表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/115

外伝 預言と伝説

ライドン・ゾフィ…ライドン家当主の末娘で姫巫女の役目を負った少女

ライドン・ドライル…ライドン家第十三代当主、普段は冷静沈着で責任感が強い、ゾフィの父

ライドン・ガジュベル…先代当主の時代から使える重鎮で事実上のナンバー2

ライドン・メリスン…先代当主、歴代当主の中でも二人目のドラゴンを呼び出す事ができた凄腕

アクアドラゴン…ドラゴン族最強の称号”竜王”の座に君臨する水のドラゴン

ここは海と山に囲まれた小さな村


外界との交流もほとんどない集落に


その一族は存在した、その名は”ライドン一族”


召喚魔術をたしなむ人間なら知らない者はいないと


言うほどの名門であり頂点に位置する存在である


今回はそんなライドン一族に語り継がれている


伝説を聞いていただこう



時はルキア達がアドギラルロックに挑む8年ほど前にさかのぼる


巷では魔族の群れが我が物顔で村や町を襲い好き放題に暴れ回り


人びとは怯えながら細々と暮らしていくしかなかった時代


そんな世間で起こっている惨劇とはまるで無縁とばかりに


ほのぼの暮らしている人びとがいた


クリストフ村の住人である 村を囲む山と海の幸に恵まれ


畑の作物を収穫して完全自給自足の生活をおこないながら


外界との交流を一切持たない閉鎖的な小社会の村人達


この村では魔族の存在を知る者すら少なかった


そんな村人を守護するかのように村の中心に立つ大きな建物


そこには代々ライドン一族の当主が住んでいる屋敷がある


そして実際この村がこれほどまでに平和なのは


ライドン一族の操る召喚獣による強力な結界によるものなのだ


クリストフ村の人間は全てライドン一族の遠縁にあたり


この召喚獣による加護を有難く感謝し敬う風習があった


そんな平和な村の中心ライドン家の館では今


一族の中心人物達が顔を揃え


ピリピリするような緊張感が漂っていた


皆、口を真一文字に結び誰もが無言のまま


何かを待っているかのように押し黙っていた


そんな重苦しい空気の中で男達がいる部屋に


慌ただしく駆け込んできた若い男が一人


激しく息を切らせながら入って来た


「ハアハアハア、申し上げます


 今ベルドルア聖王国の使者が


 村の外に到着いたしたとの事です


 いかがなさいましょうかご当主!?」


当主と呼ばれた男に皆の注目が集まる


「結界を解いて村の中に入れよ


 そしてここに案内してくれ


 くれぐれも失礼の無いようにな」


「かしこまりました」


一言そう答えた若者は当主に報告を終えると


再び足早に屋敷を出て行った


「やはり噂は本当であったか・・・」


「最近、外界では魔族共の攻勢が


 激しいとの報告は入っていました」


「ベルドア聖王国からの使者という事は


 またもや”魔王討伐組”を編成するに辺り


 我が一族への参加要請でしょうな!?


 全く、こちらの気も知らないで・・・」


一人の髭面の男が苛立ち交じりにそう口走る


この初老の男はライドン家の先代当主から使えている


重鎮で名をライドン・ガジュベルといい


ライドン一族内の事実上のナンバー2だ


「まあ、そうだろうな・・・」


その言葉に静かに答えたこの男こそライドン一族


第十三代目当主であるライドン・ドライルである


ガジュベルは勢いよく立ち上がると怒気を含んだ口調で


皆に訴えかけるように苛立ちをぶちまけた


「ベルドア聖王国は何もわかっておらん‼


 召喚魔術師は魔法使いや戦士の様に


 鍛錬や教育によって次々と


 育成できるものではないのだ!?


 今や我が一族は屋敷や村の結界を


 維持するだけで精一杯な程


 ギリギリの状態だというのに!?」


「落ち着けガジュベル、今そんな事を


 怒っても仕方が無かろう・・・」


当主であるドライルは諭す様に話す


ライドン一族が召喚魔術師として特別優れている理由は


教育方法や鍛錬内容では無く”血統”なのだ


一族の血をより強く引くもの程

強力な力を持てるのである


そしてライドン家の正統な血筋の男子は七人いた


なぜ”いた”という過去形なのかというと


その七人の男子は全てドライルの息子であったが


皆魔王討伐の為に招集され、魔王に戦いを挑んだが


結局誰も帰って来なかったのだ


その数分後、ベルドア聖王国の使者が屋敷を訪れ


ドライルの前に座ると神妙な表情のまま深々と頭を下げた


「此度私が訪ねた理由はわかっておいでだと思います


 魔王アドギラルロック率いる魔族達の脅威は


 日に日に増していく一方です・・・


 こうしている今でも次々と犠牲者が出ている


 のが現状です、人類の存続の為にも


 今一度、ライドン一族のお力を


 お貸しいただけないでしょうか!?


