激闘の駿府城
アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている
ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在
ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている
ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー
ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた
クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い
「皆の者、気を抜くでないぞ、奴らは殿の仇
絶対に逃がすでない必ず皆殺しにしろ‼」
駿府城の中でそんな怒号が響き渡る、桶狭間の戦いにおいて
主である今川義元を討ち取ったにっくき連中が
あろうことか大胆不敵にも自国の城に乗り込んできたのだ
一番天下人に近いと言われていた主君がよもや
名もなき異国人達に討たれるという信じがたい事実に
家臣の者達のある者は落胆しある者は憤激し
またある者は悔し涙を流した、その怒りと恨みの対象が
ワザワザ自分達の目の前に姿を現したのだ
今川義元直属の家臣の怒りはもちろんの事
下っ端の兵卒に至るまで手柄をあげる好機とばかりに
目をギラつかせながら全員が殺気立っていた
いきなり城内に乗り込んできた三人に刀や槍を向け
攻撃するチャンスをうかがいながら睨みつけていた
「うへ~ こりゃあ大層な御歓迎だな
むさ苦しい男共がわんさかとまあ」
「さすがに相手を殺さず人質を救出できる
雰囲気じゃなさそうだな・・・
遠慮なしに全力で行くぜ、いいよなルキア!?」
「ああ、手加減できる状況じゃないようだ
敵を怯ませる程の戦いを見せれば
相手も攻撃を躊躇するかもしれないしな」
ルキアのその言葉にゼファーが改めて
今川軍の方をチラリと見た
「敵さんはそんな雰囲気じゃなさそうだけどな
怯んで躊躇するどころか相討ちしてでも
俺達を絶対殺そうって目だぜアレは」
ライオスがニヤリと笑う
「人間の本能と言うのはそう簡単に克服できないさ
どんな強い覚悟と信念を持っていたとしても
それを上回る脅威を見せつけてやれればおのずと
おとなしくなる、所詮人間も生き物だからな」
そんなライオスを横目に見て静かに言葉をかけるルキア
「今回は本気で戦うんだなライオス、背中は俺達に任せて
思う存分暴れてくれ」
ルキアの言葉に思わず笑みを浮かべるライオス
まるで今から起きる事が楽しみで仕方ないとばかりに
目をギラつかせ全身から闘気があふれ出るかのようであった
その姿に思わずギョッとするゼファー
「おいおいライオス、まるでピクニックに行くみたいに
楽しそうに見えるのは俺の目が悪くなったのか?」
そんなゼファーの言葉には返事もせずまるで
聞いていないかのように持っていた刀に力を込めた
「オオオオォォォォ~~~~‼」
ライオスの凄まじい雄叫びにより対峙していた
今川兵はまるで地響きが起こったかのような
錯覚さえ覚える、そしてそのあまりの迫力に
包囲していた今川兵は思わず動揺し一瞬怯んだ
その瞬間イオスの目がギラリと光り敵の包囲網の
真っただ中に飛び込むと自分に向けられていた
無数の槍をあっという間に薙ぎ払いう、そして
囲んでいた兵の一角に猛然と斬りつけた
「ぐああぁぁぁ~」
「ぎゃああぁぁぁぁ~~‼」
絶叫と悲鳴が城内に響き渡り数的に
圧倒しているはずの今川兵がなす術もなく
次々と倒されていく、その目にも止まらぬ剣技の前に
一人また一人となぎ倒されていく
斬られた兵の頭や腕が宙に舞い大量の血しぶきが
辺りに飛び散り壁や天井を赤く染めた
それはまるで小型の竜巻が集団の中で荒れ狂いながら
周りの障害物をを蹴散らし吹き飛ばしている様でもあった
「うわ~何とも凄まじいな、人間の動きかいあれは!?
いくら金を積まれてもあの前には絶対立ちたくないねぇ」
ゼファーが独り言のようにつぶやく
味方ですら呆れるほどのライオスの凄まじい戦いぶりに
茫然として立ちすくむ今川兵、そんな事はお構いなしに
敵兵の中を突き進むライオス、斬られた敵兵の半数以上は
自分が斬られた事すら気が付かずに絶命していた
気が付くとライオスの周りはもはやただの肉塊と化した
いくつもの今川兵の死体が無残に転がり
床は元の色さえわからない程真っ赤に染まっていた
「はぁはぁはぁはぁ どうした、もうおしまいか!?
