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美濃侵攻作戦

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている


ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在


ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている


ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー


ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた


クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

「に~ん~げ~ん ごじゅ~う~ね~ん~」


ここ清州城内では能を舞う声と鼓の音が響き渡っていた


信長が得意の能”敦盛あつもり”を舞っていたのだ


桶狭間の勝利に続き、瀬名姫と信康の救出成功により


家康との同盟の絆も強くなると共に今川家の力も弱まり


信長は終始上機嫌であった


始めて見る信長の舞いを不思議そうな目で見つめるルキア達


舞いを終えた信長は皆に拍手喝采で称えられた


そしておもむろにルキア達に近づき


語りかけるように問いかけた


「どうじゃったワシの舞いは?」


「我々には見慣れぬモノですが


 大変素晴らしかったと思います」


信長の問いにルキアがそう答えた


「そうか、うむ・・・今回の事もそうじゃったが


 桶狭間の戦といい、お主達の働きによるものが


 非常に大きかったのは事実、でどうじゃ


 戦勝祝いとしてお主達も何か


 披露してはみぬか!?」


思わずステイメンとルキアが顔を見合わせる


「いいなんじゃないのか?


俺はそういうの嫌いじゃないぜ!?」


戸惑う二人を尻目にゼファーがスッと立ち上がり


名乗りをあげる


「じゃあ俺からやらせてもらおうか・・・


レディースアンドジェントルマン


ミスターゼファーのショーにようこそ」


ゼファーは両手を広げ周りに笑顔を見せた


まるでそれが本職であるかのような手慣れた態度で


腰のカードを数枚取り出すと数枚空中に放り投げた


その瞬間そのカードはあっという間に鳥になり


窓や扉から外へと飛び立っていった


「ほおぉぉぉ~~‼」


それを見ていた織田家の家臣たちが一斉に感嘆の声をあげる


皆が鳥たちに目を奪われていると


家臣の一人が叫ぶように声をあげた


「ん、あれ?ゼファー殿がいない


 どこに行ったんだ!?」


その声に皆がキョロキョロ見回すが


そこにゼファーの姿は無かった


「私をお探しですか?」


上からの声に全員が見上げると天井から首だけ出ている


ゼファーの姿に言葉を失う織田家の家臣たち


そこからのゼファーは皆の息を突かせる暇も与えない程


次々とイリュージョンをくり出した


その姿はさながら凄腕のマジシャンの様であったが


本家マジシャンとは違い実際に使っていたのは


手品ではなく正真正銘の魔法マジックという点だった


信長を始め皆が幻想を見ているかのような錯覚を覚えた


そこにいた全員が時の過ぎるのも忘れ


ゼファーの繰り出す技に食い入るように見とれてしまう


そしてあっという間に”マジックショー”は終わった


「そ粗末様でした」


丁寧にお辞儀をし一礼するゼファーに対し



織田家の皆は一斉に拍手喝采を送った


「何とも摩訶不思議なモノを


 見せてもらいましたな!?」


「今のは何だったのだ?幻術


 それとも陰陽師の技か!?」


「奇々怪々な事もあるモノよのう・・・


 まるで幻想でも見ているようであったわ!?」


皆、興奮冷めやらぬ中ざわつきながら


ゼファーの所業に感嘆の声をあげながら賛辞を贈る


「見事であったゼファー殿


 正に夢、幻のごとくであった」


信長の称賛に思わずうなづき笑みがこぼれる一同


