7話:悪役令嬢とパシリ(昼飯編)
しばらくして、学園はとある話題で持ちきりになりましたわ。
嫌われ平民の特待生であるリシリアさんが、悪役令嬢であるワタクシにベッタリであるという話題ですの。どうやらイジメをしていた方々は言いふらしておらず、経緯も理由も誰も知らないようですわね。
そんなワタクシたちは昼の時間、いつものように学生食堂にいるわけですが周囲に誰も座りたがらないですわね。それに、ワタクシが『肉盛り豪爛貴族セット』を食べているのに対し、リシリアさんは自作弁当というのだけは居心地が悪いですわ。
しかし、弁当…見ていると…じゅるり…。
あっちはあっちで美味しそうですわ。
「それ…美味しそうですわね…。私にくださいな。」
「えっ!?」
「あら、ダメですの?」
「だって、私みたいな平民が作った料理など、ガランデ様に差し上げるわけにはいきません。しょせんは素人平民の料理ですから。」
「あら…金がなければ…手間がなければ…技術がなければ料理はできませんの? あれば美味しくなるというのは理解できますが、なければ不味いというわけではございませんことよ。いらぬ心配でして。」
ワタクシは弁当箱を強引に奪い取ると、数種類の野菜が層になってロールされた料理をフォークに刺しますの。そして、奪ってしまった料理の代わりに、ワタクシの肉を弁当箱に詰め込みましてよ。
では、さっそく――いただきますわ。
「もぐもぐ…ほら、美味しいではございませんの。」
「ッ! ほ、本当ですか! 美味しいですか!」
「えぇ、そうですわね。肉を使っていないにも変わらず、ここまでインパクトのある味を出せるとは…あなた、良い腕前をしているではありませんか。」
うぅむ、是非とも我が家に料理人として招き入れて、毎日彼女の作った料理をと思ったのですが…残念ですわね。だって、リシリアさんはヒロインであり舎弟ですもの。そんなことをさせるわけにはいかないですわ。
……ん?
舎弟…?
確かメイディが言っていたのは…《昼飯を用意させたり》。
こ、これですわ~!
そうですの、舎弟だからこそ昼飯をご用意させればいいではありませんの。 ワタクシ、悪役令嬢としては完璧でも、悪役姐さんとしてはまだまだ未熟でしたわね。
「そうですわ! 今度からはワタクシの弁当も作りなさい!」
「えぇ!? で、ですが…。」
「何ですの? お金なら払いますわよ。」
「い、いえ、そういうわけでは…。時間も、お金も、問題はないんですけど…その…やっぱり…ガランデ様に私の物というわけにはいきませんし。貴族様ですし…。」
「ワタクシが貴族様であると思っているなら、ワタクシの決定を無視するわけにはいかないでしょう? 命令…そう、これは伯爵家からの命令でしてよ。作りなさい、ワタクシの昼飯を。」
ふふん、どうでしょうこの悪役令嬢っぷり。
金と権力、そして適当な言い分で押し通すのですわ。
これでワタクシも弁当で…って、容器を用意しなくてはいけませんわね。ですが、ワタクシではどのようなものが良いか分かりませんし、これもリシリアさんにご用意させましょ――
《買い物に付き合させたり》
こ、これですわ~~!
そうですわ、これは買い物に付き合させるチャンスですわ!
ご用意させるのではなく、どのような物がいいか一緒に行くのですわ。そうすれば悪役姐さんとしてすべきことも、ワタクシ好みの弁当箱を用意させることもできるはず――一石二鳥というやつでしてよ。
「弁当箱も、今度、買いに行きましょう。それまではまぁ、ある物で済ませますわ。適当な箱を用意しておきますので、よろしくお願いしますわね。」
ワタクシの才能が恐ろしいですわ。
まさか、悪役姐さん適正も高かっただなんて…。
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