9話:悪役令嬢と先生
ある日、ワタクシは担任教師に呼ばれましたわ。
ワイルド風でちょっとイケメンな三十路ですわ。
公爵の分家らしいですけど、詳しくまでは知りませんわ。
残念ながら、ワタクシ好みではないですけれど。
フッ、ワタクシも大人にマークされ始めたということですのね。
ワタクシの目標までの道は順調ということを意味しますわ。
つまり、天才秀才の悪役令嬢ということですわ~!
「おいガランデ嬢…あんた…馬鹿だろ。」
おぉう…初回テストの結果用紙を突き付けられましたわ。
なんということでしょう……ダメ印のオンパレードなのですわ。
チラリと先生の机に見える『最下位』を示す紙、見えないですわ~。
「ハッキリ言うぞ……このままの学力だと……二年になれねぇぞ。おいおい、まだ入学してちょっとの相手に、こんなこと伝えないといけない先生の身になってくれよ……。」
「マズいですわ。留年系悪役令嬢など笑いものではございませんの…。」
「大丈夫だ。悪役令嬢を名乗っている時点で、十分に笑いものにされているからな。くそっ、どうしてこんな問題児の担当が俺なんだよ……。」
しかし、仕方がないのですわ。
最近はリシィのことでいっぱいいっぱいで、勉強する時間なんて禄にありませんでしたもの。だけど、さすがに留年は嫌ですわね……勉強…しようかしら…ちょっとだけ。
「他には知られねぇようにしてやっから、勉強頑張っとけよな。」
「はいですわ…。精進いたしますわ…。」
「まぁ、呼び出した理由のメインはこっちじゃねぇし、これぐらいにしといてやるか。……それで、ガランデ嬢は…その…困ったことはねぇか? イジメられてるとかよぉ。」
「はぁ…イジメですの…? いえ、ワタクシは特に…。」
悪役令嬢であるワタクシがイジメる側に立つことはあれど、イジメられる側に立つことなどありはしませんわ。この先生は何を以ってそのような心配をなさっているのかしら?
「伯爵家ともあろう者が下級平民と仲良くなって…と言われてるらしいな。俺は社交界から離れて数年経つが、それでも耳に入ってくんだよ。どうやら、ターゲットがアンタに向いてるらしいんだわ。」
「リシィとは舎弟の関係性でしてよ。仲良くはございませんわ。」
「あのなぁ、言っておくぞ。お前ら普通に友達にしか見えないからな? 飯作ってもらって、買い物の約束取り付けて、デザインがお揃いの髪飾り……これのどこが舎弟だって話だ。挙句にゃ愛称だぁ? 有名だぞお前ら。」
「皆さまは分かってないだけですわ。『パシリ』ですの。」
「それを『仲のいい友達』って言うんだよ、バカタレ。」
バカとは何ですか! バカとは! バカですけど!
しかし、取り巻きと舎弟ではわけが違うとメイディも言っておりましたし、ワタクシの言い分の方が正しいに決まっておりますわ。つまり、ワタクシがバカではなく、皆様がバカであり、少数のことを貶しているだけですわね。浅ましいこと。
「まぁ、ともかく気を付けろよ。選民過激派が目の敵にしてるって噂だ。」
選民過激派…貴族はスゴイ、という考え方でしたわね。
はぁ、まったく…そういう人に限って無能が多いのですわよね。
立場で優劣が決まるならガランデ伯爵家は貧乏ではないですし、優れているリシィだって市民ではなくは公爵飛び越えて王妃ですわ。まったく、困った思想の方々もいるものですわね。
ま、どのような思想の方々でも、悪役令嬢には敵わないですけど?
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