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外伝 竜王のお友達

ライドン・ゾフィ…ライドン家当主の末娘で姫巫女の役目を負った少女

ライドン・ドライル…ライドン家第十三代当主、普段は冷静沈着で責任感が強い、ゾフィの父

ライドン・ガジュベル…先代当主の時代から使える重鎮で事実上のナンバー2

ライドン・メリスン…先代当主、歴代当主の中でも二人目のドラゴンを呼び出す事ができた凄腕

アクアドラゴン…ドラゴン族最強の称号”竜王”の座に君臨する水のドラゴン

今日も息を切らせながら森の中を走る少女がいた


いつもの湖を目指していたゾフィは着いた途端に


誰かを探す様にキョロキョロと辺りを見回す


風が木々を揺らす静かで優しい音だけが耳に届く静寂な湖畔で


息を整えながら大きく息を吸い、ありったけの声で叫んだ


「ハァハァハァ、アクア~出て来てよ‼」


少女の呼びかけに呼応して頭上に巨大な魔方陣が現れ、その中から


悠然と姿を見せる青き龍、ゆっくりと舞い降りるようにはばたくその姿は


優雅さすら感じさせたが、その羽の巻き起こす風がゾフィの髪と服を


激しくたなびかせる、そして先程まで優しくそよいでいた自然の風とは


真逆ともいえる突風が周りの木々と湖の水面をざわつかせた


そんな中、優しい口調で話しかけるアクアドラゴン


「やあゾフィ、今日も元気そうだね!?」


「うん、アクアも元気そうで良かった」


屈託のない笑顔で笑う少女に顔に


竜王と呼ばれた青き龍の顔が思わずほころぶ


「ところでゾフィ、こんな時間に


 ここに来てても大丈夫なのかい?


 いつもなら勉強の時間だろ?」


そんなアクアの指摘に思わず顔をしかめるゾフィ


「だってさ、勉強つまんないんだもん


 お料理とかお裁縫とか・・・本当は私


 召喚魔術が習いたいのよ、でも私は女だから


 ダメだってお父様が・・・」


少しだけすねるように話す少女の姿に優しくうなづくアクア


「そうか、わかった召喚魔術か・・・


 じゃあゾフィが知りたいと思う事は


 私が全て教えてあげよう」


ゾフィの顔がパッと明るくなる


「本当!?本当にアクアが教えてくれるの!?


 ありがとうアクア、大好きよ‼」


「もちろん本当だとも


 ゾフィは私の主だからな」


その瞬間ゾフィの表情が険しく変わり無言でアクアを睨みつけた


それをみて慌てて訂正するアクアドラゴン


「すまない、ゾフィは私の友達だったな」


「そうよ、何度言ったらわかるのよアクア!?」


ゾフィはそれから毎日のように湖に来てはアクアと話し込んでいた


アクアはゾフィの質問には何でも答えてくれた、どんな質問にも


懇切丁寧にわかりやすく説明してくれたのだ


そして毎日、今日の出来事や感じた事を嬉しそうに話すゾフィ


それをいつも優しくうなづきながら聞いてくれるアクア


森の中の静かな湖畔で少女と竜王の密会は毎日続いた


そんなある日、ゾフィが不意に問いかけた


「ねえアクア、私いつも貴方に教えてもらったり


 話を聞いてもらってばかりじゃない


 私もあなたの為に何かしてあげたいんだけど


 なにか私にできる事ってないかな?」


その言葉に少し戸惑うアクア


「う~む、私はゾフィにこれ以上無い程の


 恩を受けている、私にとって君は


 命の恩人と言っても過言ではないからな


 それに比べれば私がしてやっていることなど


 取るに足らぬ些細な事なのだ


 むしろ恩返しとしても


 全然足りないぐらいなのだから


 ゾフィが気にする事ではない」


 そんなアクアの言葉に何か納得のいかないゾフィ


「そりゃあアクアは凄く頭がいいから


 私があなたに教えられることなんて


 ないんだろうけどさ・・・


 そうだ、じゃあアナタの話を聞かせてよ


 ドラゴンの話なんて全然知らないし


 アクアはドラゴン族の頂点


 竜王なんでしょ!?