俺達は主君の仇だぞ、もっと死ぬ気で掛かって来い‼」
囲んでいた今川兵はライオスの鬼神のごとき強さに
恐れ戦き思わず後ずさりする
本来、その数において絶対的有利なはずの今川兵は
その想像を絶する圧倒的暴力の前に畏怖を覚えていた
大量の返り血を浴び真っ赤に染まった顔と鎧
右手に持っている長剣からはポタポタと血がしたたり落ちていた
殺気をはらんだ目をギラつかせ2m近い大きな体躯から
今川兵を見下ろし睨む姿は正に戦いの鬼であった
「何をしておる、敵はたった三人ぞ!?
いくら敵が鬼神のごとき強さを持っていたと
しても人間である以上必ず体力の限界がくる
数で押せ、それにあれ程人を斬った刀ではもう
血糊でまともに斬れぬはずじゃ、怯むなかかれ‼」
指揮官と思しき武将が叫ぶ、ライオスはその声に反応し
そちらに鋭い視線を向けると剣に付いた血を払い飛ばすように
横凪に振った、”ビチャ”という嫌な音と共に大量の血糊が
辺りに飛び散りその指揮官の顔にもかかる
「ひいいぃぃぃぃ」
思わず悲鳴を上げ後ずさりする指揮官
「俺の剣がこれしきの戦闘で切れ味が鈍るかよ
あの魔獣との戦いでも刃こぼれ一つしなかった
俺の相棒だぞ!?」
そう言い放つとライオスはゆっくりとした動作から
剣を高々と頭上に掲げ大上段の構えを取った
すると高くかかげられた剣は赤く光り始めユラユラと
炎の様なオーラを纏い始める
「な、あれは?・・・一体何を!?」
指揮官の武将は顔にかかった血糊を腕で拭いながら
見入る様にライオスの構える剣を目で追っていた
次の瞬間ライオスは上段に構えていた剣を一気に振り下ろす
すると赤い閃光が空気と床を切り裂き途中の障害物を
全て薙ぎ払いながら剣を振り下ろした方向に
凄まじい速度で向って行った、一体何が起こったのか
全くわからない今川兵は一瞬呆気に取られていたが
赤い閃光が向かった方向に恐る恐る視線を移した
するとさっきまで指揮官の武将がいたはずの場所が
メチャクチャに破壊されており城の壁も貫通していて
大穴があいていた、そしてそこには誰もおらず、
すでに人間の原形をとどめていない肉塊と化した死体と
大量の血が飛び散っていた、まるでその場所で爆弾が
爆発したかのような恐ろしく凄惨な殺傷現場だった
その圧倒的な破壊力の前に人知を超える殺され方をした
指揮官の哀れな亡骸を見た兵の一人が持っていた
槍を投げ出し悲鳴を上げながら慌てて逃げ出した
「化け物じゃ~あれは鬼だ‼」
一人の兵が逃げ出すとそれにつられるように一人
また一人と逃げ出す兵が続出した
しかしここは城内である、ただでさえ狭い場所に
大勢の人間が押し込められていたので
人同士が入り乱れ下の階に通じる階段に殺到する
将棋倒しの状態で押し倒された者、それをかまわず
踏みつけながら逃げる者、恐怖の連鎖により
皆がパニック状態になっていて大混乱を引き起こしていた
「狼狽えるな馬鹿者どもが
それでも誇り高き今川軍の兵か‼」
一人の武将がそう叫ぶと皆の動きが一瞬止まる
そして狼狽えていた今川兵の人ごみが割れるように
道を開けた、すると豪華な甲冑に身を包んだ
一人の武将が槍を脇に抱えながらゆっくり歩いて来る
そして歩みを止めるとライオスを睨みつけ槍を構えた
「我こそは今川軍にその人ありとうたわれた
斉藤元清と申す、いざ尋常に勝負し・・・」
斉藤元清が名乗りをあげている最中、あっという間に
間合いを詰めていたライオス、その反応はまるで
獲物を襲う猛獣のごとき動きであった
すでに剣が届く間合いまで接近していたライオスは
その大きな体を低くし脇に剣を構えながら
見上げるように斉藤元清を見つめていた
あまりの超反応に意表を突かれた斉藤元清は慌てて
槍を構えるがもうすでに遅かった