「次は私ね!?」


城内の興奮も冷めやらぬ中、今度はゾフィ―が立ち上がり


名乗りをあげた、ゼファーが皆に称賛を浴び


注目されている光景を見ていて


ずっとウズウズしていたのだ、有り体に言えば


”自分もチヤホヤされたい”のである


「で、お主は何を披露してくれるのじゃ?」


信長がニヤリと笑いゾフィに問いかける


再び固まるゾフィ、実は何をするか考えていなかったのだ


ゾフィは考えるより先に行動するタイプなので


”皆に褒め称えられチヤホヤされたい”一心で


反射的に名乗りをあげてしまったっだけだった


皆がゾフィに注目し奇妙な静寂が漂う


本人は無自覚でやっているのだがまるで勿体付けた


演出の様に場の緊張感が高まり信長の目も細まる


その時ゾフィの頭の中はフル回転していた


『ああ、私ってどうしてこうなのかしら


 せめて何やるか考えてから


 乗り上げればいいのに・・・』


信長が待ちきれず口を開こうとしたその時


ようやくゾフィの頭にひらめいた


「汝が主 ライドン・ゾフィの呼びかけに


 応えよ 来なさいトライデントミニュフィー‼」


ゾフィはおもむろに両手を上げ召喚魔術を行使した


すると小さな魔法陣発生しそこから四匹の魔獣が現れる


だがそれは魔獣と言っても体長30㎝程の


小さな球体の姿をしていてまるで白い毛玉に


短い手足が生えている様な何ともかわいらしい


容姿だった、一応手には短い三叉槍を


持ってはいるものの全く強そうには見えなかった


呼び出された四匹のトライデントミニュフィーは


周りをキョロキョロしながら落ち着かない様子で


”ミューミュー”と甲高い鳴き声をあげている


「お待たせいたしました、私は信長公と


 同じく歌を披露したいと思います


 じゃあ行くわよあなた達‼」


ゾフィの掛け声に今まで落ち着かなかった四匹の魔獣は


ピシッと横に整列し鳴き始めた、その甲高い鳴き声は


まるで高音の金属楽器の様に美しい調しらべを奏でる


その様子を確認しニコリと微笑みながら歌い始めたゾフィ


その歌声に皆が驚嘆した、信長達は勿論の事、ルキア達すら


聞いたことが無い美しい歌声、そしてそれは


トライデントミニュフィーの鳴き声と絶妙に合わさり


美しい旋律となってその場を漂う


何ともいえない心地よさが皆の耳を潤し


聞いていた者達は思わず目を閉じ


その美しい歌声に聞き惚れた


優しく包み込むような歌声が皆の心に浸透していくと


それはまるで胎児が母親の胎内で眠っているかのような


安心感と安らぎを与えてくれた


ゾフィが歌い終わるとゼファーの時より


さらに大きな拍手喝采と称賛の嵐が巻き起こった


「なんですかな今の歌は!?


 異国の歌というのは


 中々良いモノですな!?」


「この様な素晴らしい歌は今まで


 聞いた事がありませぬ!?」


「いや~素晴らしい


 是非また聞きたいものですな」


皆の賛辞に満足げなゾフィ、信長が思わず膝を叩き口を開いた


「見事であったぞゾフィ殿またいつか


 ワシに聞かせてくれぬか!?」


「はい、喜んで」


信長の褒め言葉に嬉しそうにうなづくゾフィ


皆の称賛が治まるまで微笑みながら頭を下げ


その雰囲気を満喫するゾフィ、ようやくざわつきが治まり


ゾフィが座ると今度は仲間達が声をかけた


「凄いじゃないですかゾフィ


 貴方がこんなに歌が上手いなんて


 全然知りませんでしたよ!?」


「ありがとうステイメン


 歌とか踊りとかも子供の頃


 散々仕込まれたからね・・・


 当時は嫌でしょうがなかったけど


 今はやってて良かったと思えるわ」


その言葉にライオスがうなづいた


「俺みたいな歌とか芸術に疎い男でも


 今の歌が凄い事はわかったぜ


 全く大したもんだ」


「ありがとうライオス」


ライオスの言葉に嬉しそうに微笑むゾフィ


皆が自分の事を褒めてくれるのが


嬉しくて仕方がないといった様子である


「全くだぜ、ゾフィのせいで


 みんな俺のやったマジックショーを


 忘れちゃったんじゃないか!?