 なにとぞ、なにとぞお願いいたしまする」


額を床にこすり付ける程深く頭を下げ懇願する使者


その言葉に思わず立ち上がり怒りをぶちまけるガジュベル


「我等、ライドン一族は正統な跡取りである男子を全て


 魔王討伐の為に送り出し、全て失ったのだ!?


 これ以上我らに何を犠牲にせよと申すのか‼」


平身低頭の使者に向かって思わず


やるせない気持ちをぶつけるガジュベル


使者を睨みつけ唇を震わせながらそう言い放った


「止めんかガジュベル、使者殿


 我等ライドン一族は人類救済の為の


 協力は惜しみません・・・


 しかしもう人材がいないのです


 我が村には他にも召喚魔術師はいますが


 正統な血族でなければ力量が落ちるのです


 そのような者を送り出したとて結果は


 変わらぬでしょう・・・」


ドライルの言葉を聞いても床に伏したまま面を上げない使者


そんな姿を見て思わず目をつぶり考え込む


「少し考える時間をください・・・


 お返事は召喚魔獣を使って


 そちらにお知らせいたしますので」


使者は頭を下げたまま、か細い声で答えた


「かたじけない、なにとぞ良いご返事を!?」


そう言い残し国へと帰って行った


使者が去ってから皆がドライルの意向を気にしていた


ベルドア聖王国の要請に対してどうするのか?


早速ガジュベルがに問いかけた


「一体どうするおつもりですかなご当主?


 いくらベルドアに頼まれても


 人材がいないのではどうする事も・・・」


その質問にすぐには答えず、しばしの沈黙の後ドライルが口を開く


「もう私が出て行くしかあるまい・・・」


その言葉に一同がザワつく


「何を言っているのですか!?


 もしご当主が帰らぬ人となったら


 このライドン家の血筋はどうなさるのです!?」


「そうですぞ、それにご当主がいなくなったら


 誰が後世の育成をするのですか!?」


その時ガジュベルはようやく理解した


言葉にこそ出さなかったがベルドアの使者の願いは


当主であるドライルに”魔王討伐組”に加わり


戦ってほしいという事だった


それがライドン家の滅亡につながるかもしれない


という事を理解した上でのあの態度だったのだ


ドライルはその意味を理解して”少し考える時間をくれ”と


返事をしたのである


そんな当主の思いを知ったガジュベルは


居てもたってもいられず立ち上がる


「ワシが行きます、もしご当主に何かあったら


 我が一族は・・・ライドン一族の正統なる血統を


 絶やす訳にはいきません、このワシが!?」


意を決したようにガジュベルが名乗りをあげる


その表情と態度には悲壮感すら漂っていた


「気持ちは嬉しいが、お主では無理だガジュベル


 やはり私が行くしか・・・」


ドライルの言葉に思わず両拳を握り締め、悔し涙を流すガジュベル


「情けない・・・一族の危機だと言うのに


 何の力にもなれない自分が・・・


 先代にも顔向けができんわ・・・」


そこにいる全員に重い空気が漂い、再び沈黙が場を支配する


そんな時一人の男がつぶやくように口走った


「こんな時に開祖様の預言が真になれば・・・」


みなその”開祖様”という言葉にビクッと反応し厳しい表情を見せた


ライドン一族の名が有名になりこれほどの力を持ったのは


一人の男の伝説から始まっている


その男の名は”ライドン・クリストフ”


ライドン家の開祖であり凄まじい力を持っていたと伝えられている


言い伝えではその力の源はクリストフが神の加護を受けたからであり


その力は血統によってのみ受け継がれるというものだ


まるでおとぎ話のような内容なのだが実際正統な血統の者のみが


与えられる強大な力の理由は他に説明のしようが無く


一族のみならず村人全てにも神話として語り継がれていて


”開祖様”として信仰されている話なのだ


その開祖ライドン・クリストフが残したとされる預言、それは


”一族滅亡の危機に瀕した時、その者は現れる 青き龍と赤き龍を


率いて万の敵を討ち滅ぼす”


というものだ、一族の中では


”神に愛された至高の召喚術師”という名で伝説になっていた


皆がその伝説を思い出すかのように頭に浮かべていた時である


「そんな話はまやかしだ!?


