4話:悪役令嬢とバトル
悲報:アイリーン・ガランデは無名悪役令嬢だった。
「なんですってぇ! アイリーン・ガランデをご存知ではない!?」
「ガランデ…あぁ…あの一発逆転令嬢か。初めて見た。」
まさか、このワタクシのことを知らない人がいるなんて、到底信じられませんわ。立てば芍薬、座れば牡丹、高笑いは薔薇の花と呼ばれているこのワタクシが…!?
いや、待ちなさい。
まだ呼ばれていませんでしたわ。
呼ばれるようになるために学園に来たのですもの。
ワタクシはまだこちらで何も成しておりませんでしてよ。
もう、アイリーンったら~、せっかちさん♡
「あっ、ンン、ゴホンッ、失敬。ワタクシ、まだ学園で何もしておりませんでしたわ。知らなくて当然のことでしたわね。大きな声を出してしまったこと、お詫びいたしますわ。オホホホ!」
ですが、どうせ未来では呼ばれるのですから、あながち間違いというわけではありませんわね。皆様方、なにやらヒソヒソ話しておりますが、きっと「ガランデ嬢は確実に至高の悪役令嬢になるに違いない」となっているはずですわ。
「(おいおい、なんか薬でもキメてるんじゃないのか?)」
「(ヤバそうな人に出会ってしまった…。)」
「(もーそーへきって言うやつ? 怖い…関わりたくないわ…。)」
「(どうする? 見られちまったしよぉ。)」
聞こえませんわ~。
なんにも聞こえませんわ~。
「それで? 寄ってたかって何をしているのかしら?」
「ア、アンタには関係ないことでしょ。」
「先ほどの言葉が聞こえなかったかしら? 彼女は『恩人』なのだと。ワタクシはあなた方と違って性根は腐っておりませんもの…助けるに決まっているでしょう?」
思わず目をスッと細めてしまいましたが、自然に悪役令嬢ができるなんて流石ワタクシですわ。皆さま気圧されてるようですわね。
「く、くそ! たかが女一人、何ができるってんだ!」
「へっ、よく見りゃ、この女も可愛いじゃねぇか。」
「こっちは男三人いんだ。やっちまうぞ。」
あらあら、さすがは男の子。
ならば、ワタクシもその気になってさしあげましょう。
格の違いというものを見せて差し上げましょう。
まずは、右手に持っている扇を胸元へと収納。
そして、右手を振ると――袖口から二つ目の『扇』が出現。
フフッ、これがワタクシの武器――『鉄扇』ですわ。
というのも、ワタクシの悪役令嬢研究の結果によれば、悪役令嬢には『扇』が必需品だということが分かりましたの。しかし、初めは何に使う物なのか見当もつかなかず、そこでメイディに聞きましたところ『令嬢の防具であり武器である』と教えてもらいましたわ。なるほど、確かにそういうのも必要なのだと納得しましたの。
そうしてワタクシが編み出したのが――『悪役令嬢流扇戦闘術』。
「さぁ、かかって来なさい、子犬たち。」
ワタクシは迫る三人を、扇の一振りで制しましたわ。
一人目には手首と股間を一撃、
二人目は回転して躱しつつ、
三人目は首裏を叩いて
――はい、チェックメイト。
フフッ、パーフェクトゲームでしてよ。
これぐらいの相手、悪役令嬢にとって敵ではない。
風で飛ぶ塵芥となんら変わりがありませんもの。
「それで? あなた方はどうしますか?」
男が終わったなら、残るは女だけですの。
さぁ、戦う気のある子はいるかしら?
キャッツファイトもワタクシ可能でしてよ。
「ヒ、ヒィィ!」
「に、逃げなくちゃ!」
「殺されるぅ!」
「あらあら、逃げますの…三流以下ですわね。」
ならば、することはただ一つですわね。
メイディから教わった勝者の特権、悪役令嬢の醍醐味。
すべての頂点に立つ者の、もはや義務。
「――スゥ~…。」
ワタクシはうずくまっている一人目の男の背中に右足を乗せる。
そして、右手を右足の腿の上に置きまして、左手は中指を立て――
――最後は、高らかに勝利宣言ですわ。
「ふんっ! ケツを洗って出直しな! オ~ホッホ!」
キマった…これは…まごうことなき悪役令嬢ですわ。
やりましたわメイディ! 悪役令嬢の勝利でしてよ~!
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