 竜王になるまでの話とか


 竜王になってからの話とか


 を聞かせてよ!?」


突然の要求に少し困った顔を見せたアクアだったが


仕方がないとばかりに気を取り直し静かに語り始めた


「私の生まれたのは今から2000年ほど


 前の話だ、その頃は生態系も違っていて


 様々な種族がいて各種族間での戦争もあり


 生存競争も非常に激しかった・・・


 その頃から我等ドラゴン族は生物の頂点として


 君臨しており、我等に挑んで来る他種族など


 ほとんどいなかった、だから我らドラゴンが


 戦うのは同族同士しかいなかったな


 私がいうのも変だがドラゴン族と言うのは


 どいつも気位が高く自分こそが一番だと


 思っている奴等ばかりでな・・・


 かくいう私も若いころは生意気で自分が一番だと


 信じて疑わなかった、だから当時の竜王である


 ホーリードラゴンに 戦いを挑んだんだ・・・」


ゾフィは目をキラキラさせながら


アクアの話を食い入る様に聞いていた


「それで、それでその戦いはどうなったの!?」


アクアは目を閉じフッと笑う


「負けたよ、見事なまでに完敗した・・・


 生涯一度きりの負けだったが


 あの方は本当に強かった・・・」


ゾフィはワクワクしながら聞いていたが


アクアが自分を負かした相手に対して


”あの方”と呼んでいる事が気になったのだ


「その後 ホーリードラゴンさんとは


 どうなったの?今はあなたが竜王と


 いう事はもう一回戦って勝ったの!?」


ゾフィの素直な問い掛けにゆっくりと首を振ったアクア


「いや、ドラゴンは一度負けた相手に


 もう一度戦いを挑むという事はほとんど無い


 その勝負が正当なモノであればその結果を真摯に


 受け入れ、勝った相手に敬意をはらうというのが


 流儀であり礼節だ、人間の言葉でいうと


 ”龍の矜持《きょうじ》”という事になるのやも知れぬな」


「そうなんだ・・・でも今あなたが竜王という事は


 ホーリーさんはどうなったの?」


その問いにふと空を見上げ遠い目をするアクア


「あれは今から1200年ほど前の話だ


 当時この地上には巨人族という種族がいてな


 我々ドラゴンに何度も戦いを挑んできた・・・」


アクアは何か嫌な事を思い出したかのように


少し嫌悪感を見せながら話した


「巨人族!?大きい人の種族って事?