「ちょっ、まだ、待って・・・」
言葉を言い終わる前に斉藤元清の首は宙に舞っていた
首の無くなった胴体は切断面から大量の血を吹き出し
力なく崩れ落ちる、その返り血を再び受けるも
気にする様子も無く厳しい表情を浮かべている
「もっと・・・もっと強い奴はいないのか‼」
ライオスはイラつき気味に叫ぶがあまりの一方的な
勝負内容に皆押し黙ってしまう、そんな今川軍からの
返答はなく妙な静寂だけが城内に漂った
その頃時を同じくして城外では今川兵の大軍が
ルキア達を包囲殲滅しようと駿府城に向かっていた
ガチャガチャという大量の甲冑の音が嫌でも耳に入り
敵軍がどんどん近づいて来ている事がわかった
その夜は月が雲に隠れていて闇夜の状態での戦闘開始に
なるかと思われていたが、ちょうど月が雲間から顔を出し
月明かりに照らされた駿府城と敵の姿がクッキリ見えた
「な、なんだあの巨大な物の怪は!?」
「あんなのがいるなんて聞いてないぞ!?」
「あれは龍じゃないのか!?」
巨大な漆黒の龍を目の当たりにした今川兵は
動揺を隠せないでいた、勢いよく迫って来ていた
今川兵はダークネスドラゴンの姿を確認するや否や
進軍を止め一斉に停止した、そして一定の距離を
取りつつ扇状に広がり半包囲の陣形を組んだ
「敵にどのような物の怪がいようと
その数たった一匹ではないか!?
あとは小娘二人と男が一人、どう見ても
我等今川軍が後れを取る道理は皆無である
弓隊前に出ろ、あの物の怪に大量の矢を
浴びせるのじゃ‼」
指揮官の合図と共に300名程の弓隊が前に出てきて
弓を引き絞った、ゾフィの顔が思わず険しくなる
『安心してくださいゾフィ、私が
防御魔法で守って見せますから』
ステイメンからの言葉がゾフィの頭に直接入ってくる
その言葉を聞いて少し安心したゾフィだったが
その時思いもかけない言葉が飛び込んできた
『助太刀なぞ無用、貴様はもう一人の方の小娘の
援護に回っておればよい』
その言葉に思わず驚く二人、このステイメンが使う
テレパシー通話の術式は二人きりでのみ会話できる魔法で
通話に割り込むなんて事はおおよそ不可能なのだ
それを自己の能力によって術式を捻じ曲げ会話に割り込んだ
ダークネスドラゴン、ステイメンが呆気に取られていると
ゾフィが凄い形相で横の黒き竜を睨みつけていた
「あんた何勝手な事言ってるのよ!?
大体アンタは・・・」
ゾフィが不満をぶつけながら説教を始めようとしていた時
「撃て、矢の雨を降らせよ‼」
指揮官の合図と共に大量の矢が弓手の手から放たれた
ななめ上空に放たれた弓矢は空気を切り裂き放物線を描いて
ダークネスドラゴンとゾフィに襲い掛かって来た、思わず
目を閉じ身を屈めるゾフィ、今川軍全員が黒き竜と娘を
矢によって仕留めた!?と勝利を確信した瞬間
大量の矢は体に刺さる直前で灰となって霧散したのだ
その現象に呆気に取られる今川兵、何が起こったのか
理解できずにしばらく全員呆然としていたが
我に返った指揮官が激しく叫んだ
「何をしておる、続けて矢を放て、どんどん撃つのじゃ‼」
言われるままに次々と矢を放つ弓手、しかし結果は同じだった
何十本何百本矢を放とうと全て灰となって霧散した、今川兵に
動揺が走る、思わぬ結果に歯ぎしりする指揮官
「鉄砲隊前へ‼」
30人程の鉄砲を構えた兵が前列に出てきて片膝を付き構える
「撃て‼」
指揮官の合図で一斉に火を噴く火縄銃、発射の際の轟音と共に
目標に向かって水平に真っすぐ飛来する弾丸
しかし結果は同じであった、ダークネスドラゴンと
ゾフィに今川軍の攻撃が届く事は無かった、その結果を見届け
悔しがる今川軍指揮官、しかしその目は諦めてはいなかった
「このような棒切れや玉つぶてで我を殺そうなど・・・
