8話:悪役令嬢とパシリ(自分のモノ編)
次の日から、リシリアさんの弁当をいただくことになりましたわ。
そうなれば、あの居心地の悪い食堂に行く必要もないのですし(決して人の多い所で一人飯が寂しかったわけではございませんわ)、二人並んで外のベンチに座って御昼の時間を過ごしておりますの。
「今日も美味しいですわね。さすがですわ。」
「エヘヘ~、そう言ってもらえると嬉しいです。デへへ。」
ぐぬぬぬッ! 可愛いッ!
「でも、ゆっくりできない天気ですね…。残念です。」
……確かに、今日は風が強いですわねぇ。
ロール髪がぐわんぐわんしますわ。
ワタクシはカチューシャで後部に髪を流して(アホ毛は存命)おりますので、風が吹くことに問題はありませんが、リシリアさんは一切の髪留めを使っておりませんので…あぁ…食べにくそうですわ。
仕方ない、今度の買い物のときに――
《自分のモノだと分かるようしたり》
はっ! ビビッときましたわ!
「あなた、髪が乱れておりましてよ。貴族だろうと、平民だろうと、最低限の身だしなみはするべきでしてよ。こちらの髪留めを使いなさい。あなたに似合うと思いますわ。」
渡したのは縦ロールヘアが面倒だと思ったとき用の紐型髪留めですわ。まぁ、支度は優秀なメイドがしてくれますので、必要となったことが一度もない未使用ですけれど。
この髪留めならワタクシが愛用しているカチューシャと装飾デザインが被りますし、彼女が使っていれば『リシリアはアイリーンの舎弟』だと誰でも判断できるはずですの。
「こ、ここここ、こんな高価そうな物いただけませんって!」
「気にしないでくださいまし。ワタクシにとって端金ですもの。」
「で、でも、私が付けるには…分不相応と言いますか…。ほら、デザインもすごく凝っていますし…宝飾類もいっぱい付いているじゃないですか…。」
「ワタクシと同じデザインを付けるというのは、格を下げてしまうから嫌ということ…そうですのよね? 所詮はワタクシはDクラス…あなたはAクラス…不相応でしたのね。馬鹿はお呼びではないってことかしら…。」
「ち、違います! そういう意味ではッ!」
「フフッ、分かっておりますわ。ちょっと揶揄ってみただけですの。…しかし、あなたの相応はあなたが決めることではないですわ。世間が決めることでもないのです。」
「で、では誰が決めると言うのですか?」
「ワタクシが決めることでしてよ!」
うぅむ、それでも動きそうにありませんわね。
仕方ないですわ、ワタクシが直々に付けてあげましょう。
そうですわね…リシリアさんは元気可愛い系ですし、ポニーテールかハーフアップあたりが似合いますでしょうね。ふんふん…これは…手入れすれば輝く髪質ですわね。
妹がいれば…こんな感じだったのでしょうか。
ワタクシ、末っ子ですので妹に憧れますの。
「はい、できましたわ。そうですね、やっぱり似合いますわ。さすが、ワタクシといったところですわ。ほら、手鏡…確認なさい。」
「わ~…すごい…綺麗な髪飾り…。本当にコレ、いただいてもよろしいんですか!?ありがとうございます! 一生大切にします…ガランデ様ッ!」
ここまで喜ばれるならワタクシもいい気分ですわね。
ですが、どうしてでしょうか、何かが物足りない…。
いい気分なのは確かですが、もっとさらに上がありそうな…。
「アイリーン。そうですわ、ワタクシはアイリーンですもの。」
「え? え、えっと? ガランデ様?」
「ワタクシ、フルネームは好きですけど、ガランデと単体で呼ばれるのは嫌いでしてよ。ワタクシのことは…アイリーン…いえ、それも違いますわね。アイリ…もしくは…リーン…お好きな方でと呼びなさいな。」
「そんな!? よろしいのですか!」
「リシリアさんのことは…そうですわね…リシィ…そう、あなたのことはリシィと呼びますわ。よろしくて?」
こ、これは決して気を許したいうわけではございませんわ!
特別な呼び名をして、より自分のモノ感を出すためですわ!
ふんっ!
「はいっ! リシィと呼んでください! アイリ様!」
まぁ? いい気分だったのが、最高の気分になりましたし?
これが最善だったということにしておきましょう。
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