 これじゃあ俺は完全に前座扱いだな


 ヤレヤレ」


首をすぼめ両手を広げるゼファー


「すまないわねゼファー


 女の子は褒められて


成長するモノなのよ・・・


 そうだフリニオーラ


 貴方も何かやりなさいよ!?」


突然振られ驚きを隠せないフリニオーラ


「いや、私はいいですよ


そういうのは苦手ですから・・・」


両掌を振り全力で拒否するフリニオーラ


「何言ってるのよ、いいから


 やってみなさいよ!?」


ゾフィはそう言うとフリニオーラと肩を組み


小声で耳元にささやいた


「いいフリニオーラ、女は


 見られて褒められて美しくなるの


 目一杯チヤホヤされたら


 今よりずっといい女に


 なれるかもよ・・・」


そう言い放ちウインクした


それに対しフリニオーラは苦渋の表情を浮かべる


『ゾフィさんに悪気はなく


 良かれと思ってやってくれている


 のでしょうが正直有難迷惑


 なんですよね・・・』


フリニオーラはそんな事を考えながら


ゾフィを恨めし気に見つめる


召喚魔術師であるゾフィに一番必要な事は


魔獣とシンクロ出来る感性である


皆とワイワイ仲良くしながらチヤホヤされる事で


感性を強め、己を高めていくゾフィに比べ


魔法使いであるフリニオーラに一番必要な事は


全てを理論的に思考する理性である


元々人見知りで引込み思案、そして人としゃべる事も


苦手な彼女は多くの人と接するより一人で


本を読んでいる方が好きなのだ


そんなフリニオーラにとって


人前で芸を披露するなど苦痛以外の何物でもなかった


『ゾフィさんは自分がいいと思う事は


 他の人もそう思っていると考える


 タイプですからね・・・


 いい人だとは思うのですが正直


 そういう所は本当に困ります・・・』


そんな事を考えながらも周りを見渡すと


皆がフリニオーラに注目し期待の視線を向けていて


もはや拒否できる空気では無かった


ため息をついて仕方なく立ち上がり少し考える


『仕方がない子供の頃に聞いた歌でも


 歌ってこの場を誤魔化しましょう


 こんな事なら一発芸用の魔法でも


 考えておけば良かったです・・・


 しかしそんな無駄な魔法に費やす


 時間と魔力を考えると実に


 馬鹿らしいですね・・・』


皆の注目と暖かく見守るゾフィの期待の中


フリニオーラが歌い始めた、そしてその歌声に皆が驚愕した


恐ろしいまでの下手さ加減、音痴などという言葉では


言い合せない程の雑音が皆の耳に突き刺さった


信長の顔が一瞬で歪み織田家の家臣達の顔が青ざめる


聞いていた皆の顔から大量の脂汗があふれ出し


まるで拷問を受けているかのような苦悶の表情を浮かべた


しかし主君である信長が黙って聞いている以上


家臣である自分達が聞かない訳にはいかず


必死に耐えながら聞いていた


「フリニオーラ、あんた・・・」


ゾフィが思わずつぶやく、その歌声を苦痛に感じていたのは


織田家の人々だけでは無く仲間達も同じであった


ライオスやゼファーの顔が苦痛で歪む


「これはいけませんね・・・」


ステイメンはすかさず小声で呪文を唱えた


それは精神破壊攻撃に対しての


防御魔法による精神防護プロテクトだった


フリニオーラの歌声が城内に響き渡る


何とも言えない不快感と共にそのどす黒い旋律は


心に突き刺さり切り裂いていく


心に汚物を塗りたくられたかのような雑音が


皆の気持ちをかき乱す、先ほどまでと違い


無限地獄とも思える程時間が長く感じ、全員が


”早く終ってくれ‼”と切に願っていた


その時、”うっ”と声を出し手で口を押さえながら