人間とは何と愚かな生き物なのだ・・・」
ダークネスドラゴンは吐き捨てるようにつぶやいた
「あんたやるじゃない、さすがは闇の龍ね」
ゾフィは黒き暗黒龍の体をポンポンと二回叩き微笑んだ
「まだ安心するのは早いぞ小娘・・・」
「えっ!?なに?」
その瞬間、ゾフィ達がいる所の後方の堀の水面から
”バシャーン”という音と共に数本の水柱が上がった
何とそこから黒装束に身を包んだ数人の忍者が現れたのだ
「我こそは伊賀忍者、藤林長門、お命頂戴する‼」
数人の忍者はゾフィの数メートル近くまで接近していて
手には刀や手裏剣を構えており、今にも攻撃態勢に
移るところだった、思わぬ敵の出現に完全に
意表を突かれたゾフィは硬直してしまっていた
「がはっ!?」
ゾフィが自分の身の危険を感じた時、忍者の動きが
急に止まる、いや正確には止まっていないのだが先程と
比べると物凄くスローモーな動きになってしまったのだ
「こ、これは!?一体何が起こったのだ!?」
自分達の動きが急激に鈍くなった事に対し原因がわからず
困惑する藤林長門と伊賀忍者軍団
「痴れ者共が・・・気配を消して近づいた
つもりだろうがそんな事に我が気が付かぬ
とでも思うたか下郎が、今すぐ消えるがよい」
動きを封じた忍者たちを冷たい視線で見下ろし
冷徹に言い放つダークネスドラゴン
漆黒の巨体を持つ怪物の蔑む言葉に
驚愕の表情を浮かべる藤林長門
「喋った!?物の怪が・・・
しかも我らを下郎呼ばわりだと!?」
藤林長門は驚きと悔しさで体が震える程だったが
どれだけ懸命に頑張っても体が自由に動かないのだ
すると体の周りにモヤの様な黒い闇が発生し
藤林長門を始め伊賀忍者達の体にまとわりついて来た
「何だこれは!?」
藤林長門がそうつぶやいたとき後ろの部下が叫んだ
「飲まれる、闇に、一体これは!?・・・」
その黒い闇は伊賀忍者の体を包み込み全身を覆いつくすと
どんどん小さく収束して行いき、最後はまるで
空中に溶け込む煙のように消えてしまったのだ
それを見た藤林長門と他の伊賀忍者の顔から一瞬で
血の気が引き必死の形相であがく、しかし
どれほどあがいてもその闇から逃れる事は出来ず
最後は藤林長門が闇に飲まれ全員が消え去った
その光景を見た今川兵と指揮官は絶望のあまり膝を落とす
「馬鹿な・・・そんな馬鹿な・・・」
そんな敵兵の落胆ぶりを見ながらダークネスドラゴンは
ボソリと独り言のように呪文をつぶやいた
その瞬間ゾフィ達を半包囲していた今川軍の中の一人が
悲鳴を上げた
「ぎゃああぁぁぁ~~~‼」
その兵は血が出る程自分の顔をかきむしり
何かに恐怖している様だった
するとあちこちから次々と悲鳴が上がり始める
自分の頭を抱えながらうずくまる者
白目を向き失神する者、笑いながら失禁し呆けている者
地面に転がりながらのた打ち回る者
表現は様々だったが全員が共通している事は
皆とてつもない恐怖にさいなまれているということであった
ゾフィ達を半包囲していた今川軍の約半数の人間が
皆恐怖に支配され我を失っており、悶え苦しんでいる
それは傍から見ると地獄絵図ともいえる凄惨な光景だった
目の前に広がる阿鼻叫喚に顔をしかめやや引き気味に
見つめるゾフィ
「精神攻撃で敵を無力化して欲しいって
言ったのは私だし大半の人間は
死んでないんだろうけど・・・」
ゾフィの話にも全く無反応のままダークネスドラゴンは
無言で今川軍の様子を見ていた、大勢の人間が
嘆き苦しんでいる様をまるで虫でも見つめる様に
無感情な表情を浮かべすでに興味が無いと
言わんばかりであった、ゾフィはそんな黒き暗黒龍を
ジッと見つめポンっと体を叩く
「まぁでも今回は助かったわありがとうダークネス
でもアンタって闇の中だと本当に強いわね!?