 単なるおとぎ話に過ぎん‼」


普段冷静でまず取り乱すことも無い当主ドライルが


急に声を荒げ、吐き捨てるように言い放った


そんな当主の姿を見たことも無い者達は


驚きのあまり言葉を失っていた


「滅多な事を言うものではありませんぞご当主!?


 我が一族に伝わる開祖様のお言葉ですぞ!?」


ガジュベルがたしなめるように忠告する


皆の驚愕の表情を見て我に返ったドライル


「すまない、取り乱してしまった・・・


 しかしあの伝説はあまりに


 現実離れしているというか


 荒唐無稽なのでな・・・つい」


皆が不思議そうに当主の顔を覗き込む


普段冷静沈着な当主ドライルがなぜ


それほど取り乱したのか?


その伝説のどこがそれほどおかしいのか?


他の者達には皆目わからなかったからだ


皆の表情を見渡しその事を察したドライルは


それを説明する為、横のガジュベルに問いかけた


「ガジュベル、お主は龍・・・


 ドラゴンというものを見た事があるか?」


あまりに突拍子のない問い掛けに少々戸惑うガジュベル


「いえ、ございませぬが・・・


 先代のメリスン様がドラゴンを


 召喚できる事は知っておりましたが


 この目で見た事はありませぬ、それが何か?」


一族にとってもドラゴンは最上級召喚獣として


誰もが知っている伝説の魔獣なのだが


ライドン一族の長い歴史の中でもドラゴンを呼び出せるほどの


力を持った召喚魔術師は二人しかいなかったと記録されている


その内の一人が先代の当主 ライドン・メリスンなのだ


ドライルは静かに話を続けた


「私はあるぞドラゴンを見た事が・・・


 一度だけだがな!?」


その話に皆がざわついた、そんな事を聞くのは初めてだったからである


「先代と一緒に戦った時だ・・・


 そのドラゴンは巨大な漆黒の体をしていて


 恐ろしく冷たい目をしていた・・・」


 一同が息を飲みながらその話に注目していた


「ドラゴンについてだが


 まず一つ理解しておかなければ


 いけない重要な事がある、それは


 他の召喚獣とドラゴンは全く違う・・・


 強さと言う意味では無い、全くの別物として


 考える必要があるのだ・・・」


「それは一体どういう事ですかなご当主?


 我々にも理解できるように説明願えませんかな!?」


ドライルの言っている意味が分からず


怪訝そうな顔をして問いかけるガジュベル


その言葉に軽くうなづき話を続けるドライル


「我々召喚魔術師は魔獣に魔力を提供する事を


 対価とし、主従関係の契約を結び使役する


 しかしドラゴンの力はあまりに強大なものだ


 そして人間よりもずっと長寿であるがゆえに


 我等人類では及びもつかないほどの膨大な知識を持ち


 人間などより遥かに頭も良いのだ・・・


 そんな圧倒的な存在であるドラゴンが我等人類の


 僕となる主従関係など結ぶと思うか?」


そこにいる全員がその話を真剣に聞いていた


そんな中、ガジュベルが思わず問いかける


「では先代や過去の当主はどうやってドラゴンを


 使役したのですか?記録にも残されていますし


 ご当主も実際にドラゴンをご覧になった事が


 あるのでしょう?・・・・


 はっ!?まさか!?」


ガジュベルが何かに気が付きドライルがうなづいた


「そうだ、ドラゴンに対しては協力の対価として


 魔力を提供すること自体は他の魔獣と同じだが


 主従の関係が逆なのだ、具体的には


 ”魔力を提供しますからどうかお力をお貸しください”