素早く立ち上がり、血の気の引いた真っ青な顔で


足早に退室していった者がいた


織田家の家臣の一人が吐き気をもよおし


室内で嘔吐しては大変、と慌てて出て行ったのだ


突然の出来事に歌うのを止め


その光景を茫然と見守るフリニオーラ


皆、予想外の展開に少し驚いたが結果的に


歌が止まった事にホッとし


”これでもう止めてくれるだろう”と安堵した


しかしそんな皆の願いは最悪の形で裏切られる事となる


フリニオーラの解釈が皆と違っていたからだ


『私の歌を聞いた事で感銘を受け


 こらえきれない程泣き崩れてしまう


 人がいるなんて・・・


 それ程までに私の歌って!?』


感激したフリニオーラは両目を閉じて少し前かがみになった


そして左手の小指がピンと立つとそれを合図に


今までよりさらに気持ちを込めて熱唱し始めたのだ


先程までと違い手振りまで交えて熱唱するフリニオーラ


破壊力、貫通力、浸透力全てがグレードアップし


皆の心に襲い掛かり破壊の限りを尽くした


”戦国の歌姫”フリニオーラの座を脅かす者は


これからこの国で約450年後に生まれる


”剛田武”という男の出現を待つしかない程である


信長を始めそこにいるほとんどの者が


歯を食いしばって耐えていた


ようやく歌い終わったフリニオーラは


フィニッシュの決めポーズで5秒ほど制止した後


額の汗をぬぐい満面のドヤ顔で周りを見渡した


しかし城内は静まり返り誰もピクリとも動かなかった


拍手も喝采も無く奇妙な静寂が場を支配する


皆、何とか最後まで意識を保っていられた事に


ホッと安堵していたところだった


『あれ?みなさん全くの無反応・・・


 まさか拍手や歓声を送る事も


 忘れてしまう程の感動を!?』


思わず涙がこぼれ落ちそうになる


その時フリニオーラの左手の小指が再びピンと立ち


語りかけるようにボソリと呟いた


「じゃあ皆さんの期待に応えてもう一曲・・・」


その言葉を聞いて慌てて駆け寄るゾフィとゼファー


フリニオーラを見つめる織田家の家臣達の目には


明らかに殺意が混じっていた


まるでフルマラソンを走りきった選手を抱きかかえるように


フリニオーラに覆いかぶさるように抱きつくゾフィ


「もういいのフリニオーラ


 もう十分よ・・・」


「そうだぞフリニオーラお疲れさん」


二人の過剰とも思える態度に戸惑うフリニオーラ


「いえ一曲歌っただけですから


 別に疲れてなどいませんよ


 まだまだ歌えますけど・・・」


その言葉にゾフィとゼファーの血の気が引く


その時、ステイメンが微笑みながら話に割り込んできた


「いや~フリニオーラの歌が


 まさかこれほどひどいとは!?


 聞くに堪えないとはこの事でしたね」


「えっ!?」


予想外の言葉に理解が及ばず驚くフリニオーラ


ゼファーが慌ててフリニオーラの両耳をふさぐ


そしてゾフィがステイメンの胸倉を掴み


物凄い形相で睨みながら小声で話しかけた


「ステイメン、アンタは本当に


 デリカシーが無いし


 空気読まないわね!?


 もう少し気を遣いなさいよ‼」


ゾフィに言われた事が理解できなかったのか


ステイメンはキョトンとした表情のまま


悪びれることも無くあっさりと言い放った


「貴方が何を言いたいのか


 イマイチ理解できませんが・・・


 いや~しかし凄まじかったですね~


 精神破壊呪文じゃないかと


 思ったぐらいでしたよ、はっはっは」


そのセリフを聞きさらに強く胸倉を掴むゾフィ


額が引っ付くほど顔を近づけ


ステイメンを鬼の形相で睨みつけた


「あんた人を癒す僧侶でしょ!?