 強いの、その巨人たちは!?」


その問いに首を振るアクア


「巨人族など単独での戦いならば


 我等ドラゴンの足元にも及ばぬ


 下等な種族だった


 ただ基本群れることが無く


 単独行動を旨とするドラゴンに対し


 奴らは群れで行動し集団戦法を使って


 戦う、しかも他種族生物を力で従わせ


 圧倒的大軍で当時竜王であるあの方に


 戦いを挑んできたのだ・・・」


その話を聞いて不安げな表情で問いかけるゾフィ


「圧倒的大軍ってどのくらいなの?」


少し考えてボソリとつぶやくように口を開くアクア


「総勢3500匹程の軍勢だったな


 あの時は・・・」


何かを思い出しているような表情で


少し間を開けると再び話始めたアクア


「その知らせを聞いた私もあの方の


 助太刀をするべく駆け付けた・・・」


ゾフィはハラハラしながら問いかけた


「その戦いはどうなったの?結果は?」


「数的には3500匹対2頭の戦いだったが


 奴らは我等ドラゴンの恐ろしさというモノを


 嫌というほど味わう羽目になった


 当時戦場となったのはあの方の住家である


 ヘルゲン山脈という場所だったのだが


 山の形が変るほどの凄まじい戦闘だった


 そして我らは激戦の末に奴らを殲滅したのだが


 あの方はその時負った傷と力の消耗によって


 全盛期の力を失ってしまったのだ・・・」


寂しそうに語るアクアにゾフィはかける言葉が無かった


「私は怒りに震えた、ドラゴンの持つ尊厳が


 どうしても許さなかったのだ・・・


 私はあの方をそんな目に合わせた敵対種族共の


 仲間を一匹残らず探し出し一族郎党に至るまで


 皆殺しにして種族ごと絶滅させた


 我等ドラゴンに戦いを挑むという事が


 どれほど愚かな事か、その身をもって


 知らしめてやったのだ・・・


 今思えばやり過ぎだったかもしれぬ


 私も若く血気盛んなころだったからな


 おかげで我らドラゴン族に挑もうなんて


 愚かな事を考える者はいなくなった・・・」


あまりの話に言葉が出ないゾフィ


急にアクアの事が恐ろしく感じてしまい


アクアを見る目に怯えが出てしまった


ゾフィのそんな様子に気づいたアクアは慌てて謝る


「すまないゾフィ、こんな話を聞かせてしまって


 私の配慮が足りなかったようだ・・・


 許してくれ」


生物の頂点、ドラゴンの王が頭を下げて謝っていた


その姿に涙を流しながら首に抱きつくゾフィ


「私こそごめんなさい、貴方の辛い過去


 を無神経に聞いてしまって・・・


 本当にごめんなさいね」


そんなゾフィの姿を見て優しく微笑むアクア


「いや私は何とも思っていない、なにせ


 もう1200年も前の話だ・・・


 寧ろ私の事を知りたいと言ってくれた


 ゾフィの言葉が嬉しくて、ついありのままに


 話してしまったのだ・・・


 謝るのは私の方だよゾフィ」


アクアのその言葉に右腕でゴシゴシと涙をふき取り


両手で自分の頬を叩くと険しい顔を浮かべるゾフィ


「あなたの話をもっと聞かせて・・・


 遠慮せずありのままでいいから


 私は友達としてあなたの事を


 もっと知りたいわ」


「しかしゾフィ・・・」


戸惑うアクアだったが、自分を見つめるゾフィの目は


先程まで怯えを見せていた少女のものでは無かった


その眼差しに精一杯の決意と勇気を感じたアクアは


再び静かに話をし始めた


「その戦いが終わった後あの方は


 ”もう自分には竜王の名はふさわしくない”