昔アクアに完敗したってのが信じられないぐらいよ」
そんな言葉に反応しジロリと視線だけを向ける黒き暗黒龍
無言のままゾフィの姿をジッと見下ろしていた
「な、なによ・・・感謝のお礼とアンタの強さを
褒めたんじゃない、言いたい事があるなら
ハッキリ言いなさいよ」
しかしゾフィに反論する事は無く無言のまましばらく
ジッと見つめているだけのダークネスドラゴン
再びプイッと上空を見上げ言葉を発する事は無かった
「なによその態度、アンタ本当に態度悪いわね
大体アンタはね・・・」
ギャーギャー怒りながら説教するゾフィの言葉を
聞き流しダークネスドラゴンは別の事を考えていた
『全くうるさい小娘だ・・・しかしこの娘に
呼び出されると体中から魔力があふれて来て
全身に力がみなぎってくる・・・
正直今なら相手が誰だろうと何千の数の敵であろうと
全く負ける気がせん、本当に不思議な娘だ・・・
あのアクア殿が”我が主”と言うだけはある』
ダークネスドラゴンがそんな事を考えているとは
露知らずゾフィの説教は続いていた
一方反対の西側では押し寄せる今川軍に一人で
立ちふさがるフリニオーラ
「相手は年端もいかぬ女子一人だと!?
ナメおって、我が今川軍を侮った事を死ぬほど
後悔させてくれるわ‼」
躊躇することなく突撃してくる今川兵に対し
杖の先を地面にコンっと落としつぶやく
「”エクスプロード ビックウェーブ”」
地面に付けた杖の先から波紋状に広がる魔法の衝撃波で
突撃してきた今川軍が吹き飛んでいく
「な!?なんだ今のは!?」
驚く指揮官の武将をよそに続々と押し寄せる今川兵を
次々と吹き飛ばしていくフリニオーラ
既に何百と言う兵が衝撃波によって弾き飛ばされ
地面でノビていた
「突撃を中止せよ、弓隊と鉄砲隊は前に出よ
各自準備ができ次第攻撃を開始せよ‼」
指揮官の指示により突撃を中止する今川兵
代わりに弓隊と鉄砲隊が前面に出てきて
フリニオーラに対しそれぞれ弓と弾丸を放った
凄まじい数の矢と弾丸がフリニオーラを襲うが
ステイメンの防御魔法によって阻まれその攻撃は
どれ一つフリニオーラに到達する事は無かった
フリニオーラを包み込むように展開する半透明の球体は
今川軍の攻撃を全て遮断し防ぐ鉄壁の結界となっていた
「へえ~防御魔法と言うのは
やはり便利な物なのですね」
自分の周りに展開している防御結界をマジマジと
見つめながら感心するフリニオーラ
一方、いくら攻撃を加えても何の成果も得られない
と言う事実に今川軍指揮官が歯ぎしりしながら
標的である一人の少女を睨みつけていた
「たった一人の女子をどうして
仕留められぬ!?有り得ぬ・・・
こんな事は有り得ぬぞ!?」
その時参謀と思しき男が指揮官の横に現れ
小声で耳打ちした
「遠間からの攻撃は何らかの結界に阻まれ
無効化されている様です、こうなれば
やはり近接しての攻撃に切り替えた方が
良いかと思われまする」
指揮官は怒りの形相で振り向くと
睨むように参謀を見つめ怒鳴りつけた
「愚か者、先程それをやって散々
蹴散らされてきたではないか!?