 悪気が無かったら何を言っても


 いいって訳じゃないのよ・・・


 そう言えばアンタ随分と


 涼しい顔してるじゃない


 あの歌を聞いてどうしてそんな


 普通でいられるのよ!?」


その質問にニコリと微笑むステイメン


「私は対精神破壊攻撃用の防御魔法で


 精神をプロテクトしてましたから


 平気なんですよ・・・く、苦しいです


 ゾフィ、首が苦しいです


 何をそんなに怒っているのか


 わかりませんが、どうか落ち着いて


 ください!?」


首を締め上げる程強く胸倉を掴みながら


ステイメンを睨みつけるゾフィの目は


狂犬のようにギラギラと血走っていて


血管が浮き出る程怒りの表情を浮かべていた


「あんたそんな便利な魔法があるなら


 私達にも使いなさいよ‼


 私達がどんな思いであの地獄の様な


 歌を聞いていたと思っているのよ!?


 本当に死ぬかと思ったんだから


 あの歌聞いたら魔王でも


 狂い死にするんじゃないかって・・・」


ステイメンに対しいつの間にか大声を張り上げて


思いの丈をぶちまけてしまっていたゾフィが


ハッと我に返り後ろを振り向くと


無感情な表情でジッとこちらを見つめている


フリニオーラが静かにたたずんでいた


その後ろではゼファーが両手を広げ


残念そうに首を振っていた


「地獄のような歌・・・


 精神破壊攻撃・・・


 魔王でも狂い死にする・・・」


相当ショックだったのか感情の無い表情を浮かべ


ブツブツと小声でつぶやくフリニオーラ


「ち、違うのよフリニオーラ


 今のはその・・・」


ゾフィは慌てて取り繕うとするが


もはや何を言っても手遅れだった


「ゾフィ、随分と酷い事を言いますね!?」


まるで自分とは無関係の他人事とばかりに


ステイメンがそう言い放った


「アンタにだけは言われたくないわよ‼」


再び鬼の形相でステイメンの首を締め上げるゾフィ


そこにルキアが割って入るかのようにゾフィと


フリニオーラの肩をポンポンと軽く叩く


「歌が下手でも無神経でもいいじゃないか


 それが個性なんだしみんな大切な仲間


 だという事には変わりないんだから」


屈託のない笑顔を浮かべ微笑みかけるルキア


それを見て呆れ顔で苦笑するライオス


「強引にいい話風にまとめたが


 そんな理屈じゃ普通は誰も納得しないぜ!?


 ルキアしか許されない説得方法だな」


ライオスの言葉に思わずうなずくゼファー


実際個性の強いメンバー達なので些細な事で


言い争いになる事も多い、しかしそんな時も


ルキアの仲裁でほとんど治まってしまうのだ


それを周りで見ていた信長と織田家一同の者が


”このチームのリーダーは誰か”