 と私にその称号を譲ると言ってきた


 もちろんそんな事を受けられるはずも無く


 断ったのだが、あの方の何度も何度も頭を下げて


 の頼む姿にそれ以上は断れなかった・・・」


「それで貴方が竜王になったの?」


静かにうなづくアクア


「ああ、私はドラゴン族の長い歴史の


 中でも例を見ない、戦いによる世代交代では無く


 その座を譲られて竜王になったドラゴンという


 何とも不名誉な名の残し方をしてしまったのだ」


その時ゾフィはそっとアクアに寄り添い優しくつぶやいた


「そうなんだ・・・


 でも貴方はとてもいい事をしたのよ


 何にも恥じる事は無いわ・・・」


不思議そうな顔でゾフィを見つめるアクア


「君は不思議な娘だね・・・


 私よりずっと幼く経験も無いのに


 君のいう事に私は随分救われる


 ありがとうゾフィ」


ゾフィは首をブンブン振って否定する


「お礼を言われるような事じゃないわ


 友達だもの当たり前じゃない!?」


ニコリと微笑むゾフィにアクアのその大きな顔が思わず緩む


「それで貴方が竜王になってからはどうなったの?」


にこやかだったアクアの表情が急に寂しげに変わり目を閉じた


「私が竜王の座を引き受け安心したのか


 あの方、ホーリードラゴンは


 その数日後に静かに息を引き取った・・・


 それを看取った後、私は竜王の名に


 恥じぬよう生きていく事を決めた


 しかし私が先代から譲られて竜王になった


 という事が知れ渡ると私に挑んでくる


 ドラゴンが次々と現れそれが


 1000年ばかり続いた・・・」


ゾフィの表情が再び不安げに変わる


そしてアクアは話を続ける


「私が言うのもなんだがドラゴンというのは


 変った習性を持っていてな


 自分が一番だと思っている尊大な者が多いが


 なまじ知能とプライドが高い為に


 妙に流儀や礼節を重んじる傾向があるのだ


 そんな連中からしてみたら戦いによって


 おのれの力を示した訳でなく、縁故によって


 その座を譲られた私が許せなかったのだろう


 挑んでくる奴らに中には明らかに怒りながら


 ”恥を知れ‼”とか”ドラゴン族の面汚しが‼”と


 罵ってきた者も少なく無かった・・・」 


憐れむような目でアクアを見つめるゾフィ


「そんなひどい、だってアクアは・・・」


「良いのだゾフィ、ドラゴンと言うのは


 そういう生き物なのだから・・・


 だからこそあの方の判断が間違いでは無い


 と証明するために私も必死だった・・・


 おそらく歴代の竜王の中でも私が一番


 多くの戦いをしたであろう・・・


 それほど毎日が戦いの連続だった」


「でもアクアが今でも竜王って事は


 全部勝ったって事だよね!?


