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30話:悪役令嬢と祝勝会

ガランデ家タウンハウス。


ワタクシとメイディの、いつもの二人。


……だけでなく、本日はアベルもおりますの。


なぜなら――


殿下とリシィのデート成功を祝う、祝勝会ですわ!!


「かんぱーい!!」


グラスを高々と掲げ、ワタクシは満面の笑み。

完璧という言葉は、まさに今のためにありましてよ。


「腕によりを掛けました。」


「さすがメイディですわ!」


「これ、本当にメイドの料理?」


「もちろんでございます。」


「いや、王宮でも十分通用するよ……。君、何者?」


「ただの悪役令嬢のメイドでございます。」


そうして美味しい料理を囲みながら、楽しい時間を過ごしましたの。


……なにか大事なことを忘れている気もしますが、きっと気のせいですわ。


終わり良ければすべて良し。

有終の美、まぁワタクシはいつでも美しいですが。


そのとき――


コンコン。


「あら、誰でしょう?」


「確認してまいります。」


メイディが静かに席を立ち、玄関へ向かいます。


扉を開けた、その瞬間。


「やぁ、御邪魔するよ。こんにちは。」


聞き覚えのある、穏やかな声。

誰もが二度見するその美貌。


「……殿下。」


メイディの声に、ワタクシとアベルは思わず立ち上がりました。


「「で、殿下ぁ!?」」


「楽しそうだね、アベル。」


「あ、えっと、どうして、ここに!?」


「昨日、私たちを見ていたのだろう?」


「「バレてた!?」」


ままま、まずいですわ!

完璧変装を見破られていたなんて!


そりゃそうですもの。第二殿下とはいえ一国の王子、尾行くらい見抜いて当然ですわ。くっ、こうなったら悪役令嬢戦闘術の秘儀『記憶消去首折打法』を使うときが来たということかしら!?


「だ、断罪、ですわよね!? 絞首よりも斬首を希望しますわ。」


「ハハハ! ガランデ嬢、私は怒ってなどいない、むしろ感謝してるんだよ?」


「え…本当ですの?」


「あぁ、当たり前だろう? あそこまで親身になって相談に乗ってくれた。そのうえ、ちゃんと見届けようと尾行までしてくれたんだ。この善意に応えなければ、人でなしになってしまうよ。」


面白そうだったからなんて、口が裂けても言えませんわ。

これが王子、まさしく光の男ですわね。


「それと、君がメイディ嬢だね? 計画のほとんどを立ててくれたんだってね? おかげでリシリア嬢も喜んでくれたよ。ありがとう。」


「私への称賛は、すべてお嬢様に。」


「ハハッ! ガランデ家はみんな面白いね。」


そりゃあもちろん、メイディだから当然ですわ。


殿下にはあげませんわよ?

ワタクシだけのメイドですもの。


「あぁ、それとね、実は今日は、お礼だけではなく――」


そう殿下が切り出した時だった。


ドンドンドンドン!!


「嬢ちゃん! てぇへんだ!」


「……!?」


この声は、聞き覚えが…。

はて、どなたでしたっけ?


「確認してまいります。」


メイディが玄関へ向かう。


扉が開くや否や、その人物は部屋へ飛び込もうとする。


「失礼します。」


しかし、メイディが片手でその巨躯を受け止めたのですわ。


「ぐぇ!?」


モジャモジャ白髪のマッチョジジイ。


この姿は、まさか――。


「もしかして、バヌシュ?」


「た、大変だ! ゲホッ!」


「知り合いかい?」


「以前、アイリとリシリア嬢の買い物に付き添ったときに会っています。マランデ商会の職人、バヌシュです。」


「そうか。」


ワタクシはコップを手に取るとバヌシュに近づく。

そして、口元に水を差し出すのでした。


「バヌシュ、まずは、飲みなさい。」


「あ、あぁ…ゴクリ…ふぅ。」


「それで? 何があったのですか?」


「あ、ああ、ああああああの嬢ちゃんが、ワシのとこに来て、よ、ほら、前に、いっしょに、そこの坊主といっしょに来た嬢ちゃんだよ。」


「リシィ…リシリアのことですわね? あの子が、どうかしましたの?」


「そ、そうだ、リシリア嬢ちゃんだ! あぁ、あの子と、別れた後、すぐにララナがワシのところへ飛んできてな!」


ワタクシは続く言葉を待つ。

分かっている、悪しき言葉が来ることは。

それでも、冷静に、優雅に、可憐に。


だって、ワタクシは悪役令嬢で――



「『お姉ちゃんが、知らない馬車に連れて行かれた!』って…ッ!」



その瞬間、ワタクシの視界が白く染まった。


そして、その白き視界に思い浮かぶは、あの眩しき少女。

リシィの笑顔が、声が、温もりが世界に色をつけていく。


そう、そうなの、この色を奪おうとした輩がいるのですわね。


「フ、フフ…。」


怒りも過ぎれば笑顔となるのでしてよ。


「待て。リシリア嬢は、どうしてアナタの工房に?」


「あの子が、誰かまでは聞いてはおらんが、町遊びの御礼に、何か珍しいものを渡したいって、だから、ワシは、今度発売予定の、『タンブラー』って商品を…。」


「……くっ、私のせいかッ!」


殿下が強く拳を握り締めます。


「ガランデ嬢。」


その一言だけで、殿下が何を言いたいのか理解しますの。


「えぇ、分かっておりますわ、殿下。」


「お、おい、まさか……。」


ワタクシはスカートの裾を翻し、高らかに宣言します。




「カチコミですわぁぁぁぁ!」




許しませんわ。


このワタクシを相手に、舎弟の誘拐ですって?

それが何を意味するか、教えて差し上げなければ。


「フフフ…メイディ、出陣の時でしてよ。」


「かしこまりました、お嬢様。」


どうしてくれようかしら?


【皆さまへ】


コチラの作品を読んで楽しんだら、高評価をしてくださると嬉しいです。


そして、何よりも嬉しいのは作品に対する直接の言葉です。

なので、コメントしてくださるともっともっと嬉しいです。


よろしくお願いします!


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