という事を再認識させられた一件となった


信長を始め織田家の人々のほとんどは


その光景を暖かく見守っていいたのだが


その中にはあまり快く思わない者もいた





それからしばらく時が過ぎたある日の事


ルキア達の部屋に木下藤吉郎が訪れた


この頃には藤吉郎は士分に取り立てられており


”木下藤吉郎秀吉”と名乗っていて皆からもそう呼ばれていた


「ちょっとよろしいですかなルキア殿?」


部屋の襖を開け挨拶がてらにほほ笑む秀吉


「これは秀吉殿、何か我らに


 話でもありましたか?」


秀吉はメンバーの視線が集まる中


そそくさと部屋に入るとドッカリと腰を下ろし


仰々しくあぐらをかいて真剣な表情を浮かべる秀吉


「実はルキア殿達に助太刀を


 頼みたい事がありまして・・・」


その言葉にルキアの目線が鋭く変わる


「またいくさですか?」


その質問にコックリうなづく秀吉


「戦は戦なのだがルキア殿達に


 戦ってもらいたいのではござらん


 あくまでも拙者の手助けを頼みたい


 のでござるよ」


「どういう事ですか?できれば


 判りやすく説明していただけませんか?」


秀吉は無言のまま首を縦に振り説明を始めた


「実はこの尾張の国の隣国に


 美濃という国がありましてな


 以前は友好な関係を築いていたのですが


 代が変ってからは不仲といいますか


 戦争状態が続いております、美濃には


 難攻不落と言われる稲葉山城があり兵も精強


 何度か合戦を仕掛けてはいるのですが


 あまり良い成果は出ていないというのが


 現実でござるよ・・・」


どこか芝居じみた仕草でため息交じりに語る秀吉


重苦しい表情を浮かべ少し間を空けると再び語り始めた


「我が織田軍からは重鎮であられる


 柴田勝家殿や佐久間信盛殿が


 美濃の斉藤龍興を相手に


何度か戦を仕掛け敗れております・・・」


その時ルキアの顔が険しくなった


「そう言えば柴田勝家殿や


 佐久間信盛殿と言えば



 我々も何度かお会いしたことが


 ありますが、どうやら我々に対して


 あまりよく思っていないのでは?


 と感じましたが・・・」


秀吉は上目づかいでジロリと見上げる


「さすがルキア殿


 そこまでお気づきでしたか


 実はそのお二方は


 先代から織田家に仕える


 重鎮でありましてな


 百姓から成り上がった


 拙者の様な新参者は


 気に入らないみたいでござる


 ましてやルキア殿達が手柄を


 立ててくれたおかげで


 ルキア殿達付きの拙者まで


 出世が実現し”秀吉”と名乗る事も


 許された次第です、あの方達から


 してみれば”他人のふんどしで出世した


 成り上がり者”と見ている訳で


 自然とルキア殿達にも敵意を


 向けてしまうのでありましょう」


その話を聞いて腕を組みながら考え込むステイメン


「なるほど、彼等の気持ちも


わからないではないですが


我々にはどうする事も


できませんからね・・・」


「で、そんな状況で一体


オレ達に何をさせたいんだ?」


ライオスが秀吉に向かって


やや苛立ち交じりに問いかけた


「それなのでござるが


 此度、拙者が美濃の国に侵攻し


 稲葉山城攻略の大役を


 仰せつかりました・・・


 しかし今しがた説明したとおり


 ルキア殿達に戦ってもらい


 敵城を落としたとしても


 周りは認めてくれませぬ


 それどころか潜在的な敵を


 増やすばかりで何ともよろしくない


 状況になってしまうでござる」


回りくどく勿体付けた説明をする秀吉に


益々苛立ち始めるライオス


そんな時フリニオーラが口を挟んだ


「なるほど、今回はあくまで


 秀吉さんが前面に出て指揮を取り


 私達はあくまで裏方の補佐役として


 フォローして欲しいという訳ですね」


その言葉に表情がパッと明るくなる秀吉


「さすがはフリニオーラ殿!?


 察しが良い、やはり天才魔法使いは


 違いまするな!?」


大袈裟にヨイショする秀吉の姿に


やや呆れ気味のメンバー達


「そろそろ私達に何をして欲しいのか


 教えてくれないかしら?」


そんなゾフィの言葉と態度にややかしこまって


再び皆に真剣な眼差しをむけると


ワザとらしく咳払いをする秀吉


「コホン、皆様方にやっていただきたいのは


 三つでござる、まず一つ目は


 敵の武将をこちらに寝返らせる


 調略、誰を標的にするかは


 こちらですでに洗い出しております」


ゼファーの口元が緩み秀吉に話しかけた


「なるほど、難攻不落の城を


 落とす為には正攻法だけでは無く


 搦め手も必要という訳か


 まあベタではあるがいい作戦だ」


秀吉は真剣な表情でうなづく


「お褒めの言葉として有難く


 頂戴いたしまするゼファー殿


 そして二つ目ですが


 美濃には一人傑出した人物が


 おりましてな、是非我が陣営に


 加えたいのです


 もちろん拙者自ら説得に赴く


 つもりでありますが


 説得する為の付き添いを


 頼みたいのでござるよ」


ステイメンがその話に興味深々で問いかけた


「ほう、傑出した人物ですか!?