もし突撃を続けても兵の損失が
増えるばかりではないか!?」
それに対しニヤリと笑う参謀
「大軍をもって突撃したから被害も増えるのです
相手は小さな女子一人、十人づつで部隊を編成し
次々と緩慢なく突撃させればよいのです
あの怪しき術の正体が何かはわかりませぬが
小規模部隊での攻撃を繰り返せば
向こうもいつかは力尽きましょう」
指揮官はしばらく考え込んでいたが
小さくうなづき参謀に告げる
「早速その作戦を実行せよ、急ぎ小規模部隊
の編成にかかれ」
「御意」
参謀は頭を下げると早速部隊編成に入る、訓練された
今川軍の動きは早くものの5分もしない内に編成が終了した
「編成された部隊は順次突撃を敢行せよ
相手に休む暇を与えず緩慢なく
突撃するのだ‼」
新たな策をもってフリニオーラに突撃してくる
今川兵、しかしまたもや衝撃波により次々と
吹き飛ばされていった、それでも今川兵は
次々と突撃を繰り返し全く諦める様子は無かった
「キリが無いですね・・・」
最初の数回でフリニオーラは相手の作戦を看破した
今川軍の戦術にどう対処しようか?と考えながら
衝撃波をくり出していたのである
「正直この程度の魔法衝撃波ならば残りの兵を
全て吹き飛ばす程の回数を放ったとしても
魔力が尽きる事はありませんが
このままダラダラと魔力を消費するのは
正直面白くないですね・・・」
フリニオーラは必要以上に魔力を消耗する事を
極端に嫌う、それは師匠ハイドニールから叩き込まれた
教えであり鉄則といってもよかった
『相手の強さを瞬時に見極め必要最低限度の
魔力消費で相手を撃滅する、それこそが
魔法使いの神髄であり理想の姿・・・
そうですよね師匠‼?』
自分にそう言い聞かせながらそんな事を考えていた
そして自分の後ろにある堀にチラリと視線を移した
堀の水面が月を映しだしていてそれが
ユラユラと揺れ何とも幻想的な美しさを
かもしだしていた
「しょうがない、アレを使わせてもらいましょう」
フリニオーラは右手の杖をスッと堀に向け
ボソリとつぶやいた
「パンデミック ミスト」
すると堀の水面が一瞬怪しく光り白いモヤの様な霧が
発生した、それが徐々に塊として集結し始め
結局直径50㎝程の小さい雲のような姿になり
フワフワと揺れながら宙に浮かんでいた
「さあ行きなさい」
フリニオーラの言葉と共に白い霧状のモヤは
ゆっくりと動き始め今川軍へと向って行った
その頃今川軍では十人単位の突撃隊が列をなして並び
自分の番を待っていた、それを真剣な眼差しで見つめる
指揮官と参謀
「どうだ、相手に疲れた様子は見えるか?」
「いえ、まだ何とも・・・しかし必ずやうまくいきまする
相手も人間ならこれを繰り返していけば必ず
体力が尽きるはずです」
参謀の言葉にゆっくりうなづく指揮官の武将
その時今川兵の一人がうめき声をあげた
「ぐはっ!?うぐぐぐ」
指揮官を始め今川軍全員がその声の主に注目した
「何事であるか、なっ!?これは一体?」
そのうめき声をあげた兵の顔には先ほどの
白い霧状のモヤがまとわりつきその兵の口と鼻から
体内へと入り込んでいった、するとその兵は両手で
首を押え苦しみ始めたのだ
「何じゃあれは!?新たな疫病の一種か!?」
その兵は呼吸困難をおこしている様でゼイゼイと息を
荒げながら卒倒し大きく息を吐いた
「グボッ!?」
倒れた兵はどうやら気を失った様で全く動かない
そして大きく吐いた息から先ほどの白い霧上のモヤが
発生し今度は三つの塊になって宙に浮いている
そしてその三つの霧はそれぞれ別々の兵にまとわりつき
体内へと入っていく、入り込まれた兵は同じく苦しみ始め
最後は卒倒し大きく息を吐く・・・
それを繰り返していくうちにドンドン霧状のモヤは
数を増やし今川軍全体を蝕んでいく、今川兵は謎の奇病に
パニックになり突撃どころではなくなってしまっていた
「何が起こっているのだ・・・一体何が!?」
指揮官の武将は顔をしかめ自軍の状況に戸惑っていた
「いかがなさいましょうか?ここは一時撤退を・・・
ぐはっ!?」
指揮官に話しかけていた参謀が白い霧に取り付かれ
苦しみ始めた、目の前で起こっている事態が
全く理解できず困惑する指揮官の武将
そんな様子を遠目で見つめるフリニオーラ
「パンデミック ミストは人間の体内に侵入すると
そこで増殖し感染者の意識と体力を奪います、その後
体外へと排出され再び近くの人間に感染しながら
増殖を続け最後にはその集団を壊滅するまで終わりません
死にはしませんが意識を失うまでは苦しみますよ・・・」
参謀が苦しみながら卒倒し大きく息を吐いた
そこから発生した白い霧が指揮官の武将に迫るが
どう対処していいのかもわから無い為
なす術無く体内に侵入されてしまった
「ぐぼっ、無念だ・・・」
指揮官のうめき声と共に今川軍は全員が意識を失い壊滅した。
当初この話は三話ぐらいで終わるかな?と考えていたのですが
思ったより長くなってしまい、まだ続きそうです
気長にお付き合いいただけると嬉しいです、では。