 とひたすら低姿勢でお願いするのだ・・・


 そうしてようやく力を借りる事ができる


 それがドラゴンと契約するという事だ」


そのあまりの内容に誰もが言葉を発する事ができなかった


ドライルはさらに話を続けた


「私は先代が召喚したドラゴンの事を


 今でもはっきりと覚えている


 漆黒の巨体に銀色の瞳


 そして我らをまるで虫けらでも見るかのような


 あの目を・・・私は生涯忘れないだろう」


ガジュベルはゴクリと唾を飲み再び問いかけた


「先代はそのような事をおこなっていたのですか?」


ガジュベルのその問いに、少し間を空けつつ


遠い目をして寂しそうに語った


「ああ、ドラゴンにひたすら頭を下げて


 お願いするその姿はライドン家当主として


 他の者には見せられまいて・・・


 しかも対価としての魔力の消費量も桁違いだ


 先代はドラゴンを召喚した後は2,3日まともに


 動けなくなるほど消耗していた・・・」


そしてドライルの目つきが厳しく変わり強い口調に戻る


「わかったであろう、開祖様の預言が


 いかに荒唐無稽で現実離れしているか


 ”二頭の龍を率いて”など絶対に不可能だ‼


 率いるという事は僕として使役する


 という事に他ならない、奴らは我等人間と


 口をきく事すら汚らわしいと思っている


 不遜な連中だ・・・


 そんなドラゴンが人間に従うなど笑止千万


 ましてや一頭召喚するだけでも


 2,3日動けなくなる程消耗するのだぞ!?


 二頭同時になど・・・作り話だとしても


 真実味が無さすぎるわ!?」


ドライルが興奮気味に声を荒げながら言い放った


当主と言う立場でありながら開祖様の預言


”神に愛された至高の召喚魔術師”の伝説に対し


これほど反発する理由を皆がようやく理解した


誰もが無言のまま重い空気が漂う


そんなピりついた雰囲気の中、その光景を


部屋の外から不安げな表情で覗き込んでいた少女がいた


ドライルがそれに気づき慌てて冷静さを装い声をかける


「ゾフィ、今私達は大事な話をしているんだ


 あっちへ行っていなさい」


その少女こそドライルの末娘、ライドン・ゾフィである


ライドン一族の召喚魔術師は昔から全て男だけと決められている


なぜならライドン家の女性には正統なる血統維持の為


一人でも多く子を産んでもらう役目があり


危険を伴う戦いには一切参加しないのが掟なのだ


そもそもライドン家では女性には召喚魔法を一切教えない


特に正当な血統の女性は”姫巫女”と呼ばれ


過去に何人もの強力な力を持った子供を生んできた


代々の当主は必ずこの姫巫女から生まれている


しかし今までのドライルの子供は全て男であり


ようやく生まれた待望の”姫巫女”それがゾフィなのだ


女中に連れられ会議の部屋を離れるゾフィ


あれ程声を荒げ取り乱している父を見るのは


初めてだったためゾフィは動揺を隠せなかった


「どうしたの?お父様は


 なぜあんなに怒っているの?」


不安げな顔で女中たちに問いかけるも


”大丈夫ですよ”と答えるだけで何も教えてはくれなかった


女中たちに連れられて会議の部屋を離れるゾフィの


後姿を見ながら、ドライルは小声でボソリと呟く


「あの子が子供を産める年まで成長し


 その子が次世代の当主になるまで


 ライドン一族は・・・というより


 我等人類は存続できるのであろうか!?」


その言葉をハッキリと否定できる者はいなかった


なぜならこの時ゾフィはまだ10歳を迎えたばかりであり


次世代の当主に代替わりできるのは最低でも


後20年は必要だと思われるからだ


ゾフィには母親がいない、ゾフィの母で先代の姫巫女は


七人の男子を生んだが全て魔王討伐に駆り出され


帰らぬ人となった、そのことで気を病み体を壊してしまい


しばらく寝たきりとなっていたのだが


一族の繁栄の為”次世代の姫巫女を生まなくてはいけない”


という使命感で子作りに励んだ


そうして生まれた待望の女子、それがゾフィだった 


女の子が生まれたとわかったゾフィの母は


”これでようやくお役目を果たせました・・・”