 一体どのような人なのですか?」


「竹中半兵衛重治という人物です


 この男はその知略であの難攻不落の


 稲葉山城をたった16人で占拠して


 しまった事があるのでござるよ」


秀吉の説明に一同が驚く


「それは凄いですね!?


で、その人は今どうしているのですか?」


フリニオーラの問いかけに溜息交じりに答える秀吉


「今は城を返還し、隠居生活を


おくっているようでござる、


どうやら体を悪くしている為


 静養しているとの情報も


 入っております」


その言葉に反応するかのように


ステイメンが立ち上がる


「ならば私が秀吉殿と行きましょう


 体を悪くしているのなら


 私の出番でしょうしね、そして


 それ程の人物ならば一度


 会ってみたいですし・・・」


「じゃあ寝返り工作の役目は


 俺に任せろよ」


ゼファーが自信ありげに自分自身を


親指で指し名乗りをあげる


「本当に大丈夫なのかゼファー?」


「まあ任せろよルキア


 俺に口説けない人間なんて


 いないからな、なあゾフィ!?」


秀吉が驚いてゾフィの方に視線を移す


「それは誠でござるか!?


 ゼファー殿とゾフィ殿が


 そう言った関係であったとは


 いやはや拙者は全然


 気が付いませんでした」


そんな秀吉の言葉を聞き


顔を真っ赤にして怒り狂うゾフィ


「何言ってるのよアンタは!?


 いい加減にしないと本当に


 殺すわよ‼」


ゾフィの言葉を全く聞いていない


かのように話を続けるゼファー


「照れるな照れるな、君の気持ちは


 判っているからさゾフィ」


軽くウインクして微笑むゼファーに対し


ゾフィはもはや怒りは絶頂に達し小刻みに震えていた


そんな彼女をどうなだめようか狼狽えるメンバー達


「そう言えばアンタがウチのギルドに


 入る時、テストしたのはライオスと


 フリニオーラだったわね・・・


 ちょうどいいわ、今度は


 私がテストしてあげる


 今からケチョンケチョンにして


 必ずクビにしてあげるわ」


もはや殺気混じりの眼差しで不敵に笑うゾフィに


あくまで余裕のゼファー


「じゃあそのテストに合格したら


 俺達婚約って事でいいのかな


 マイハ二ー!?」


いつの間にか手からバラの花束を出現させ


ゾフィに手渡すポーズをとるゼファー


その時メンバー全員の耳に


”ブチッ”という音が聞こえた気がした


「そこまで馬鹿にされて笑ってられる程


 私の気が長いと思っているの!?


 その花はアンタの棺桶にでも


 添えてあげるわよ


 覚悟しなさい‼」


そう言い放ち両手を天に掲げるゾフィ


「汝が主 ライドン・ゾフィの


 呼びかけに応えよ


 来て アクア・・・モゴッ!?」


メンバー全員が慌ててゾフィの口を塞ぎ


取り押さえる 


「あなたは何を呼び出そうと


 しているのですか!?


 ここは城内ですよ‼」


「とにかく落ち着けゾフィ


 ゼファーの馬鹿のいう事を


 イチイチ間に受けるな」


「そうですよゾフィさん


 誰もゾフィさんが本当に


 口説かれた何て信じてませんよ!?」


皆の説得にも耳を貸さず暴れるように振りほどこうとするゾフィ


「放してよ、今回ばかりはあの馬鹿を


 ボコボコにしてやらないと


 気が済まないのよ‼」


そんなゾフィにステイメンが冷静に突っ込む


「竜王まで呼び出してボコボコで済むと


 思っているのですか、あなたは?」


「うるさいわね、そう言えば


 アンタはいつもいつも


 ゼファーの肩を持つわねステイメン


 本当に空気を読まない男・・・


 もしかしてあなた達そういう関係なの!?」


思わぬとばっちりに呆れはて反論すらしないステイメン


メンバーの視線は助けを求める様に自然とルキアに集まった


満を持してというタイミングでルキアが口を開く


「ゼファー、君は本当に


 彼女の気持ちを確かめたのかい?


