長の許可を得よ”


”信長の全ての行動に将軍の許可は不要”


”天下が泰平になったら宮中の儀式は将軍に任せる”


といったものであった


それを見た義昭の怒りは凄まじく


周りの者にも不満をぶちまけていたが


細川藤孝や明智光秀の説得により


渋々この条件を承認する事となる


実際”室町幕府 第15代将軍”といっても


領地も無ければ兵もいない、自分で動かせるのは


精々自分の周りの数十名の家臣のみであり


信長の後ろ盾が無ければ何もできない


現状を鑑《かんが》みれば選択の余地は無かった


こうして信長の思惑通り事は進み


天下統一に向け順調に進むかと思われたが


ある日を境に状況は一変した


それは義昭が”殿中御掟”を承認した


数日後の事である


ある夜に義昭が眠りに着こうとした時


一人の男が義昭を訪ねて来た


その男は顔に怪しげな銀の仮面を付け


黒いマントを羽織っており正体不明の


不審人物にしか見えない容姿をしていた


そんな者がいきなり義昭の寝所に現れ


不信に思った義昭は思わず叫んだ


「貴様ここをどこだと思っておる


 我は第15代将軍 足利義昭なるぞ


 何処の誰かは知らぬがこの痴れ者が‼


 誰か、誰かおらぬのか!?曲者じゃ‼」


義昭がそう叫ぶも周囲から全く反応は無く


夜の宮中に義昭の声がむなしく


響いただけであった


「どうしたのじゃ、なぜ誰も


 出て来ぬのじゃ!?


 一体何が・・・」


戸惑う義昭に対し仮面の男は右手を


義昭の顔の前にかかげ掌を開いた


すると義昭の表情が見る見る豹変していき


最初困惑と恐怖で強張っていた表情が


次第に力の無いものに変っていった


目は虚ろになり口を半ばに開いたまま


まるで夢でも見ているような脱力した


表情でたたずむ義昭、やがて仮面の男が


義昭の耳元で何かささやくと義昭は


力なくうなづく、それを見届けた


仮面の男はそのまま部屋を出て行った




その翌日から義昭の態度が豹変する


信長に対する恨み憎しみをあげつらい


周りの者にも当り散らした


「おのれ信長・・・このワシを


 馬鹿にしおって、我は室町幕府


 将軍 足利義昭なるぞ‼


 このワシを馬鹿にした事を


 死ぬほど後悔させてやるわ!?」


義昭は信長には内密で各地に書状を送った


それは”逆賊信長を討て、そうした者には


最大限の恩賞と権力を与える”


といったものであった、その中には


武田、上杉、北条、毛利、朝倉などの


有力大名に加え比叡山延暦寺や本願寺顕如


といった巨大宗教勢力、そして兄を殺し


自分を拉致した三好三人衆にまで


その書状を送るという無節操さで


信長憎しの態度を示す、その結果


各地の有力勢力が全て信長の敵に回る


という考えもしなかった最悪の事態が


おこった、いわゆる”信長包囲網”である


義昭は不気味な笑みを浮かべ


ブツブツと独り言のようにつぶやく


「死ね信長・・・このワシを


 馬鹿にした報いじゃ


 殺す、必ず殺してやるぞ


 イ~ヒッヒッ~~


 死ね死ね死ね死ね死ね


 シネシネシネシネシネ


 ・・・・」


その表情はもはや人とも思えない程


憎悪で歪み、周りの人間もゾッとして


声もかけられない程であった。






 





 


 




前話とは一変して歴史的な話が中心でしたがいかがだったでしょうか?

歴史的事実をふまえながら自分なりの解釈で色々アレンジ&フィクション

を入れ込んでいるので”それはちょっとどうなの!?”と思われた方は

生暖かい目で見守ってくれると嬉しいです、では。


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