と言葉を残し微笑みながら静かに息を引き取った


そしてゾフィは一族の中で”蝶よ花よ”と大事に育てられた


ライドン家の姫巫女候補の女性には徹底した教育が施される


それは理想的な女性としてかくあるべき・・・といったような


前時代的な花嫁修業の様なモノで数人の教育係によって


物心つく前から徹底的に叩き込まれるのだ


しかし周りの期待とは裏腹にゾフィはおてんば娘として


スクスク育ち周りの人間を困らせた


特に強制的にやらされる女性教育が大嫌いで、事あるごとに


授業を逃げ出し、海や山へ出かけて行っては走り回っていた


そんな中でゾフィが特に興味を持ったのが”召喚魔術”だった


皮肉にも女性として生まれた為、召喚魔術は教えてもらえず


その事をずっと不満に思っていた、だから度々授業を逃げ出し


兄たちがおこなっている召喚魔術の修行を見に行っては


父のドライルに見つかり怒られていた


ゾフィには4つ上の兄がいてその兄の事が大好きだった


兄は修業後にはよく遊んでくれたし


召喚魔術の事もこっそり話してくれた


しかしその兄も半年前に魔王討伐に駆り出され帰って来なかった


それ以来ゾフィの相手をしてくれる者は無く


いつもさびしい思いをしていたのだ


一族の者や村の者さえも次世代姫巫女である


ゾフィに対して腫れ物に触るような扱いをする為


ゾフィには今まで友達と呼べる人間が一人もいない


今日も授業を抜け出し一人森の中の湖に来ていた


そこは森の木々に囲まれている為に日の光が遮られていて


木々の間から差し込む木漏れ日が湖の水面に反射し何とも


幻想的な雰囲気を感じる美しい場所でゾフィのお気に入りだった


そこでいつものように一人寂しく湖を眺めていると


背後に何かの気配を感じて振り返った


「誰?誰かいるんでしょ!?」


そこには誰もいなかったが気配を感じたその場所を


ジッと見つめ続けるゾフィ


すると何もなかった空間からスウっと一匹の生物が現れた


それは体長80cm程の大きさで、体は青く


ペンギンに大きな翼が付いているような


愛嬌のある姿をしていて体を揺らしながら


ヒョコヒョコとゾフィの方に歩いてきた


「あなたは誰?でも随分とかわいいわね!?」


「よくぞ我の気配に気が付いたな娘よ」


その生物はかわいらしい姿や仕草とはかけ離れた


尊大な言葉遣いで語りかけてきた


「だってあなたずっと私を見てたでしょ?


 あなたも友達いないの?」


その言葉が癇に障ったのかムッとした感じで切り返す


「何とも無礼な娘だな


 これだから人間と言うのは・・・


 死期が近いせいか気まぐれで


 人間に近づいて見たものの


 やはり声などかけるのではなかった


 人間などに何を期待したのやら


 我ながら愚かな事だ・・・」


その言葉に悲しげに問いかけるゾフィ


「死期が近いって・・・あなた死んじゃうの?」


「生きとし生けるものは必ず死を迎える運命だ


 それは我とて免れることはできない


 思えば随分と長く生きた・・・


 すでに万物の理の全てを理解した我にとって


 思い残すことなどもはや無いがな・・・」


青い生物は遠い目をしながらしみじみ語る


それを聞いていたゾフィの目からポロポロ涙がこぼれた


「かわいそう・・・私に何か


 してあげられることは無い?」


「なぜ貴様が泣くのだ?今始めて会った


 しかも種族すら違う我の死など


 貴様にとってどうでもよい事であろう!?」


「だって、だって死ぬって悲しい事なんだよ


 悲しい事には涙が出るじゃない・・・」


泣いているゾフィを見て逆に呆れる青い生物


「その理屈は到底理解できんな・・・


 しかし生物の頂点、竜王と呼ばれた我が


 貴様のような小娘に憐れまれるとは・・・


 我ながら何とも情けない事だ」


その言葉にビクッと反応するゾフィ


「竜王?あなたドラゴンなの!?


 でもドラゴンって凄く大きくて


 強いって聞いていたけど・・・」


「我は残りわずかな生命力の消耗を抑える為


 今はこのような姿をしているに過ぎない


 本来の姿ではあっという間に衰弱して


 しまうからな・・・


 しかしそれもわずかばかり延命をしただけで


 所詮無駄なあがきだった様だ・・・


 我の最後を看取るのが人間の小娘と言うのも


 酔狂として面白いのかもしれぬ


 我の最後の姿、その目に焼き付けよ!?」


青き生物はそう言うと見る見る内に体が巨大化し


本来のドラゴンの姿に戻っていく


その大きな翼を広げると周りの木々が揺れ


何枚もの木の葉が舞い上がる


静かだった湖の水面が波打つように揺らぎ先ほどまでの


静寂が嘘のように森全体が揺れ動いたかのような錯覚を受けた


その青い姿態は威厳と風格に満ち溢れまるで


美術工芸品の様な気品と美しさを感じさせた


「凄い凄い、何て綺麗なドラゴンなの!?