 結婚というのはお互いの気持ちが


 一つになってこそ結ばれる


 尊い儀式なんだ、どれだけ


 君が彼女の事が好きでも


 いきなり結婚と言われたら


 どんな女の子でも戸惑うよ


 確かにゾフィはいい子だ


 だからこそもっと誠実に


 真剣に交際を申し込むところから


 始めて見ればいいんじゃないかな?」


真剣な眼差しでそう語りかけるルキア


皆は唖然として言葉が出ない


勿論これがルキアのボケで無い事は


皆が知っていた、思わず吹き出すゼファー


「そうだよな、確かにお前の言う通りだ


 悪かったよゾフィ」


あれ程ヒートアップしていたゾフィも


ルキアの言葉を聞いて完全に怒りが


吹っ飛んでしまっていた


「えっ!?ああ もういいわよ


 これからは気を付けなさいよ


 ちなみにアンタは私のタイプとは


 全然違うんだから


 勘違いしないでよね!?」


そう言い放ったゾフィをジト目で見つめるフリニオーラ


「ゾフィさん、その言葉は・・・


 まあいいですけどね」


 呆気に取られていた秀吉がようやく口を開いた


「あの・・・どうやら話は


 まとまったようでござるな


 話を続けてもよろしいですかな?」


ルキアが代表してぺこりと頭を下げた


「すみませんでした秀吉殿


 話を続けてください、で


 助太刀の三つ目は何ですか?」


再び秀吉の顔が真剣なモノに変った


「三つ目が一番重要でござる


 あの難攻不落の稲葉山城を


 攻略するためにこちらも


 戦略の拠点を築きたいのでござるよ」


ステイメンが思わず問いかけた


「戦略拠点ですか・・・


 それはどういったモノを


 お考えですかな?」


秀吉は大きく息を吐き目を大きく見開いて


皆を見回した後静かに、そして重い口調で語り始めた


「城を造りたいのでござるよ」


皆の表情が強張る、中でもライオスが呆れ顔で


「城だと!?馬鹿言っちゃいかんぜ


 城を築くならばまず基礎工事をして


 材料の調達、そして運搬、それから


 築城だ、知っての通り物凄く


 人手と時間がかかる作業だぜ!?


 そんな悠長な事をしてたら


 敵も黙っちゃいないだろ


 おとなしく城なんか


 造らせてくれる訳無いだろ!?」


その言葉に目を閉じ大きくうなづく秀吉


「ライオス殿の言う通りでござる


 だから敵の邪魔が入らない内に


 築城するのでござるよ、日が暮れて


 次の日の太陽が昇るまでの間に


 城を造ってしまえば問題ないで


 ござる」


ステイメンが半分呆れ顔で問いかけた


「一晩で城を造るつもりですか?


 いくらなんでもそれは・・・」


秀吉は珍しく強い口調で話し始めた


「確かに常識では考えられない


 無茶な提案だという事は


 百も承知でござる、しかし


 これを成し遂げてこそ


 稲葉山城攻略は成功すると


 拙者は考えておる次第でござる


 貴方方なら何とかできるはずです


 どうかお願いでござる


 この”一夜城”をあなた方の


 お力添えで実現してくだされ‼」


深々と頭を下げ懇願する秀吉を


困った顔で見つめるメンバー達であった。



 

 

 



 




 










今回の話はなんともとりとめのない話になってしまいましたが

自分自身こう言った話は嫌いじゃないので悪ノリでつい書いてしまいました(笑)

次話からはもう少しまともな話になると思いますので、よろしくお付きあください

では。

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