 凄い、やっぱり強いんだアクア!?」


その言葉にニコリと笑うアクア


「しかし言うほど楽な戦いでは無かったよ


 挑んでくる連中の強さは様々で


 取るに足らない者も多かったが


 強敵も数頭いた


 冷気を操るフロストドラゴン


 闇を操るダークネスドラゴン


 風を操るトルネードドラゴン


 中でも特に強かったのが


 炎を操るフレイムドラゴンだ」


 アイツと戦ったのはつい最近なのだが


 お互いの意地とプライドをかけ


 それはもう天地が揺れる程の


 凄まじい戦いだった


 そしてそれは三日三晩続いた


 壮絶なモノだったよ・・・


 おそらく単純な力だけなら


 若いアイツの方が上だったろう


 しかし私には長く戦いに生きてきた


 経験と知恵がある、ちょうど


 私が若いころあの方と戦った


 逆の図式になった訳だ・・・


 お互い極限まで知恵と力を絞り尽くし


 限界ギリギリの紙一重のところで


 辛くも私が勝利したのだが


 本当にいい勝負だった・・・


 あいつと戦って以来私に挑む者が


 ピタリと止んだ、本来有難い事


 なのだが少し寂しかったな・・・」


フッと笑うアクアに不思議そうな顔で問いかけるゾフィ


「寂しかったの?やっぱりアクアは


 戦う事が好きなの?」


「そういう訳ではないが・・・


 我らドラゴンには高い知性がある


 よって戦いというモノがいかに


 非効率的な事かも頭では理解できているし


 竜王の称号など持っていたところで


 何の得も無く、寧ろ色々な連中に挑まれて


 煩わしいだけ・・・


 という事もわかってはいるのだ


 しかし高いプライドによる自己顕示欲


 そしてドラゴンの持つあくなき


 闘争本能によって自分より強い者が


 いるという事を許さないのだ


 だからこそ一度戦い決着がつけば


 己自身が納得し再び同じ相手に


 挑む様なことは無いのだ・・・」


ゾフィは不思議そうに見つめながら


「ふ~んドラゴンって


 面倒臭い生き物なんだね!?」


何の悪意も無く素直に出たその一言に


苦笑いを浮かべるアクア


「まあそうだな


 馬鹿な事だとわかっていても


 戦いを止められない


 本当に愚かな事だ・・・


 そんな私の意を汲んでなのか


 フレイムドラゴンの奴が


 私に挑もうとしている輩を


 見つけ出しては片っ端から


 シメている様だ・・・


 全くおせっかいというか


 狭義心に厚いというか・・・」


その言葉にクスリと笑うゾフィ


「なんだ、あなたにはもう友達いたんだね


 いい友達をもって幸せだねアクア!?」


「友達!?いや友達とは少し


 違うような・・・フッ、まあいいか


 そうだな、あいつはいい友達だ」


アクアは少し戸惑いつつもそう答えた


その時ゾフィは何かを思いついた様子で


両手をパンッと合わせた


「そうだ!?アクアのお友達なら


 私とも友達になってくれる


 かもしれないじゃない


 是非紹介してよ!?」


突然突拍子もないお願いをされ


さすがに困った顔を見せるアクアだが


嬉しそうなゾフィを見て嫌とは言えなかった


「う~ん・・・わかった


 呼んでみるか・・・」


アクアは首筋を伸ばし天を見つめて大きく咆哮した


「ゴオオォォォォァァァーーー‼」


森が揺さぶられる程の大きな声に思わず両耳を塞ぐゾフィ


しばらくすると上空からかすかに音が聞こえてきて


赤い物体がドンドンこちらに近づいて来たのがわかった


それは真っ赤な体をしたドラゴンであり森の湖にいる


アクアドラゴンの姿を確認すると羽をはばたかせながら


ゆっくりと下りて来た、その時の風圧で森の木々が大きく揺れ動き


幾枚もの木の葉が舞い上がる、湖の水面は激しく波打ち


ゾフィも思わず身を屈めた


「突然の呼び出しとは、いかがなされたアクア殿!?


 もしや天命が尽きようとしておるのですか!?」


その問い掛けにアクアは少し申し訳なさげに口ごもる


「いや、そういう訳ではない


 何と言ってよいか・・・」


その困ったようならしくない態度に違和感を感じながらも


心配げにアクアの顔を覗き込むフレイムドラゴン


その時アクアの足元にいる人間の少女に気が付いた


「ところでなんですかな、この人間の小娘は?」


アクアとほぼ同じ程の巨体からジロリと見下ろす


フレイムドラゴン、その口調と目線は非常に冷たく


まるで虫けらでも見るかのようであった


「紹介しよう、この少女の名はゾフィ 


 我が主だ よろしくな」


「いつも言ってるでしょ私達は友達って!?


 もう、何度言わせるのよアクア‼」


すかさずツッコミを入れるゾフィ


「そうだったな、すまないゾフィ」


いつものように頬を膨らませ怒るゾフィに対し


にこやかに謝るアクア


そのやり取りを呆気に取られながら


見つめているフレイムドラゴン


「何を言っているのですかアクア殿!?


 人間などを主などと・・・


 冗談にしても悪質すぎまするぞ!?」


苛立ち交じりにそう言うと怒りに満ちた目でゾフィを睨みつけた


「人間の分際で我らがドラゴン族の頂点である


 竜王に向かってのこの無礼な振る舞い


 とても看過できん、万死に値するぞ小娘が‼」


フレイムドラゴンの怒号に思わず後ずさりし怯えるゾフィ


体は怒りに震え口からは炎があふれ出していて


ゾフィを見つめるその目は殺意に満ちていた


なぜそれほどまでにフレイムドラゴンを怒らせたのか


皆目わからないゾフィはガタガタと震えだす


「そこまでだフレイムドラゴン


 これ以上我が主に無礼を働くなら


 我が相手になるぞ!?」


その言葉に驚愕の表情を浮かべるフレイムドラゴン


「何を言っておるのですか!?


 死期が近くなり血迷いましたか


 アクア殿、正気に戻ってくだされ!?」


「私は至って正気だ、そして今の私は


 とてつもなく強いぞ、おそらく


 お主と戦った時よりも数段な・・・」


アクアの言葉に益々困惑するフレイムドラゴン


「御冗談を・・・


 一体何を言っておるのですか!?


 死期の迫ったあなたと戦うなど・・・


 そんな仁義に反する事が


 私にできる訳ないでしょう!?」


「ごちゃごちゃ言わずにさっさと


 かかって来い、若造が‼」


アクアの険しい表情が本当に怒っている事を物語っていた


目の前の竜王は自分の主人である少女を蔑まれ


本気で怒っているのである


最初は戸惑っていたフレイムドラゴンだったが


そんなアクアを見て逆に怒りが沸々と湧いて来た


「竜王ともあろうお方が・・・


 人間ごとき小娘を主だと!?


 ドラゴン族の誇りも忘れて腑抜けたか!?