 大きい~カッコいい~‼」


ドラゴンの姿を見上げるゾフィは目をキラキラさせ


思わずはしゃぎながら喜んだ


その瞬間青きドラゴンはヨロヨロと体勢を崩し


地面に倒れ臥せってしまった


目を閉じながら呼吸すら弱まっていく青き龍


その姿は先ほどまでの威風堂々としたものとは


かけ離れた弱々しい姿であった


「大丈夫!?しっかりして


 死んじゃ嫌だよ!?」


思わず駆け寄るゾフィに対し目を閉じながら


か細い声で話しかける青きドラゴン


「言ったであろう我の生命力はもう尽きると・・・


 せめて静かに死なせてくれぬか・・・」


ゾフィは涙ながらに大きくうなづくと


地面に臥せっている青きドラゴンの首に抱きついた


「ゴメンね、私何もしてあげられない


 ゴメンね・・・」


その時、青きドラゴンの両目が大きく見開き


驚いた表情でゾフィの方を見た


「どうしたのドラゴンさん?」


驚愕の表情で幼き少女をジッと見つめる青き龍


「お主一体何をした!?」


戸惑いながらもその問いに答える


「私何もしてないよ、貴方が可愛そうだなって


 元気になって欲しいなって・・・


 そう思っただけだよ」


そう言ってゾフィは再び青き龍に抱きつく


その瞬間大きな叫び声をあげる青きドラゴン


その声に再び森全体がざわめき立ったように揺れ動き


森中の鳥が一斉に飛び立った


「ゴオオォォォ~~~~‼


 何だこれは!?


 なぜだ、生命が尽きかけていたこの体に


 力が・・・魔力と生命力が満ち溢れてくる


 一体何が起こったというのだ!?」


思わず立ち上がり信じられないと言った目で


少女を見下ろす


「良かった、元気になったんだね!?


 良かったね‼」


無邪気に喜ぶ少女の姿に呆気に取られる青き龍


そして自分の身に何が起こったかようやく理解したのだ


「まだそちの名を聞いてはいなかったな


 名を何という?」


急に名を聞かれて少し驚くが再びニコリと微笑み嬉しそうに答えた


「私の名はゾフィ、ライドン・ゾフィよ!?


 よろしくね、青いドラゴンさん」


青き龍は頭を下げ目線をゾフィに合わせて話しかけた


「この世の全てを理解したつもりであったが


 まだまだ我の知らぬことがあるようだ・・・


 我の名はアクアドラゴン、水を操り


 龍族の頂点、竜王と呼ばれし者なり


 お主のおかげでこの命救われた


 礼として汝が願いを叶えよう


 何でも言ってみるがよい」


そんなアクアドラゴンの提案に迷うことなく即答するゾフィ


「じゃあ私の友達になってよ、私友達いないの


 貴方が初めての友達になって!?」


そんなゾフィの要求に呆れ顔で見つめるアクアドラゴン


「そのような願いでよいのか?


 承知した、我は汝がしもべとして


 そなたに使える事をここに誓おう」


その返答に両手を腰に当て、頬を膨らませながら


ムッとして睨みつけるゾフィ


しもべじゃなくて ト・モ・ダ・チ ‼


 わかったアクア!?」


ゾフィの言葉に苦笑気味に答えるアクアドラゴン


「わかった、わかった 友達だなゾフィ」


「うん、よろしくねアクア!?」


始めてできた友達に満面の笑顔で微笑みかけるゾフィだった。




 

 


 



 

 



 



 




 

 







今回は召喚魔術師ゾフィの外伝です、子供の頃の話なので

少し感じが違い違和感を感じるかもしれませんがご了承ください

今回の話は何となく”ジブリっぽい雰囲気にしたいなぁ・・・”

なんて考えていたのですが、私の力量でそんな事ができる訳も無く

ジブリとは程遠い雰囲気の話になってしまいました(笑)

また懲りずにおつきあいください、では。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