 もうよい、この私自ら引導を渡し竜王の座を


 奪ってやるわ、いくぞジジイ‼」


フレイムドラゴンは怒りに任せ口から炎を吐き出した


その炎の勢いは凄まじく、辺りが真っ赤に染まるほどであった


しかしそんな炎の攻撃に対しフッと息を吹きかけるかのような


仕草で炎を完全に無効化してしまうアクア


「な!?なんだと、私の渾身の


 ファイアーブレスが!?あり得ない・・・」


あまりの事に驚きを隠せないフレイムドラゴン


「もう終わりか?ならば我の番だな」


アクアはフレイムドラゴンに向かって


ペッと吐きかけるような仕草で唾《つば》の様なモノを飛ばした


その唾の雫は信じられない速度で空気を切り裂き雫の弾丸となって


フレイムドラゴンを直撃した


「ぐはっ!?」


フレイムドラゴンの赤い巨体がもんどりう打って倒れた


後方に転がり木々をなぎ倒しながら


吹き飛ぶフレイムドラゴン


しばらくうずくまっていたが、急に首をあげ


信じられないと言った表情でこちらを見つめていた


「もう止めて‼」


ゾフィが叫んだ


「おねがいよアクア・・・ケンカは止めて」


「ああ、もう止めるよゾフィ」


涙目で話すゾフィに優しい表情で微笑みかけた


茫然としながらそのやり取りを見ているフレイムドラゴン


「すまなかったなフレイムドラゴン


 主の・・・いや友達の事を悪くいわれて


 ついカッとなってしまったのだ


 許してくれ」


少しの間茫然としていたが我に返り答えるフレイムドラゴン


「いえ、そんな事はいいのですが


 今の力は一体何ですか!?


 貴方はもう死期が近く動く事も



 困難だと聞いていましたが・・・


 私と戦った時の強さを


 遥かに凌駕するこの力は・・・


 一体何があったのですか!?」


フッと笑い自分の足元にいる少女に目線をおくるアクア


「だから言ったであろう


 これが我が主の・・・いや友達の力だ


 死にかけだったジジイが


 今は全盛期の力をもはるかに上回る程


 魔力が満ち溢れ体中に力がみなぎっている


 今の我は誰にも負けない、そう思えるのも


 全てはこのゾフィのおかげなのだ」


その話を聞いても、とても信じられないと


いった表情を見せるフレイムドラゴン


そんなフレイムドラゴンにゾフィが近づいて来る


「あなたはアクアの友達なんでしょ?


 だったら私の友達にもなってよ!?」


屈託のない笑顔で微笑みかけるゾフィに


どうしていいかわからず戸惑うフレイムドラゴン


思わずアクアを見つめると目を細め笑みを浮かべながら


ゆっくりとうなづくアクア


「ああわかった・・・契約の事だな」


両手を差し出しているゾフィに


そっと右の羽を差し出すフレイムドラゴン


巨大な赤い龍と小さな少女が両手と右羽を重ね


二人は握手をするかのような様な形になる


その瞬間手をつないだ箇所がまばゆい光を放ち


一瞬何も見えなくなるほどの光に包まれた


「一体何が・・・うおっ!?これは!?」


フレイムドラゴンの表情が変る


「なんだこれは!?体中に魔力が満ち溢れて


 恐ろしく力がみなぎってくる・・・


 一体わが身に何が起こっているのだ!?


 自分でも抑えきれないほどの力の波動


 を感じるぞ、これがこの少女の力だと


 いうのか、信じられん・・・」


「フレイムよ我らドラゴンは何でも知っている


 つもりでいたが、世の中まだまだ広いな


 お主もゾフィの友達になってくれるな!?」


両の目を大きく開け、改めてマジマジと


ゾフィを見つめるフレイムドラゴン


「わかり申した、こちらからも


 お願いいたしまするゾフィ殿


 私の事はフレイムと呼んでくだされ」


「うん、よろしくねフレイム」


嬉しそうにそう答えるゾフィ


生涯で二人目の友達ができた瞬間だった。




 


 


 

 

 


 

今回はゾフィ編の外伝2部です、あまりとりとめのない話になってしまいましたが

次話につなげる為の内容とご了承ください、次回の3部で外伝は完結です

またよろしくお付き合いください、では。



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